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・魅惑の君
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「やっと、会えたね!!すっごい嬉しい!!」
樹林君は、とろけるような甘い笑顔で頬を染めながら誰かに向かって話している。
えと、野々原さん、知り合い……?
李衣菜ちゃんの隣に座っている野々原さんを伺みたんだけど、李衣菜ちゃんに負けない位あわあわしている。
李衣菜ちゃんも私ももちろん知り合いじゃないし、あ、じゃあ、事務員さんか。
学校の用事かな?
私は、自分には関係のないことだと思って、李衣菜ちゃんの口の周りのケーキをふき取ることにした。
あんなオーラのある人の近くにいるのに、ケーキをつけたままじゃ、李衣菜ちゃんもいたたまれないだろう。
「ねえね、せっかく会えたんだから、照れてないでこっち向いて?」
大人の男の人相手に、随分な物言いだなぁと思いながら、ティッシュを鞄にしまう。
使ったティッシュはポリ袋に。
あっ、小さいポリ袋はゴミを捨てるのに一枚持っておくと便利だよ!
「ほら、こっち!!」
鞄の上に置いた手に、骨ばった私よりも一回り大きな手がのせられる。
思いのほか熱いその感触に驚いて顔をあげると、間近にはビックリするほどきれいなーーー樹林君??
「……!!!」
あまりにも驚くと人間、声なんてでないものだ。
えっと、今、私、FIZZERの樹林棋王君に話しかけられて、手、にぎられてる!!!?????
「こんなちっちゃな手で、色々頑張って作ってくれてるんだね?すごく嬉しい!!」
「ーーーー!!!!????」
私はびっくりしすぎて、助けを求めて李衣菜ちゃんの方を見た。
李衣菜ちゃんと野々原さんは手を取り合って、小さい声でキャーキャー言っている。
だめだ、助けてくれる気配はゼロ。
低いテーブルをはさんで向かい側に座る東園寺さんはニヤニヤしながらこっちを見ているし、事務員さんは我関せずという風に、紅茶を優雅に飲んでいる。
こちらも助けは期待できない。
「ふふっ。照れちゃってるの?かーーーーわいーーーー!!」
握られた手は樹林君の頬へと挙げられる。
そしたら、一瞬樹林君の頬に一瞬手の甲があてられた。
「ーーーーーー!!!!!」
私は驚きすぎて、手を思いっきり引っ込める。
あまりの出来事に、全く理解が追い付かない。
その行動をどうとったのかは知らないけれど、樹林君は、さっきよりももっともっととろけるような笑顔を見せた。
「ふふっ。恥ずかしがり屋なんだね。ねえ、明日のライブ、来てくれるでしょ??
でも、こっちの最前とかじゃない限り、こっちの方がもっとずっといい席だから、明日はここから僕を見てて?」
そう言って、どこからか取り出したのは「関係者」と書かれた紙。
今度は私の両手を手に取り、胸のあたりまで持ち上げ、その紙を優しく握らせた。
「約束……だよ??」
バチンとウィンクを決められ、私は混乱する。
「あーー、もっと話してたいんだけど、これからリハなの。もーー、もっと早く連絡くれたらよかったのにー!!」
そういいながら、樹林君が見ているのは……東園寺さん!?
「わりわり!でも、会わせてやったんだからよ、ほら、行かねえとまた怒られんぞ!!」
「もーー!!わかってるし!!!じゃ、ライブでねー!!」
樹林君はフリフリと私達に手を振って、元気に玄関の外へ向かい、黒い車に乗り込んでいった。
「せ、先輩、FIZZERの樹林棋王君と知り合い……なんですかっ!?」
「おう、俺、顔広いからさ。で、どうよ?推しに会えた気分ってのは?声にもできないってか??」
……は……、犯人はこの人かーーーーーっっ!!!!
私は今日一番ぽかんとした顔をしていたと思う。
樹林君は、とろけるような甘い笑顔で頬を染めながら誰かに向かって話している。
えと、野々原さん、知り合い……?
李衣菜ちゃんの隣に座っている野々原さんを伺みたんだけど、李衣菜ちゃんに負けない位あわあわしている。
李衣菜ちゃんも私ももちろん知り合いじゃないし、あ、じゃあ、事務員さんか。
学校の用事かな?
私は、自分には関係のないことだと思って、李衣菜ちゃんの口の周りのケーキをふき取ることにした。
あんなオーラのある人の近くにいるのに、ケーキをつけたままじゃ、李衣菜ちゃんもいたたまれないだろう。
「ねえね、せっかく会えたんだから、照れてないでこっち向いて?」
大人の男の人相手に、随分な物言いだなぁと思いながら、ティッシュを鞄にしまう。
使ったティッシュはポリ袋に。
あっ、小さいポリ袋はゴミを捨てるのに一枚持っておくと便利だよ!
「ほら、こっち!!」
鞄の上に置いた手に、骨ばった私よりも一回り大きな手がのせられる。
思いのほか熱いその感触に驚いて顔をあげると、間近にはビックリするほどきれいなーーー樹林君??
「……!!!」
あまりにも驚くと人間、声なんてでないものだ。
えっと、今、私、FIZZERの樹林棋王君に話しかけられて、手、にぎられてる!!!?????
「こんなちっちゃな手で、色々頑張って作ってくれてるんだね?すごく嬉しい!!」
「ーーーー!!!!????」
私はびっくりしすぎて、助けを求めて李衣菜ちゃんの方を見た。
李衣菜ちゃんと野々原さんは手を取り合って、小さい声でキャーキャー言っている。
だめだ、助けてくれる気配はゼロ。
低いテーブルをはさんで向かい側に座る東園寺さんはニヤニヤしながらこっちを見ているし、事務員さんは我関せずという風に、紅茶を優雅に飲んでいる。
こちらも助けは期待できない。
「ふふっ。照れちゃってるの?かーーーーわいーーーー!!」
握られた手は樹林君の頬へと挙げられる。
そしたら、一瞬樹林君の頬に一瞬手の甲があてられた。
「ーーーーーー!!!!!」
私は驚きすぎて、手を思いっきり引っ込める。
あまりの出来事に、全く理解が追い付かない。
その行動をどうとったのかは知らないけれど、樹林君は、さっきよりももっともっととろけるような笑顔を見せた。
「ふふっ。恥ずかしがり屋なんだね。ねえ、明日のライブ、来てくれるでしょ??
でも、こっちの最前とかじゃない限り、こっちの方がもっとずっといい席だから、明日はここから僕を見てて?」
そう言って、どこからか取り出したのは「関係者」と書かれた紙。
今度は私の両手を手に取り、胸のあたりまで持ち上げ、その紙を優しく握らせた。
「約束……だよ??」
バチンとウィンクを決められ、私は混乱する。
「あーー、もっと話してたいんだけど、これからリハなの。もーー、もっと早く連絡くれたらよかったのにー!!」
そういいながら、樹林君が見ているのは……東園寺さん!?
「わりわり!でも、会わせてやったんだからよ、ほら、行かねえとまた怒られんぞ!!」
「もーー!!わかってるし!!!じゃ、ライブでねー!!」
樹林君はフリフリと私達に手を振って、元気に玄関の外へ向かい、黒い車に乗り込んでいった。
「せ、先輩、FIZZERの樹林棋王君と知り合い……なんですかっ!?」
「おう、俺、顔広いからさ。で、どうよ?推しに会えた気分ってのは?声にもできないってか??」
……は……、犯人はこの人かーーーーーっっ!!!!
私は今日一番ぽかんとした顔をしていたと思う。
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