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序章
プロローグ
しおりを挟む「あぁ……素晴らしい素晴らしいぞ!」
この手で造り出した、平等に訪れる"死"の光景に男の胸の鼓動は高く鳴り打つ。
大地は燃え上がり、鉄屑を擦り合わせたかたのような悲鳴音が耳の奥に響く。蒸せ返るような血生臭に、視界に映る崩れ行く建造物。
どれ程、どれ程待ち望んだことか。長かった、永かった……永久に続くと思われた習慣化した日常。グツグツと煮込まれた煮え湯を飲まされる日々に気が狂いそうになったのは一度や二度ではない。
首を絞め、水に顔を埋め、爪を剥ぎ、身に傷を刻む。毎日毎日と淡々と……。
「しかし!それも今宵で終わりを告げるのだ!」
祝福を唱え、祝いの美酒を振る舞おう。
祝福は呪詛に、美酒は毒に。
狂いに狂った脳裏に焼き付けよう、この舞台を。演じきった劇場は終演を向かえ、幕引きをするのだ。
ふっと、頬に熱い何が伝う。
「……泣いているのか?」
指で拭えど、止めどなく流れる滴は熱く熱く燃えるようだ。フッ……と口から乾いた笑いが漏れる。激情に身を委ね高らかに感情を吐き出そう。
「フッハハハハハハハハハハハハーー!!愚かなる愚かなるぞ!!この我輩が故に滅ぼしてやったぞ!!ハッハハハーーゴッホ、ゴッホ……はっははは」
息を吐き過ぎむせるが、そんなことはどうでもいい。気分がいいのだーーとても、とても。こんなに晴れやかな心はいつぶりだろうか?笑いが止まらない。
やってやった、復讐は虚しいと誰もが言った。
だが、そんなのは本当に憎んでないヤツの綺麗事だ。したところでどうなる?誰が喜ぶ?彼がそんな事を望んだのか?と言うヤツの喉元を掻き切り、そいつらを否定しよう。
確かに、したところで何かが戻る訳でも、何かを得る訳でもなく寧ろ、何かが確実に無くなるだろう。
しかし……しかし……しかし…………だ。
なら何故、これ程までに晴れやかなのだろうか?酒をいくら煽れどーー、女を犯し潰そうとーー、自身を責め立てようとーー、何をせど晴れなかった芯の奥。それが、一切の一欠片も塵一つ残さず、淀みが消え失せたのだ。
「……………………やったぞ。やったんだ、我輩は……私は……」
男は、崩れ行く建物を赤くなった目元を擦りしかと焼き付けようとする。だが、拭えど拭えど溢れ出る熱が止まらない。それに伴う様に、喉の奥から声にならない叫びが込み上げる。
「…………あ……ッ……あぁ……あぁああ!!」
一人、今初めて失った事を知った子供の様に、男の泣き叫ぶ声が響き渡った。
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