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「えっ、何あの子」
「シアン君の知り合い?」
「え、エンタメ科が芸能科になんで接点あるの?」
「あの子有名なの?」
私の様子が見える範囲にいる普通科と特進科の子達が口々に小さい声でだけど話しているのが聞こえる。
「い、いえ、プリンセスではありません。」
「いいや、君がプリンセスだ」
英語の例文か何か?
何なのこの人。
芸能人だからこそ許される薄紫のウェーブがかった髪に、びっくりするくらい大きな瞳。
こんなダサさあふれる制服なのに、なぜかそれを物ともしないほどの美貌。
流石、FIZZERのあざとかわいい担当様ですよ。
それはあなたは王子のようにカッコいいけど、プリンセスとか……あっ、新手のファンネームのこと?
「はあ、あの、放して下さ……」
全然手を離してくれる様子のない紫苑寺シオン君の手を、誰かの手が掴んでぺいっと振りほどいた。
「今、入学式。やめろよ。嫌がってんだろ」
助けてくれたのは、私の真後ろに座るひー君だった。
「ひー君ありが……」
私がお礼を言い終わる前に、また紫苑寺君は私の手を繋ぎだした。
そして、振りほどくひー君。
これが無言で何度も繰り返されることになった。
今、何の時間かわかってますか?入学式です。
私語厳禁、中学生の一歩を踏み出すために、厳かな気持ちを一つとする場所。
それが、ここだったはず。
なのに。
校長先生の話が終わっても、担任の先生の紹介があっても、この二人はこの一連の動作を止めない。
それが無言で繰り広げられているのだから、周りも困惑しだしている。
ああ、今、私達の方を、あの細目の先生ーーーナカフリレイト先生っていうんだって。
数学担当らしいよ??
どこ見ているかあんまりわからないなって思ってたけど、今ならわかる。
ぜったいこっちを見ていたよ?
後でこれ、めっちゃ怒られるんじゃないかな。
そして、芸能科の先生、体育担当らしいよ?
見るからに、体育担当だってわかる、筋肉がいっぱいついていそうな大柄の先生。
どう見たって、同じくこっち見ているよ?
紫苑寺君なんて、あの先生にものすごーーく怒られてしまえばいい。
もはや、私はやさぐれて、無の境地に達しようとしていた。
先生の紹介が終わって、在校生代表の挨拶。
生徒会会長の紹介があると、会場は一気にどよめいた。
えっ、何も考えないようにしていたら、聞き逃してしまった。
そんな、どよめきがおこるような人ってーーーーー。
黒髪に一筋の水色のメッシュ。
高い身長に、誰が見てもカッコいい顔。
カツカツと足音を立てて壇上に登っていったのは、FIZZERのクール担当、水流透真君だった。
水の貴公子様のあだ名は伊達じゃない。
この制服なのにもかかわらず、まるで、舞踏会の貴公子様の佇まいだ。
李衣菜ちゃんは私の3人前の席。
どんな様子が伺い知ろうとしたけど、前の二人に阻まれて見えない。
きっと小さくキャーとか言っているのかも。
こんな近くで、見ることなんて初めてだもんね。
キーーーーーン。
透真君がマイクの位置を調整するとハウリングが起こった。
「ん”ん”んっ」
喉の調子でも悪いのか、咳払いを一つ。
そして、射抜くような視線で、こっちを見たと思ったその瞬間。
ーーーー私の手から、ぬくもりが消えた。
驚いて、右隣を見ると、ピシーーーっと背筋を伸ばした紫苑寺君。
やっと、やっと解放された!!
私は、もう手を握られないようできるだけ左端に座って、両手を左側に置いた。
改めて透真君を見上げると、一つこちらをむいて、小さく頷いたように見えた。
そして、何でもなかったかのように、紙を広げ、新入生に向けての言葉を述べ出した。
「シアン君の知り合い?」
「え、エンタメ科が芸能科になんで接点あるの?」
「あの子有名なの?」
私の様子が見える範囲にいる普通科と特進科の子達が口々に小さい声でだけど話しているのが聞こえる。
「い、いえ、プリンセスではありません。」
「いいや、君がプリンセスだ」
英語の例文か何か?
何なのこの人。
芸能人だからこそ許される薄紫のウェーブがかった髪に、びっくりするくらい大きな瞳。
こんなダサさあふれる制服なのに、なぜかそれを物ともしないほどの美貌。
流石、FIZZERのあざとかわいい担当様ですよ。
それはあなたは王子のようにカッコいいけど、プリンセスとか……あっ、新手のファンネームのこと?
「はあ、あの、放して下さ……」
全然手を離してくれる様子のない紫苑寺シオン君の手を、誰かの手が掴んでぺいっと振りほどいた。
「今、入学式。やめろよ。嫌がってんだろ」
助けてくれたのは、私の真後ろに座るひー君だった。
「ひー君ありが……」
私がお礼を言い終わる前に、また紫苑寺君は私の手を繋ぎだした。
そして、振りほどくひー君。
これが無言で何度も繰り返されることになった。
今、何の時間かわかってますか?入学式です。
私語厳禁、中学生の一歩を踏み出すために、厳かな気持ちを一つとする場所。
それが、ここだったはず。
なのに。
校長先生の話が終わっても、担任の先生の紹介があっても、この二人はこの一連の動作を止めない。
それが無言で繰り広げられているのだから、周りも困惑しだしている。
ああ、今、私達の方を、あの細目の先生ーーーナカフリレイト先生っていうんだって。
数学担当らしいよ??
どこ見ているかあんまりわからないなって思ってたけど、今ならわかる。
ぜったいこっちを見ていたよ?
後でこれ、めっちゃ怒られるんじゃないかな。
そして、芸能科の先生、体育担当らしいよ?
見るからに、体育担当だってわかる、筋肉がいっぱいついていそうな大柄の先生。
どう見たって、同じくこっち見ているよ?
紫苑寺君なんて、あの先生にものすごーーく怒られてしまえばいい。
もはや、私はやさぐれて、無の境地に達しようとしていた。
先生の紹介が終わって、在校生代表の挨拶。
生徒会会長の紹介があると、会場は一気にどよめいた。
えっ、何も考えないようにしていたら、聞き逃してしまった。
そんな、どよめきがおこるような人ってーーーーー。
黒髪に一筋の水色のメッシュ。
高い身長に、誰が見てもカッコいい顔。
カツカツと足音を立てて壇上に登っていったのは、FIZZERのクール担当、水流透真君だった。
水の貴公子様のあだ名は伊達じゃない。
この制服なのにもかかわらず、まるで、舞踏会の貴公子様の佇まいだ。
李衣菜ちゃんは私の3人前の席。
どんな様子が伺い知ろうとしたけど、前の二人に阻まれて見えない。
きっと小さくキャーとか言っているのかも。
こんな近くで、見ることなんて初めてだもんね。
キーーーーーン。
透真君がマイクの位置を調整するとハウリングが起こった。
「ん”ん”んっ」
喉の調子でも悪いのか、咳払いを一つ。
そして、射抜くような視線で、こっちを見たと思ったその瞬間。
ーーーー私の手から、ぬくもりが消えた。
驚いて、右隣を見ると、ピシーーーっと背筋を伸ばした紫苑寺君。
やっと、やっと解放された!!
私は、もう手を握られないようできるだけ左端に座って、両手を左側に置いた。
改めて透真君を見上げると、一つこちらをむいて、小さく頷いたように見えた。
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