婚約話も持ってこられないモブ令嬢はとりあえずイモを植える

ピエ

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モブ的な校外魔法実習1

昼休み

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集合時間には誰も遅れることなく集まった。先生達が昼食としてパンと水の入った水筒を配った。
それぞれ工夫して焚き火をして手に入れたモンスター肉や野草などを使って料理をしている。
私たちはセラビーさんが魔法で作った火付け石で火をつけて無事に焚き火ができた。

私がさつま芋を傍らに置いて、それ焼くために木の枝をナイフで削っているとあまり話したことがないクラスメイトの女子が来た。
彼女は周囲に気にしながら私に小声で話してきた。

「あの~モブーナさん。もし良かったらうちの家で作ったバターとそのさつま芋を交換してくれないかなあ……」

さつま芋を知っているのは近所の人か両親が売っているのを買った人くらいだから、彼女、もしくは家族が私の両親のお客さんなのかも。

「うん、いいよ。お芋6本くらいでいいかな」

食べ物の物々交換は禁止されていないし一人2本で6本渡せばお腹いっぱいになるしいいかな?と思って数を提示する。

「うう……」

複雑な表情を浮かべる彼女に私は失敗したと思った。魔法で出せる芋とバターの作り方はしらないけど乳牛を育てることから始めるバターを比べたらそれはもうバターを作るほうが大変だよね。
お昼ごはんに食べるならこれくらいだろうとうっかりしてしまった。。

「モブーナさん、今、バターがこれくらいあるからもう少しもらえたら……」

彼女は怒ることなく手のひらに乗るサイズの小瓶に入ったバターを見せてくれた。3人分のパンに4回は使える量だ。
もらえる分量が思っていた量より多い。私のお芋は魔法でタダで出せるし、これはもっと渡さないとつり合いとれないよね。

「うん。じゃあ、これでどうかな。足りなかったら言ってね」

私は大きいさつま芋12本を選り分けてそれを彼女に譲る。

「ありがとう。これ、家のバターね」

いつもお父さんが仕事でたまにしかバターを持って帰らないから、これは久しぶりのバターだ。じゃがバターもいいけどさつま芋にバターも美味しいんだよね。

セラビーが食用か見分けてくれた野草とキノコの野菜炒めを支給された鍋を使ってケイティが作ってくれた。
私が魔法で出したさつま芋は木の枝を削った即席の串に刺して焼き芋にしてそれをスライス。
もらったバターを塗ったパンに挟んだイモサンド。お肉がないヘルシーな昼食ができた。

お祈りの言葉の後に三人で昼食をとる。

「野草がにげぇ……」

かわいい声でうげえって声を漏らすケイティ。

「でも栄養はあるよ。しっかり食べて午後に備えよう」

苦いものは薬でなれて平気なのかセラビーはもぐもぐと野菜炒めを食べている。

「イモサンドは美味しいよ。バターを塗ってるからさつま芋の甘さが引き立って美味しいよ」

「「バター!?」」

「え!?バターだめだった?」

そういえばバターって乳製品だわ。私はアレルギーに詳しくないけど乳製品でアレルギーがでる人がいるかも。

「ど、どこでそんな高価なもん手に入れたんだ」

「神聖な儀式や霊薬として使われることもある高級食材をパンに塗って食べるなんて……!」

二人揃って恐れ慄くその姿に私の方は冷や汗をかく。バターをくれたあの子からしたらすっごく割に合わない取引をさせてしまったかもしれない。
朝食のパンにはさつま芋のミルクペーストか季節のジャムだし、たまにお父さんがもらうバターが食卓に出て当たり前だったからバターは普通に手に入るものだと思っていた。

「どこで手に入れたかは聞かない。でも学校の野営で気軽に使うものじゃないよ。早く隠した方がいい」

小声で指摘されて私は慌ててカバンにバターの小瓶を入れる。なるほど。だから彼女はこっそり私と物々交換したかったんだ。彼女はさつま芋12本で納得していたけどイモ12本とバターって釣り合いがとれるのだろうか?もう少し渡したほうが良かったのではと悶々とした昼食時間だった。
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