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歓楽街エリア前
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夢の島ディライト。島の入場ゲートは大きく分けてふたつ。ひとつはゲスト用、もうひとつがキャスト・スタッフ用。それぞれに巨大な受付がありそこで荷物や現金を預ける。荷物は宿泊施設まで無料で転送してもらえるので大きいものはここで預け、手荷物だけ持って入場する者がほとんどだ。
「失礼、キャスト入場でお間違えないですか?」
リゼットを担当した受付スタッフが尋ねた。
「ああ、間違いないよ」リゼットは頷く。
「そうですか。ずいぶんとお持ちだから遊びに来たお客さんがゲートを間違えたのかと」
言いながら受付スタッフは預かった現金の額を確認する。
「300万D$ですね。首輪を」
スタッフは人差し指と中指で小さな魔法陣を発生させ、それをリゼットの首輪に当てる。魔法陣はスッと首輪に吸い込まれた。
「はい、たしかにお預かりしました。これで島の中での金銭のやり取りはすべて首輪で行えます。金額の確認、出し入れはご自身と所属する見世のオーナーが可能になります」
「承知したよ」
「あと、まだ見世の登録がお済みじゃないですね?三日間所属なしでいると強制退去になるのでお気をつけて。まぁ、あなたくらいの器量ならすぐ見つかりますよ。では頑張って!」
「ありがとう」
手を振る受付スタッフに笑顔で見送られながらリゼットはいよいよ入場ゲートをくぐった。もうすっかり昼だ。
ゲートを出てはじめに姿を現すのは広大なエントランス。土産物などのショップ、健全なカフェなどたくさんの店と、様々なキャストやスタッフが出迎える玄関口だ。
色欲の島ディライトとはいえ朝から昼過ぎまではさわやかなデートスポットエリアがメイン。エントランスでも水族館や動物園のマスコットキャラクターが風船を配っていたり、ショッピングに勤しむ恋人たちの姿が見える。まるで普通の遊園地やショッピングモールのようだ。夕方になればその様子は様変わりするのだが。
エントランスの左手をゆくと動物園などのレジャー施設が、右へ進むとファミリーやカップル向けの健全な宿泊施設がある。そして、その奥にあるのが歓楽街エリアだ。
リゼットは先程もらった地図を取り出した。広げるとホログラムのように地図が立体で浮かび上がり、さらに現在位置も示してくれる。施設に近づけば施設が登録してある簡単な案内まで表示される。これでゲストが目当ての施設まで道に迷うことはない。リゼットも地図を頼りに歩き出した。
白い壁が眩しいリゾートホテル、ランチで賑わうオシャレなカフェ、楽しげな人々。そんなものを眺めながらリゼットはエリアの奥へと進んでいく。奥に行くにしたがってホテルやショップはまばらになっていき、ついには辺りに何もなくなり、目の前は鉄の巨大な格子戸で行き止まりになった。
「はい、とまって。身分証を確認します」
格子戸の脇に立つ小屋から全身にチェーンメールで覆われたスタッフが現れた。リゼットの首輪に手を当て、登録された情報を確認する。顔の部分にかかる布のようなものも細かい鎖で出来ていて、そこまで近づいてもスタッフの顔は見えない。
「ずいぶん重装備なんだね?」
「そりゃ色恋の街ですからね、刃傷沙汰が日常茶飯事です」
「おお、怖…」
「はい、確認できました。貴方もこの季節にしては重装備だ」
確認を終えたスタッフがリゼットの服装を見ながら言う。
黒の厚手のケープコート。仕立てはいいが型も古い。
「これしか持ってなくてね」
「服を買うお金はお持ちに見えますけどね?まるでお金だけ持って着の身着のまま飛び出してきたみたいだ」
「まぁ、そんなとこ」
リゼットの適当な返事にスタッフはふふと笑う。
「面倒は起こさないで下さいよ」
「努力しよう」
チェーンメールのスタッフが腕をあげると重い格子戸が音を立てて動き出した。
「では、頑張って」
「ありがとう」
リゼットは壁と格子戸の向こうへと足を踏み入れた。
「失礼、キャスト入場でお間違えないですか?」
リゼットを担当した受付スタッフが尋ねた。
「ああ、間違いないよ」リゼットは頷く。
「そうですか。ずいぶんとお持ちだから遊びに来たお客さんがゲートを間違えたのかと」
言いながら受付スタッフは預かった現金の額を確認する。
「300万D$ですね。首輪を」
スタッフは人差し指と中指で小さな魔法陣を発生させ、それをリゼットの首輪に当てる。魔法陣はスッと首輪に吸い込まれた。
「はい、たしかにお預かりしました。これで島の中での金銭のやり取りはすべて首輪で行えます。金額の確認、出し入れはご自身と所属する見世のオーナーが可能になります」
「承知したよ」
「あと、まだ見世の登録がお済みじゃないですね?三日間所属なしでいると強制退去になるのでお気をつけて。まぁ、あなたくらいの器量ならすぐ見つかりますよ。では頑張って!」
「ありがとう」
手を振る受付スタッフに笑顔で見送られながらリゼットはいよいよ入場ゲートをくぐった。もうすっかり昼だ。
ゲートを出てはじめに姿を現すのは広大なエントランス。土産物などのショップ、健全なカフェなどたくさんの店と、様々なキャストやスタッフが出迎える玄関口だ。
色欲の島ディライトとはいえ朝から昼過ぎまではさわやかなデートスポットエリアがメイン。エントランスでも水族館や動物園のマスコットキャラクターが風船を配っていたり、ショッピングに勤しむ恋人たちの姿が見える。まるで普通の遊園地やショッピングモールのようだ。夕方になればその様子は様変わりするのだが。
エントランスの左手をゆくと動物園などのレジャー施設が、右へ進むとファミリーやカップル向けの健全な宿泊施設がある。そして、その奥にあるのが歓楽街エリアだ。
リゼットは先程もらった地図を取り出した。広げるとホログラムのように地図が立体で浮かび上がり、さらに現在位置も示してくれる。施設に近づけば施設が登録してある簡単な案内まで表示される。これでゲストが目当ての施設まで道に迷うことはない。リゼットも地図を頼りに歩き出した。
白い壁が眩しいリゾートホテル、ランチで賑わうオシャレなカフェ、楽しげな人々。そんなものを眺めながらリゼットはエリアの奥へと進んでいく。奥に行くにしたがってホテルやショップはまばらになっていき、ついには辺りに何もなくなり、目の前は鉄の巨大な格子戸で行き止まりになった。
「はい、とまって。身分証を確認します」
格子戸の脇に立つ小屋から全身にチェーンメールで覆われたスタッフが現れた。リゼットの首輪に手を当て、登録された情報を確認する。顔の部分にかかる布のようなものも細かい鎖で出来ていて、そこまで近づいてもスタッフの顔は見えない。
「ずいぶん重装備なんだね?」
「そりゃ色恋の街ですからね、刃傷沙汰が日常茶飯事です」
「おお、怖…」
「はい、確認できました。貴方もこの季節にしては重装備だ」
確認を終えたスタッフがリゼットの服装を見ながら言う。
黒の厚手のケープコート。仕立てはいいが型も古い。
「これしか持ってなくてね」
「服を買うお金はお持ちに見えますけどね?まるでお金だけ持って着の身着のまま飛び出してきたみたいだ」
「まぁ、そんなとこ」
リゼットの適当な返事にスタッフはふふと笑う。
「面倒は起こさないで下さいよ」
「努力しよう」
チェーンメールのスタッフが腕をあげると重い格子戸が音を立てて動き出した。
「では、頑張って」
「ありがとう」
リゼットは壁と格子戸の向こうへと足を踏み入れた。
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