婚約話も持ってこられないモブ令嬢はとりあえずイモを植える

ピエ

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モブ的な修行手伝い

どうしてこうなったんだろう?

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セカニール先輩が心から驚きの表情をうかべている。朝礼で表彰される姿やひったくりを捕まえた新聞記事を見ているから冷静沈着な先輩のイメージが私の中でどんどんと崩れていく。

「畑仕事が・・・・・・畑仕事という牧歌的かつ生産的なことを皆で行うことでチームワークを生んだのか」

すごく深刻そうな顔で納得したと呟くセカニール先輩。畑仕事をすればどんなミラクルでも起きると勘違いされては困る。これは訂正しなくてはいけない。

「セカニール先輩」

「なんだ」

先輩に呼びかけると真剣な顔でこちらを見た。昔、してしまったつまみ食いや小さな嘘をついたことを白状してしまいそうな迫力があって気持ちがすくむ。

「あの、私達は、実習で初めて組んだチームだったから私以外畑はしてなくて・・・・・・皆とのチームワークは自然に生まれたというか、その」

「畑という環境で揉まれた人間がいることでチームワークは自然に生まれたのか。君、俺は決めたぞ!ここで畑仕事をさせてもらいたい。力には自信がある。なんでもする。俺にも畑をさせて欲しい」

先輩は畑とチームワークを結び付けなければ呪われるんですか?そこは「皆とのチームワークは自然に生まれたのか。ならば俺も自分のチームメイトと交流を深めよう」ってなりませんか?
そもそもなぜチームワークを私から学ぼうとしているのか全く分からないし心当たりがない、

「・・・・・・先輩、先輩に伝わる前に誤解か勘違いが起きたせいで情報が間違えたんだと思うんですけど私が受けた補講は実習で下位の成績だったチームはほぼ強制的に受けたものなんですよ」

「そんなはずはない。師匠の教え子でもあるバードン先生も君たちのチームは自ら教えを求めたと言っていたんだ。わざわざ林まで行ってスライムに罠をかけ、戦ったと聞いている」

そこで初めて私は先輩がいう補講がセラビー達と先生に頼んで実習のスライム狩りをやり直しをさせてもらうための補講だったのに当日、私は休んでしまった補講だと分かった。

「先輩、私、その補講は休んでしまったんですけど・・・・・・」

「そんなはずはないだろう。三人で懸命にスライムと戦ったと聞いている。それに罠も改良してスライムを捕まえることができた素晴らしいチームだと聞いているぞ」

どうやら休んでいた私は存在感が薄いせいか参加していたことになっているらしい。私は上手く誤解を解くことを諦めた。

「・・・・・・先輩が学ぶようなことは何もないと思いますけど良いですよ」

セカニール先輩は剣術の練習が忙しい人だし、畑仕事を2~3日もしたら満足するかと思って一緒に畑をすることを許可した。

「ありがとうございます。畑の師匠。俺、がんばります」

「畑の師匠って言われるほどすごくないです。私はレイリリ・モブーナなんで好きに呼んで貰えれば・・・・・・」

「レイリリ師匠!明日からよろしくお願いします!本日はこの後に剣術の鍛錬があるのでこれで失礼します」

先輩から直角90度って言いたくなるくらいの最敬礼を受けてしまった私は「違う、師匠違う」とクラクラする頭を抱えた。好きに呼んでって言ったけど先輩だからモブーナと呼び捨てにして良いって意味だったのに。
騎士のように颯爽と去った先輩の背中を私は見つめてまだ芋を植える予定がないから明日からどうしようかとまた頭を抱えた。
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