婚約話も持ってこられないモブ令嬢はとりあえずイモを植える

ピエ

文字の大きさ
上 下
31 / 34
モブ的な学校生活2

モブ女子の周囲は平和なはず?

しおりを挟む
今日は星堂で全校集会の日だ。集会の合図が鳴るまでは星堂の中で他愛のない話をして過ごしていた。

「ねえねえ、聞いた?先月の全校集会で婚約破棄されたディッチャ様、この学院を辞めたんですって」

「ええ。初めて聞いたときは驚いたわ。でも仕方がないわよね。学院で断罪されてしまったら恥ずかしさで通えなくなりますもの」

「慰謝料はディッチャ様側が払うのでしょう?取り立ては家が傾くほど厳しいと聞いたことがありますわ」

「あら、私が聞いた話では婚約破棄ではなく婚約解消になったそうよ。慰謝料は向こうにも不義があって相殺されたとか」

・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
私はカツレアさんやローラさん、ケイティと話をしながらディッチャ嬢の噂話に聞き耳を立てていた。
先日、ディッチャ嬢がお母さんを訪ねてきた時に私も少しだけ話したのだけど彼女は自分の意思で学校を辞めて市井に降り仕事に就くと言った。その仕事のことでお母さんに相談がしたいと言っていたから私は邪魔しないように自分の部屋に戻った。婚約破棄か解消かは分からないけど両家で決着が着いたから相談に来たんだね。あれから私は彼女と会っていないけど元気にしていればいいなあ。

カツレアさんがツンツンと私の肩を軽く突いた。

「ねえ、モブーナさん。この頃、あなたの畑の周りでウロウロしている人がいるそうよ。何か問題を抱えているのではないの?大丈夫なの?」

「私の畑に?他の畑や人が住んでいる家が道沿いにあるからたまたま通った人だと思うよ」

畑をしている間、人が通ることや話しかけられることもあるのでそのことかと思った。

「畑とかのどかなところを散歩するやついるもんな。何が楽しいのかあたしには分かんねー趣味だけど」

「でもわざわざ明るいうちからフードを被って顔を隠していたのをアレックスが見てるのよ。あれは謎芋のスパイよ。きっと」

「農業にスパイがいるなんて。そんな話、聞いたことがないわ。考えすぎだわ」

ローラさんが言うように農業のスパイというのは聞いたことがない。畑に悪いことをする者がいるとしたら作物泥棒だ。
だから畑にスパイなんて来ないと言いたいところだったのに頭の中でブレーキがかかった。前に他校の男女が来たことがある。名前は忘れたけど緊張したのは覚えている。男子生徒の方がまた来ると言っていたから、カツレアさんの従者さんが見た人はその人かもしれない。
だけど一度顔を見て話もしているし、私に顔を隠す必要ってあるの?あ、他校のあの人じゃないのかも。
私に顔を見られたくないけど畑の様子が見たい人・・・・・・もしかしたらお父さんかお母さんの仕事の関係者?

「心当たりというか、畑を見に来そうなのはお父さんかお母さんの仕事関係の人かも」

「親の仕事の関係者?親の畑を見るなら分かっけどよ。わざわざ娘の畑に来る必要あるのかよ」

ケイティが言う通り商品の農作物をチェックしたいならお母さんの畑や果樹園の様子や作物を見た方がはっきり分かる。

「うーん、そうねえ。もしかしたらモブーナさん一家が人格者かどうかの抜き打ちテストかもしれないわ。家庭環境をみて商売の相手として信用できるか判断するために偵察にきているのだと思うわ」

「それはあるかも。お父さんが高価な物を扱うときもあるから調べられたのかな。お父さん達には畑を見に来ている人がいること話しておくよ」

「そうね。ご両親に伝えておくべきだわ。誰か分からない以上、警戒しておくべきよ。アレックスには定期的に畑をみるように伝えておくわ」

「カツレアさんの従者さんはいろいろ忙しいのに私の芋畑まで見なくていいよ。迷惑をかけたくないし」

私がそう言うとカツレアさんが首を振った。

「私が気になるのよ。次はいつ謎芋を植えて収穫するのかとても楽しみなんだから」

「植えるときと収穫する時は教えるから従者さんに無理させないであげてね」

そういえばなんで従者さんは畑に不審者がいると分かったのか不思議だったけどカツレアさんが私の畑を見に行かせてたのね。

「なにかあったらあたしを呼べよ。変な奴はぶっ飛ばしてやっからよ」

「私にも言ってくれたらマックスやその友達に手伝ってもらうからね」

マックスさん達が来てくれるなら頼もしいけど不審者をぶっ飛ばす前にケイティがぶっ飛ばされないか心配と言うと怒られそうなので笑ってごまかした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

黒の創造召喚師

幾威空
ファンタジー
※2021/04/12 お気に入り登録数5,000を達成しました!ありがとうございます! ※2021/02/28 続編の連載を開始しました。 ■あらすじ■ 佐伯継那(さえき つぐな)16歳。彼は偶然とも奇跡的ともいえる確率と原因により死亡してしまう。しかも、神様の「手違い」によって。 そんな継那は神様から転生の権利を得、地球とは異なる異世界で第二の人生を歩む。神様からの「お詫び」にもらった(というよりぶんどった)「創造召喚魔法」というオリジナルでユニーク過ぎる魔法を引っ提げて。

公爵家長男はゴミスキルだったので廃嫡後冒険者になる(美味しいモノが狩れるなら文句はない)

音爽(ネソウ)
ファンタジー
記憶持ち転生者は元定食屋の息子。 魔法ありファンタジー異世界に転生した。彼は将軍を父に持つエリートの公爵家の嫡男に生まれかわる。 だが授かった職業スキルが「パンツもぐもぐ」という謎ゴミスキルだった。そんな彼に聖騎士の弟以外家族は冷たい。 見習い騎士にさえなれそうもない長男レオニードは廃嫡後は冒険者として生き抜く決意をする。 「ゴミスキルでも美味しい物を狩れれば満足だ」そんな彼は前世の料理で敵味方の胃袋を掴んで魅了しまくるグルメギャグ。

大好きな恋愛ゲームの世界に転生したらモブだったので、とりあえず全力で最萌えキャラの死亡フラグをおっていきたいと思います!

赤蜻蛉
ファンタジー
メインで書いてた転生もののファンタジー恋愛小説!のつもりです。 長編書くのは実はこれが初めての作品なので、どうぞ暖かい目で見守って頂けたら嬉しいです。 他の小説サイトで書いてたモノを多少文章の誤字脱字や言い回しがおかしいところだけを直してアップしてます。 読み返しながら、色々複雑な気持ちです 。よろしくお願いします!

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

ペットたちと一緒に異世界へ転生!?魔法を覚えて、皆とのんびり過ごしたい。

千晶もーこ
ファンタジー
疲労で亡くなってしまった和菓。 気付いたら、異世界に転生していた。 なんと、そこには前世で飼っていた犬、猫、インコもいた!? 物語のような魔法も覚えたいけど、一番は皆で楽しくのんびり過ごすのが目標です! ※この話は小説家になろう様へも掲載しています

手乗りドラゴンと行く異世界ゆるり旅  落ちこぼれ公爵令息ともふもふ竜の絆の物語

さとう
ファンタジー
旧題:手乗りドラゴンと行く追放公爵令息の冒険譚 〇書籍化決定しました!! 竜使い一族であるドラグネイズ公爵家に生まれたレクス。彼は生まれながらにして前世の記憶を持ち、両親や兄、妹にも隠して生きてきた。 十六歳になったある日、妹と共に『竜誕の儀』という一族の秘伝儀式を受け、天から『ドラゴン』を授かるのだが……レクスが授かったドラゴンは、真っ白でフワフワした手乗りサイズの小さなドラゴン。 特に何かできるわけでもない。ただ小さくて可愛いだけのドラゴン。一族の恥と言われ、レクスはついに実家から追放されてしまう。 レクスは少しだけ悲しんだが……偶然出会った『婚約破棄され実家を追放された少女』と気が合い、共に世界を旅することに。 手乗りドラゴンに前世で飼っていた犬と同じ『ムサシ』と名付け、二人と一匹で広い世界を冒険する!

家族もチート!?な貴族に転生しました。

夢見
ファンタジー
月神 詩は神の手違いで死んでしまった… そのお詫びにチート付きで異世界に転生することになった。 詩は異世界何を思い、何をするのかそれは誰にも分からない。 ※※※※※※※※※ チート過ぎる転生貴族の改訂版です。 内容がものすごく変わっている部分と変わっていない部分が入り交じっております ※※※※※※※※※

処理中です...