婚約話も持ってこられないモブ令嬢はとりあえずイモを植える

ピエ

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モブ的な学校生活2

モブ女子の母は相談に乗る

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お茶を淹れてきたお母さんが戻ってきた。
お茶のポットから琥珀色のお茶がティーカップに注がれた。

「はい、お嬢様方どうぞ」

「ありがとうございます。いただきますわ」

「お母さん、ありがとう」

甘い香りがするお茶を飲むとほんわりと気分が和らいだ。

「いい香りだわ。それに味わい深いのに優しい後味。初めて飲む・・・・・・」

ディッチャ嬢の表情も少し柔らかくなった。

「これね。うちのお父さんが外国から買ったお茶なの。試飲して美味しかったら今度売る予定だったのよ。お嬢様に褒められるお茶なら商売になりそうね」

「これは外国のお茶ですの?外国は野蛮な人が多いと聞いております。彼らはこんなにも素敵なお茶の味が分かるのかしら」

ディッチャ嬢の言葉に私はお茶を吹き出しそうになった。私が知っている限りでは外国の商人をお客さんとして父が家に連れてくることがあったけどその中に野蛮な人はいなかった。交渉が加熱して怒ったり怒鳴ったりはあるけど父もそんなときがあるし野蛮というのは外国の人への偏見だろう。

「あっはっは。面白い方ね。私達の国より豊かな国や食べ物にうるさい国はいくらでもあるわよ。そりゃ、外国には野蛮な人もいるけどこの国にも野蛮な人はいるのよ。それに外国は面白いわよ。美味しいものもイイ男もたくさんいるもの。私もレイリリが学校を卒業したら果樹園は人に貸してお父さんが貿易品を売買するのに着いて行く予定よ」

お母さんが私に向かってウィンクをした。前から旅行を兼ねてお父さんの仕事について行きたいって行ってたものね~。

「・・・・・・外国に行けば人生もやり直しができるかしら」

遠くをみつめるディッチャ嬢。お母さんの顔が一瞬だけ真顔になった。

「さ~、国が違うことでゼロどころかマイナススタートになっちゃうかもね~。一度死んで知らない土地で蘇ったと思って自分を知らない人達と繋がりを作って頑張るのもありよ。でも全部捨てなくてもいいじゃない。自分を捨てるなんて寂しいわ。自分が生まれた家や自分が作った今までの人との繋がりを整理して捨てたり保ったりしながら頑張るのも生き方なんだから」

商売でいろいろな人と交流があるお母さんはディッチャ嬢のことも知っているのか事情を察しているのか分からないけど彼女になにがあったのか聞かなかった。

「今日は泊まっていく?客室は空いているから帰りたくないなら一晩くらい大丈夫よ。でも一人娘をもつお母さんの立場としては家に帰ったほうが良いと思うわ。きっとあなたのことを心配しているからね」

「不出来な娘の心配なんてしていないでしょうけど一度帰りますわ。このお茶の葉、私に売っていただけますか?家でゆっくり考えごとをするのにこのお茶が適していますの」

ディッチャ嬢が悲しそうな微笑みを浮かべた。彼女の婚約者がディッチャ嬢が悪いことをしたと言っていたけどそんな人には見えない。それとも美しさに騙されているだけ?そう思いたくないなあ。

「このお茶の葉はまだ売り物じゃないからね。お金をもらうわけにはいかないわ。だからお土産に持たせてあげる。もうすぐ暗くなる道を女の子を一人で歩かせるなんて一人娘がいる親として出来ないわ。うちの従業員にあなたの家まで馬車で送らせる準備をするから待っていて」

ディッチャ嬢に向かってウィンクをするお母さん。ディッチャ嬢が小さくうなずいた。
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