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隠してばっかりのメイク

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 下地を塗ったら、ファンデを塗って肌の荒れを見えづらくする。英文字と数字が入り混じった名前のコンシーラーでニキビとか赤みを隠す。慣性的にパウダーも、これだと素肌っぽく見える上にカバーも出来る。

 発色とか関係なしで、隠してばっかりのメイク。
 だって、醜いものを直さないと綺麗にならないでしょ? そう、お母さんに教わった。小さいころ、片付けの時。片付けと化粧は違うけど、理論は同じだと思う。
 私は美人じゃない。華がない上に、整った顔立ちですらない。若い子は肌が綺麗らしい。(一応、高校生なんだけどな)

 私が愛読している小説の……10代に入ったばかりの頃から愛読しているしている小説の主人公は、鏡に美しいものが写ると嬉しいらしい。だから美しいとは言い難い自分を見るのが嫌らしい。
 わかる。初めて読んだ時はよく分からなかった。女の子の癖に美への憧れは薄かったから。でも、今はわかる。ハッキリと。年々自分の顔が嫌になってくる。

 彼女のようなそばかすはないけど、ニキビだらけニキビ痕だらけの顔。濃ゆく真っ直ぐな眉。猫のように釣り上がった目元に一重まぶた。鼻筋は高く通っているが、小鼻が大きい。だが額、鼻、口元は均整が取れた間隔だ。やや尖った大きな耳 ――怒られそうだけど、大ぶりのピアスでもつければ映えそう――。ふさふさでかなりボリュームのあるダークレッドブラウンの髪は唯一の美点。シェーディングを頑張った形跡がある角ばった顎。
 嫌になる。
 メイクをした後の顔も嫌になる。最近、ようやくマシに見えるようになってきたけど……。そりゃそうだよ。メイクにいくらつぎ込んだと思ってんの?

 *

 最近は時間つぶしにスマホを見る時間を減らして、代わりに本を読むようにしている。小説を読むことの方が多いけど、解説本とかも読めるようになってきた。

 基本的にスマホを機内モードにして本を読んでいる理由は、メイクと同じような理由。
 自分を魅力的な女性だと思いたいから。
 だって、スマホばっか見てる人より、本をよく読む女性の方が素敵だと思うから。

 私が憧れる自分になるために、体を絞った。キツかったけど水分をたくさん取って肌質を改善した。ファンデは特別な時じゃない限り使わない。大学に行くくらいでは使わない。面接でも使わない。女優さんのメイクを研究してみて、赤い口紅にもヌーディーな粘膜リップにも手を出してみた。チャラチャラした服には手を出さない。

 小さい頃の私が憧れたのはシンプルなスレンダーラインのドレスが似合うアフリカ系のプリンセスと、本をよく読むプリンセスだったから。そして、今の私が憧れるのは「永遠の妖精」と呼ばれた女優。
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