43 / 59
・
しおりを挟む
「……父さん、母さん、俺、この白黒星学園に入りたい。できれば、エンタメ科で」
「えっ、久、受験やめるの?って、はーーーん。お母さんはどっちでもいいよ。」
「ふーーーーん。俺も別にいいと思うけど?」
両親は、俺がそう言い出しても大して驚いた様子はない。
なんだか、俺の気持ちがバレバレで恥ずかしいけど、今はそんなこと言っている場合じゃない。
「えっ、良いのかい?久臣君すっごく頭いいって……」
ほのちゃんのお父さんだけが慌ててて、普通の反応はこうだよなあって思う。
「今の時点で、どの学校も受かる成績なんだ。これからだって成績は落とす気はない。
どの学校に入ったって結局は塾で勉強することには変わりはないんだから、学校にこだわりはない。
それなら、面白そうな学校に入ってみたいって思ったんだけどーーーダメかな?」
俺は、大人にウケそうな理由をプレゼンする。
本当の理由は全然違う。
なまじ、両親が芸能関係者だから、芸能人はいい奴ばっかりじゃないってよーーく知っている。
それに、何より、樹林棋王をほのちゃんに近づけたくない。
せっかくもう一度、ほのちゃんと普通に話せるようになったんだ。
それじゃあ、俺だって、ほのちゃんの近くにいたい。
昔みたいに、何でもないことで笑いあいたい。
俺が傍にいたら、昔を思いだすリスクはあるかもしれないけど、泣いてただけのあの頃と、俺は違う。
ほのちゃんが泣いたら、その悲しみを受け止めるくらいのことはできるようになったはずだ。
それに、ほのちゃんを一人にするのはおじさんも不安なはず。
知り合いが誰一人いない状態で、ほのちゃんを置いて行くはずがない。
親戚が全然いないほのちゃんのお父さんは、俺の両親を頼るしかないはず。
それなら、俺が同じ学校にいるのは何かと便利なはずでしょう?
小学生にしては、可愛くない思考だってわかっているけど、これが俺だ。
これでほのちゃんが辛い思いをしたり、寂しい思いをしたらすぐわかる。
いろんなことの、風よけ位にはなるはずでしょう?
「うんうん、久がなんかやりたいって言い出すの珍しいからな。でもいいのか?エンタメ科だったら、お前のーー」
「そっちじゃなく、こっち。VitterとKinstaの勉強垢の方でエンタメ科入れないかな」
って、父さん!!
今、ほのちゃんたちの前でそれ、言っちゃダメな奴!!
俺はあわてて携帯電話を父さんに見せる。
父さんは、東園寺さんに連絡を取り出す。
派手なおじさんだけど、俺にとってはいいおじさんなんだよな。
最近会ってないけど。
勉強垢が解ってないほのちゃんとほのちゃんのおじさんに説明する。
俺も、勉強垢とかくだらないと思っていたけど、自分のやっていることをアップするだけで、ちょっとした小遣い稼ぎになるならやってみようと思ったんだ。
本当にやりたいことをやるには、何かとお金がかかるし。
今となっては、やってて良かった勉強垢。
それで、ほのちゃんと同じ学校に入れるかもしれないのだから。
ーーまあ、最悪断られたら、特進科に入るしかないかな。こっちなら、全額免除なんて余裕だし。
学科は違うかもしれないけど、同じ学校にいられるのだから、今までよりもずっとずっとましだ。
久しぶりに会った東園寺さんは、あいかわらずだった。
ひー坊って呼ぶのはちょっと勘弁してほしいけど、エンタメ科に無料特待生として推薦してもらったんだから、あえて黙っておく。
メロンのパフェはなかなかの美味しさだった。
流石、食いしん坊のほのちゃんのお眼鏡にかなっただけある。
初対面の瀬口李衣菜は、世間一般的にいったら可愛いんだろうけど、なんていうかフワフワしたヤツだった。
外見もだけど、内面も。
俺の事をひー君呼びしようとしたり、MikMokに戦略が感じられなかったり。
ほのちゃん以外に誰がひー君呼びを許すかっての。
でも、ほのちゃんが黒白星学園に通うにあたり、気心の知れている奴は多いほうがいい。
そのほうがほのちゃんが安心して学校生活を送れるだろうから。
学費が高くて、途中で退学するなんて言語道断だ。
だから、瀬口のMikMok登録者数を増やす手伝いをすることにした。
それなのに、俺をMikMokに登場させようとするとか、鬼かこいつは。
「男の子の変身企画っていうのは、確かにウケるかも。それに、ひー君がもっと格好良くなるし、いいことづくしかもね、ひー君どうかな?」
でも、ほのちゃんが俺にそう言うから。
ーーーいや、そうだな、もういいよな、こう呼んでも。
「ーーーー今日は無理。穂香からやりな。俺、どうやって撮影しているのが受けてるのかちょっと研究しとくから」
一瞬、驚いた顔をしたけど、まんざらでもなさそうに笑うから、多分これは許されたってこと。
喉の奥がくすぐったいけど、この感じ、嫌じゃない。
結局、休みの日のほとんどを3人で過ごすようになったんだけど、これは結果、よかったかも。
穂香と過ごせるのは嬉しいけど、今のままでは、間が持たないってこともあっただろうから。
何か、共通の目標があれば、団結して頑張れる。
それって、相手の好感度をあげるのにすげえ有効な手段だと思うから。
それに、普通に頑張ったら頑張った分だけ結果が伴うものはやる気が出る。
瀬口の登録者数が10万人を超えて、3人でする祝勝会は、けっこう楽しかった。
俺も少しおしゃれになったらしいし、三方良しのウィンウィンとはまさにこのことだ。
いよいよ、待ちに待った中学校生活。
穂香があの時みたいに傷つくことのないように、穂香がこれから楽しくすごせるように。
ーーー俺は穂香の心を守りたい。
「えっ、久、受験やめるの?って、はーーーん。お母さんはどっちでもいいよ。」
「ふーーーーん。俺も別にいいと思うけど?」
両親は、俺がそう言い出しても大して驚いた様子はない。
なんだか、俺の気持ちがバレバレで恥ずかしいけど、今はそんなこと言っている場合じゃない。
「えっ、良いのかい?久臣君すっごく頭いいって……」
ほのちゃんのお父さんだけが慌ててて、普通の反応はこうだよなあって思う。
「今の時点で、どの学校も受かる成績なんだ。これからだって成績は落とす気はない。
どの学校に入ったって結局は塾で勉強することには変わりはないんだから、学校にこだわりはない。
それなら、面白そうな学校に入ってみたいって思ったんだけどーーーダメかな?」
俺は、大人にウケそうな理由をプレゼンする。
本当の理由は全然違う。
なまじ、両親が芸能関係者だから、芸能人はいい奴ばっかりじゃないってよーーく知っている。
それに、何より、樹林棋王をほのちゃんに近づけたくない。
せっかくもう一度、ほのちゃんと普通に話せるようになったんだ。
それじゃあ、俺だって、ほのちゃんの近くにいたい。
昔みたいに、何でもないことで笑いあいたい。
俺が傍にいたら、昔を思いだすリスクはあるかもしれないけど、泣いてただけのあの頃と、俺は違う。
ほのちゃんが泣いたら、その悲しみを受け止めるくらいのことはできるようになったはずだ。
それに、ほのちゃんを一人にするのはおじさんも不安なはず。
知り合いが誰一人いない状態で、ほのちゃんを置いて行くはずがない。
親戚が全然いないほのちゃんのお父さんは、俺の両親を頼るしかないはず。
それなら、俺が同じ学校にいるのは何かと便利なはずでしょう?
小学生にしては、可愛くない思考だってわかっているけど、これが俺だ。
これでほのちゃんが辛い思いをしたり、寂しい思いをしたらすぐわかる。
いろんなことの、風よけ位にはなるはずでしょう?
「うんうん、久がなんかやりたいって言い出すの珍しいからな。でもいいのか?エンタメ科だったら、お前のーー」
「そっちじゃなく、こっち。VitterとKinstaの勉強垢の方でエンタメ科入れないかな」
って、父さん!!
今、ほのちゃんたちの前でそれ、言っちゃダメな奴!!
俺はあわてて携帯電話を父さんに見せる。
父さんは、東園寺さんに連絡を取り出す。
派手なおじさんだけど、俺にとってはいいおじさんなんだよな。
最近会ってないけど。
勉強垢が解ってないほのちゃんとほのちゃんのおじさんに説明する。
俺も、勉強垢とかくだらないと思っていたけど、自分のやっていることをアップするだけで、ちょっとした小遣い稼ぎになるならやってみようと思ったんだ。
本当にやりたいことをやるには、何かとお金がかかるし。
今となっては、やってて良かった勉強垢。
それで、ほのちゃんと同じ学校に入れるかもしれないのだから。
ーーまあ、最悪断られたら、特進科に入るしかないかな。こっちなら、全額免除なんて余裕だし。
学科は違うかもしれないけど、同じ学校にいられるのだから、今までよりもずっとずっとましだ。
久しぶりに会った東園寺さんは、あいかわらずだった。
ひー坊って呼ぶのはちょっと勘弁してほしいけど、エンタメ科に無料特待生として推薦してもらったんだから、あえて黙っておく。
メロンのパフェはなかなかの美味しさだった。
流石、食いしん坊のほのちゃんのお眼鏡にかなっただけある。
初対面の瀬口李衣菜は、世間一般的にいったら可愛いんだろうけど、なんていうかフワフワしたヤツだった。
外見もだけど、内面も。
俺の事をひー君呼びしようとしたり、MikMokに戦略が感じられなかったり。
ほのちゃん以外に誰がひー君呼びを許すかっての。
でも、ほのちゃんが黒白星学園に通うにあたり、気心の知れている奴は多いほうがいい。
そのほうがほのちゃんが安心して学校生活を送れるだろうから。
学費が高くて、途中で退学するなんて言語道断だ。
だから、瀬口のMikMok登録者数を増やす手伝いをすることにした。
それなのに、俺をMikMokに登場させようとするとか、鬼かこいつは。
「男の子の変身企画っていうのは、確かにウケるかも。それに、ひー君がもっと格好良くなるし、いいことづくしかもね、ひー君どうかな?」
でも、ほのちゃんが俺にそう言うから。
ーーーいや、そうだな、もういいよな、こう呼んでも。
「ーーーー今日は無理。穂香からやりな。俺、どうやって撮影しているのが受けてるのかちょっと研究しとくから」
一瞬、驚いた顔をしたけど、まんざらでもなさそうに笑うから、多分これは許されたってこと。
喉の奥がくすぐったいけど、この感じ、嫌じゃない。
結局、休みの日のほとんどを3人で過ごすようになったんだけど、これは結果、よかったかも。
穂香と過ごせるのは嬉しいけど、今のままでは、間が持たないってこともあっただろうから。
何か、共通の目標があれば、団結して頑張れる。
それって、相手の好感度をあげるのにすげえ有効な手段だと思うから。
それに、普通に頑張ったら頑張った分だけ結果が伴うものはやる気が出る。
瀬口の登録者数が10万人を超えて、3人でする祝勝会は、けっこう楽しかった。
俺も少しおしゃれになったらしいし、三方良しのウィンウィンとはまさにこのことだ。
いよいよ、待ちに待った中学校生活。
穂香があの時みたいに傷つくことのないように、穂香がこれから楽しくすごせるように。
ーーー俺は穂香の心を守りたい。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
王女様は美しくわらいました
トネリコ
児童書・童話
無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。
それはそれは美しい笑みでした。
「お前程の悪女はおるまいよ」
王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。
きたいの悪女は処刑されました 解説版

キミと踏み出す、最初の一歩。
青花美来
児童書・童話
中学に入学と同時に引っ越してきた千春は、あがり症ですぐ顔が真っ赤になることがコンプレックス。
そのせいで人とうまく話せず、学校では友だちもいない。
友だちの作り方に悩んでいたある日、ひょんなことから悪名高い川上くんに勉強を教えなければいけないことになった。
しかし彼はどうやら噂とは全然違うような気がして──?
悪魔さまの言うとおり~わたし、執事になります⁉︎~
橘花やよい
児童書・童話
女子中学生・リリイが、入学することになったのは、お嬢さま学校。でもそこは「悪魔」の学校で、「執事として入学してちょうだい」……って、どういうことなの⁉待ち構えるのは、きれいでいじわるな悪魔たち!
友情と魔法と、胸キュンもありの学園ファンタジー。
第2回きずな児童書大賞参加作です。
化け猫ミッケと黒い天使
ひろみ透夏
児童書・童話
運命の人と出会える逢生橋――。
そんな言い伝えのある橋の上で、化け猫《ミッケ》が出会ったのは、幽霊やお化けが見える小学五年生の少女《黒崎美玲》。
彼女の家に居候したミッケは、やがて美玲の親友《七海萌》や、内気な級友《蜂谷優斗》、怪奇クラブ部長《綾小路薫》らに巻き込まれて、様々な怪奇現象を体験する。
次々と怪奇現象を解決する《美玲》。しかし《七海萌》の暴走により、取り返しのつかない深刻な事態に……。
そこに現れたのは、妖しい能力を持った青年《四聖進》。彼に出会った事で、物語は急展開していく。

お姫様の願い事
月詠世理
児童書・童話
赤子が生まれた時に母親は亡くなってしまった。赤子は実の父親から嫌われてしまう。そのため、赤子は血の繋がらない女に育てられた。 決められた期限は十年。十歳になった女の子は母親代わりに連れられて城に行くことになった。女の子の実の父親のもとへ——。女の子はさいごに何を願うのだろうか。

【完結】イケメン旦那と可愛い義妹をゲットして、幸せスローライフを掴むまで
トト
児童書・童話
「私も異世界転生して、私を愛してくれる家族が欲しい」
一冊の本との出会いが、平凡女子をミラクルシンデレラに変える

四尾がつむぐえにし、そこかしこ
月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。
憧れのキラキラ王子さまが転校する。
女子たちの嘆きはひとしお。
彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。
だからとてどうこうする勇気もない。
うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。
家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。
まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。
ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、
三つのお仕事を手伝うことになったユイ。
達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。
もしかしたら、もしかしちゃうかも?
そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。
結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。
いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、
はたしてユイは何を求め願うのか。
少女のちょっと不思議な冒険譚。
ここに開幕。
【シーズン2完】おしゃれに変身!って聞いてたんですけど……これってコウモリ女ですよね?
ginrin3go/〆野々青魚
児童書・童話
「どうしてこんな事になっちゃったの!?」
陰キャで地味な服ばかり着ているメカクレ中学生の月澄佳穂(つきすみかほ)。彼女は、祖母から出された無理難題「おしゃれしなさい」をなんとかするため、中身も読まずにある契約書にサインをしてしまう。
それは、鳥や動物の能力持っている者たちの鬼ごっこ『イソップ・ハント』の契約書だった!
夜毎、コウモリ女に変身し『ハント』を逃げるハメになった佳穂。そのたった一人の逃亡者・佳穂に協力する男子が現れる――
横浜の夜に繰り広げられるバトルファンタジー!
【シーズン2完了! ありがとうございます!】
シーズン1・めざまし編 シーズン2・学園編その1 更新完了しました!
それぞれ児童文庫にして1冊分くらいの分量。小学生でも2時間くらいで読み切れます。
そして、ただいまシーズン3・学園編その2 書きだめ中!
深くイソップ・ハントの世界に関わっていくことになった佳穂。これからいったいどうなるのか!?
本作はシーズン書きおろし方式を採用。全5シーズン順次書き上がり次第公開いたします。
お気に入りに登録していただくと、更新の通知が届きます。
気になる方はぜひお願いいたします。
【最後まで逃げ切る佳穂を応援してください!】
本作は、第1回きずな児童書大賞にて奨励賞を頂戴いたしましたが、書籍化にまでは届いていません。
感想、応援いただければ、佳穂は頑張って飛んでくれますし、なにより作者〆野々のはげみになります。
一言でも感想、紹介いただければうれしいです。
【新ビジュアル公開!】
新しい表紙はギルバートさんに描いていただきました。佳穂と犬上のツーショットです!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる