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ジャケットを貸りたくて、ひょっこりとレイの部屋を覗いてみた。
レイ、何かを書いているみたい。何だろう? レイ、意外と鈍いから、イケるよね?
私は忍び足でレイの背後に近づいてみた。
だけど、レイの真後ろに立った時、気づかれた。レイはギョッと紙をガサガサッと座布団の下に突っ込んだ。美羽の膝は呆然と折れた。
「レイ……?」
何か言おうとしたのにポツリと切れちゃった声は、私のじゃないみたいに遠い感じがした。
「あ、えっと、ちょっと小説書いててさ。自殺するシーンなんだ」と、レイは用意してあったような言い訳を、しどろもどろにつなげた。
「ヒロインは私なの?」
ここで可愛らしく首を傾げてみせる余裕はなかった。
――美羽へ。
13年間、君のお父さんとお母さんが育ててくださった上に僕の親族から守ってくださった。そんな御恩があるに関わらず、18で死のうとするこの、親不孝をお許しください――。
アワアワと宙を横断するレイの左手を、私は両手で掴んだ。涙がひとしずく、手に落ちた。想いも痛みも怒りも全部が膨れ上がって、こみ上げて、こみ上げて……溢れて零れてしまった。
レイは手をするりと抜くと、私の背に回しトントンとあやすように叩き始めた。こういう時、レイにとって私は「可愛い妹」なんだって思い知らされてしまう。それどころじゃないのは知っているけど、「この間セ○クスしようと思ってくれたのは気まぐれなのかもしれない」と思ってしまう。
「レイ、知ってる? 私が何で豆知識ばっかり覚えているのか?」
「たまに豆知識じゃないのあるけどな。……勉強が好きだから?」
「私、体育会系だもん」
私は深呼吸をした。冷たい呼吸が鼻を中を通った。
「私さぁ、レイに一目惚れしてたんだ~。理由知ってる?! 幼稚園のお友達より大人っぽく見えたから!」
予想外だったのか、レイが驚いたようにピクッと反応した。
13年分の長い話になるけど、豆知識でも披露するように軽い調子で話そう。レイに抱きしめられたまんまだけど。
「レイはあんまり意識したことないと思うけど、私たち同い年でしょ。初めて会った時は私もレイも5歳でさ。なのにレイは3月生まれ・私は11月生まれで、年長さんと年中さんで分かれてて」
――今思うと、憧れと混同しちゃったような恋だったのかも――。
「確かに満年齢は同じだったね。誕生日が半年以上離れているから……」と、ここでレイは不自然に言葉を切った。たぶん、このまま続ければ私が1番気にしていることに触れるはめになるから。
「同い年だけど一学年上でカタカナを知っているレイ。私がカタカナを習い始めた頃、レイは漢字を習っていたでしょ。私が「一」「二」を習う頃、レイは掛け算を習っていた」
おまけに、もともと私の方が勝っていた体格はどんどん逆転されていくしさ。
「それでもレイに子ども扱いされるのは嫌だったの。いくら女の子だからって、年下……ではないけど一学年下だからってレイに負けたくなんてなかった。だって、いつかはレイの横で隣で並び立ちたいもん。だから、たくさん勉強した」
レイの胸を押して、勢いよく離れた。右手を右目の位置にまで持っていきピースサインを作った。
「以上! 私が豆知識をたくさん覚えた理由! 普通に勉強するより早いんだもん!」
レイはズズッと動くとタンスからハンカチを取り出して、私の目元を吹いた。
「充血しているよ」
「ありがとう」
私はレイに抱きついて、耳元で明るい調子で囁いた。(マンガで覚えた!)
「ねえ、レイ。ちょっとだけお散歩に行こうよ」
「え? 曇りだろ?」
「予報だと雨は振らないし、これから晴れるもーん!」
レイの表情を見たくなかった。
遺書まで書いているレイがここで死なずにいるのはきっと、優しさ。散歩に付き合ってくれたとしてもそれは「妹」に対する優しさ。 ――私が1番レイから受けたくないもの――。
それでも、死ぬことからレイの気を逸したい。
レイは某黄色熊のように丸めた手を額に当て考えている。
「まぁ……いいか」と、レイは顔を上げた。顔はやっぱり暗いけど、無理やり笑顔を作っているよう。
「でしょ! 風邪を引いたとしてもレイは講義がないし、私も高校サボる! 」と、私は努めて明るく両手をパンッと叩いた。
「ダメに決まってます。お母さんを心配させない」
「じゃあ、折りたたみ傘を持っていこうよ」
*
まだ空は青い。だけどもうすぐでオレンジ色の太陽の主張が激しくなる。まだ空が青いうちに言おう。
「ねえ、レイ」と、抱きつくようにレイと腕を組んだ。
「ん?」
レイは腕を振り解かなかった。普段なら、近所の人の目があるから、ってすぐに解くのに。
「あのね、レイ。私がずっと話しててもちゃんと聞いてくれるレイの優しい所が好き」
「何を急に。と、言うか別に優しくは―」
「ゴツゴツした大きな手が好き」生まれて初めてレイの言葉を遮った。「実は名前を越えるくらいイケメンなだって知ってた?」
「別にイケメンじゃ―」
人生で2度目、レイの言葉を遮るのは。
「パパとママに申し訳が立たないからって、私に手を出さなかった誠実さが好き」
「べ、別に誠実なわけじゃなく気まずいだけで―」
――否定しないでよ。レイ――。
「すんごい早口で喋っても、綺麗に聞こえる滑舌の良さが好き」
「特殊すぎる」
「みんながスマホでゲームしてても、1人だけ小説を読む。そんな謎の固い芯が好き。こないだは何読んだ?」
「太宰治の『人間失格』……おすすめはしない」
「あれ、暗いし、気持ち悪いよね。私がどんなに頑張っても、常の私の先を行く。その努力家なとこが好き」
――たぶん、「恩返し」とかが理由なんだろうけど――。
「君も努力家でしょうが」
「ふふん」と私は組んでいた腕を少し下げて、手も繋いだ。
さて、ここからが本題。
「1人で、パパとママに黙って実のお母さんのお墓参りに行く」レイはビクッと私から離れた。だから手だけは繋いだ。「そんな、いじらしさが好き」
レイはあたふたと目線を動かし始めた。今度は言い訳を用意していなかったみたい。
「あ、えっと、その、裏切るつもりはなくて」
「裏切りだなんて思っていないよ。そこは置いといて、何か言われたの?」
「何で知ってんの?」
私はさっきより強くレイの手を握った。ここからが核心だと思ったから。
「だって、ネットの履歴消してもバレるよ。Wi-Fiのルーターで見れば」
「は?」
「ちょっとね、昔見たブログをまた読みたくなったから。ちょっとググってやってみちゃった。レイが使ってるタブレット、ママのお下がりだからさ、分かっちゃったの」
「叔母 死ねと言われた」
「死ねと言われた」
「自殺 方法」
「いのちの電話 ため息をつかれた」
「子どもに元カレの名前」
「姉が殺された 辛い」
調べたくもない情報のオンパレード。
「お墓参りで、実の叔母さんに会ったの?」
レイはだんまりで拳が震えている。ここで更に言ったら別れる羽目になりそう。
「レイ。あなたのお母さんの妹さんに会ったの?」
レイは私が繋いでいた手を容易く振りほどいた。私とのレイの間に隙間風が通る。
「レイ。あなたのお父さんがしたことは、あなたには何の関係もないんだよ」
返事がない。レイの目はうつろ。
どうすればいいんだろう? 心理学は学んだことがないけど……やっぱり素人がカウンセラーさんの真似しちゃいけなかったのかな?
でも、どうすれば……いいんだろう? レイには死んでほしくない。
レイの目はうつろでどこを見ているのか分からない。手がうろうろそわそわと何かを探すように舞っている。私は咄嗟にレイの手を取った。死んだ魚のような冷たい手で、常に温かな私の手のせいで更に冷たく感じた。
レイは私の手を持ち上げ、チュッと手首にキスを落とした。手入れをしていないみたいで、ガサガサのキスだった。
「ねえ、レイ」
「ん?」
「あなただけの名前を教えてよ」
「はぁ?」
「玲司」はレイの実のお母さんの元カレさんの名前由来らしい。レイのお父さんは裁判でそう供述していた、とニュースに出ていた。
きっと、レイもその報道を見ていた。きっと苦しかっただろうな。だって自分の名前が原因で、父親が母親を殺しただなんて。もし自分が女の子だったら避けられた自体だったかもしれない。
「レイ。私はレイと一緒に生きたい」
「プロポーズ?」
「それは私が大学決まってから、富士山の上で逆プロポーズする予定」
「それ、何年後?」
「推薦の選考がうまく行っていたら、今年のクリスマスにでも」
羊毛のような雲が、血のような赤で染まっていく。
レイは錆ついたように笑った。
「『レイ』は僕じゃなくて美羽だね」
「なんで? Rayだから?」
「まぁ、何となくだけど、Rayっぽいなぁっと」
レイの表情筋の動かし方も口元を掻く手も全部がぎこちなくて、無理やり明るい調子になっているようにしか見えない。
だから私も無理やり笑った。それでもレイよりは自然だと思う。笑い慣れているもん。
「じゃあレイはdoe?」
「せめてDeerで」
「じゃああなただけの名前はDearでいい?」
――多少、発音を変えてもバレないよね?――。
さすがに「鹿」という名前は嫌なのか、レイはまた某黄色熊のように考え始めた。ブツブツと呟きながら。
レイは何かを嫌がることができる。冗談のようで、実生活で使わないようなものであっても。
美羽は救いを感じた。まだ、大丈夫だと。
「大翔とかどう?」
「I think it's nice. My dearer dearest Taiga」
レイ、何かを書いているみたい。何だろう? レイ、意外と鈍いから、イケるよね?
私は忍び足でレイの背後に近づいてみた。
だけど、レイの真後ろに立った時、気づかれた。レイはギョッと紙をガサガサッと座布団の下に突っ込んだ。美羽の膝は呆然と折れた。
「レイ……?」
何か言おうとしたのにポツリと切れちゃった声は、私のじゃないみたいに遠い感じがした。
「あ、えっと、ちょっと小説書いててさ。自殺するシーンなんだ」と、レイは用意してあったような言い訳を、しどろもどろにつなげた。
「ヒロインは私なの?」
ここで可愛らしく首を傾げてみせる余裕はなかった。
――美羽へ。
13年間、君のお父さんとお母さんが育ててくださった上に僕の親族から守ってくださった。そんな御恩があるに関わらず、18で死のうとするこの、親不孝をお許しください――。
アワアワと宙を横断するレイの左手を、私は両手で掴んだ。涙がひとしずく、手に落ちた。想いも痛みも怒りも全部が膨れ上がって、こみ上げて、こみ上げて……溢れて零れてしまった。
レイは手をするりと抜くと、私の背に回しトントンとあやすように叩き始めた。こういう時、レイにとって私は「可愛い妹」なんだって思い知らされてしまう。それどころじゃないのは知っているけど、「この間セ○クスしようと思ってくれたのは気まぐれなのかもしれない」と思ってしまう。
「レイ、知ってる? 私が何で豆知識ばっかり覚えているのか?」
「たまに豆知識じゃないのあるけどな。……勉強が好きだから?」
「私、体育会系だもん」
私は深呼吸をした。冷たい呼吸が鼻を中を通った。
「私さぁ、レイに一目惚れしてたんだ~。理由知ってる?! 幼稚園のお友達より大人っぽく見えたから!」
予想外だったのか、レイが驚いたようにピクッと反応した。
13年分の長い話になるけど、豆知識でも披露するように軽い調子で話そう。レイに抱きしめられたまんまだけど。
「レイはあんまり意識したことないと思うけど、私たち同い年でしょ。初めて会った時は私もレイも5歳でさ。なのにレイは3月生まれ・私は11月生まれで、年長さんと年中さんで分かれてて」
――今思うと、憧れと混同しちゃったような恋だったのかも――。
「確かに満年齢は同じだったね。誕生日が半年以上離れているから……」と、ここでレイは不自然に言葉を切った。たぶん、このまま続ければ私が1番気にしていることに触れるはめになるから。
「同い年だけど一学年上でカタカナを知っているレイ。私がカタカナを習い始めた頃、レイは漢字を習っていたでしょ。私が「一」「二」を習う頃、レイは掛け算を習っていた」
おまけに、もともと私の方が勝っていた体格はどんどん逆転されていくしさ。
「それでもレイに子ども扱いされるのは嫌だったの。いくら女の子だからって、年下……ではないけど一学年下だからってレイに負けたくなんてなかった。だって、いつかはレイの横で隣で並び立ちたいもん。だから、たくさん勉強した」
レイの胸を押して、勢いよく離れた。右手を右目の位置にまで持っていきピースサインを作った。
「以上! 私が豆知識をたくさん覚えた理由! 普通に勉強するより早いんだもん!」
レイはズズッと動くとタンスからハンカチを取り出して、私の目元を吹いた。
「充血しているよ」
「ありがとう」
私はレイに抱きついて、耳元で明るい調子で囁いた。(マンガで覚えた!)
「ねえ、レイ。ちょっとだけお散歩に行こうよ」
「え? 曇りだろ?」
「予報だと雨は振らないし、これから晴れるもーん!」
レイの表情を見たくなかった。
遺書まで書いているレイがここで死なずにいるのはきっと、優しさ。散歩に付き合ってくれたとしてもそれは「妹」に対する優しさ。 ――私が1番レイから受けたくないもの――。
それでも、死ぬことからレイの気を逸したい。
レイは某黄色熊のように丸めた手を額に当て考えている。
「まぁ……いいか」と、レイは顔を上げた。顔はやっぱり暗いけど、無理やり笑顔を作っているよう。
「でしょ! 風邪を引いたとしてもレイは講義がないし、私も高校サボる! 」と、私は努めて明るく両手をパンッと叩いた。
「ダメに決まってます。お母さんを心配させない」
「じゃあ、折りたたみ傘を持っていこうよ」
*
まだ空は青い。だけどもうすぐでオレンジ色の太陽の主張が激しくなる。まだ空が青いうちに言おう。
「ねえ、レイ」と、抱きつくようにレイと腕を組んだ。
「ん?」
レイは腕を振り解かなかった。普段なら、近所の人の目があるから、ってすぐに解くのに。
「あのね、レイ。私がずっと話しててもちゃんと聞いてくれるレイの優しい所が好き」
「何を急に。と、言うか別に優しくは―」
「ゴツゴツした大きな手が好き」生まれて初めてレイの言葉を遮った。「実は名前を越えるくらいイケメンなだって知ってた?」
「別にイケメンじゃ―」
人生で2度目、レイの言葉を遮るのは。
「パパとママに申し訳が立たないからって、私に手を出さなかった誠実さが好き」
「べ、別に誠実なわけじゃなく気まずいだけで―」
――否定しないでよ。レイ――。
「すんごい早口で喋っても、綺麗に聞こえる滑舌の良さが好き」
「特殊すぎる」
「みんながスマホでゲームしてても、1人だけ小説を読む。そんな謎の固い芯が好き。こないだは何読んだ?」
「太宰治の『人間失格』……おすすめはしない」
「あれ、暗いし、気持ち悪いよね。私がどんなに頑張っても、常の私の先を行く。その努力家なとこが好き」
――たぶん、「恩返し」とかが理由なんだろうけど――。
「君も努力家でしょうが」
「ふふん」と私は組んでいた腕を少し下げて、手も繋いだ。
さて、ここからが本題。
「1人で、パパとママに黙って実のお母さんのお墓参りに行く」レイはビクッと私から離れた。だから手だけは繋いだ。「そんな、いじらしさが好き」
レイはあたふたと目線を動かし始めた。今度は言い訳を用意していなかったみたい。
「あ、えっと、その、裏切るつもりはなくて」
「裏切りだなんて思っていないよ。そこは置いといて、何か言われたの?」
「何で知ってんの?」
私はさっきより強くレイの手を握った。ここからが核心だと思ったから。
「だって、ネットの履歴消してもバレるよ。Wi-Fiのルーターで見れば」
「は?」
「ちょっとね、昔見たブログをまた読みたくなったから。ちょっとググってやってみちゃった。レイが使ってるタブレット、ママのお下がりだからさ、分かっちゃったの」
「叔母 死ねと言われた」
「死ねと言われた」
「自殺 方法」
「いのちの電話 ため息をつかれた」
「子どもに元カレの名前」
「姉が殺された 辛い」
調べたくもない情報のオンパレード。
「お墓参りで、実の叔母さんに会ったの?」
レイはだんまりで拳が震えている。ここで更に言ったら別れる羽目になりそう。
「レイ。あなたのお母さんの妹さんに会ったの?」
レイは私が繋いでいた手を容易く振りほどいた。私とのレイの間に隙間風が通る。
「レイ。あなたのお父さんがしたことは、あなたには何の関係もないんだよ」
返事がない。レイの目はうつろ。
どうすればいいんだろう? 心理学は学んだことがないけど……やっぱり素人がカウンセラーさんの真似しちゃいけなかったのかな?
でも、どうすれば……いいんだろう? レイには死んでほしくない。
レイの目はうつろでどこを見ているのか分からない。手がうろうろそわそわと何かを探すように舞っている。私は咄嗟にレイの手を取った。死んだ魚のような冷たい手で、常に温かな私の手のせいで更に冷たく感じた。
レイは私の手を持ち上げ、チュッと手首にキスを落とした。手入れをしていないみたいで、ガサガサのキスだった。
「ねえ、レイ」
「ん?」
「あなただけの名前を教えてよ」
「はぁ?」
「玲司」はレイの実のお母さんの元カレさんの名前由来らしい。レイのお父さんは裁判でそう供述していた、とニュースに出ていた。
きっと、レイもその報道を見ていた。きっと苦しかっただろうな。だって自分の名前が原因で、父親が母親を殺しただなんて。もし自分が女の子だったら避けられた自体だったかもしれない。
「レイ。私はレイと一緒に生きたい」
「プロポーズ?」
「それは私が大学決まってから、富士山の上で逆プロポーズする予定」
「それ、何年後?」
「推薦の選考がうまく行っていたら、今年のクリスマスにでも」
羊毛のような雲が、血のような赤で染まっていく。
レイは錆ついたように笑った。
「『レイ』は僕じゃなくて美羽だね」
「なんで? Rayだから?」
「まぁ、何となくだけど、Rayっぽいなぁっと」
レイの表情筋の動かし方も口元を掻く手も全部がぎこちなくて、無理やり明るい調子になっているようにしか見えない。
だから私も無理やり笑った。それでもレイよりは自然だと思う。笑い慣れているもん。
「じゃあレイはdoe?」
「せめてDeerで」
「じゃああなただけの名前はDearでいい?」
――多少、発音を変えてもバレないよね?――。
さすがに「鹿」という名前は嫌なのか、レイはまた某黄色熊のように考え始めた。ブツブツと呟きながら。
レイは何かを嫌がることができる。冗談のようで、実生活で使わないようなものであっても。
美羽は救いを感じた。まだ、大丈夫だと。
「大翔とかどう?」
「I think it's nice. My dearer dearest Taiga」
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