俺のナビキャラが最強すぎる件~守護天使に指導されながら現代ダンジョン攻略~

樋渡乃すみか

文字の大きさ
上 下
1 / 5

000

しおりを挟む

 神は言った。


「最近さあ、英雄が出てこなくない? 神的にはさ、今の世界に問題アリだと思うわけ」

 まだ神が地上にあった時代は、人間にとって多くの困難がひしめいていた。だからこそ英雄が現れ、彼らの物語が綴られた。
 しかし、現在の世界はあまりに退屈だ。
 神が天界に居を移して以降、人間たちはその適応力と繁殖力にものを言わせて世界の支配者になってしまった。結果、英雄譚は過去に語られるものとなった。実に嘆かわしいことである。

「面白い英雄譚が生まれるように、世界の在り方を変えちゃおっかな~」

 椅子に深く腰掛け、神は自身の使いに話の水を向けた。
 天使の一柱であるウリエルは、主の言葉に恭しく首を垂れる。

「すべては御心のままに」

 火の顕現たるウリエルは、神お気に入りの熾天使だ。
 燃える炎のごとき髪を靡かせ、叡智の書を開きながら相談に応じてくれるウリエルたんマジ天使、とは神の偽らざる本音である。パパは娘を溺愛する生き物なので仕方ない。
 ともあれ、神はウリエルの同意を得て舞い上がった。

「そうと決まれば、さっそく世界改変しちゃおっかな~!」

 言って、迅速に世界のプログラムに変更を掛けていく。

「まずはエーテルを世界にばら撒かなきゃねえ。効率よくばら撒くには、やっぱりダンジョン形式がいいかな? ダンジョンで肩慣らしをさせつつ、一定期間後に地上にも獣が生まれるように改変する……うん、悪くない」

 エーテルとは、天を司る始まりの元素である。神の権能を発揮するための元素として世界に満ち満ちていたそれは、いつしか地上の生物にも影響を与えるようになった。
 エーテルは生物に蓄積されていき、いわゆる魔力の素──マナへと変容した。
 マナを用いれば、神の権能を疑似的に再現することが可能である。たとえば、何もないところから火を熾したり、水を生み出したり、風を吹かせたり……こうした理外の事象を魔術と呼ぶ。
 神話や叙事詩に謳われる英雄たちは、魔術を用いて神代の獣たちと戦ったのだ。

「そうそう、ダンジョンには旨味がないとね。採掘資源や食料が取れるようにしておこうか。となれば、探索用の限定世界を別次元に生み出せばいいか」

 神はブツブツとつぶやきながら作業を続ける。
 ほどなくして、最終確認を終えた神が世界中にダンジョンへ繋がるゲートを開こうとしたそのとき、事件は起こった。

「アッ」

 情けない声が漏れた。

「いかがなさいましたか?」

 主の動揺にウリエルがきょとんと首を傾げる。

「……や、やっちまったぁ」

 ウリエルは〈天眼の水鏡〉を起動し、世界各地に実装されたダンジョンに障害がないか検索する。各地の映像が流れていくなかで、ウリエルの眉がピクリと反応した。
 モニターには、日本に実装された比較的明るい洞窟型のダンジョンが映し出されていた。画面の中央では、黒髪の少年が呆けた顔で尻もちを着いている。どうやら、彼はダンジョンの実装に巻き込まれてしまったらしい。

 神は眉間にしわを寄せる。
 正直言って、戦闘経験のない学生ではモンスターを倒せるかわからない。身体能力ではなく、精神の問題だ。突如として現れた異形の存在に成すすべもなく殺される可能性は多分にある。

 助けてやりたいと思うが、ダンジョンを生み出した存在であっても直接介入することはできない。そのように自分で設定してしまったからだ。神はアホだった。
 考え抜いた末、神はひとつの決断を下す。

「ウリエルたーん! 彼のナビゲーターになってあげてくれないかなあ!? 神からの一生のお願いっ!」

 鼻水を垂らした情けない顔で神が土下座する。
 対してウリエルは、その場で片膝をつき主命に応じた。

「すべては御心のままに」
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

現代ダンジョンで成り上がり!

カメ
ファンタジー
現代ダンジョンで成り上がる! 現代の世界に大きな地震が全世界同時に起こると共に、全世界にダンジョンが現れた。 舞台はその後の世界。ダンジョンの出現とともに、ステータスが見れる様になり、多くの能力、スキルを持つ人たちが現れる。その人達は冒険者と呼ばれる様になり、ダンジョンから得られる貴重な資源のおかげで稼ぎが多い冒険者は、多くの人から憧れる職業となった。 四ノ宮翔には、いいスキルもステータスもない。ましてや呪いをその身に受ける、呪われた子の称号を持つ存在だ。そんな彼がこの世界でどう生き、成り上がるのか、その冒険が今始まる。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

異世界の英雄は美少女達と現実世界へと帰還するも、ダンジョン配信してバズったり特殊部隊として活躍するようです。

椿紅颯
ファンタジー
黒織秋兎(こくしきあきと)は異世界に召喚された人間だったが、危機を救い、英雄となって現実世界へと帰還を果たした。 ほどなくして実力試験を行い、様々な支援を受けられる代わりに『学園』と『特殊部隊』へ所属することを条件として提示され、それを受理することに。 しかし帰還後の世界は、秋兎が知っている場所とは異なっていた。 まさかのまさか、世界にダンジョンができてしまっていたのだ。 そして、オペレーターからの提案によりダンジョンで配信をすることになるのだが……その強さから、人類が未踏破の地を次々に開拓していってしまう! そんな強すぎる彼ら彼女らは身の丈に合った生活を送りながら、ダンジョンの中では今まで通りの異世界と同じダンジョン探索を行っていく!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

劣等生のハイランカー

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ダンジョンが当たり前に存在する世界で、貧乏学生である【海斗】は一攫千金を夢見て探索者の仮免許がもらえる周王学園への入学を目指す! 無事内定をもらえたのも束の間。案内されたクラスはどいつもこいつも金欲しさで集まった探索者不適合者たち。通称【Fクラス】。 カーストの最下位を指し示すと同時、そこは生徒からサンドバッグ扱いをされる掃き溜めのようなクラスだった。 唯一生き残れる道は【才能】の覚醒のみ。 学園側に【将来性】を示せねば、一方的に搾取される未来が待ち受けていた。 クラスメイトは全員ライバル! 卒業するまで、一瞬たりとも油断できない生活の幕開けである! そんな中【海斗】の覚醒した【才能】はダンジョンの中でしか発現せず、ダンジョンの外に出れば一般人になり変わる超絶ピーキーな代物だった。 それでも【海斗】は大金を得るためダンジョンに潜り続ける。 難病で眠り続ける、余命いくばくかの妹の命を救うために。 かくして、人知れず大量のTP(トレジャーポイント)を荒稼ぎする【海斗】の前に不審に思った人物が現れる。 「おかしいですね、一学期でこの成績。学年主席の私よりも高ポイント。この人は一体誰でしょうか?」 学年主席であり【氷姫】の二つ名を冠する御堂凛華から注目を浴びる。 「おいおいおい、このポイントを叩き出した【MNO】って一体誰だ? プロでもここまで出せるやつはいねーぞ?」 時を同じくゲームセンターでハイスコアを叩き出した生徒が現れた。 制服から察するに、近隣の周王学園生であることは割ている。 そんな噂は瞬く間に【学園にヤバい奴がいる】と掲示板に載せられ存在しない生徒【ゴースト】の噂が囁かれた。 (各20話編成) 1章:ダンジョン学園【完結】 2章:ダンジョンチルドレン【完結】 3章:大罪の権能【完結】 4章:暴食の力【完結】 5章:暗躍する嫉妬【完結】 6章:奇妙な共闘【完結】 7章:最弱種族の下剋上【完結】

ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばして大バズりしてしまう~今まで住んでいた自宅は、最強種が住む規格外ダンジョンでした~

むらくも航
ファンタジー
Fランク探索者の『彦根ホシ』は、幼馴染のダンジョン配信に助っ人として参加する。 配信は順調に進むが、二人はトラップによって誰も討伐したことのないSランク魔物がいる階層へ飛ばされてしまう。 誰もが生還を諦めたその時、Fランク探索者のはずのホシが立ち上がり、撮れ高を気にしながら余裕でSランク魔物をボコボコにしてしまう。 そんなホシは、ぼそっと一言。 「うちのペット達の方が手応えあるかな」 それからホシが配信を始めると、彼の自宅に映る最強の魔物たち・超希少アイテムに世間はひっくり返り、バズりにバズっていく──。 ☆10/25からは、毎日18時に更新予定!

強奪系触手おじさん

兎屋亀吉
ファンタジー
【肉棒術】という卑猥なスキルを授かってしまったゆえに皆の笑い者として40年間生きてきたおじさんは、ある日ダンジョンで気持ち悪い触手を拾う。後に【神の触腕】という寄生型の神器だと判明するそれは、その気持ち悪い見た目に反してとんでもない力を秘めていた。

処理中です...