探偵と助手の日常<短中編集>

藤島紫

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本日のおやつは、さつま芋パイです。

ラテにはショット追加がおすすめです 2

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「君が言いそうなことは分かっている。だが、エスプレッソはコーヒーを濃縮させていると考えれば、『騙されている』とは思わないだろう?」
「まあ……濃縮なら」
「この店の場合、アメリカーノはエスプレッソの代金とイコールだ。流石にトールサイズはワンショットではないからエスプレッソダブルと同じになっているが」
「……え、そうしたら、カップのコストはどうしてるんですか、店は。エスプレッソって80ccなんだからこんな大きいカップでなくてもいいんですよね。たとえダブルだったとしても、一番小さいショートサイズのカップで間に合うはずじゃないですか。それを、大きいカップにするんですか? そっちの方が高いはずだから、コスト的に見合わないじゃないですか。お湯だって沸かすのにコストがかかるんだから、ただじゃないんですよ」

 眠気も手伝ってか、心の中で思っていることがそのまま口に出てしまう。
 俊夫と合流したときのコンビニエンスストアでは黙っていられた気がかりが、すべて言葉になってしまった。
 商売人の家の息子としては、どうしても気になってしまうのだ。
 まくし立ててしまったと気づいた時には、紗川はクツクツと笑っていた。

「本当に君は面白いな、三枝君。時々……君の商魂の逞しさを尊敬した方がいいのだろうかと悩ましく思うほどだ」
「ナニ言ってるんですか、三枝製菓店は地元密着型の良心的な老舗の和菓子屋です。がめつい商売はしてません――って、じゃなくて」

 これ以上、コストにこだわったことを言うと、後々からかいのネタにされそうだ。
 眠くなると商売人になるとからかわれるなど、冗談ではない。

「濃縮ポーションを薄めるみたいな感覚って言うなら……分かりますけど。だったら、エスプレッソのお湯割りじゃなくて、最初から普通のドリップコーヒーを頼めばいいじゃないですか」
「エスプレッソが飲みたかったんだが、ドライブには向かないからな」
「それはなんとなくわかりますけど……」

 量が少ないことを考えれば、飲みにくいはずだ。

「だからこその、アメリカーノだ。アメリカーノはエスプレッソを軽やかに味わうことができる――と、ドリンクができたようだぞ」

 窓口にドリンクを両手に一つずつ持った店員がにっこりと微笑んでいる。
 紗川は窓を開けてそれを受け取った。
 ドリンクホルダーにそれぞれにショットを追加したラテとアメリカーノを差し込み、シルビアは道路に戻った。

(待ち時間、結構あったなあ……10分はたってないけど、5分は過ぎていた気がする)

 オープンしたばかりで、まだスタッフが不慣れのようだ。この様子では道路が渋滞してしまうのもうなずける。
 しかし、今は未明の時間帯だからだろう。来たときの渋滞がうそのように空いている。
 外を見ていると、見覚えのあるレストランがあった。

「さて。無事に犯人は逮捕されたわけだが、実際に走って欲しいという君のリクエストに応えることにしよう」
「お願いします」

 三枝は眠気を振り切るように答えた。
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