旦那の悲鳴が聞きたい

Miki

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旦那の悲鳴を聞きたい

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 眠い、無理、痛い、無理。

 布団の枕元に置かれている時計を見れば、深夜を示していた。私の眠気はピークを迎えそうだ。

「エミ?力が入ってないけど大丈夫?」

 うつ伏せに転がっている旦那が、頭だけ振り向かせながら言う。

「眠い、ユウさん、私無理。手も痛い」

 私の名前は鈴木エミ。この転がっている旦那様、鈴木ユウの妻だ。私もユウも、この前お揃いで買ったパジャマに着替え、いつでも休める格好になっている。
 しかし、私達が寝ていないのには、理由がある。

「ユウさんの体、どこもかしこもコリすぎ。いくら押しても効いてる気がしないよー…」

 寝る直前、ユウからマッサージを頼まれた。
 日々、仕事やら家事やら、一緒に頑張ってくれているので、少しやってあげようかな、と、始めては見たものの、首からふくらはぎにかけて、コリが酷すぎて、私の手が悲鳴をあげてしまった。
 おまけに日中の疲労もあり、眠気が増して、余計に手には力が入らなくなった。

「あはは、ごめんね。」
 うつ伏せの状態のまま、ユウが言う。

 あと、マッサージをしていないのは、足の裏のみだが、私の意識が持ちそうにない。


 …とっておきを、使う時が来たわね。


 私は布団の隙間に隠していた物を取り出した。
 こんなこともあろうかと、買っといて良かったわ。

「あと足の裏だけよね、パパッとやって、早く寝るよ」

「ありがとう、エミ。よろしくお願いします」

 怪しく笑う私の表情は、ユウには見えていない。

 

 さぁ、はじめましょうか。

 先程取り出したものをユウの足の裏に思いっ切り押し当てた。

「…ん?!??!!まっ、待って!エミ!」
 
 突然悲鳴を上げ始める。もちろん予定通りの反応だ。
 うつ伏せのままのユウは、必死にこちらを振り向こうとするが、痛みによってそれは出来ないでいた。

「待ってたら終わらないでしょ。私は早く寝たいの。大人しくしててよ」

 私は容赦なく、ユウの足の裏にソレを当て続ける。

「あーぁああ!!それ無理!待ってってば!!
 それ!足つぼ、の…棒でしょ?!」

 痛みに耐えながらしゃべるユウ。

「この方がよく効くでしょ?私の手の痛みも軽減されるわ」

「お、俺の!!足が!あだだだだだっ!」

「ちょっとココは胃のところよ。最近バタバタしてたものね。きっと弱ってるんだわ。しっかり押しときましょ」

「え、え、エミさん?!?!ぎゃーーーあ!!!
 なんか楽しんでない???!」

「楽しいわよ?あなたの疲れを癒やしてあげられるんだもの」

 私の手によって、生まれる旦那様の悲鳴。
 おかげで眠気も吹っ飛んだわ。

「今度はどこを押しましょうかね?」

 ユウの悲鳴は、私の気がすむまで響き続けた。
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