推し活ぐー!

明日葉

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・南極と私

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李衣菜ちゃんと合流してたのは、それからすぐだ。
相変わらず、李衣菜ちゃんは足が速い。
「東園寺さんはーー?李衣菜もっと話したかったのに!!」
と、ぷりぷり怒っていて、相変わらずの人懐っこさに苦笑いした。

家へ帰ったら、珍しくお父さんの姿がなかった。
夕飯時にはいるのに、珍しいな??
そうだ、たまには私が夕飯を作ったらお父さん、喜ぶかな?
火を使う料理はまだ怖いから、レンジを使った簡単料理を検索する。
冷蔵庫の中身とレシピを見比べていたら、携帯電話が震えだす。
「ごめん、森乃と飲んで帰るから、遅くなる。11時までには帰るから冷凍庫の作り置きを食べておいて」
「わかったよー!飲みすぎないようにね!帰り気を付けて!!」
お父さんからのダイレクトメールに返信を打って送信した。
お母さんが亡くなってから、すっかり飲みに行かなくなってたのにめずらしい。
私は、冷凍庫から、作り置きのカレーとご飯をとりだして、電子レンジにかけた。

ピンポーーーン!
夜11時にチャイムが鳴る。
お父さんはチャイムを鳴らさず、鍵をあけてはいってくる。
こんな夜中にだれなんだろ……そろりそろりとインターフォンの画面を見ると、そこには肩に担がれたお父さんと森乃もりののおじさん!?
「は、はーーーい!!」
あわてて通話ボタンをおして、話しかける。
「あ、久しぶり、おれほら、森乃のおじさんーー!!お父さん届けに来たから、玄関開けてくれる?」
「うわーーーすみません!!あっ、開けました!!」
「おーどーーーも!」
酔っぱらっているのかちょっと鼻声の森乃さんは、家の玄関までお父さんを運んでくれた。
「もう、ほぼ寝ちゃってるからさ、このままだと廊下で寝ちゃうわ。お父さんの部屋まで運ぶよ。どっち?」
「あっ、こっちです!ほんと、すみません!!!」
お父さんをベッドに寝かせた森乃さんは流石に疲れた様子だ。
森乃さんの方がお父さんよりも細いからそれは大変だったろう。
「ほんと、ありがとうございます、助かりました!!」
「ふはー、お父さん運ぶなんて大学以来!あん時は楽勝だったけど、流石におじさんも年取ったわ!!」
お父さんのベッドのそばにへなへなに座り込む森乃さんはけっこう辛そうだ。
「ほんとすみません、もしよかったら、ちょっと休憩していってください!お茶位しかないんですけどっ!」
「そんな気ぃ使わなくていいよー。あーーでもごめん、水もらってもいい?」
「はいっ!!」
私は大急ぎで水を準備した。
「はーー、生き返るーーー。しっかし、しばらく見ないうちに大きくなったねー穂香ちゃん!!」
「そうですね、背、結構伸びました!今160センチです!」
「おお、前はこんなんだったのにな。」
「そんなに小さくないですよーもう!」
森乃さんがリビングのソファに座って指し示す位置は120センチくらいの高さだ。
4年生だった私はそんなに小さくない。
酔っ払いのおじさんのジョークは相変わらずで思わず笑ってしまう。
「もう2年くらい前だもんな。いやー、女の子の成長は早い早い。うちの坊主も大きくなったけどな。前は二人よく遊んでたけどなー」
「そうですね、元気ですか?ひー君」
「ひー君呼び、久々に聞いた!!もうそう呼ぶ人、全然いないからさー。元気よ元気。こーんな大きくなって生意気なの!にょきにょき伸びておじさんよりもう大きいんだから!!」
「え、すごい大きい!あんなに小さかったのに!」
おじさんは170センチくらいなのかな?ひー君は私よりも頭一つ分位小さかったのにもうそんなに大きくなったんだ。
「そうそ、なんかムカつくよなー?このあいだなんてさー……」
おじさんはそういいつつも何か楽しげだ。久々に聞く知り合いの男の子の話は結構楽しかった。
背の高さを見誤って、おばあちゃんの家の蔵に頭を打ち付けたとか、むりやり小さいころの自転車をのろうとして思いっきりパンクさせたとか。
大きくなってもおっちょこちょいなのは変わらないらしい。



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