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17.いえない気持ち

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「無理だよ。だって修学旅行のときとか、どうするんだよ。二人ともいないんだぞ」
「わたしが行かないで面倒みれるから平気だよ」

 転校しちゃうんだから、コータと一緒に行くことはないんだ。
 でも、これは言いたくない。

「オレだってギンシロの面倒があるなら修学旅行サボったっていいよ。でもさ、やっぱり無理だ。ずっと二人で面倒みるなんて」
「なんで」
「餌はどうするんだよ。今、ギンシロが食ってるのは試供品だからいいけど、買うとなったら高いんだぞ」
「わたし、お年玉貯金してあるもん」
「ばか。オレが言ってるのは、ギンシロが死ぬまで面倒みれるのかってことだよ」
「それは……」

 面倒みるって言いたい。
 でも、ちょっと考えただけでも難しい気がした。
 今だけだったら確かに面倒もみれると思う。だけど、何年もずっと、二人だけで隠れて面倒をみるのはきっとできない。
 コータの言うとおり、いつまでもここを使えるとは限らないんだ。
 悲しい気持ちがどんどん膨れてきた。
 悲しい気持ちっておなかから沸くのかな。
 おなかから胸、のど、苦しさが上ってくる。

「なんで泣くんだよ」
「だって……」

 ミルクを飲んだギンシロはコータの服にくるまって幸せそうに眠ってる。
 今のギンシロが幸せそうだと思えば思うほど、苦しさが強くなってくる。
 ギンシロを、飼いたい。
 コータと一緒に面倒をみたい。
 確かに、ずっとは無理かもしれない。
 だけど、今だけでもいいから、二人で飼いたい。
 わがままな気持ちなのは分かってる。
 コータにこんなことを言ったらきっと呆れられる。
 言えないけど、でも、これが本当の気持ちだった。
 コータと一緒にいられる時間は、もう、あまりないから。
 だったらせめて、その短い、限られた間だけでも、二人で一緒に飼いたい。
 だけど、そのあと、わたしがいなくなった後のことを考えたら、絶対に口に出せなかった。
 気持ちがぐちゃぐちゃで、もう、どうしたらいいのかわからないよ。

「ミキちゃん……」

 幼稚園以来のなつかしい呼び方で、わたしを呼んだ。
 顔を上げるとすごく困った顔のコータがいた。

「オレだって自分で飼いたいよ。何度も考えた。だけど、どう考えても、このまま飼うことはできないって……分かるだろ」

 こくん、と、うなずく。
 コータはホッとした顔でわたしの頭を撫でた。
 なんだか幼稚園の頃に帰ったみたい。
 わたしが泣くたび、コータはこういう風にしてくれた。

「でも、元の場所に返すとか、また捨てるとか、そんなこともしたくない……それも分かるよな」

 また、こくん、と、うなずく。

「だからさ、コイツを飼ってくれる人を探すんだ」

 え?
 思ってもみなかったことを言われてる気がする。

「ギンシロ……あげちゃうの?」
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