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入店試験
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「ひゃっ…!」
思わすリゼットは声を上げた。
「あらぁ、可愛い声を出すじゃないか♡」
見世の女主人は面白そうに笑う。耳元で囁いたついでに彼の耳を舐めたのだ。
「ちょっ…急に」
「耳が弱いのかい?今の反応なら客も喜ぶよ」
不服そうに耳を押さえるリゼットを見つめたまま、女主人は長い着物の裾を引き摺ってデスク前のソファに向かった。ふたたび煙管を咥え、どっかと腰掛ける。
「さて、リゼット…そうねえ…リズと呼ぼうか」
「…リズ?」
「ここでのアンタの名前さァ。ここは外界とは別世界、
なら外界とはちがう名前にしないとね」
「…そう」
リゼットは何とも言えない表情をしながら答えた。
女主人はとくに気にすることもなく、柔らかそうなソファに身体を沈めながらつづける。
「アタシの名はメオト…まぁ、オーナーと呼んどくれ」
女主人、メオトはふぅうと大きく煙を吐いた。
「じゃあリズ、面談を始めよう。まず服を脱ぎな」
「ここで?」
突然の指示に目を丸くするリゼット。メオトは煙をくゆらせながらニカっと笑う。
「嫌かい?表ででも構わないよ?」
「…ここでいい」
リゼットはため息をつきながらコートを脱ぎ始めた。
「そうそう、素直が一番」
足元に落ちた分厚いコートがドサッと重めの音を立てる。
「古そうなコートだね。だがモノは悪くない」
コートの下は白のドレスシャツに黒のフレアパンツ、飾り気のないシンプルなものだ。それもリゼットは躊躇なくボタンを外していく。
「あのねぇ、風呂屋に来たんじゃないんだ。もうちょっと色っぽく脱ぎな」
「脱いでからが本番なんだ、別にいいだろ?」
「かぁ~、分かっちゃいないねぇ…!こりゃあ教えることが山ほどありそうだ」
メオトはソファの背もたれに仰け反るように深く沈み込みながら言った。反動で元の姿勢に戻りながら大きく煙を吐く。
「まぁ、でもモノはいいね。抜群にいい」
メオトは目の前の、 首輪のほか何も身につけていない青年を見つめながら言った。細身だが筋肉も適度についている。肩幅はそれなりだが腰が細く、白い肌と相まって華奢で儚げな印象。黒い無機質な首輪がそれに拍車をかける。
「おいで、アタシの横に来な」
リゼットは恥ずかしがるでもなく、呼ばれるがまま素直にメオトの横に腰掛けた。
「じゃあリズ、首輪を見せとくれ」
「こう?」
青年が首を向けるとメオトは、白い首にはまった首輪に自分の指輪を当てた。
複数の魔法陣が指輪のまわりに浮かび、すぐに無数の文字が書かれたホログラム状のスクリーンに変わった。書かれているのは彼の個人情報だ。オーナーはそれに目を通しながら話しかける.
「ふぅん、病歴犯罪歴はナシ、借金もナシね。なんでこの見世に?」
「店構えがユニークで魅力的だった。糸目のスタッフにキャスト募集してるって聞いてちょうどいいと思って」
「あー、ティドリーかい。こんな上玉を紹介してくれるなんて役に立つじゃない。…まぁ」
言いながらメオトは覆い被さるようにリゼットを押し倒した。
「ホントに上玉かどうかはヤってみないとわかんないけどねェ?」
ペロっと軽く舌なめずりしながらソファに横たわる形になったリゼットを見下ろすメオト。そのまま彼にまたがり騎乗位の姿勢をとる。小柄だが肉付きのいい、柔らかそうな身体だとリゼットは思った。
「アンタ普段は上?下?」
メオトはリゼットの手を取り自らの胸に当てながら尋ねた。
「どっちもイケるよ。どっちも好き」
リゼットもその胸を優しく掴んで答える。オーナーの口から「ンフ♡」と吐息が漏れた。
「ウチの見世は指名は2時間からなんだ。キャストとして登録する前に、まずは体力測定だね」
「アハ、望むところ♡」
妖艶に微笑むリゼット。その色素の薄い唇を喰らうようにメオトは深くキスを落とした。
思わすリゼットは声を上げた。
「あらぁ、可愛い声を出すじゃないか♡」
見世の女主人は面白そうに笑う。耳元で囁いたついでに彼の耳を舐めたのだ。
「ちょっ…急に」
「耳が弱いのかい?今の反応なら客も喜ぶよ」
不服そうに耳を押さえるリゼットを見つめたまま、女主人は長い着物の裾を引き摺ってデスク前のソファに向かった。ふたたび煙管を咥え、どっかと腰掛ける。
「さて、リゼット…そうねえ…リズと呼ぼうか」
「…リズ?」
「ここでのアンタの名前さァ。ここは外界とは別世界、
なら外界とはちがう名前にしないとね」
「…そう」
リゼットは何とも言えない表情をしながら答えた。
女主人はとくに気にすることもなく、柔らかそうなソファに身体を沈めながらつづける。
「アタシの名はメオト…まぁ、オーナーと呼んどくれ」
女主人、メオトはふぅうと大きく煙を吐いた。
「じゃあリズ、面談を始めよう。まず服を脱ぎな」
「ここで?」
突然の指示に目を丸くするリゼット。メオトは煙をくゆらせながらニカっと笑う。
「嫌かい?表ででも構わないよ?」
「…ここでいい」
リゼットはため息をつきながらコートを脱ぎ始めた。
「そうそう、素直が一番」
足元に落ちた分厚いコートがドサッと重めの音を立てる。
「古そうなコートだね。だがモノは悪くない」
コートの下は白のドレスシャツに黒のフレアパンツ、飾り気のないシンプルなものだ。それもリゼットは躊躇なくボタンを外していく。
「あのねぇ、風呂屋に来たんじゃないんだ。もうちょっと色っぽく脱ぎな」
「脱いでからが本番なんだ、別にいいだろ?」
「かぁ~、分かっちゃいないねぇ…!こりゃあ教えることが山ほどありそうだ」
メオトはソファの背もたれに仰け反るように深く沈み込みながら言った。反動で元の姿勢に戻りながら大きく煙を吐く。
「まぁ、でもモノはいいね。抜群にいい」
メオトは目の前の、 首輪のほか何も身につけていない青年を見つめながら言った。細身だが筋肉も適度についている。肩幅はそれなりだが腰が細く、白い肌と相まって華奢で儚げな印象。黒い無機質な首輪がそれに拍車をかける。
「おいで、アタシの横に来な」
リゼットは恥ずかしがるでもなく、呼ばれるがまま素直にメオトの横に腰掛けた。
「じゃあリズ、首輪を見せとくれ」
「こう?」
青年が首を向けるとメオトは、白い首にはまった首輪に自分の指輪を当てた。
複数の魔法陣が指輪のまわりに浮かび、すぐに無数の文字が書かれたホログラム状のスクリーンに変わった。書かれているのは彼の個人情報だ。オーナーはそれに目を通しながら話しかける.
「ふぅん、病歴犯罪歴はナシ、借金もナシね。なんでこの見世に?」
「店構えがユニークで魅力的だった。糸目のスタッフにキャスト募集してるって聞いてちょうどいいと思って」
「あー、ティドリーかい。こんな上玉を紹介してくれるなんて役に立つじゃない。…まぁ」
言いながらメオトは覆い被さるようにリゼットを押し倒した。
「ホントに上玉かどうかはヤってみないとわかんないけどねェ?」
ペロっと軽く舌なめずりしながらソファに横たわる形になったリゼットを見下ろすメオト。そのまま彼にまたがり騎乗位の姿勢をとる。小柄だが肉付きのいい、柔らかそうな身体だとリゼットは思った。
「アンタ普段は上?下?」
メオトはリゼットの手を取り自らの胸に当てながら尋ねた。
「どっちもイケるよ。どっちも好き」
リゼットもその胸を優しく掴んで答える。オーナーの口から「ンフ♡」と吐息が漏れた。
「ウチの見世は指名は2時間からなんだ。キャストとして登録する前に、まずは体力測定だね」
「アハ、望むところ♡」
妖艶に微笑むリゼット。その色素の薄い唇を喰らうようにメオトは深くキスを落とした。
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