婚約話も持ってこられないモブ令嬢はとりあえずイモを植える

ピエ

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モブ的な学校生活1

モブ女子、朝活的な畑仕事中に有名人を見た。

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翌日
今日はいつも以上に早く目が覚めたので畑に行って、いつもより広い範囲の草抜きをして水やりをすることにした。
昨日とは違う愛用の作業着を着て畑の中でしゃがんで伸びてきた雑草を抜いていく。
鳥の鳴き声に混じって複数の足音が聞こえてきた。確認がてら手を止めて立ち上がり背筋を伸ばす。
遠目にも分かる青い体操着を来た男子集団が走ってくる。運動部の朝練のようだ。
学校からこの畑までつながる左右の道は校舎を囲むように伸びて校門前の十字路につながる。なるほど。よく考えれば学校周りでランニングをするのにぴったりな道だ。
彼らが朝練でランニングをする時間より私が来るのはもう少し後だから今まで会わなかったようだ。

走り去る集団の中にはこちらを見てくる男子数人がいて、その中には剣術大会一位になった2年の先輩の姿もあった。
えー、名前はなんだったかな。表彰式でよく見る人だから顔は分かるんだけど……
青い髪で頬に傷があって表彰台に上がったときにいつも無表情なんだよね。そのときの様子が思い出せても彼の名前が出てこない。
あとで格闘技に詳しいカツレアさんに聞いてみよう。

放課後 私とカツレアさんは畑に来ていた。
今日は芋を掘りたいと言ってカツレアさんは芋掘りのために買った作業着を着ている。

「カツレアさん。張り切ってるね」

「もちろんよ!芋掘りができるのは学生のうちだからしっかり楽しんでおかなきゃ」

「ところでさ。学院の剣術大会で一位になった先輩の名前って知ってる?」

「学院の剣術大会一位になった先輩の名前?レオン先輩でしょ。レオン・セカニール先輩」

「そうそう、レオン先輩だった。今日、部活でランニングしている姿を見たのよ」

「あら。そうなの。名前が知りたいとおっしゃるなんて走っているお姿に一目惚れなさったの?」

カツレアさんが変なことをいうのでブハアッと女子らしくない吹き出しをしてしまった。

「いやいや、よく表彰されている人がランニングしてたから名前はなんだったかなと思って」

「あら、てっきり恋の相談かとおもったわ」

「いやいや。見合い話すら来ない外見なのに恋とか無理だし」

「いえいえ、見合いは運ばれるものですが恋は落ちるものですよ」

ずっと空気のように静かに佇んでいて存在を忘れていた従者さんがにこやかに話に入ってきた。

「アレックス。いたの?急に話に入ってきて驚いたわ」

「もちろんおりますよ。そして誰かの心に恋の火を灯すことも自由ですよ。ふふ、お芋掘り楽しいですね」

よく見れば彼は茶色のオーバーオールに茶色の長袖シャツを身につけていた。そんな姿だから畑に馴染んでいて存在感が薄くなるのは仕方ない。
呑気に芋を掘り今日はどんな芋料理にするか話しながら時間が過ぎていった。

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