上 下
10 / 19
裏切りの集う世界

少年と少女の対面

しおりを挟む
 美桜みおはなるべくキョロキョロしないようにしていた。

 意識を取り戻した凌弥りょうやに、Mr.カールズの家に連れ込まれて、およそ30分。よその家での振る舞い方は習った。とは言え、この世界ではどう振る舞えばいいのか、美桜は知らなかった。下手に日本流に振る舞った挙げ句、失敗したくなかった。どうすればいいのか。「失敗から学べ」という言葉に素直に従うことの出来る謙虚さは、美桜にはなかった。
 せめてもの礼節として、美桜は正座で部屋の隅に鎮座していた。
 これであれば下手にスペースを取ることはない。元の世界実家では椅子だったため正座にはなれておらず、美桜はもぞもぞと足の親指を動かして痺れを逃そうともがいていた。

 凌弥は凌弥で、家族以外の女性に慣れておらず、美桜がいる隅とは真向かいの隅に座っていた。
 ビルは「トム」の故郷の人間だと察し、席を外していた。もしこの場にビルがいたのなら、笑いを堪えられなかっただろう。いくら10代前半で同年代の男女とは言え、30分も離れた距離でだんまりは不気味だ。

 口を開こうとしない自分に苛立ち、美桜は自分への言い訳を繰り返し、遂には凌弥の観察を始めた。
 髪はライトブラウン。青銅のような瞳は感情がグラグラ揺れていることは分かるが、何を考えているのかは読み取れない。思春期特有の周囲のへの強い警戒心?顎は細いが、角はしっかりある。
 そこは羨ましい、と丸顎の美桜は思った。
 肌は色黒。日焼けではなく、生まれつきのような色。顔立ちも濃ゆく、ラテン系を彷彿とさせる。鷲鼻でなければ美男子の部類に入るだろうなぁ。
 九州女性を母に持つ美桜だが顔立ちは薄く、父親が雪国出身であるためか色白だ。

 
 *

 凌弥は覚悟を決めた。
 正直不安だ。家族以外の女性で親しかったのは、幼稚園児か小1のカーリーだけだった。妹ですら10歳。
 それでも、男なら……。古臭い考えだが、背中を押してくれる言葉がほしかった。
「名前、何でしたっけ?」
 あ、第一声ミスった。

「美園 美桜です」
 良かった。怒られなかった。
「オレは朝緑 凌弥」そうオレは自分の人差し指を向けた時、美園さんが先輩かもしれない、という可能性に初めて思い至った。「……です」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

6年生になっても

ryo
大衆娯楽
おもらしが治らない女の子が集団生活に苦戦するお話です。

[恥辱]りみの強制おむつ生活

rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。 保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。

カタファルコ(棺台)

多谷昇太
ライト文芸
これはかの天才彫刻家ベルニーニの逸話からのショートショートです。

校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれた女子高生たちが集団お漏らしする話

赤髪命
大衆娯楽
※この作品は「校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれた女子高生たちが小さな公園のトイレをみんなで使う話」のifバージョンとして、もっと渋滞がひどくトイレ休憩云々の前に高速道路上でバスが立ち往生していた場合を描く公式2次創作です。 前作との文体、文章量の違いはありますがその分キャラクターを濃く描いていくのでお楽しみ下さい。(評判が良ければ彼女たちの日常編もいずれ連載するかもです)

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

処理中です...