フラッシュバックしたのは、初めて意識が途絶えた時のこと

神永 遙麦

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フラッシュバックしたのは、初めて意識が途絶えた時のこと

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 冷えていく、冷えていく、少しずつ。ぷかりぷかりと。
 少しずつ体温が奪われた。少しずつ思考が朧げに、視界が白く……。

 7歳の僕は確実に死んでいた。
 ずっと記憶の彼方に追いやっていたことが突然、ぶり返してきた。

 青い青い空。目に焦げつくような太陽。海は容赦なく冷えている。
 助けを呼んでも誰も応えてくれない。パパですらも。ママはいない。パパはビキニの女の子を引っ掛けている。
 海の冷たさが分からなく、照りつくような太陽も分からなくなっていた。さざなみの音しか分からなかった中、女の人の声が響いた。
 この記憶はここで途絶えた。

 21歳の僕には、なぜあの時溺れかけていたのか分からない。ちょっとした知識が増えた今だと、低体温症だと分かる。
 あのお姉さんは当時中学2先生だったと聞いた。ママと一緒にその女の子の家に何度もお礼に行った。女の子も警察から表彰されていた。

 記憶を頼りにあの女の子の名前をググってみた。
 古い記事は彼女を称賛、比較的新しい記事は批判的だった。
 溺れかけていた小学1年生の男の子を救った女子中学生が、度胸試しなんかで滝に飛び込んだんだ。彼女の他にもう1人が亡くなっている。
 赤十字かどっかで働いてそうな彼女が……きっと立派な人間になっていそうだった彼女が。たったの15歳の馬鹿だ……、生きていれば青春の1ページだった。
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