婚約話も持ってこられないモブ令嬢はとりあえずイモを植える

ピエ

文字の大きさ
上 下
30 / 34
モブ的な学校生活2

モブ女子の買い物は騒がしく2

しおりを挟む
私の予想以上に人が多くて自警団の人達がいるのは買い物に来た人達の整理のためだった。

「はーい、ミーシャのハンドメイドショップに買い物に来た方~、並んでくださーい。最後尾はこちら~」

「列の最後尾」と書かれた板を掲げて誘導する自警団の人に促され私や他のお客さんが列にならぶ。早くも売り切れになりそうな予感。

私とローラの前に並ぶ見慣れたピンク色の髪。黒皮のジャケット。同じく黒皮のミニスカート。腰から下がったチェーンはおしゃれだろうか。喧嘩用だろうか。

「・・・・・・ケイティ?」

「あっ?」

振り返ったのは眉は生え揃ってきたけど目の下もまぶたも黒く塗って赤い口紅をつけたケイティだった。おしゃれの感性が真逆タイプなローラがドン引きしている。

「ああ、やっぱり。ケイティも手袋を買いにきたの?」

「こういうのが一つくらいあれば男受けがいいって聞いたからな。レイリリも買いにきたのか?」

「うん。一つくらいあったほうが家の仕事の手伝いの時とかに話の種になるから。途中でローラさんと会ったから一緒に来たんだよ」


隣で衝撃的な表情をローラがしている。ケイティってパステルカラーやレースの手袋とは無縁そうだもんね。でも彼女は先生に恋する乙女なんだよ。可愛いものを買うくらい先生が好きな彼女に心の中でニヤニヤしてしまう。

「レイリリさんとシュヤーノさんって、お友達なの?」

今も衝撃的な表情のままローラが聞いてきた。

「うん。友達だよ。実習で同じグループになってから仲良くなったんだよ」

「あんたもあたしのことはケイティって呼び捨てでいいぜ。よろしくな」

「よ、よろしく」

話をしているうちに順番がまわってきて私達は三人でミーシャのハンドメイドショップの売り物を見ることにした。残念ながら手袋は売り切れだったけど手提げかばんや古着で作られたコサージュなどを見ることができた。

「お、これ良いんじゃね?」

ケイティが手に取ったのはフリルがたっぷりのパステルピンク色の手提げカバンだった。途端にギラッとローラの目が光った。不穏な空気を感じる。

「・・・・・・似合わないわ」

「え?」 「はあ?」

私と同時にケイティも声を出した。

「その真っ黒黒のモジャみたいな服にパステルピンクのかわいいフリルは合わないの!しかも服はまだ体に馴染んでない皮!カバンは痛みが少ないし質のいいドレスからとったとはいえ古い布!違和感が仕事しかしない組み合わせ!分かる!?く・み・あ・わ・せ!言い換えればコーディネイト!手袋やカバンを買うのに服は自由よ!だけどもそれ黒皮の服にそのカバンは暴虐よ!皮の服ってコーデが上級者向けなのに何考えてるのよ!奇抜なメイクをしたあなたがカバンを手に持っただけでゾワワって鳥肌が立ったわよ!」

いきなり饒舌を通り越して早口で語るローラに今度はケイティがドン引きしている。私も彼女の勢いに引いた。

「買いなさいよ!買えばいいわ!だけど服はカバンに合わせて全てやり直しよ!私が選んであげるからいかに自分が変なことをしているか自覚しなさい!」

「お、おう」

超高圧的なローラに押されてケイティがカバンを買うことになった。その時になって店員の女の子に初めて意識が向いた。年下っぽい店員さんもこの異常事態にドン引きした顔をしていた。ケイティからお金を受け取って「ありがとうございました」と引きつった笑顔を見たときにドコかでみたような気がした。
店員さんもこちらの視線に気がついてこちらを見たから目があった。
パチッとスイッチが入ったかのように彼女の目が見開いて「お探しものはございませんか~?」と尋ねられた。

「どれも素敵なんですけど目当ての手袋がなかったのが残念だったのでまた来ますね」

私がそう言うと「またお越しくださいね」と店員さんに頭を下げられた。残念だけど今度はあるといいなあ。
私はローラと服を選ぶことになったケイティと別れて家に帰った。服選びも見たかったけど肥料二袋を持ったままだと肥料の臭いが袋からムワンと漂ってくるから気になって買い物に集中できないんだよね。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革

うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。 優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。 家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。 主人公は、魔法・知識チートは持っていません。 加筆修正しました。 お手に取って頂けたら嬉しいです。

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!

珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。 3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。 高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。 これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!! 転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!

転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ

karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。 しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。

やり直し令嬢の備忘録

西藤島 みや
ファンタジー
レイノルズの悪魔、アイリス・マリアンナ・レイノルズは、皇太子クロードの婚約者レミを拐かし、暴漢に襲わせた罪で塔に幽閉され、呪詛を吐いて死んだ……しかし、その呪詛が余りに強かったのか、10年前へと再び蘇ってしまう。 これを好機に、今度こそレミを追い落とそうと誓うアイリスだが、前とはずいぶん違ってしまい…… 王道悪役令嬢もの、どこかで見たようなテンプレ展開です。ちょこちょこ過去アイリスの残酷描写があります。 また、外伝は、ざまあされたレミ嬢視点となりますので、お好みにならないかたは、ご注意のほど、お願いします。

捨てられた転生幼女は無自重無双する

紅 蓮也
ファンタジー
スクラルド王国の筆頭公爵家の次女として生を受けた三歳になるアイリス・フォン・アリステラは、次期当主である年の離れた兄以外の家族と兄がつけたアイリスの専属メイドとアイリスに拾われ恩義のある専属騎士以外の使用人から疎まれていた。 アイリスを疎ましく思っている者たちや一部の者以外は知らないがアイリスは転生者でもあった。 ある日、寝ているとアイリスの部屋に誰かが入ってきて、アイリスは連れ去られた。 アイリスは、肌寒さを感じ目を覚ますと近くにその場から去ろうとしている人の声が聞こえた。 去ろうとしている人物は父と母だった。 ここで声を出し、起きていることがバレると最悪、殺されてしまう可能性があるので、寝たふりをして二人が去るのを待っていたが、そのまま本当に寝てしまい二人が去った後に近づいて来た者に気づくことが出来ず、また何処かに連れていかれた。 朝になり起こしに来た専属メイドが、アイリスがいない事を当主に報告し、疎ましく思っていたくせに当主と夫人は騒ぎたて、当主はアイリスを探そうともせずに、その場でアイリスが誘拐された責任として、専属メイドと専属騎士にクビを言い渡した。 クビを言い渡された専属メイドと専属騎士は、何も言わず食堂を出て行き身支度をして、公爵家から出ていった。 しばらく歩いていると、次期当主であるカイルが後を追ってきて、カイルの腕にはいなくなったはずのアイリスが抱かれていた。 アイリスの無事に安心した二人は、カイルの話を聞き、三人は王城に向かった。 王城で、カイルから話を聞いた国王から広大なアイリス公爵家の領地の端にあり、昔の公爵家本邸があった場所の管理と魔の森の開拓をカイルは、国王から命られる。 アイリスは、公爵家の目がなくなったので、無自重でチートし続け管理と開拓を命じられた兄カイルに協力し、辺境の村々の発展や魔の森の開拓をしていった。 ※諸事情によりしばらく連載休止致します。 ※小説家になろう様、カクヨム様でも掲載しております。

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので

sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。 早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。 なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。 ※魔法と剣の世界です。 ※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

処理中です...