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「……父さん、母さん、俺、この白黒星学園に入りたい。できれば、エンタメ科で」
「えっ、久、受験やめるの?って、はーーーん。お母さんはどっちでもいいよ。」
「ふーーーーん。俺も別にいいと思うけど?」
両親は、俺がそう言い出しても大して驚いた様子はない。
なんだか、俺の気持ちがバレバレで恥ずかしいけど、今はそんなこと言っている場合じゃない。
「えっ、良いのかい?久臣君すっごく頭いいって……」
ほのちゃんのお父さんだけが慌ててて、普通の反応はこうだよなあって思う。
「今の時点で、どの学校も受かる成績なんだ。これからだって成績は落とす気はない。
どの学校に入ったって結局は塾で勉強することには変わりはないんだから、学校にこだわりはない。
それなら、面白そうな学校に入ってみたいって思ったんだけどーーーダメかな?」
俺は、大人にウケそうな理由をプレゼンする。
本当の理由は全然違う。
なまじ、両親が芸能関係者だから、芸能人はいい奴ばっかりじゃないってよーーく知っている。
それに、何より、樹林棋王をほのちゃんに近づけたくない。
せっかくもう一度、ほのちゃんと普通に話せるようになったんだ。
それじゃあ、俺だって、ほのちゃんの近くにいたい。
昔みたいに、何でもないことで笑いあいたい。
俺が傍にいたら、昔を思いだすリスクはあるかもしれないけど、泣いてただけのあの頃と、俺は違う。
ほのちゃんが泣いたら、その悲しみを受け止めるくらいのことはできるようになったはずだ。
それに、ほのちゃんを一人にするのはおじさんも不安なはず。
知り合いが誰一人いない状態で、ほのちゃんを置いて行くはずがない。
親戚が全然いないほのちゃんのお父さんは、俺の両親を頼るしかないはず。
それなら、俺が同じ学校にいるのは何かと便利なはずでしょう?
小学生にしては、可愛くない思考だってわかっているけど、これが俺だ。
これでほのちゃんが辛い思いをしたり、寂しい思いをしたらすぐわかる。
いろんなことの、風よけ位にはなるはずでしょう?
「うんうん、久がなんかやりたいって言い出すの珍しいからな。でもいいのか?エンタメ科だったら、お前のーー」
「そっちじゃなく、こっち。VitterとKinstaの勉強垢の方でエンタメ科入れないかな」
って、父さん!!
今、ほのちゃんたちの前でそれ、言っちゃダメな奴!!
俺はあわてて携帯電話を父さんに見せる。
父さんは、東園寺さんに連絡を取り出す。
派手なおじさんだけど、俺にとってはいいおじさんなんだよな。
最近会ってないけど。
勉強垢が解ってないほのちゃんとほのちゃんのおじさんに説明する。
俺も、勉強垢とかくだらないと思っていたけど、自分のやっていることをアップするだけで、ちょっとした小遣い稼ぎになるならやってみようと思ったんだ。
本当にやりたいことをやるには、何かとお金がかかるし。
今となっては、やってて良かった勉強垢。
それで、ほのちゃんと同じ学校に入れるかもしれないのだから。
ーーまあ、最悪断られたら、特進科に入るしかないかな。こっちなら、全額免除なんて余裕だし。
学科は違うかもしれないけど、同じ学校にいられるのだから、今までよりもずっとずっとましだ。
久しぶりに会った東園寺さんは、あいかわらずだった。
ひー坊って呼ぶのはちょっと勘弁してほしいけど、エンタメ科に無料特待生として推薦してもらったんだから、あえて黙っておく。
メロンのパフェはなかなかの美味しさだった。
流石、食いしん坊のほのちゃんのお眼鏡にかなっただけある。
初対面の瀬口李衣菜は、世間一般的にいったら可愛いんだろうけど、なんていうかフワフワしたヤツだった。
外見もだけど、内面も。
俺の事をひー君呼びしようとしたり、MikMokに戦略が感じられなかったり。
ほのちゃん以外に誰がひー君呼びを許すかっての。
でも、ほのちゃんが黒白星学園に通うにあたり、気心の知れている奴は多いほうがいい。
そのほうがほのちゃんが安心して学校生活を送れるだろうから。
学費が高くて、途中で退学するなんて言語道断だ。
だから、瀬口のMikMok登録者数を増やす手伝いをすることにした。
それなのに、俺をMikMokに登場させようとするとか、鬼かこいつは。
「男の子の変身企画っていうのは、確かにウケるかも。それに、ひー君がもっと格好良くなるし、いいことづくしかもね、ひー君どうかな?」
でも、ほのちゃんが俺にそう言うから。
ーーーいや、そうだな、もういいよな、こう呼んでも。
「ーーーー今日は無理。穂香からやりな。俺、どうやって撮影しているのが受けてるのかちょっと研究しとくから」
一瞬、驚いた顔をしたけど、まんざらでもなさそうに笑うから、多分これは許されたってこと。
喉の奥がくすぐったいけど、この感じ、嫌じゃない。
結局、休みの日のほとんどを3人で過ごすようになったんだけど、これは結果、よかったかも。
穂香と過ごせるのは嬉しいけど、今のままでは、間が持たないってこともあっただろうから。
何か、共通の目標があれば、団結して頑張れる。
それって、相手の好感度をあげるのにすげえ有効な手段だと思うから。
それに、普通に頑張ったら頑張った分だけ結果が伴うものはやる気が出る。
瀬口の登録者数が10万人を超えて、3人でする祝勝会は、けっこう楽しかった。
俺も少しおしゃれになったらしいし、三方良しのウィンウィンとはまさにこのことだ。
いよいよ、待ちに待った中学校生活。
穂香があの時みたいに傷つくことのないように、穂香がこれから楽しくすごせるように。
ーーー俺は穂香の心を守りたい。
「えっ、久、受験やめるの?って、はーーーん。お母さんはどっちでもいいよ。」
「ふーーーーん。俺も別にいいと思うけど?」
両親は、俺がそう言い出しても大して驚いた様子はない。
なんだか、俺の気持ちがバレバレで恥ずかしいけど、今はそんなこと言っている場合じゃない。
「えっ、良いのかい?久臣君すっごく頭いいって……」
ほのちゃんのお父さんだけが慌ててて、普通の反応はこうだよなあって思う。
「今の時点で、どの学校も受かる成績なんだ。これからだって成績は落とす気はない。
どの学校に入ったって結局は塾で勉強することには変わりはないんだから、学校にこだわりはない。
それなら、面白そうな学校に入ってみたいって思ったんだけどーーーダメかな?」
俺は、大人にウケそうな理由をプレゼンする。
本当の理由は全然違う。
なまじ、両親が芸能関係者だから、芸能人はいい奴ばっかりじゃないってよーーく知っている。
それに、何より、樹林棋王をほのちゃんに近づけたくない。
せっかくもう一度、ほのちゃんと普通に話せるようになったんだ。
それじゃあ、俺だって、ほのちゃんの近くにいたい。
昔みたいに、何でもないことで笑いあいたい。
俺が傍にいたら、昔を思いだすリスクはあるかもしれないけど、泣いてただけのあの頃と、俺は違う。
ほのちゃんが泣いたら、その悲しみを受け止めるくらいのことはできるようになったはずだ。
それに、ほのちゃんを一人にするのはおじさんも不安なはず。
知り合いが誰一人いない状態で、ほのちゃんを置いて行くはずがない。
親戚が全然いないほのちゃんのお父さんは、俺の両親を頼るしかないはず。
それなら、俺が同じ学校にいるのは何かと便利なはずでしょう?
小学生にしては、可愛くない思考だってわかっているけど、これが俺だ。
これでほのちゃんが辛い思いをしたり、寂しい思いをしたらすぐわかる。
いろんなことの、風よけ位にはなるはずでしょう?
「うんうん、久がなんかやりたいって言い出すの珍しいからな。でもいいのか?エンタメ科だったら、お前のーー」
「そっちじゃなく、こっち。VitterとKinstaの勉強垢の方でエンタメ科入れないかな」
って、父さん!!
今、ほのちゃんたちの前でそれ、言っちゃダメな奴!!
俺はあわてて携帯電話を父さんに見せる。
父さんは、東園寺さんに連絡を取り出す。
派手なおじさんだけど、俺にとってはいいおじさんなんだよな。
最近会ってないけど。
勉強垢が解ってないほのちゃんとほのちゃんのおじさんに説明する。
俺も、勉強垢とかくだらないと思っていたけど、自分のやっていることをアップするだけで、ちょっとした小遣い稼ぎになるならやってみようと思ったんだ。
本当にやりたいことをやるには、何かとお金がかかるし。
今となっては、やってて良かった勉強垢。
それで、ほのちゃんと同じ学校に入れるかもしれないのだから。
ーーまあ、最悪断られたら、特進科に入るしかないかな。こっちなら、全額免除なんて余裕だし。
学科は違うかもしれないけど、同じ学校にいられるのだから、今までよりもずっとずっとましだ。
久しぶりに会った東園寺さんは、あいかわらずだった。
ひー坊って呼ぶのはちょっと勘弁してほしいけど、エンタメ科に無料特待生として推薦してもらったんだから、あえて黙っておく。
メロンのパフェはなかなかの美味しさだった。
流石、食いしん坊のほのちゃんのお眼鏡にかなっただけある。
初対面の瀬口李衣菜は、世間一般的にいったら可愛いんだろうけど、なんていうかフワフワしたヤツだった。
外見もだけど、内面も。
俺の事をひー君呼びしようとしたり、MikMokに戦略が感じられなかったり。
ほのちゃん以外に誰がひー君呼びを許すかっての。
でも、ほのちゃんが黒白星学園に通うにあたり、気心の知れている奴は多いほうがいい。
そのほうがほのちゃんが安心して学校生活を送れるだろうから。
学費が高くて、途中で退学するなんて言語道断だ。
だから、瀬口のMikMok登録者数を増やす手伝いをすることにした。
それなのに、俺をMikMokに登場させようとするとか、鬼かこいつは。
「男の子の変身企画っていうのは、確かにウケるかも。それに、ひー君がもっと格好良くなるし、いいことづくしかもね、ひー君どうかな?」
でも、ほのちゃんが俺にそう言うから。
ーーーいや、そうだな、もういいよな、こう呼んでも。
「ーーーー今日は無理。穂香からやりな。俺、どうやって撮影しているのが受けてるのかちょっと研究しとくから」
一瞬、驚いた顔をしたけど、まんざらでもなさそうに笑うから、多分これは許されたってこと。
喉の奥がくすぐったいけど、この感じ、嫌じゃない。
結局、休みの日のほとんどを3人で過ごすようになったんだけど、これは結果、よかったかも。
穂香と過ごせるのは嬉しいけど、今のままでは、間が持たないってこともあっただろうから。
何か、共通の目標があれば、団結して頑張れる。
それって、相手の好感度をあげるのにすげえ有効な手段だと思うから。
それに、普通に頑張ったら頑張った分だけ結果が伴うものはやる気が出る。
瀬口の登録者数が10万人を超えて、3人でする祝勝会は、けっこう楽しかった。
俺も少しおしゃれになったらしいし、三方良しのウィンウィンとはまさにこのことだ。
いよいよ、待ちに待った中学校生活。
穂香があの時みたいに傷つくことのないように、穂香がこれから楽しくすごせるように。
ーーー俺は穂香の心を守りたい。
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