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本日のおやつは、さつま芋パイです。
夕食はいまだお預けです 2
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ちょうど車の流れが途切れて二台は同時に駐車場を出ることができた。
俊夫の家には程なくして着いた。
一階の一部が店舗になっており、入り口前に二台分の駐車スペースがある。
車窓から俊夫に指示され、紗川のシルビアは店舗の駐車スペースに止まった。ミニクーパーが駐まったのは自宅スペース側だ。
自宅側には二台駐車できる様になっているが、ミニクーパーの隣は空いていた。
(あれ? 奥さん、出かけてるのかな?)
内心、首を傾げながら紗川についていく。
俊夫は先に玄関にいて二人を待っていた。
「奥様はお出かけですか? 車が一台ないようですが……」
三枝と同様の疑問を紗川も持っていたらしい。
紗川の問いに俊夫は「ああ、アレは……」とミニクーパーを指した。
「実は妻の車でしてね。私が普段乗っているのは1年点検に出しているところです。ああ、トヨタ2000GTはガレージにありますから安心してください」
「ありがとうございます」
「車、わたしが使ってしまいましたからね。妻は家にいるはずですよ」
変だなあと呟きながら俊夫は呼び鈴を鳴らしていた。
あたりは薄暗く、玄関に明かりがともっている。
どうやら、室内はカーテンが引いてあるようだが、外から見てわかる限りでは、どの部屋にも明かりがともっている様子がなかった。
チャイムが一度、更にふた呼吸ほど置いてもう一度鳴らされる。
家の中で響いている様子がうかがえたが、誰も出る気配はない。
「おかしいな……」
俊夫がドアノブをまわすとすんなりと開いた。
「在宅中は鍵をかけないのですか?」
紗川の問いかけに俊夫は眉をしかめた。
ストーカーを案じているのに鍵をかけていないのはおかしい。
三枝は胸騒ぎを覚えてすぐ隣の紗川を見上げた。
その横顔は、鋭くドアの向こうをにらんでいるようだった。
「鍵をかけないなんてとんでもない。在宅中でも鍵をかけているんです。チェーンだってかけますよ」
「鍵のかけ忘れということは?」
「雨の日に徒歩で出かけるとは思えません。妻は靴が濡れるのを嫌がるんです。家にいるはずです」
俊夫は「帰ったぞー」と呼びかけてから紗川たちを招き入れた。
家の中は暗く、静かだった。
岸邸は玄関の明かりもついておらず、また、室内も暗いままの様だ。
「奥様は留守にしていらっしゃるようですね」
「いや、そんなはずはないんですが……おーい」
俊夫は呼びかけながら明かりをつける。
スッキリと片付いた玄関には、妻の美子の趣味なのか、天使とバラのモチーフの置物や犬の小物が飾ってあった。
ひんやりとした廊下を縦に並んで歩く。廊下は足元だけをうっすらと照らすフットライトが所々に設置されていた。
このフットライトも売り物なのかもしれない。ランタンを持った仔犬や天使の置物は可愛らしい。
先頭に立っていた俊夫がリビングのドアを開けようとすると、唐突に着信音が流れた。
「あ、ちょっと申し訳ない、職場から電話が」
俊夫が手でドアを示す。どうやらリビングで待っていてほしいという意味のようだ。「はい、はい」と答えながら、玄関の方にいってしまった。
紗川がリビングのドアを開けた。
明かりはついていないらしい。紗川がリビング側の壁に触れ、スイッチを探している。カチリ、と言う音ともに前方が明るくなった。
「――……」
室内に向けて前に進んだかと思いきや、紗川が立ち止まった。すぐ後ろにいた三枝は勢いよくその背中に鼻をぶつけるはめになった。
「いたたた……」
鼻を抑えながら苦情を訴えようとしたが、紗川の気配が険しいのに気づいた。
「どうし……」
「――やられたっ」
俊夫の家には程なくして着いた。
一階の一部が店舗になっており、入り口前に二台分の駐車スペースがある。
車窓から俊夫に指示され、紗川のシルビアは店舗の駐車スペースに止まった。ミニクーパーが駐まったのは自宅スペース側だ。
自宅側には二台駐車できる様になっているが、ミニクーパーの隣は空いていた。
(あれ? 奥さん、出かけてるのかな?)
内心、首を傾げながら紗川についていく。
俊夫は先に玄関にいて二人を待っていた。
「奥様はお出かけですか? 車が一台ないようですが……」
三枝と同様の疑問を紗川も持っていたらしい。
紗川の問いに俊夫は「ああ、アレは……」とミニクーパーを指した。
「実は妻の車でしてね。私が普段乗っているのは1年点検に出しているところです。ああ、トヨタ2000GTはガレージにありますから安心してください」
「ありがとうございます」
「車、わたしが使ってしまいましたからね。妻は家にいるはずですよ」
変だなあと呟きながら俊夫は呼び鈴を鳴らしていた。
あたりは薄暗く、玄関に明かりがともっている。
どうやら、室内はカーテンが引いてあるようだが、外から見てわかる限りでは、どの部屋にも明かりがともっている様子がなかった。
チャイムが一度、更にふた呼吸ほど置いてもう一度鳴らされる。
家の中で響いている様子がうかがえたが、誰も出る気配はない。
「おかしいな……」
俊夫がドアノブをまわすとすんなりと開いた。
「在宅中は鍵をかけないのですか?」
紗川の問いかけに俊夫は眉をしかめた。
ストーカーを案じているのに鍵をかけていないのはおかしい。
三枝は胸騒ぎを覚えてすぐ隣の紗川を見上げた。
その横顔は、鋭くドアの向こうをにらんでいるようだった。
「鍵をかけないなんてとんでもない。在宅中でも鍵をかけているんです。チェーンだってかけますよ」
「鍵のかけ忘れということは?」
「雨の日に徒歩で出かけるとは思えません。妻は靴が濡れるのを嫌がるんです。家にいるはずです」
俊夫は「帰ったぞー」と呼びかけてから紗川たちを招き入れた。
家の中は暗く、静かだった。
岸邸は玄関の明かりもついておらず、また、室内も暗いままの様だ。
「奥様は留守にしていらっしゃるようですね」
「いや、そんなはずはないんですが……おーい」
俊夫は呼びかけながら明かりをつける。
スッキリと片付いた玄関には、妻の美子の趣味なのか、天使とバラのモチーフの置物や犬の小物が飾ってあった。
ひんやりとした廊下を縦に並んで歩く。廊下は足元だけをうっすらと照らすフットライトが所々に設置されていた。
このフットライトも売り物なのかもしれない。ランタンを持った仔犬や天使の置物は可愛らしい。
先頭に立っていた俊夫がリビングのドアを開けようとすると、唐突に着信音が流れた。
「あ、ちょっと申し訳ない、職場から電話が」
俊夫が手でドアを示す。どうやらリビングで待っていてほしいという意味のようだ。「はい、はい」と答えながら、玄関の方にいってしまった。
紗川がリビングのドアを開けた。
明かりはついていないらしい。紗川がリビング側の壁に触れ、スイッチを探している。カチリ、と言う音ともに前方が明るくなった。
「――……」
室内に向けて前に進んだかと思いきや、紗川が立ち止まった。すぐ後ろにいた三枝は勢いよくその背中に鼻をぶつけるはめになった。
「いたたた……」
鼻を抑えながら苦情を訴えようとしたが、紗川の気配が険しいのに気づいた。
「どうし……」
「――やられたっ」
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