婚約話も持ってこられないモブ令嬢はとりあえずイモを植える

モブ的な修行手伝い

明日はどうしよう？

自分の部屋のベッドで横になって今日のことを思い出す。セカニール先輩と明日から畑をする約束をしてしまった私。うっかり肥料を撒き忘れて持って帰ってしまったので明日はこれを撒くとして次からどうしよう。
部屋のドアがノックされた。「開いてるよー」と声をかけるとお父さんがゆっくりとドアを開けて顔を出した。

「レイリリ、夕飯の時に浮かない顔をしていたけどどうしたんだい？パパが話を聞いてもいいかな？」

仕事で２つ隣の国に行っていた父が久しぶりに家に帰ってきたから一緒に夕飯を摂ったのだけど今日の悩みが顔に出ていたらしい。

「おとうさん。うーん、お父さんは経験あるかなあ？」

「相談に乗れるかは分からないけどパパはレイちゃんの味方だからどんな話を聞くよ」

外国語を喋ってテキパキと仕事をするイメージしかいお父さんに相談していいのか戸惑うとお父さんはニコッと笑って部屋に入ってくると勉強机とセットの椅子に腰をかけた。

「私ね、今日、見に覚えがないことを自分がやったことになっていて褒められてしまったの。それでなぜか私から畑仕事を通して学びたいって先輩に頼まれちゃって」

「うーん、お父さんは見に覚えがない悪いことの犯人にされることはあったけどレイちゃんのような経験はないなあ。だけどレイちゃんが普段から頑張っているからやった事がないこともレイちゃんが頑張ってやったと思われたんじゃないかなあ？畑仕事を頑張る姿で誰かに教えることはレイちゃんならできるとパパは思うよ」

「そうかなあ？私、ただ普通に芋畑してるだけだよ」

「パパには畑は無理だなあ。レイちゃんの普通のことはパパにはすごいことなんだよ。だから、もし先輩が何も学べなかったってレイちゃんを責めたりしたらパパが守るからね」

優しいお父さんの言葉にお父さんでいてくれて良かったと思った。そしてセカニール先輩相手にお父さんが戦ったら負けるだろうなあって思った。

「お父さん。ありがとう。明日から頑張ってみる」

素直にお礼を言うとお父さんが満面の笑顔になった。

「レイちゃんの役に立って良かったよ。だけどレイちゃん、いつになったら小さな頃のようにパパって呼んでくれるんだい？」

「お父さんで良いでしょ。学校の皆も父親のことはお父さんとかお父様って呼んでるよ」

実の父親だしお父さんって呼ぶのは普通なのにパパって呼ばれたがるお父さん。前世の記憶が頭に入る前の小さいころはパパって呼んでいたけど前世の記憶が入ってきた頃からはお父さん呼びに変わっていた。もう思春期が来るとパパ、ママから呼び方を変える子もいるのだからお父さん呼びに慣れて欲しい。

「パパはいつでもパパって呼んでいいからね。レイちゃん、困ったことがあればパパに言うんだよ。今日はおやすみ」

「おやすみなさい。お父さん」

しょんぼりとしながら立ち上がったお父さんにお休みの挨拶をするとお父さんは手を振って部屋を出た。