推し活ぐー!

明日葉

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入学式は顔が見れるいい機会だ。
全員の顔を一度に見れる機会ってなかなかない。
まあ、今回は1学年分だけだから、見つけやすいでしょ。えーと、女子女子……
基本的に、皆ボクに注目してくれるから、顔って見やすいんだよね。
まあ、たまにこっち見てない子もいるけどさ。
どの子も別に覚えがないなー。
あっ、何人かはコンサートで見たことある子がいる。
けど、棋王のファンじゃないはずなんだよね。
ボクは人の顔を覚えるのがすっごーく得意。
芸能人をやめてもそれで食べて行けるって言われる位にはーーーって、この子!!
ボクの方を全然見ないで、真正面の壇をジーっと見つめているこの子!!
去年の夏のコンサートの子っ!!

「やっと会えたねプリンセス」
ボクが手を握れば、たいていの人が顔を赤らめて、思いっきりドキドキした様子になるか、照れてまんざらでもない表情をするのが常なんだけど。
「い、いえ、プリンセスではありません。」
この子、思いっきり不審者を見る目でボクを見てきたんだけどっ!!
「いいや、君がプリンセスだ」
でもほら、驚いちゃっただけでしょ?
「はあ、あの、放して下さ……」
尚も、不審者を見る目つきで、握った手を思いっきり引っ込めようとしている。
ボクがこんな扱いを受けるなんてっ!!
突然ボクの手を、誰かが掴んでぺいっと振りほどいた。
「今、入学式。やめろよ。嫌がってんだろ」
助けてくれたのは、プリンセスの真後ろに座るでかい男。
芸能人ほどじゃないけど、カッコいい部類で、それがさらに癪に障る。
「ひー君ありが……」
プリンセスが心底安心した顔をして、ひー君とやらを見ているのがムカつく。
ボクとの扱いの差、ひどすぎない!?

ボクはムキになって、プリンセスの手をもう一回握った。
そうしたら、すかさず、ひー君とやらに剝がされる。
こうなったら、もう意地だ。
ひたすらその作業を続けることにした。

キーーーーンとハウリングの音。
「ん”ん”んっ」
……えと、この声は。
恐る恐る壇上を見上げると、そこには我らが水の貴公子様。透真。
ーーげっ!!怒ってる!!!
ボクはプリンセスから手を離し、ちゃんと座ってましたよーとアピールするかの如く姿勢を正した。
FIZZERで一番怒らせてはいけないのは透真なんだよね。
リーダーみたいに説教はしないけど、放つ一言がえぐい。
そういうやつの方が、いつも怒ってくる奴より怖くない?

あーー、そういえば、生徒会長??なんだっけ?
めんどくさいことよくやるよ。
何でもない様子で紙を広げて話しているけど、わーーこれ、めちゃオコ!!
ボク、これ、この後透真に怒られるコースじゃない!?
いやーーー!!!

これ、プリンセスとひー君とやらのせいだからね!!
ボクは二人がボクの思うように動かなかったことに、めっちゃ腹を立てていた。

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