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花咲く切り飴、ころころ。
7~終わる時とそのワズカ前
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「え、それってどうなったんですか?」
三枝が目を丸くして問うと、紗川は「結論から言えば、助かった」と答えた。
今目の前に紗川がいるのだから、案じているのはベビーカーの方だった。
「そっか。赤ちゃんも無事だったんですね。よかった、車が来なくて」
「全くだ」
「先生もけがはしてなかったんですよね」
「どうやら、無意識のうちに受け身をとっていたらしい」
「そのころから筋トレとかしてたんですか。やっぱり日ごろのトレーニングって大事ですね」
「筋トレ? 何のことだ」
紗川が毎晩のように走り込みや筋肉トレーニングをしているのは公然の秘密だ。
気付かれていないと思っているのか、気付かれていないことにしようとしているのかは分からないが、触れてはいけないらしい。
(もういい加減に認めればいいのになあ……)
ひっそりと思いながらも、日々の鍛錬の結果、高校生の時の紗川に怪我がなかったのだとしたら何よりだ。
「んーっと。車がきてたら赤ちゃんを助ける前に先生がぺしゃんこになってますねって言いたかったんです」
「車は僕のすぐ後ろを走っていた。コートがタイヤに擦れたからな」
「え、そうなんですか?」
本当に間一髪だったようだ。
「ああ、下の交差点の直前で止めることができた」
「危ないっ!」
「大丈夫かっ?!」
気が付くと、紗川のすぐ後ろをスピードを上げたトラックが通り抜けていた。
――バサッ
背中で布がすれる音がし、風圧が首筋にかかった。
前髪が風にさらわれ、揺れ、眼鏡のレンズに落ちた。
その段になってようやく、紗川は自分が何をしたのかようやく気付いた。
紗川はベビーカーをだきかかえるようにアスファルトに尻もちをついていた。
「…………っ」
体勢を整えようとして手を床につくと、でこぼこしている。下を見れば黄色い注意ブロックの凹凸がそこにあった。
自分が完全に車道に落ちていることに気づき、背筋に悪寒が走る。
ふとコートの裾を見ると、黒ずんだ筋がついていた。
先ほどの音は、コートがトラックのタイヤに擦れた音だったのかもしれない。
車の進行方向に視線を投げても、該当する車両は見当たらなかった。
「だいじょうぶか、あんた」
聞き慣れない声に、紗川は顔を上げた。
(なんだ?)
周りを見知らぬ人々が囲んでいる。
さらに離れたところからも近づいてくる人がいたり、遠巻きに見ている人も多かった。
「びっくりした、よく止められたわねえ」
「怪我はないかい?」
「よくまにあったねえ」
「立派だけど無理したらダメよ」
彼らは口々に好き勝手なことを言いあっている。
「平気です」
紗川はそういいながら、ベビーカーの中を覗き込んだ。
子供はそこに座っていた。きょとんとした顔で紗川を見ている。
「よかった、怪我してないか?」
ベルトをしていたお蔭だろうか、見たところ怪我はしていないようだ。
だが、紗川が声をかけた瞬間に子供が声を上げて泣き出した。
「え……おい……」
慌てる紗川に近くにいた中年女性が笑って肩を叩く。
「大丈夫よ、赤ちゃんが泣くのは『大丈夫』って証拠なんだから」
そういいながらベビーカーから子供を抱き上げる。
紗川はその一連の動きを見守って、ようやく安堵の溜息をついた。
「しかし、あんた、たいしたもんだね」
コンビニの制服を着た初老の男が感心した顔で頷いた。
すぐ近くの店長のようだ。紗川が起き上がるのに手を貸してくれた。
「こっちはびっくりして見てるのが精一杯だったよ」
スーパーの袋をぶら下げた女性が店長に頷く。
「ホント、ベビーカーと一緒にでんぐり返ししたときはびっくりしたわあ」
周りの人々も頷きながら、凄かったねえ、よく怪我しなくてすんだなあなどと感心している。
(かっこわりい……)
無我夢中でその時にはどうしようもなかったのだが、ベビーカーを抱きとめて、そのまま転がってしまったらしい。
ベビーカーは紗川が思っていたよりもはるかに重く、とても抱きとめきれるようなものではなかった。
坂を下ってスピードが増したベビーカーは、受け止める側に本来の重さ以上の衝撃を与えた。往来の激しい車道に一緒に転がらなかっただけで幸いだったと思うしかない。
とは言え、あとから考えれば、回転したから衝撃が緩んだのであって、真っ直ぐ受け止めるだけだったらベビーカーにも大きな衝撃が伝わったに違いない。ともに転がったのは結果的に良かったのだろう。
だが、その時の紗川には失敗したように感じていた。
「すみませんっ! ありがとうございました」
周囲の興奮が落ち着き始めた頃、ようやく母親が現れた。
「ちょっと、気をつけないとだめでしょう」
「危ないなあ」
注意や叱咤する言葉に母親は何度も頭を下げる。
そして紗川の前に来て深々と頭を下げた。
「本当にありがとうございました。そちらはお怪我はありませんか?」
「いえ、大丈夫です」
一応病院へ、と、言う声もあったが、断り、後日改めて礼をすると言った母親にも首を振り、紗川は早々に立ち去った。
照れくさかったというよりも、かっこ悪くて嫌だったのだ。
「今から思うと若かったなと思うよ」
その紗川の言葉に苦笑して、三枝は飴を一つ口に放り込んだ。みかんの味がする。
「先生も一つどうですか?」
「ああ、もらう」
手のひらの上に切り飴コロリと乗せながら、三枝は「でも……」と、疑問を口にした。
「でも、それだと殺人未遂かどうかって分からないんじゃないですか? 本当に事故だったのかもしれないですよね」
紗川は母親がベビーカーから手を離したと言っていたが、それはあくまでも紗川の主観であって事実かどうかの証明はできない。想像するに、紗川のいた場所からその母親の手元がそこまではっきりと見えたかどうかは怪しいところだ。車の往来の激しい道路を挟んでいるようだから、道の反対側にいたならば、それなりに距離はあるはずだ。
「ああ、だから、あのままだったら事故の扱いだっただろう」
三枝は首をかしげた。
「そのあとで、何かあったんですか?」
「僕とその母親の間には何もない。会う事もなかった」
「じゃあ、なんで……」
「僕が彼女を次に見たのは春になってからだ。それも直接会ったのではない。ニュース番組で見たんだ」
「ニュース?」
「ああ」
紗川は溜息をつくように頷いた。
「自分の子供を殺した犯人としてね」
息を呑む。
「それってどういう……」
「さあ。どういうことなんだろうな。僕にもよく分からない。あの頃は忙しかったからな」
「忙しかったって……」
自分の知ってる人だったら気になるだろうと、言外に非難する。
だが、紗川はそんなことは気にしていないようだった。
「ただ、育児ノイローゼだったのではないか、環境が悪かったなどの無責任な発言を何度も聞いた」
そう言われて三枝は溜息をついた。紗川は犯人の動機にはあまり興味を示さない。それは今に始まったことではなかったわけだ。
「だが、そのあとで、例のベビーカーの話が持ち上がった。どうやらよく見ていた人がいたらしい。彼女がわざとベビーカーを手放したようだった、むしろ手で押してスピードがつくようにしていたと言う人まで出てきた」
「え……先生が助けた時は何にも言ってなかったのに、後から言ってきたんですか?」
「ああ。そうらしい。なかなか素晴らしいだろう?」
「……なんか……それって、けっこうヤですね」
「なかなか素直な意見だ」
紗川は笑った。
「警察はもちろん調べたんですよね」
「もちろんだ。その結果、ベビーカーの事故は殺人未遂事件ということになったらしい」
つまり、紗川が助けようが助けまいが、子供は死んでいたことになる。
いや、もしかしたら、紗川が助けない方が、事故ということになって少しはマシだったのかもしれない。
そう思ってから三枝は首を振った。
そんなことはないだろう。
車との事故なら、ドライバーがいる。
殺したくもない子供を殺す殺人犯に祭り上げられてしまうのだ。
それはそれで被害者が増えることになる。
三枝は紗川を見上げた。
そこにあるのは何でもない、いつもと少しも変わりない表情だ。
何か心に思うことがあって隠しているようにも見えない。
(もう、とっくに通り越しちゃったことなんだな)
事件当時の紗川が何を思ったのか、今の三枝には分からない。
「三枝君、ついでに他にも買っていくか。茶請けに甘いものがあるほうが翠さんが喜ぶだろうからな」
「え? あ、そうですね」
慌てて頷く。
これでもう、この話は終わりだ。
「えーっと、それだったら羊羹にしませんか? 緑茶のいいヤツがあるんです」
「そうなのか?」
「あ、やっぱり気づいてなかったんですね。先週置いておいたのに」
「緑茶は片付けが面倒だ」
コーヒーを手で落とすよりははるかに楽だと思う。
「で、羊羹だけでいいのか?」
「ついでにドーナツも買ってくれたら、俺が嬉しいです」
「そうか」
「あ、買ってくれるんですか?」
「一応聞いてみただけだ」
「……希望をもっちゃうから聞かないでくださいよ」
がっかりしているのをおもしろそうに見ている。
吐く息が白い。
冬の風が頬をかすめて流れていった。
三枝が目を丸くして問うと、紗川は「結論から言えば、助かった」と答えた。
今目の前に紗川がいるのだから、案じているのはベビーカーの方だった。
「そっか。赤ちゃんも無事だったんですね。よかった、車が来なくて」
「全くだ」
「先生もけがはしてなかったんですよね」
「どうやら、無意識のうちに受け身をとっていたらしい」
「そのころから筋トレとかしてたんですか。やっぱり日ごろのトレーニングって大事ですね」
「筋トレ? 何のことだ」
紗川が毎晩のように走り込みや筋肉トレーニングをしているのは公然の秘密だ。
気付かれていないと思っているのか、気付かれていないことにしようとしているのかは分からないが、触れてはいけないらしい。
(もういい加減に認めればいいのになあ……)
ひっそりと思いながらも、日々の鍛錬の結果、高校生の時の紗川に怪我がなかったのだとしたら何よりだ。
「んーっと。車がきてたら赤ちゃんを助ける前に先生がぺしゃんこになってますねって言いたかったんです」
「車は僕のすぐ後ろを走っていた。コートがタイヤに擦れたからな」
「え、そうなんですか?」
本当に間一髪だったようだ。
「ああ、下の交差点の直前で止めることができた」
「危ないっ!」
「大丈夫かっ?!」
気が付くと、紗川のすぐ後ろをスピードを上げたトラックが通り抜けていた。
――バサッ
背中で布がすれる音がし、風圧が首筋にかかった。
前髪が風にさらわれ、揺れ、眼鏡のレンズに落ちた。
その段になってようやく、紗川は自分が何をしたのかようやく気付いた。
紗川はベビーカーをだきかかえるようにアスファルトに尻もちをついていた。
「…………っ」
体勢を整えようとして手を床につくと、でこぼこしている。下を見れば黄色い注意ブロックの凹凸がそこにあった。
自分が完全に車道に落ちていることに気づき、背筋に悪寒が走る。
ふとコートの裾を見ると、黒ずんだ筋がついていた。
先ほどの音は、コートがトラックのタイヤに擦れた音だったのかもしれない。
車の進行方向に視線を投げても、該当する車両は見当たらなかった。
「だいじょうぶか、あんた」
聞き慣れない声に、紗川は顔を上げた。
(なんだ?)
周りを見知らぬ人々が囲んでいる。
さらに離れたところからも近づいてくる人がいたり、遠巻きに見ている人も多かった。
「びっくりした、よく止められたわねえ」
「怪我はないかい?」
「よくまにあったねえ」
「立派だけど無理したらダメよ」
彼らは口々に好き勝手なことを言いあっている。
「平気です」
紗川はそういいながら、ベビーカーの中を覗き込んだ。
子供はそこに座っていた。きょとんとした顔で紗川を見ている。
「よかった、怪我してないか?」
ベルトをしていたお蔭だろうか、見たところ怪我はしていないようだ。
だが、紗川が声をかけた瞬間に子供が声を上げて泣き出した。
「え……おい……」
慌てる紗川に近くにいた中年女性が笑って肩を叩く。
「大丈夫よ、赤ちゃんが泣くのは『大丈夫』って証拠なんだから」
そういいながらベビーカーから子供を抱き上げる。
紗川はその一連の動きを見守って、ようやく安堵の溜息をついた。
「しかし、あんた、たいしたもんだね」
コンビニの制服を着た初老の男が感心した顔で頷いた。
すぐ近くの店長のようだ。紗川が起き上がるのに手を貸してくれた。
「こっちはびっくりして見てるのが精一杯だったよ」
スーパーの袋をぶら下げた女性が店長に頷く。
「ホント、ベビーカーと一緒にでんぐり返ししたときはびっくりしたわあ」
周りの人々も頷きながら、凄かったねえ、よく怪我しなくてすんだなあなどと感心している。
(かっこわりい……)
無我夢中でその時にはどうしようもなかったのだが、ベビーカーを抱きとめて、そのまま転がってしまったらしい。
ベビーカーは紗川が思っていたよりもはるかに重く、とても抱きとめきれるようなものではなかった。
坂を下ってスピードが増したベビーカーは、受け止める側に本来の重さ以上の衝撃を与えた。往来の激しい車道に一緒に転がらなかっただけで幸いだったと思うしかない。
とは言え、あとから考えれば、回転したから衝撃が緩んだのであって、真っ直ぐ受け止めるだけだったらベビーカーにも大きな衝撃が伝わったに違いない。ともに転がったのは結果的に良かったのだろう。
だが、その時の紗川には失敗したように感じていた。
「すみませんっ! ありがとうございました」
周囲の興奮が落ち着き始めた頃、ようやく母親が現れた。
「ちょっと、気をつけないとだめでしょう」
「危ないなあ」
注意や叱咤する言葉に母親は何度も頭を下げる。
そして紗川の前に来て深々と頭を下げた。
「本当にありがとうございました。そちらはお怪我はありませんか?」
「いえ、大丈夫です」
一応病院へ、と、言う声もあったが、断り、後日改めて礼をすると言った母親にも首を振り、紗川は早々に立ち去った。
照れくさかったというよりも、かっこ悪くて嫌だったのだ。
「今から思うと若かったなと思うよ」
その紗川の言葉に苦笑して、三枝は飴を一つ口に放り込んだ。みかんの味がする。
「先生も一つどうですか?」
「ああ、もらう」
手のひらの上に切り飴コロリと乗せながら、三枝は「でも……」と、疑問を口にした。
「でも、それだと殺人未遂かどうかって分からないんじゃないですか? 本当に事故だったのかもしれないですよね」
紗川は母親がベビーカーから手を離したと言っていたが、それはあくまでも紗川の主観であって事実かどうかの証明はできない。想像するに、紗川のいた場所からその母親の手元がそこまではっきりと見えたかどうかは怪しいところだ。車の往来の激しい道路を挟んでいるようだから、道の反対側にいたならば、それなりに距離はあるはずだ。
「ああ、だから、あのままだったら事故の扱いだっただろう」
三枝は首をかしげた。
「そのあとで、何かあったんですか?」
「僕とその母親の間には何もない。会う事もなかった」
「じゃあ、なんで……」
「僕が彼女を次に見たのは春になってからだ。それも直接会ったのではない。ニュース番組で見たんだ」
「ニュース?」
「ああ」
紗川は溜息をつくように頷いた。
「自分の子供を殺した犯人としてね」
息を呑む。
「それってどういう……」
「さあ。どういうことなんだろうな。僕にもよく分からない。あの頃は忙しかったからな」
「忙しかったって……」
自分の知ってる人だったら気になるだろうと、言外に非難する。
だが、紗川はそんなことは気にしていないようだった。
「ただ、育児ノイローゼだったのではないか、環境が悪かったなどの無責任な発言を何度も聞いた」
そう言われて三枝は溜息をついた。紗川は犯人の動機にはあまり興味を示さない。それは今に始まったことではなかったわけだ。
「だが、そのあとで、例のベビーカーの話が持ち上がった。どうやらよく見ていた人がいたらしい。彼女がわざとベビーカーを手放したようだった、むしろ手で押してスピードがつくようにしていたと言う人まで出てきた」
「え……先生が助けた時は何にも言ってなかったのに、後から言ってきたんですか?」
「ああ。そうらしい。なかなか素晴らしいだろう?」
「……なんか……それって、けっこうヤですね」
「なかなか素直な意見だ」
紗川は笑った。
「警察はもちろん調べたんですよね」
「もちろんだ。その結果、ベビーカーの事故は殺人未遂事件ということになったらしい」
つまり、紗川が助けようが助けまいが、子供は死んでいたことになる。
いや、もしかしたら、紗川が助けない方が、事故ということになって少しはマシだったのかもしれない。
そう思ってから三枝は首を振った。
そんなことはないだろう。
車との事故なら、ドライバーがいる。
殺したくもない子供を殺す殺人犯に祭り上げられてしまうのだ。
それはそれで被害者が増えることになる。
三枝は紗川を見上げた。
そこにあるのは何でもない、いつもと少しも変わりない表情だ。
何か心に思うことがあって隠しているようにも見えない。
(もう、とっくに通り越しちゃったことなんだな)
事件当時の紗川が何を思ったのか、今の三枝には分からない。
「三枝君、ついでに他にも買っていくか。茶請けに甘いものがあるほうが翠さんが喜ぶだろうからな」
「え? あ、そうですね」
慌てて頷く。
これでもう、この話は終わりだ。
「えーっと、それだったら羊羹にしませんか? 緑茶のいいヤツがあるんです」
「そうなのか?」
「あ、やっぱり気づいてなかったんですね。先週置いておいたのに」
「緑茶は片付けが面倒だ」
コーヒーを手で落とすよりははるかに楽だと思う。
「で、羊羹だけでいいのか?」
「ついでにドーナツも買ってくれたら、俺が嬉しいです」
「そうか」
「あ、買ってくれるんですか?」
「一応聞いてみただけだ」
「……希望をもっちゃうから聞かないでくださいよ」
がっかりしているのをおもしろそうに見ている。
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冬の風が頬をかすめて流れていった。
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