5 / 5
入店試験
しおりを挟む
「ひゃっ…!」
思わすリゼットは声を上げた。
「あらぁ、可愛い声を出すじゃないか♡」
見世の女主人は面白そうに笑う。耳元で囁いたついでに彼の耳を舐めたのだ。
「ちょっ…急に」
「耳が弱いのかい?今の反応なら客も喜ぶよ」
不服そうに耳を押さえるリゼットを見つめたまま、女主人は長い着物の裾を引き摺ってデスク前のソファに向かった。ふたたび煙管を咥え、どっかと腰掛ける。
「さて、リゼット…そうねえ…リズと呼ぼうか」
「…リズ?」
「ここでのアンタの名前さァ。ここは外界とは別世界、
なら外界とはちがう名前にしないとね」
「…そう」
リゼットは何とも言えない表情をしながら答えた。
女主人はとくに気にすることもなく、柔らかそうなソファに身体を沈めながらつづける。
「アタシの名はメオト…まぁ、オーナーと呼んどくれ」
女主人、メオトはふぅうと大きく煙を吐いた。
「じゃあリズ、面談を始めよう。まず服を脱ぎな」
「ここで?」
突然の指示に目を丸くするリゼット。メオトは煙をくゆらせながらニカっと笑う。
「嫌かい?表ででも構わないよ?」
「…ここでいい」
リゼットはため息をつきながらコートを脱ぎ始めた。
「そうそう、素直が一番」
足元に落ちた分厚いコートがドサッと重めの音を立てる。
「古そうなコートだね。だがモノは悪くない」
コートの下は白のドレスシャツに黒のフレアパンツ、飾り気のないシンプルなものだ。それもリゼットは躊躇なくボタンを外していく。
「あのねぇ、風呂屋に来たんじゃないんだ。もうちょっと色っぽく脱ぎな」
「脱いでからが本番なんだ、別にいいだろ?」
「かぁ~、分かっちゃいないねぇ…!こりゃあ教えることが山ほどありそうだ」
メオトはソファの背もたれに仰け反るように深く沈み込みながら言った。反動で元の姿勢に戻りながら大きく煙を吐く。
「まぁ、でもモノはいいね。抜群にいい」
メオトは目の前の、 首輪のほか何も身につけていない青年を見つめながら言った。細身だが筋肉も適度についている。肩幅はそれなりだが腰が細く、白い肌と相まって華奢で儚げな印象。黒い無機質な首輪がそれに拍車をかける。
「おいで、アタシの横に来な」
リゼットは恥ずかしがるでもなく、呼ばれるがまま素直にメオトの横に腰掛けた。
「じゃあリズ、首輪を見せとくれ」
「こう?」
青年が首を向けるとメオトは、白い首にはまった首輪に自分の指輪を当てた。
複数の魔法陣が指輪のまわりに浮かび、すぐに無数の文字が書かれたホログラム状のスクリーンに変わった。書かれているのは彼の個人情報だ。オーナーはそれに目を通しながら話しかける.
「ふぅん、病歴犯罪歴はナシ、借金もナシね。なんでこの見世に?」
「店構えがユニークで魅力的だった。糸目のスタッフにキャスト募集してるって聞いてちょうどいいと思って」
「あー、ティドリーかい。こんな上玉を紹介してくれるなんて役に立つじゃない。…まぁ」
言いながらメオトは覆い被さるようにリゼットを押し倒した。
「ホントに上玉かどうかはヤってみないとわかんないけどねェ?」
ペロっと軽く舌なめずりしながらソファに横たわる形になったリゼットを見下ろすメオト。そのまま彼にまたがり騎乗位の姿勢をとる。小柄だが肉付きのいい、柔らかそうな身体だとリゼットは思った。
「アンタ普段は上?下?」
メオトはリゼットの手を取り自らの胸に当てながら尋ねた。
「どっちもイケるよ。どっちも好き」
リゼットもその胸を優しく掴んで答える。オーナーの口から「ンフ♡」と吐息が漏れた。
「ウチの見世は指名は2時間からなんだ。キャストとして登録する前に、まずは体力測定だね」
「アハ、望むところ♡」
妖艶に微笑むリゼット。その色素の薄い唇を喰らうようにメオトは深くキスを落とした。
思わすリゼットは声を上げた。
「あらぁ、可愛い声を出すじゃないか♡」
見世の女主人は面白そうに笑う。耳元で囁いたついでに彼の耳を舐めたのだ。
「ちょっ…急に」
「耳が弱いのかい?今の反応なら客も喜ぶよ」
不服そうに耳を押さえるリゼットを見つめたまま、女主人は長い着物の裾を引き摺ってデスク前のソファに向かった。ふたたび煙管を咥え、どっかと腰掛ける。
「さて、リゼット…そうねえ…リズと呼ぼうか」
「…リズ?」
「ここでのアンタの名前さァ。ここは外界とは別世界、
なら外界とはちがう名前にしないとね」
「…そう」
リゼットは何とも言えない表情をしながら答えた。
女主人はとくに気にすることもなく、柔らかそうなソファに身体を沈めながらつづける。
「アタシの名はメオト…まぁ、オーナーと呼んどくれ」
女主人、メオトはふぅうと大きく煙を吐いた。
「じゃあリズ、面談を始めよう。まず服を脱ぎな」
「ここで?」
突然の指示に目を丸くするリゼット。メオトは煙をくゆらせながらニカっと笑う。
「嫌かい?表ででも構わないよ?」
「…ここでいい」
リゼットはため息をつきながらコートを脱ぎ始めた。
「そうそう、素直が一番」
足元に落ちた分厚いコートがドサッと重めの音を立てる。
「古そうなコートだね。だがモノは悪くない」
コートの下は白のドレスシャツに黒のフレアパンツ、飾り気のないシンプルなものだ。それもリゼットは躊躇なくボタンを外していく。
「あのねぇ、風呂屋に来たんじゃないんだ。もうちょっと色っぽく脱ぎな」
「脱いでからが本番なんだ、別にいいだろ?」
「かぁ~、分かっちゃいないねぇ…!こりゃあ教えることが山ほどありそうだ」
メオトはソファの背もたれに仰け反るように深く沈み込みながら言った。反動で元の姿勢に戻りながら大きく煙を吐く。
「まぁ、でもモノはいいね。抜群にいい」
メオトは目の前の、 首輪のほか何も身につけていない青年を見つめながら言った。細身だが筋肉も適度についている。肩幅はそれなりだが腰が細く、白い肌と相まって華奢で儚げな印象。黒い無機質な首輪がそれに拍車をかける。
「おいで、アタシの横に来な」
リゼットは恥ずかしがるでもなく、呼ばれるがまま素直にメオトの横に腰掛けた。
「じゃあリズ、首輪を見せとくれ」
「こう?」
青年が首を向けるとメオトは、白い首にはまった首輪に自分の指輪を当てた。
複数の魔法陣が指輪のまわりに浮かび、すぐに無数の文字が書かれたホログラム状のスクリーンに変わった。書かれているのは彼の個人情報だ。オーナーはそれに目を通しながら話しかける.
「ふぅん、病歴犯罪歴はナシ、借金もナシね。なんでこの見世に?」
「店構えがユニークで魅力的だった。糸目のスタッフにキャスト募集してるって聞いてちょうどいいと思って」
「あー、ティドリーかい。こんな上玉を紹介してくれるなんて役に立つじゃない。…まぁ」
言いながらメオトは覆い被さるようにリゼットを押し倒した。
「ホントに上玉かどうかはヤってみないとわかんないけどねェ?」
ペロっと軽く舌なめずりしながらソファに横たわる形になったリゼットを見下ろすメオト。そのまま彼にまたがり騎乗位の姿勢をとる。小柄だが肉付きのいい、柔らかそうな身体だとリゼットは思った。
「アンタ普段は上?下?」
メオトはリゼットの手を取り自らの胸に当てながら尋ねた。
「どっちもイケるよ。どっちも好き」
リゼットもその胸を優しく掴んで答える。オーナーの口から「ンフ♡」と吐息が漏れた。
「ウチの見世は指名は2時間からなんだ。キャストとして登録する前に、まずは体力測定だね」
「アハ、望むところ♡」
妖艶に微笑むリゼット。その色素の薄い唇を喰らうようにメオトは深くキスを落とした。
0
お気に入りに追加
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
イケメン幼馴染に執着されるSub
ひな
BL
normalだと思ってた俺がまさかの…
支配されたくない 俺がSubなんかじゃない
逃げたい 愛されたくない
こんなの俺じゃない。
(作品名が長いのでイケしゅーって略していただいてOKです。)
ギルド職員は高ランク冒険者の執愛に気づかない
Ayari(橋本彩里)
BL
王都東支部の冒険者ギルド職員として働いているノアは、本部ギルドの嫌がらせに腹を立て飲みすぎ、酔った勢いで見知らぬ男性と夜をともにしてしまう。
かなり戸惑ったが、一夜限りだし相手もそう望んでいるだろうと挨拶もせずその場を後にした。
後日、一夜の相手が有名な高ランク冒険者パーティの一人、美貌の魔剣士ブラムウェルだと知る。
群れることを嫌い他者を寄せ付けないと噂されるブラムウェルだがノアには態度が違って……
冷淡冒険者(ノア限定で世話焼き甘えた)とマイペースギルド職員、周囲の思惑や過去が交差する。
表紙は友人絵師kouma.作です♪
転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!
めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。
ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。
兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。
義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!?
このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。
※タイトル変更(2024/11/27)
冷酷無慈悲なラスボス王子はモブの従者を逃がさないっ
北川晶
BL
冷徹王子に殺されるモブ従者の子供時代に転生したので、死亡回避に奔走するけど、なんでか婚約者になって執着溺愛王子から逃げられない話。
ノワールは四歳のときに乙女ゲーム『花びらを恋の数だけ抱きしめて』の世界に転生したと気づいた。自分の役どころは冷酷無慈悲なラスボス王子ネロディアスの従者。従者になってしまうと十八歳でラスボス王子に殺される運命だ。
四歳である今はまだ従者ではない。
死亡回避のためネロディアスにみつからぬようにしていたが、なぜかうまくいかないし、その上婚約することにもなってしまった??
十八歳で死にたくないので、婚約も従者もごめんです。だけど家の事情で断れない。
こうなったら婚約も従者契約も撤回するよう王子を説得しよう!
そう思ったノワールはなんとか策を練るのだが、ネロディアスは撤回どころかもっと執着してきてーー!?
クールで理論派、ラスボスからなんとか逃げたいモブ従者のノワールと、そんな従者を絶対逃がさない冷酷無慈悲?なラスボス王子ネロディアスの恋愛頭脳戦。
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。
【BL】僕(18歳)、イケメン吸血鬼に飼い慣らされる。
猫足02
BL
地下室に閉じ込められていた吸血鬼の封印が解け、王族は絶体絶命。このままでは国も危ないため、王は交換条件を持ちかけた。
「願いをひとつなんでも聞こう。それでこの城と国を見逃してはくれないか」
「よかろう。では王よ、お前の子供をひとり、私の嫁に寄越せ」
「……!」
姉が吸血鬼のもとにやられてしまう、と絶望したのも束の間。
指名されたのは、なんと弟の僕で……!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる