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久々の再会の次の日、仕事を終えた父さんは謝罪のためにほのちゃんの家に行こうとしたけれど、逆にほのちゃんのお父さんが謝りたいからって、家に来ることになった。
リビングから、ほのちゃんの声が聞こえる。
昔は当たり前だったのに、今では懐かしい。
「父さん、おじさんが南極に行くかもってベラベラ喋ったんだろ?最悪だよな。記憶残っている系酔っ払い。」
他の人の相談事をペラペラ話すとか論外だと思う。
南極に1年間?ほのちゃんが一人になる?そんなのおじさんが迷って当然だろ。
それになにより、それを聞いたほのちゃんが悩むに決まってる。
父さんの酒の失敗談は数あれど、今回のは正直笑える範疇を超えている。
しかし、ほのちゃんの話を聞いて驚いた。
私立黒白星学園って、あの金持ち学校で最近芸能科ができたとこ?
それのエンタメ科?
全寮制だから、おじさんが南極に行っても大丈夫??
でも、それって本当か?
ほのちゃん、おじさんのために我慢しているだけじゃないの?
おじさんが父さんにたまに送ってくれているほのちゃんの写真は、見たら会えないのがさらに辛くなるから、今の今まで見たことがなかった。
だから、今回こんなに驚くことになったんだけど。
そのかわり、おじさんが教えてくれていた、ほのちゃんがやっているTtubeを俺は見ていた。
たとえ、声も顔も見えていなくたって、ちっちゃい手で、ちまちま色んなものを作っている様子は可愛いって思ってた。
だから、ほのちゃんがTtubeで有名になって、本を出しているのは知っている。
親も別に何かを作ったりしないのに、喜んで買ってきて、本を開いてはほのちゃんは本当に器用だと褒めていた。
作っているのが、アイドルの応援グッズっていうのが癪だったけど。
でも、そいつが1歳上の中学生だからって、アイドルなんて早々会えるもんでもないし気にすることじゃないって言い聞かせていた。
ほのちゃんが学校の良さを一生懸命語っているけど、俺はなんか嫌な予感がする。
芸能科のある全寮制の学校。
俺は、私立白黒星学園を自分の携帯電話で調べた。
普通科と特進科と芸能科とエンタメ科。
エンタメ科は自己推薦式入試。授業料免除については応相談。
授業料と入寮料……高っ!!
俺が受けようと思っていた名門私立中の2倍近くの値段。
これ、どんなヤツが入るんだよ。
確かに、学校の設備はすっごい整っていて、ここから出ないで十分生活できそうなほどだし、部活も充実している。
でも、こんな値段を払ってまで、入りたいものなのか?
まあ、これが全部無料ですって言われたら行きたくなる……かもだけど。
「そ、それに何より、白黒星学園には芸能科があるんですっ!!
私、FIZZERってグループの樹林棋王君っていう子のファンで、実は、樹林君、そこの生徒なんです!!
実は私、Ttubeで樹林君のファングッズを作っていて、それをTtubeにあげてるくらいのファンなんです!!
これ、私のTtubeですっ!!」
その言葉を聞いた瞬間、悪い予感が的中しすぎて、いっそ笑えてきた。
ーーーーやっぱり。そいつのために行くのかよ。
「……私立黒白星学園ってこれ?」
俺は、平静を装ってほのちゃんに話しかける。
「うん。ここ。ほら、すっごい豪華でしょ??」
ほのちゃんはへらっと俺に笑いかける。
その笑い方は知ってる。
いっつも何かを誤魔化す時に良くしていたから。
「……ここ、本当に行きたいの?」
「うん、私、中学校受験予定もなかったしさ、タダでこんな豪華な学校に通えるなんてラッキーじゃん?それに、ごはんも提携しているホテルのシェフが作るから、すっごい美味しいんだよ。この間見学に行ったときは、ケーキごちそうになったんだけど、これがもう、美味しくてっ!!」
学校に通えるのがラッキーだと思っているかはともかく、ケーキが美味しかったのは本当なんだろう。
ほのちゃん、すげえ食いしん坊だから。
「……料理が旨いのはいいな。」
思わず、本当に笑ってしまった。
そういうところ、大きくなっても変わっていない。
「でしょ?あ、これ、お土産のプリン!まだひー君今でもプリン好き??」
プリンを差し出しながら小首をかしげて、俺を見上げるほのちゃん。
小さいころは俺が見上げることが多かったのに、今は見上げられるなんて。
なぜだかわからないけど、喉の奥がくすぐったい。
ああ、これはーーーー。
「ーーーーーうん、好き」
そう、ずっと胸にしまっておいた、そして、今動き出した、好きって気持ちだ。
リビングから、ほのちゃんの声が聞こえる。
昔は当たり前だったのに、今では懐かしい。
「父さん、おじさんが南極に行くかもってベラベラ喋ったんだろ?最悪だよな。記憶残っている系酔っ払い。」
他の人の相談事をペラペラ話すとか論外だと思う。
南極に1年間?ほのちゃんが一人になる?そんなのおじさんが迷って当然だろ。
それになにより、それを聞いたほのちゃんが悩むに決まってる。
父さんの酒の失敗談は数あれど、今回のは正直笑える範疇を超えている。
しかし、ほのちゃんの話を聞いて驚いた。
私立黒白星学園って、あの金持ち学校で最近芸能科ができたとこ?
それのエンタメ科?
全寮制だから、おじさんが南極に行っても大丈夫??
でも、それって本当か?
ほのちゃん、おじさんのために我慢しているだけじゃないの?
おじさんが父さんにたまに送ってくれているほのちゃんの写真は、見たら会えないのがさらに辛くなるから、今の今まで見たことがなかった。
だから、今回こんなに驚くことになったんだけど。
そのかわり、おじさんが教えてくれていた、ほのちゃんがやっているTtubeを俺は見ていた。
たとえ、声も顔も見えていなくたって、ちっちゃい手で、ちまちま色んなものを作っている様子は可愛いって思ってた。
だから、ほのちゃんがTtubeで有名になって、本を出しているのは知っている。
親も別に何かを作ったりしないのに、喜んで買ってきて、本を開いてはほのちゃんは本当に器用だと褒めていた。
作っているのが、アイドルの応援グッズっていうのが癪だったけど。
でも、そいつが1歳上の中学生だからって、アイドルなんて早々会えるもんでもないし気にすることじゃないって言い聞かせていた。
ほのちゃんが学校の良さを一生懸命語っているけど、俺はなんか嫌な予感がする。
芸能科のある全寮制の学校。
俺は、私立白黒星学園を自分の携帯電話で調べた。
普通科と特進科と芸能科とエンタメ科。
エンタメ科は自己推薦式入試。授業料免除については応相談。
授業料と入寮料……高っ!!
俺が受けようと思っていた名門私立中の2倍近くの値段。
これ、どんなヤツが入るんだよ。
確かに、学校の設備はすっごい整っていて、ここから出ないで十分生活できそうなほどだし、部活も充実している。
でも、こんな値段を払ってまで、入りたいものなのか?
まあ、これが全部無料ですって言われたら行きたくなる……かもだけど。
「そ、それに何より、白黒星学園には芸能科があるんですっ!!
私、FIZZERってグループの樹林棋王君っていう子のファンで、実は、樹林君、そこの生徒なんです!!
実は私、Ttubeで樹林君のファングッズを作っていて、それをTtubeにあげてるくらいのファンなんです!!
これ、私のTtubeですっ!!」
その言葉を聞いた瞬間、悪い予感が的中しすぎて、いっそ笑えてきた。
ーーーーやっぱり。そいつのために行くのかよ。
「……私立黒白星学園ってこれ?」
俺は、平静を装ってほのちゃんに話しかける。
「うん。ここ。ほら、すっごい豪華でしょ??」
ほのちゃんはへらっと俺に笑いかける。
その笑い方は知ってる。
いっつも何かを誤魔化す時に良くしていたから。
「……ここ、本当に行きたいの?」
「うん、私、中学校受験予定もなかったしさ、タダでこんな豪華な学校に通えるなんてラッキーじゃん?それに、ごはんも提携しているホテルのシェフが作るから、すっごい美味しいんだよ。この間見学に行ったときは、ケーキごちそうになったんだけど、これがもう、美味しくてっ!!」
学校に通えるのがラッキーだと思っているかはともかく、ケーキが美味しかったのは本当なんだろう。
ほのちゃん、すげえ食いしん坊だから。
「……料理が旨いのはいいな。」
思わず、本当に笑ってしまった。
そういうところ、大きくなっても変わっていない。
「でしょ?あ、これ、お土産のプリン!まだひー君今でもプリン好き??」
プリンを差し出しながら小首をかしげて、俺を見上げるほのちゃん。
小さいころは俺が見上げることが多かったのに、今は見上げられるなんて。
なぜだかわからないけど、喉の奥がくすぐったい。
ああ、これはーーーー。
「ーーーーーうん、好き」
そう、ずっと胸にしまっておいた、そして、今動き出した、好きって気持ちだ。
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