婚約話も持ってこられないモブ令嬢はとりあえずイモを植える

ピエ

文字の大きさ
上 下
27 / 34
モブ的な学校生活2

モブ女子の家は大慌て

しおりを挟む
畑の手入れを終えて家に帰宅するとリビングのドアの前が何やら騒がしい。お手伝いさん達がひそひそと話をしている。

「まさか奥様の果樹園で自殺しようなんて子がいるなんて」

「お嬢様と歳が近い身だから奥様も心配して家に連れて来てしまったそうだよ。あんな美人さんとの婚約を破棄するなんて向こうもどうかしてるよ」

「自殺!?誰が!?」

話が聞こえた私は思わずお手伝いさんの話に割り込んでしまった。

「お嬢様、帰っておられたのですか。今は奥様がお客様のお相手中なのでお部屋にお戻りに・・・・・・」

「でもさっき果樹園で誰かが自殺って・・・・・・」

お手伝いさん達が「聞かれてしまった」とバツの悪い顔をして私にこっそりと話だした。

「先ほど奥様も果樹園の視察に帰って来られたのですが、お嬢様くらいの年齢の女性を連れて帰ってこられたのですよ。その方に首に縄の跡があったのでお尋ねしたら奥様は誤魔化そうとしたのですがその女性が「なんで死なせてくれなかったの」と泣き出しまして・・・・・・そこから女性が自殺をしようとしたのだと私達は察しまして。女性がご乱心を起こさないかと奥様が心配でこっそりと聞いていたのですが、どうやら女性は婚約していた愛しい男性に婚約破棄されまして」

あー、前もあったよ、他人の婚約破棄。魔法実習であの時の噂が途絶えてたから忘れてたけど婚約破棄で揉めていたナントカさん達はどうしたんだろう。

「レイリリー、そこにいるの?ちょっと入ってきてちょうだい」

リビングの中からお母さんに呼ばれた私は「はーい」と返事をする。お手伝いさん達は慌てた顔をしてバラバラになって自分達の仕事に戻った。
お客さんもいるのでドアをノックしてから入った。お母さんと俯いている女性の横顔を見てすぐに女性の首に目が行ってしまった。お手伝いさんが言ったように縄の跡らしき赤い筋が白い肌についていた。

「レイリリ。お母さん、お茶を入れてくるから彼女のそばにいてくれる?」

お茶はお手伝いさんに頼んだら淹れてくれるけどオシャベリが好きな人達だからこの人が質問攻めにされないようにしてたんだなぁ。

「うん。いいよ。ここにいるね」

いいよ。と言ったけど隣に座ったほうがいいのだろうか。

「レイリリの分もお茶を淹れてくるから座ってなさいね」

そう言ってお母さんが席を立ったので私は彼女の隣の椅子に座ることにした。

「あなた、ルルーン学院の生徒ですわね。まさか死のうとした場所が果樹園で同じ学印に通う生徒の親が管理しているものだなんて・・・・・・あの方が仰っていたように私って本当に救いようがない馬鹿ですわ」

ルルーン学院に通っていて婚約破棄された女性。私が知る限り一人しかいない。

「もしかして5月に星堂で婚約破棄をなさっていたデイジーお嬢様ですか?」

「ふふっ、私の名はディッチャよ。商売をなさっている家の方なら人の名前はしっかり覚えておくべきでしてよ」

「すいません」

それっきり会話が途切れてしまった。どうしよう。前世の記憶を引っ張ってきても芋ばかりだわ。芋のお菓子や料理、芋のお菓子を宣伝していた芸人とか婚約破棄した女性を慰めるのに役に立たないわ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

公爵家長男はゴミスキルだったので廃嫡後冒険者になる(美味しいモノが狩れるなら文句はない)

音爽(ネソウ)
ファンタジー
記憶持ち転生者は元定食屋の息子。 魔法ありファンタジー異世界に転生した。彼は将軍を父に持つエリートの公爵家の嫡男に生まれかわる。 だが授かった職業スキルが「パンツもぐもぐ」という謎ゴミスキルだった。そんな彼に聖騎士の弟以外家族は冷たい。 見習い騎士にさえなれそうもない長男レオニードは廃嫡後は冒険者として生き抜く決意をする。 「ゴミスキルでも美味しい物を狩れれば満足だ」そんな彼は前世の料理で敵味方の胃袋を掴んで魅了しまくるグルメギャグ。

大好きな恋愛ゲームの世界に転生したらモブだったので、とりあえず全力で最萌えキャラの死亡フラグをおっていきたいと思います!

赤蜻蛉
ファンタジー
メインで書いてた転生もののファンタジー恋愛小説!のつもりです。 長編書くのは実はこれが初めての作品なので、どうぞ暖かい目で見守って頂けたら嬉しいです。 他の小説サイトで書いてたモノを多少文章の誤字脱字や言い回しがおかしいところだけを直してアップしてます。 読み返しながら、色々複雑な気持ちです 。よろしくお願いします!

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

ペットたちと一緒に異世界へ転生!?魔法を覚えて、皆とのんびり過ごしたい。

千晶もーこ
ファンタジー
疲労で亡くなってしまった和菓。 気付いたら、異世界に転生していた。 なんと、そこには前世で飼っていた犬、猫、インコもいた!? 物語のような魔法も覚えたいけど、一番は皆で楽しくのんびり過ごすのが目標です! ※この話は小説家になろう様へも掲載しています

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです

yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~ 旧タイトルに、もどしました。 日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。 まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。 劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。 日々の衣食住にも困る。 幸せ?生まれてこのかた一度もない。 ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・ 目覚めると、真っ白な世界。 目の前には神々しい人。 地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・ 短編→長編に変更しました。 R4.6.20 完結しました。 長らくお読みいただき、ありがとうございました。

家族もチート!?な貴族に転生しました。

夢見
ファンタジー
月神 詩は神の手違いで死んでしまった… そのお詫びにチート付きで異世界に転生することになった。 詩は異世界何を思い、何をするのかそれは誰にも分からない。 ※※※※※※※※※ チート過ぎる転生貴族の改訂版です。 内容がものすごく変わっている部分と変わっていない部分が入り交じっております ※※※※※※※※※

気づいたら美少女ゲーの悪役令息に転生していたのでサブヒロインを救うのに人生を賭けることにした

高坂ナツキ
ファンタジー
衝撃を受けた途端、俺は美少女ゲームの中ボス悪役令息に転生していた!? これは、自分が制作にかかわっていた美少女ゲームの中ボス悪役令息に転生した主人公が、報われないサブヒロインを救うために人生を賭ける話。 日常あり、恋愛あり、ダンジョンあり、戦闘あり、料理ありの何でもありの話となっています。

処理中です...