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しおりを挟む「おい、見つかったか、チャオ?」
「気配、なしです」
小さな虫眼鏡片手に、二人は草の根を分け、探し物をしていた。
「本当に存在するんかいな?」
早くもライは探すことに飽き始めていた。そんなライをチャオがどやしつける。
「何言ってるんですかっ。早く見つけないとまた依頼主から督促が来てしまいますっ」
「そんなこと言うたかて、もしかして存在しないもん探してるんやったらわしら、こないことしてても意味ないやないか」
「ライ、かつてこの国は『黄金の国』と呼ばれていたのですっ。黄金の国、ジパング。これがどういうことかおわかりかっ?」
「わからん」
「つぅーまぁーりっ、黄金がザックザックあったということですっ。花や草、川を流れる水でさえ金色に輝いていたというではありませんかっ。と、いうことは黄金のネズミなるものも存在するに違いない! しかも珍しい生き物なのではなく、どこにでもいる当たり前の生物に違いないのですっ!」
ぐぉぉぉっ、と拳を突き上げる。
「ほんまかいな」
ライは呆れ顔だ。
二人は依頼者から『黄金のネズミを捕まえて欲しい』という仕事を受けていた。そのネズミは、いまだかつて見たことのない美しい輝きを放っているのだと依頼者は言った。なんとしてでもコレクションに加えたいのだと、気前よく前金まで払っていったのだ。
「もうちょっと範囲を広げなあかんかなぁ」
見渡す。
二人は、もう三日間もビルのあるこの柵の中、ススキを掻き分けて金のネズミを捜していた。なるべく人間のいる世界には足を踏み入れたくない、というのがライの考えだから柵の外には出なかったのである。
「そうですよ! 外へ出ましょうライ!」
チャオは乗り気だ。人間が好きだ、とはいえないが、興味はある。接触しない程度に近づくのは問題ないと思っていた。
「しかしなチャオ、お前忘れたわけじゃないやろ? あの時のことを」
「……それは…、」
人間に関わるといいことがない。
ここ何十年かで学んだ結果である。
人間とは、身勝手で臆病、そして強暴だ。自分たちの種を絶対のものと信じて疑わず、都合が悪いものはすべて排除する。
「あん時みたいに追っかけられたらたまらんわい」
昔……もう十年近く前だ。その時もある依頼を受けて、この地へ出向いていた。このビルを入り口にし、あっちとこっちを行き来していたのだ。あれはそう、確かチャオが入ったばかりの頃で、彼にとって初めての仕事だったのではないだろうか?
「あの時は本当に、どうなることかと、」
思い出しただけでもブルルッ、と体が震えてくる。まぁ、元を正せば異世界珍しさにウロウロしていたチャオが悪いのだが……。
「あん時みたいなことにならんように重々気を付けなあかんで」
とは言ったものの、たった二人でこの敷地の中だけをくまなく捜していても、はっきり言って金色のネズミが見つかるとは思えない。やはり柵の向こうへ手を広げなければ埒があかないのかもしれなかった。
「……あかん。考えたくないわ」
ライが頭を抱える。
「その悩みは海より深い?」
頭上より声がする。それは聞き慣れたチャオの声ではなかった。ゆっくりと、まるでカラクリ人形のように振り返るライ。と、その場に固まって冷や汗を垂らしているチャオの姿が目に入った。その向こうにはにょろりと伸びた、足。
足?
カクカクとした妙な動きのまま、顎を上に向ける。そこに見えたものは……、
そこに見えたものはぬいぐるみだ。
千景はそう思った。
でも、どうやらそのぬいぐるみは動いている。そして、喋っている。その会話になんとなく耳を傾けていた。ぬいぐるみたちはどうも困っているらしい。捜し物が見つからないようなのだ。
(あたしと一緒……)
意味もなく親近感を覚える。
そっと近付いてみた。ぬいぐるみたちは猫の姿に似ている。が、二足歩行だ。服も着ている。手には小さな懐中電灯を持ち、ブツブツと文句を言っていた。黙っているつもりだったのだが、つい、言葉を発してしまったのだ。
「こんばんは」
とりあえず挨拶してみた。が、ぬいぐるみたちは世にも恐ろしいモノを目の当たりにしたかのようなびっくり顔で、固まっている。
千景は辛抱強く反応を待った。
しかし、返事はない。
仕方がないので、ニコッと笑って見た。
ぬいぐるみたちは、つられたように引きつった微笑を浮かべてくれた。
(怖がられてる……?)
千景は不安になった。
でもここまできて後には引けない。今更何も見なかったようにこの場を立ち去れるはずもないのだ。ここに用があって来ているのだし。
「あの~、」
固まっているぬいぐるみの一つに手を伸ばした。すると、ぬいぐるみはビクッと体を震わせ、白目をむいて失神した。
「うっ……ううううううわぁぁぁぁっ!」
それが合図でもあったかのように、失神していないぬいぐるみが大声を張り上げる。千景が慌ててその口をふさいだ。騒がれては困るのだ。だってここは『立ち入り禁止』区域なのだから。しかも、早い時間とはいえ夜。悲鳴などあげられたら、近所の人が怪しがって警察に通報しかねない。もしそんな事になったら……千景は不法侵入で捕まる自分の姿を想像し、慌てて首を振った。
「お願い、大声をあげないで。ね?」
口をふさいだまま、お願いしてみる。と、ぬいぐるみは細かく首を縦に振り、千景を見上げて涙ぐんでいた。
「驚かせてごめんね。なんだか困ってるみたいだったからつい声掛けちゃったのよ」
自分でも反省している。彼ら(?)はきっと声を掛けられたくなかったのだ。ぬいぐるみにはぬいぐるみの生活というものがあり、そこに人間が介入する事はきっと禁じられているのだろう、などと勝手に考え、納得していた。
「おっ、おっ、おまっ、」
しどろもどろになりながら、口を開く。
「お前はなんやねんっ?」
ライが小声で、しかしながら偉そうに千景を指して訊ねる。が、足はカクカクと震えているようだった。
「私は神楽千景。あなたは?」
「へっ?」
自己紹介を求められるとは思っていなかったライは、戸惑った。戸惑い、考え、他に言葉が思いつかなかったので、仕方なく自分の名を名乗った。
「……わしはライ。んでそっちに転がっとんのがチャオや」
「ライと、チャオね」
指差し確認しながら、千景。
「って、んなこたどーでもいいねん! ここでなにしとんのや、お前っ」
「あ、ん~……探しもの」
「探しものぉ? ここは『立ち入り禁止』の場所やで? 勝手に入ってきていいと思とんのかいっ」
段々と落ち着きを取り戻し、本来の調子になる。見たところ相手はまだ小娘。怯えて震えていた自分が、段々バカらしく思えてきたのだった。
「ごめんなさい。入っちゃ駄目だって事は知ってたんだけど、どうしても探さなくちゃいけないものがあるの」
しゅん、とする千景。
ライはその時、見つからないものを探し続ける辛さを分かち合った戦友のように千景を見てしまった。つまり、同情したのだ。
「まぁ、な。世の中便利になったとはいえ、探しものを見つけるという作業は非常に原始的で難しいこっちゃ。それが見つからんときの厳しさっちゅーもんは、わしもよぅ知っとる。今日の所は見逃したるわ」
別に自分の土地でもないくせに。
「ありがとう、ライ」
ニコリ、千景が笑った。
「う~ん……、」
気を失っていたチャオが意識を取り戻す。と、千景の姿を見、またしても固まってしまう。半開きに開いた口からは、いつ悲鳴が飛び出すとも限らない状況だ。
「チャオ、帰るで」
むんず、とチャオの首を捕まえると、ライはズルズルとチャオを引きずりながら建物の方へと向かっていった。千景はその様子をポカンと眺めていたが、少し間を置いて二人のあとを追い、建物の中へと入っていった。
そのビルの中は真っ暗で、差し込む月の明かりだけが頼りである。ズルズルという音を追いかけ奥へと進んだ千景は、ある部屋から明かりが差し込んでいるのを見つけた。二人はその部屋の中へと入っていくところだった。
「ここに住んでるのかな?」
そう、ひとりごちると、そーっとその部屋に近付いたのだった。
「気配、なしです」
小さな虫眼鏡片手に、二人は草の根を分け、探し物をしていた。
「本当に存在するんかいな?」
早くもライは探すことに飽き始めていた。そんなライをチャオがどやしつける。
「何言ってるんですかっ。早く見つけないとまた依頼主から督促が来てしまいますっ」
「そんなこと言うたかて、もしかして存在しないもん探してるんやったらわしら、こないことしてても意味ないやないか」
「ライ、かつてこの国は『黄金の国』と呼ばれていたのですっ。黄金の国、ジパング。これがどういうことかおわかりかっ?」
「わからん」
「つぅーまぁーりっ、黄金がザックザックあったということですっ。花や草、川を流れる水でさえ金色に輝いていたというではありませんかっ。と、いうことは黄金のネズミなるものも存在するに違いない! しかも珍しい生き物なのではなく、どこにでもいる当たり前の生物に違いないのですっ!」
ぐぉぉぉっ、と拳を突き上げる。
「ほんまかいな」
ライは呆れ顔だ。
二人は依頼者から『黄金のネズミを捕まえて欲しい』という仕事を受けていた。そのネズミは、いまだかつて見たことのない美しい輝きを放っているのだと依頼者は言った。なんとしてでもコレクションに加えたいのだと、気前よく前金まで払っていったのだ。
「もうちょっと範囲を広げなあかんかなぁ」
見渡す。
二人は、もう三日間もビルのあるこの柵の中、ススキを掻き分けて金のネズミを捜していた。なるべく人間のいる世界には足を踏み入れたくない、というのがライの考えだから柵の外には出なかったのである。
「そうですよ! 外へ出ましょうライ!」
チャオは乗り気だ。人間が好きだ、とはいえないが、興味はある。接触しない程度に近づくのは問題ないと思っていた。
「しかしなチャオ、お前忘れたわけじゃないやろ? あの時のことを」
「……それは…、」
人間に関わるといいことがない。
ここ何十年かで学んだ結果である。
人間とは、身勝手で臆病、そして強暴だ。自分たちの種を絶対のものと信じて疑わず、都合が悪いものはすべて排除する。
「あん時みたいに追っかけられたらたまらんわい」
昔……もう十年近く前だ。その時もある依頼を受けて、この地へ出向いていた。このビルを入り口にし、あっちとこっちを行き来していたのだ。あれはそう、確かチャオが入ったばかりの頃で、彼にとって初めての仕事だったのではないだろうか?
「あの時は本当に、どうなることかと、」
思い出しただけでもブルルッ、と体が震えてくる。まぁ、元を正せば異世界珍しさにウロウロしていたチャオが悪いのだが……。
「あん時みたいなことにならんように重々気を付けなあかんで」
とは言ったものの、たった二人でこの敷地の中だけをくまなく捜していても、はっきり言って金色のネズミが見つかるとは思えない。やはり柵の向こうへ手を広げなければ埒があかないのかもしれなかった。
「……あかん。考えたくないわ」
ライが頭を抱える。
「その悩みは海より深い?」
頭上より声がする。それは聞き慣れたチャオの声ではなかった。ゆっくりと、まるでカラクリ人形のように振り返るライ。と、その場に固まって冷や汗を垂らしているチャオの姿が目に入った。その向こうにはにょろりと伸びた、足。
足?
カクカクとした妙な動きのまま、顎を上に向ける。そこに見えたものは……、
そこに見えたものはぬいぐるみだ。
千景はそう思った。
でも、どうやらそのぬいぐるみは動いている。そして、喋っている。その会話になんとなく耳を傾けていた。ぬいぐるみたちはどうも困っているらしい。捜し物が見つからないようなのだ。
(あたしと一緒……)
意味もなく親近感を覚える。
そっと近付いてみた。ぬいぐるみたちは猫の姿に似ている。が、二足歩行だ。服も着ている。手には小さな懐中電灯を持ち、ブツブツと文句を言っていた。黙っているつもりだったのだが、つい、言葉を発してしまったのだ。
「こんばんは」
とりあえず挨拶してみた。が、ぬいぐるみたちは世にも恐ろしいモノを目の当たりにしたかのようなびっくり顔で、固まっている。
千景は辛抱強く反応を待った。
しかし、返事はない。
仕方がないので、ニコッと笑って見た。
ぬいぐるみたちは、つられたように引きつった微笑を浮かべてくれた。
(怖がられてる……?)
千景は不安になった。
でもここまできて後には引けない。今更何も見なかったようにこの場を立ち去れるはずもないのだ。ここに用があって来ているのだし。
「あの~、」
固まっているぬいぐるみの一つに手を伸ばした。すると、ぬいぐるみはビクッと体を震わせ、白目をむいて失神した。
「うっ……ううううううわぁぁぁぁっ!」
それが合図でもあったかのように、失神していないぬいぐるみが大声を張り上げる。千景が慌ててその口をふさいだ。騒がれては困るのだ。だってここは『立ち入り禁止』区域なのだから。しかも、早い時間とはいえ夜。悲鳴などあげられたら、近所の人が怪しがって警察に通報しかねない。もしそんな事になったら……千景は不法侵入で捕まる自分の姿を想像し、慌てて首を振った。
「お願い、大声をあげないで。ね?」
口をふさいだまま、お願いしてみる。と、ぬいぐるみは細かく首を縦に振り、千景を見上げて涙ぐんでいた。
「驚かせてごめんね。なんだか困ってるみたいだったからつい声掛けちゃったのよ」
自分でも反省している。彼ら(?)はきっと声を掛けられたくなかったのだ。ぬいぐるみにはぬいぐるみの生活というものがあり、そこに人間が介入する事はきっと禁じられているのだろう、などと勝手に考え、納得していた。
「おっ、おっ、おまっ、」
しどろもどろになりながら、口を開く。
「お前はなんやねんっ?」
ライが小声で、しかしながら偉そうに千景を指して訊ねる。が、足はカクカクと震えているようだった。
「私は神楽千景。あなたは?」
「へっ?」
自己紹介を求められるとは思っていなかったライは、戸惑った。戸惑い、考え、他に言葉が思いつかなかったので、仕方なく自分の名を名乗った。
「……わしはライ。んでそっちに転がっとんのがチャオや」
「ライと、チャオね」
指差し確認しながら、千景。
「って、んなこたどーでもいいねん! ここでなにしとんのや、お前っ」
「あ、ん~……探しもの」
「探しものぉ? ここは『立ち入り禁止』の場所やで? 勝手に入ってきていいと思とんのかいっ」
段々と落ち着きを取り戻し、本来の調子になる。見たところ相手はまだ小娘。怯えて震えていた自分が、段々バカらしく思えてきたのだった。
「ごめんなさい。入っちゃ駄目だって事は知ってたんだけど、どうしても探さなくちゃいけないものがあるの」
しゅん、とする千景。
ライはその時、見つからないものを探し続ける辛さを分かち合った戦友のように千景を見てしまった。つまり、同情したのだ。
「まぁ、な。世の中便利になったとはいえ、探しものを見つけるという作業は非常に原始的で難しいこっちゃ。それが見つからんときの厳しさっちゅーもんは、わしもよぅ知っとる。今日の所は見逃したるわ」
別に自分の土地でもないくせに。
「ありがとう、ライ」
ニコリ、千景が笑った。
「う~ん……、」
気を失っていたチャオが意識を取り戻す。と、千景の姿を見、またしても固まってしまう。半開きに開いた口からは、いつ悲鳴が飛び出すとも限らない状況だ。
「チャオ、帰るで」
むんず、とチャオの首を捕まえると、ライはズルズルとチャオを引きずりながら建物の方へと向かっていった。千景はその様子をポカンと眺めていたが、少し間を置いて二人のあとを追い、建物の中へと入っていった。
そのビルの中は真っ暗で、差し込む月の明かりだけが頼りである。ズルズルという音を追いかけ奥へと進んだ千景は、ある部屋から明かりが差し込んでいるのを見つけた。二人はその部屋の中へと入っていくところだった。
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