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近所では手に入らないオレンジ色の児童文庫を2冊手に持ち、レジに並ぼうと自由研究コーナーの前を通る。
「お母さん、私、これにする!!これ、他のと違ってピンクでかわいいもんっ!」
「えー、私もそれがいいーー!!」
ピンクの本……それって??
人の選んだ本を見るのは気が引けたんだけど、今日はどうしても気になってしまって、つい、自由研究コーナーの前にいる2組の親子の手元をみてしまった。
「あっ!!あの子達!穂香の本、手に持ってる!」
流石に大きな声を出したら不味いと思ったのか、李衣菜ちゃんは私に耳打ちしてきた。
そう、小学校2~3年生の女の子二人と、そのお母さんらしき大人が二人。
そのなかで、ツインテールにリボンを付けた女の子が、ピンク色の本を手に持っている。
(わ、私の本だ……!!)
初めて自分の本を買ってくれるかもしれない人を見てドキドキする。
運動会の徒競走の前以上に緊張する!!
「ママ、私もおんなじの欲しい!!」
「えー、じゃあ、店員さんに聞いてみよう、ここにはないみたいだから」
ショートカットの女の子がお母さんにねだって、2組の親子はレジへと向かって行った。
「これくださーーい!!」
「すみません、あちらの方の本と同じ本ってありますか?自由研究コーナーに1冊しか置いていなかったみたいで」
「お調べしますので、少々お待ちください。」
ツインテールの親子は、私の本を買って帰っていく。
(わぁ……!!私の本、はじめて買ってくれている人を見ちゃった……!!嬉しい、すっごく嬉しいっ!!)
「やった、やったね!!凄いね!!穂香!!」
私の手をにぎってブンブン振り回しながら、ピョンピョン跳ねだす李衣菜ちゃん。
「うん、すごい!嬉しい!!」
私は李衣菜ちゃんにされるがまま、ブンブン手を上下させていた。
「すみません、当店、他系列店舗共に在庫がなく……出版社に問い合わせして、取り寄せが可能か確認しますか」
「……ないんだって。ほら、違う本にしない?取り寄せって時間かかるんだよー」
「いや、あの本がいいの」
「じゃあ、すみません、お願いします。」
店員さんが電話をかけにレジの奥へと行くと、ショートカットの女の子のお母さんは、携帯電話を取り出し何かを打ち込んだ。
「えーー、ネット、軒並み売り切れじゃん。意外と人気なんだねー。」
「じゃあ、お取り寄せしてもらった方がいいねーー」
ショートカットの女の子はニコニコしながら、店員さんを待っている。
出版社に問い合わせ……って、私は嫌な予感がした。
「すみません、出版社にも在庫がないらしく、取り寄せできない状況でした」
「えーーーー、そんなぁーーーーーー!!」
女の子はひときわ大きな声で話す。
周りのお客さん達も何事かと思って、レジへと視線を向けていた。
「あー、ありがとうございます。ほら、ないなら仕方ないじゃん、他の本見てみようよ」
「いやーーー、ちいちゃん、あの本がよかったのにーーーー!!」
「わがまま言わない!!ほらっ!!」
女の子(ーーちいちゃんというみたい)は泣きながら、お母さんに自由研究コーナーへ連れ戻されていた。
「早く別の選ぼうよー。ほら、これとかこれとかいいんじゃない?」
お母さんは機嫌を取るように何冊か本を手に取り、ちいちゃんへと見せていた。
「いやーー、さっきのピンクのがいいの!こんな可愛くないのほしくないっ!!」
フロアに響き渡るほどの大声でちいちゃんは叫び出す。
泣き声は大きくなる一方で、耳が痛いくらいだ。
「だーー!!もう、そんなこというなら帰るよっ!!」
ちいちゃんは半ば引きずられるようにエレベーターへと乗せられていた。
「ちいちゃん、可哀想だったね……」
「うん……」
先ほどまでの嬉しさはどこかへ行って、ただ申し訳ない気持ちしか残っていなかった。
いつも本を買うときは、新しい物語の期待に胸膨らませ、レジへと向かうのに。
今日ははじめて、切ない気持ちでレジへと向かった。
「お母さん、私、これにする!!これ、他のと違ってピンクでかわいいもんっ!」
「えー、私もそれがいいーー!!」
ピンクの本……それって??
人の選んだ本を見るのは気が引けたんだけど、今日はどうしても気になってしまって、つい、自由研究コーナーの前にいる2組の親子の手元をみてしまった。
「あっ!!あの子達!穂香の本、手に持ってる!」
流石に大きな声を出したら不味いと思ったのか、李衣菜ちゃんは私に耳打ちしてきた。
そう、小学校2~3年生の女の子二人と、そのお母さんらしき大人が二人。
そのなかで、ツインテールにリボンを付けた女の子が、ピンク色の本を手に持っている。
(わ、私の本だ……!!)
初めて自分の本を買ってくれるかもしれない人を見てドキドキする。
運動会の徒競走の前以上に緊張する!!
「ママ、私もおんなじの欲しい!!」
「えー、じゃあ、店員さんに聞いてみよう、ここにはないみたいだから」
ショートカットの女の子がお母さんにねだって、2組の親子はレジへと向かって行った。
「これくださーーい!!」
「すみません、あちらの方の本と同じ本ってありますか?自由研究コーナーに1冊しか置いていなかったみたいで」
「お調べしますので、少々お待ちください。」
ツインテールの親子は、私の本を買って帰っていく。
(わぁ……!!私の本、はじめて買ってくれている人を見ちゃった……!!嬉しい、すっごく嬉しいっ!!)
「やった、やったね!!凄いね!!穂香!!」
私の手をにぎってブンブン振り回しながら、ピョンピョン跳ねだす李衣菜ちゃん。
「うん、すごい!嬉しい!!」
私は李衣菜ちゃんにされるがまま、ブンブン手を上下させていた。
「すみません、当店、他系列店舗共に在庫がなく……出版社に問い合わせして、取り寄せが可能か確認しますか」
「……ないんだって。ほら、違う本にしない?取り寄せって時間かかるんだよー」
「いや、あの本がいいの」
「じゃあ、すみません、お願いします。」
店員さんが電話をかけにレジの奥へと行くと、ショートカットの女の子のお母さんは、携帯電話を取り出し何かを打ち込んだ。
「えーー、ネット、軒並み売り切れじゃん。意外と人気なんだねー。」
「じゃあ、お取り寄せしてもらった方がいいねーー」
ショートカットの女の子はニコニコしながら、店員さんを待っている。
出版社に問い合わせ……って、私は嫌な予感がした。
「すみません、出版社にも在庫がないらしく、取り寄せできない状況でした」
「えーーーー、そんなぁーーーーーー!!」
女の子はひときわ大きな声で話す。
周りのお客さん達も何事かと思って、レジへと視線を向けていた。
「あー、ありがとうございます。ほら、ないなら仕方ないじゃん、他の本見てみようよ」
「いやーーー、ちいちゃん、あの本がよかったのにーーーー!!」
「わがまま言わない!!ほらっ!!」
女の子(ーーちいちゃんというみたい)は泣きながら、お母さんに自由研究コーナーへ連れ戻されていた。
「早く別の選ぼうよー。ほら、これとかこれとかいいんじゃない?」
お母さんは機嫌を取るように何冊か本を手に取り、ちいちゃんへと見せていた。
「いやーー、さっきのピンクのがいいの!こんな可愛くないのほしくないっ!!」
フロアに響き渡るほどの大声でちいちゃんは叫び出す。
泣き声は大きくなる一方で、耳が痛いくらいだ。
「だーー!!もう、そんなこというなら帰るよっ!!」
ちいちゃんは半ば引きずられるようにエレベーターへと乗せられていた。
「ちいちゃん、可哀想だったね……」
「うん……」
先ほどまでの嬉しさはどこかへ行って、ただ申し訳ない気持ちしか残っていなかった。
いつも本を買うときは、新しい物語の期待に胸膨らませ、レジへと向かうのに。
今日ははじめて、切ない気持ちでレジへと向かった。
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