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第7話 実践報告も上位を目指すわ!
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学期末の試験には筆記と共に、実践報告が必要となっている。
実践と言っても、学園できちんと管理された依頼を受けて完了すれば良いから、自分の実力を過信しなければ失敗することはない。
簡単なものは迷子のペットや失くしもの探し、薬草の採取なんてものがある。日頃から引き受けっている学生も多いんだけど、私は店の手伝いもあるため数をこなせずにいた。一応、合格ラインは越えているけど、これでは上位に食い込むのは難しいかもしれないわね。
*
依頼を案内している窓口の横に、依頼リストが貼り出される掲示板がある。それを前にして、私はパークスと二人で次に引き受けるものを探していた。
魔獣の討伐なんていうものもあるし、採取の依頼だって難易度が様々だ。近くの森でとれるようなものはEランク。つまり最低の点数しかもらえない。でも、魔獣が多く現れる場所になれば、Cランク以上に上がることもある。当然、難しい案件は高学年向けだけどね。
「もう一押し、欲しいのよね」
「Eランクだと少なくても十件はこなさないと、合格ラインにならないって先生が言ってたよね」
「最低ラインは超えてるわ。でもそれじゃ、ダメ」
「どうしてさ?」
「私は常に主席でいたいの。筆記だけ完璧でもダメ。実践もきっちり納めないと!」
「はー……まぁ、そうなると、簡単な護衛任務くらい引き受けないとかな? アリシアは防御系の魔法が得意だろ」
「そうね。でも、パークスと二人って言うのも心もとないわ」
「悪かったね。俺も防御系で」
「そもそも、不出来なあなたに頼ってたらダメなんでしょうけどね」
「うわ-、さすがにそれって傷つくんだけど」
「そう思うなら、真面目にやりなさい!」
わざとらしく傷ついたと愚痴るパークスを睨むと、彼は特に気にした様子もなく、リストに視線を戻した。
パークスの記憶力や洞察力は、悔しいけど私以上だ。もっと真面目に学べば、凄い魔術師になるだろうことは、誰よりも私が分かっている。だけど、本当に不真面目と言うか面倒臭がり屋で、いつも合格ギリギリでいるのよね。魔術師になることが目的じゃないしとか何とか言って。
「まぁ、いくつもやるのは面倒だし、高得点狙いは賛成だけどね」
「それじゃ……」
リストを指さして、これにしようかと言いかけると、後ろから「アリシア!」と名前を呼ばれた。
振り返ると、真っ赤なローブを揺らしたミシェルが手を振って走ってくるのが見えた。
走る姿にお淑《しと》やかさなんて欠片もないし、侯爵令嬢には全く見えない。けど、息を切らして近づいてくる様子は、仔犬のような小型の動物を思い出させるのよね。思わず笑ってしまう愛らしさって言うか、二つに分けて結んだ髪型《ツインテール》が、とび跳ねるウサギみたいにも見える。
「ミシェルも依頼を見に来たの?」
「うん、そんなとこ。アリシア達も何か引き受けるの?」
「護衛任務に挑戦しようかって話してたところよ」
「護衛? それじゃ、一緒に、これを引き受けない?」
そう言ってミシェルは手に持っていた用紙を私に見せた。それは、募集期間の短い特別枠リストだった。
実践と言っても、学園できちんと管理された依頼を受けて完了すれば良いから、自分の実力を過信しなければ失敗することはない。
簡単なものは迷子のペットや失くしもの探し、薬草の採取なんてものがある。日頃から引き受けっている学生も多いんだけど、私は店の手伝いもあるため数をこなせずにいた。一応、合格ラインは越えているけど、これでは上位に食い込むのは難しいかもしれないわね。
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依頼を案内している窓口の横に、依頼リストが貼り出される掲示板がある。それを前にして、私はパークスと二人で次に引き受けるものを探していた。
魔獣の討伐なんていうものもあるし、採取の依頼だって難易度が様々だ。近くの森でとれるようなものはEランク。つまり最低の点数しかもらえない。でも、魔獣が多く現れる場所になれば、Cランク以上に上がることもある。当然、難しい案件は高学年向けだけどね。
「もう一押し、欲しいのよね」
「Eランクだと少なくても十件はこなさないと、合格ラインにならないって先生が言ってたよね」
「最低ラインは超えてるわ。でもそれじゃ、ダメ」
「どうしてさ?」
「私は常に主席でいたいの。筆記だけ完璧でもダメ。実践もきっちり納めないと!」
「はー……まぁ、そうなると、簡単な護衛任務くらい引き受けないとかな? アリシアは防御系の魔法が得意だろ」
「そうね。でも、パークスと二人って言うのも心もとないわ」
「悪かったね。俺も防御系で」
「そもそも、不出来なあなたに頼ってたらダメなんでしょうけどね」
「うわ-、さすがにそれって傷つくんだけど」
「そう思うなら、真面目にやりなさい!」
わざとらしく傷ついたと愚痴るパークスを睨むと、彼は特に気にした様子もなく、リストに視線を戻した。
パークスの記憶力や洞察力は、悔しいけど私以上だ。もっと真面目に学べば、凄い魔術師になるだろうことは、誰よりも私が分かっている。だけど、本当に不真面目と言うか面倒臭がり屋で、いつも合格ギリギリでいるのよね。魔術師になることが目的じゃないしとか何とか言って。
「まぁ、いくつもやるのは面倒だし、高得点狙いは賛成だけどね」
「それじゃ……」
リストを指さして、これにしようかと言いかけると、後ろから「アリシア!」と名前を呼ばれた。
振り返ると、真っ赤なローブを揺らしたミシェルが手を振って走ってくるのが見えた。
走る姿にお淑《しと》やかさなんて欠片もないし、侯爵令嬢には全く見えない。けど、息を切らして近づいてくる様子は、仔犬のような小型の動物を思い出させるのよね。思わず笑ってしまう愛らしさって言うか、二つに分けて結んだ髪型《ツインテール》が、とび跳ねるウサギみたいにも見える。
「ミシェルも依頼を見に来たの?」
「うん、そんなとこ。アリシア達も何か引き受けるの?」
「護衛任務に挑戦しようかって話してたところよ」
「護衛? それじゃ、一緒に、これを引き受けない?」
そう言ってミシェルは手に持っていた用紙を私に見せた。それは、募集期間の短い特別枠リストだった。
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