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10.椿の花の下のコータ
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今日は加藤先生以外の先生が教えてくれる授業が音楽しかなかった。先生の顔を見るたびに、今朝の話を思い出して嫌な気分になった。
でも、誰かにこの話をする気にはなれない。
ハルカちゃんにも言いたくない。
だって、この話をしようと思ったら、転校することを打ち明けなくちゃいけない。
でも、学校で転校の話はしたくなかった。
「どうしたの。今日、なんだか暗いよ?」
ハルカちゃんが心配してくれたけど、わたしは首を振って一所懸命にこにこした。
そんなことないよって、何度も言って、帰りは逃げるようにして教室から出た。
今日は昨日よりも早く下駄箱に着いた。
靴を履いて外に出ると少し先にコータが見えた。
別に誰よりも先に帰ろうとしたわけじゃないけど、わたしより先に外に行った子がいるなんて気がつかなかった。
そういえば、昨日もコータは早かったんだっけ。
それで、ようやくコータのことを思い出した。
今朝学校に来るまではコータのことばかり考えていたはずなのに。
そうだ。
コータ、昨日、何してたんだろう。
公園にランドセルが隠してあったけど、本人はそこにはいなかった。
昨日見かけたおじさんの姿を思い出したら急に心配になってきた。
この頃、ヘンな人が多いから気をつけなさいって、ママが防犯ブザーを新しく買い換えてくれたばかりだ。
わたしはランドセルを揺らして防犯ブザーがついているのを確認してから走り出した。
もちろん、コータに見つからないように気をつける。
コータはわたしにつけられてるなんて、ちっとも考えていないのか、後ろを気にすることなく、どんどん先に進んでいく。
いつもなら、石を蹴ったり、木の棒を拾ってふりまわしながら歩いていくのに、今日はそんなこと全然しない。それだけじゃなくて時々走ったりしてる。
最初は隠れながら着いていったけど、途中からはずっと走らないといけなくなった。だって、コータはクラスで一番走るのが速いんだもん。隠れながらついていくなんて無理。
公園につく頃にはわたしはゼイゼイ息を切らす羽目になった。
コータは公園に着くなりそれまで急いでた足を止めてキョロキョロ辺りを見回した。見つからないように慌てて道にとまっていた車の影に隠れる。
気がつかれなかったみたい。よかった。
公園に入りこんだコータはランドセルを下ろし、ベンチの下に隠すと、その後ろにあるツバキの前でしゃがんだみたいだった。
わたしのところからだと、しゃがまれちゃうと見えなくなる。体を乗り出せば見えるのかもしれないけど、そんなことしたらバレる。
どうしよう。
コータが何をしているのか見えない。
見えなきゃ結局分からないままだ。
しばらく考えてから、えいっ、と車の影から飛び出した。
見つかることを覚悟して出てきたのに、コータの姿は見えない。
それどころか、昨日と全く同じ状況だった。
閑散とした、薄暗い公園がいつもと同じようにあるだけだ。
なんで?
コータはどこに行っちゃったんだろう。
慌ててベンチに近づく。
ベンチの下には昨日と同じようにコータのランドセルがあった。
顔を上げると目の前にはうっそうと生い茂ったツバキの木がある。
この公園が暗い感じがするのは、全体が大きな木の影にすっぽり入っちゃっているだけじゃなくて、ツバキの木がごちゃごちゃ生えているせいもあるんだよね。
ツバキの花は赤くてきれいだけど、葉っぱは色が暗いし、ぎゅうぎゅうに混み合ってるから余計に暗い感じがする。
それだけじゃなくて、このツバキにはクモがたくさんいるからわたしは嫌いなんだ。
だからあんまり近づかないようにしていた。
「こんなの平気だよ」
わたしはツバキをにらみつけた。
コータはこのツバキの前にしゃがんでた。
何をしているのか突き止めようと思ったら、同じことをしないといけないと思う。
目の前の葉っぱにはクモのタマゴがくっついてる。
ちょっと離れたところには巣がはってる。
どうしようか。
このまま逃げたいけど、それ以上に、コータのことが気にかかった。
きっと、今日も帰りが遅くなるんだ、コータ。
人に、アリバイを頼むくせして、どこで何をしているのか、絶対に教えてくれないのは分かってる。
わたしは意を決してしゃがみこんだ。
「こんなの平気だってば」
クモとか、ほかの色んなムシは下のほうがたくさんいる。だけど仕方がない。できるだけ体があちこちに触れないようにしながら辺りを見回す。すると、立って見下ろしたら分からないような、すき間が見えた。
すき間と言っても、ツバキとツバキの間をかき分けて無理やり作ったような、そんな程度のものだけど。
これはコータが作ったものなんじゃないかってすぐに気がついた。
きっと、ここを通ったんだ。
だけど、どうしよう。
もしもここを通ったら、絶対クモとか、ほかのムシにぶつかると思う。洋服だって汚しちゃう。今日はお気に入りのチェックのスカートだから汚れるようなことはしたくない。
恐る恐るのぞき込む。
すると、その向こう側に家が見えた。
あれ?
わたしは立ち上がった。
ツバキが生えている所をぐるっと回ってその後ろ側を見に行こうと思った。
似たような小さい家が二軒並んでる。でも、どっちも誰も住んでいないだった。チラシがたまってるし、草がぼうぼうに生えてる。家の正面は小さな門が閉じてて不動産屋さんの看板がかかっていた。
もしかしたら……
わたしは公園に戻ると、ランドセルを下ろしてコータのようにベンチの下に隠し、椿の前にしゃがみこんだ。ランドセルを下ろしたのは、背負ったままだと通れないところをこれから通るから。
ぎゅうっと目を閉じて、開いてから息を止めてツバキの小さなトンネルをくぐった。
髪の毛が絡まって引っ張られたけど、クモにぶつかることもなく、向こう側に出た。
向こう側、つまり、空き家の敷地の中に。
後ろを振り返るとその部分だけカベがないことに気がついた。
カベは正面のあたりにしかなかったみたい。
これまで、ツバキがあったから、そんなことに気がつかなかった。
ずっと、ここまでカベがあるんだと思ってたのに。
びっくりして辺りを見回した。
わたしが立っているところはちょうど庭だったらしい。下には草が生えてる。水仙の花がすみっこで咲いていたから、きっとその辺に花壇があるんだと思うけど、草がはえすぎていてどこまでが花壇なのか、さっぱり分からない。長いこと手入れをしていないんだろうな。枯れた草と、新しく生えてきた草とが入り混じってる。
だけど、わたしがいるあたりは草がふみつぶされてたから立っていても苦じゃなかった。それだけじゃなく、道になっている。きっとコータが通った跡だ。
そのまま進む。
庭に面して大きな窓がある。
縁側がくっついてて、その上にコータの靴があった。
見つけた。
コータったら、こんなところにいたんだ。
空き家に入り込んで何をやってるんだろう。
家の中をのぞきたいけど、カーテンで中は見えない。
どうしようかと思ったときだった。
でも、誰かにこの話をする気にはなれない。
ハルカちゃんにも言いたくない。
だって、この話をしようと思ったら、転校することを打ち明けなくちゃいけない。
でも、学校で転校の話はしたくなかった。
「どうしたの。今日、なんだか暗いよ?」
ハルカちゃんが心配してくれたけど、わたしは首を振って一所懸命にこにこした。
そんなことないよって、何度も言って、帰りは逃げるようにして教室から出た。
今日は昨日よりも早く下駄箱に着いた。
靴を履いて外に出ると少し先にコータが見えた。
別に誰よりも先に帰ろうとしたわけじゃないけど、わたしより先に外に行った子がいるなんて気がつかなかった。
そういえば、昨日もコータは早かったんだっけ。
それで、ようやくコータのことを思い出した。
今朝学校に来るまではコータのことばかり考えていたはずなのに。
そうだ。
コータ、昨日、何してたんだろう。
公園にランドセルが隠してあったけど、本人はそこにはいなかった。
昨日見かけたおじさんの姿を思い出したら急に心配になってきた。
この頃、ヘンな人が多いから気をつけなさいって、ママが防犯ブザーを新しく買い換えてくれたばかりだ。
わたしはランドセルを揺らして防犯ブザーがついているのを確認してから走り出した。
もちろん、コータに見つからないように気をつける。
コータはわたしにつけられてるなんて、ちっとも考えていないのか、後ろを気にすることなく、どんどん先に進んでいく。
いつもなら、石を蹴ったり、木の棒を拾ってふりまわしながら歩いていくのに、今日はそんなこと全然しない。それだけじゃなくて時々走ったりしてる。
最初は隠れながら着いていったけど、途中からはずっと走らないといけなくなった。だって、コータはクラスで一番走るのが速いんだもん。隠れながらついていくなんて無理。
公園につく頃にはわたしはゼイゼイ息を切らす羽目になった。
コータは公園に着くなりそれまで急いでた足を止めてキョロキョロ辺りを見回した。見つからないように慌てて道にとまっていた車の影に隠れる。
気がつかれなかったみたい。よかった。
公園に入りこんだコータはランドセルを下ろし、ベンチの下に隠すと、その後ろにあるツバキの前でしゃがんだみたいだった。
わたしのところからだと、しゃがまれちゃうと見えなくなる。体を乗り出せば見えるのかもしれないけど、そんなことしたらバレる。
どうしよう。
コータが何をしているのか見えない。
見えなきゃ結局分からないままだ。
しばらく考えてから、えいっ、と車の影から飛び出した。
見つかることを覚悟して出てきたのに、コータの姿は見えない。
それどころか、昨日と全く同じ状況だった。
閑散とした、薄暗い公園がいつもと同じようにあるだけだ。
なんで?
コータはどこに行っちゃったんだろう。
慌ててベンチに近づく。
ベンチの下には昨日と同じようにコータのランドセルがあった。
顔を上げると目の前にはうっそうと生い茂ったツバキの木がある。
この公園が暗い感じがするのは、全体が大きな木の影にすっぽり入っちゃっているだけじゃなくて、ツバキの木がごちゃごちゃ生えているせいもあるんだよね。
ツバキの花は赤くてきれいだけど、葉っぱは色が暗いし、ぎゅうぎゅうに混み合ってるから余計に暗い感じがする。
それだけじゃなくて、このツバキにはクモがたくさんいるからわたしは嫌いなんだ。
だからあんまり近づかないようにしていた。
「こんなの平気だよ」
わたしはツバキをにらみつけた。
コータはこのツバキの前にしゃがんでた。
何をしているのか突き止めようと思ったら、同じことをしないといけないと思う。
目の前の葉っぱにはクモのタマゴがくっついてる。
ちょっと離れたところには巣がはってる。
どうしようか。
このまま逃げたいけど、それ以上に、コータのことが気にかかった。
きっと、今日も帰りが遅くなるんだ、コータ。
人に、アリバイを頼むくせして、どこで何をしているのか、絶対に教えてくれないのは分かってる。
わたしは意を決してしゃがみこんだ。
「こんなの平気だってば」
クモとか、ほかの色んなムシは下のほうがたくさんいる。だけど仕方がない。できるだけ体があちこちに触れないようにしながら辺りを見回す。すると、立って見下ろしたら分からないような、すき間が見えた。
すき間と言っても、ツバキとツバキの間をかき分けて無理やり作ったような、そんな程度のものだけど。
これはコータが作ったものなんじゃないかってすぐに気がついた。
きっと、ここを通ったんだ。
だけど、どうしよう。
もしもここを通ったら、絶対クモとか、ほかのムシにぶつかると思う。洋服だって汚しちゃう。今日はお気に入りのチェックのスカートだから汚れるようなことはしたくない。
恐る恐るのぞき込む。
すると、その向こう側に家が見えた。
あれ?
わたしは立ち上がった。
ツバキが生えている所をぐるっと回ってその後ろ側を見に行こうと思った。
似たような小さい家が二軒並んでる。でも、どっちも誰も住んでいないだった。チラシがたまってるし、草がぼうぼうに生えてる。家の正面は小さな門が閉じてて不動産屋さんの看板がかかっていた。
もしかしたら……
わたしは公園に戻ると、ランドセルを下ろしてコータのようにベンチの下に隠し、椿の前にしゃがみこんだ。ランドセルを下ろしたのは、背負ったままだと通れないところをこれから通るから。
ぎゅうっと目を閉じて、開いてから息を止めてツバキの小さなトンネルをくぐった。
髪の毛が絡まって引っ張られたけど、クモにぶつかることもなく、向こう側に出た。
向こう側、つまり、空き家の敷地の中に。
後ろを振り返るとその部分だけカベがないことに気がついた。
カベは正面のあたりにしかなかったみたい。
これまで、ツバキがあったから、そんなことに気がつかなかった。
ずっと、ここまでカベがあるんだと思ってたのに。
びっくりして辺りを見回した。
わたしが立っているところはちょうど庭だったらしい。下には草が生えてる。水仙の花がすみっこで咲いていたから、きっとその辺に花壇があるんだと思うけど、草がはえすぎていてどこまでが花壇なのか、さっぱり分からない。長いこと手入れをしていないんだろうな。枯れた草と、新しく生えてきた草とが入り混じってる。
だけど、わたしがいるあたりは草がふみつぶされてたから立っていても苦じゃなかった。それだけじゃなく、道になっている。きっとコータが通った跡だ。
そのまま進む。
庭に面して大きな窓がある。
縁側がくっついてて、その上にコータの靴があった。
見つけた。
コータったら、こんなところにいたんだ。
空き家に入り込んで何をやってるんだろう。
家の中をのぞきたいけど、カーテンで中は見えない。
どうしようかと思ったときだった。
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