冒険者に拾われ聖騎士に求められた僕が、本当の願いに気づくまで。

鳴海カイリ

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第六章 死を許さない呪い

206 恥ずかしい※

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「アラ、ん――」

 言葉を返す間もなく、アランの唇が深く重なって来た。
 そのまま驚いて半開きになった僕の口を割って、熱い舌が割り込んでくる。そのまま歯列をなぞり、僕の舌を絡めかき回していく。

「んぅ……ん、んっ……う……」

 思わず身体に力が入った。
 僕の体がベンチから滑り落ちないよう片腕で支えるアランは、もう片方の手で僕の手と手のひらを合わせ、指を互い違いにしてギュッとにぎる。その力強さに安心して、僕も強く握り返した。
 上顎を撫でるよう動き回るアランの舌が、また僕の舌にからまっていく。

 ドキドキして、息もできない。

 アランの熱い息や舌。力強い腕。
 徐々に汗ばんでいく肌の感覚。
 持ち上がっていく僕の膝を支えるように、アランの膝が入り込んで、胸の胸の距離が近くなっていく。重なっていく。
 僕の……押し殺したような甘い声だけが、他に誰もいない夜の庭園に漏れていく。

「んんっ……ん、ふ……んっ……」
「サシャ……」

 低く甘い声が吐息と共に漏れた。
 その声だけで、僕の全身に、ぞくりと甘い痺れが走る。

「……かわいい、サシャ……」
「あ……んぅ……」

 唇を離して鼓膜に触れるほど近くでアランが囁く。

「……もっと、お前のきもちいいって声を、ききたい……」
「アラン……んっ!」

 唇を押し付けられ、熱い舌が首筋を這う感覚に思わず甘い声が出た。

「……は、アラン……んんっ……ぁ」

 僕の手のひらを離して、片手で器用に寝間着の前ボタンを外していく。
 胸からお腹の下まで。アランの少しざらついた指先が、直接僕の肌に触れる。それだけで、また僕の全身はぞくりと震えた。

「……はぁ……ぁ……あふ……」

 胸元で、チャリ、と首飾りにした金色の魔石が滑った。
 首筋から顔を起こしたアランが、「こいつは?」と低い声で囁いた。一瞬、ずっと身に着けていた魔石の事かと思ったけれど違う。親指でそっとなぞった場所は、あの夜、アーシュにつけられたキスの痕だ。
 もう消えかけていたけれど、アランは見逃したりしない。

「それは……」
「あの、ザハリアーシュとかいう騎士がつけたのか?」

 違う、とは言えずに、僕は息を切らしたままアランを見上げる。
 アランは瞳を細め不快という表情のままじっと見下ろしていたが、不意に猛獣が笑うように唇の端を上げた。

「上書きしてやる」
「――っあ!」

 そう言って、アーシュがつけたキスの上にアランの唇が深く重なる。そのまま、ちくりと軽い痛みを感じるほど深く吸われ僕の全身が震えた。
 アランが顔を離す。
 瞳を細めた表情は、満足げな笑いだ。
 僕は……こんなアランの、笑い顔も好きなのだと……目にするだけでドキドキしてしまう。

「……かわいいな」
「アラン……」
「それに、すごく……きれいになった」

 再びアランの唇が降って来る。
 僕の口に重なり、そして首をなぞり胸に下りて行く。ちろり、と僕の胸の突起を舐めて、そのまま軽く唇で摘まむようにしてから、舌先でいじめていく。僕はたまらず首をのけぞらせた。

「……っあ、ぁ、アラン、そこ……」
「きもちいい、のか?」
「……はずか、しい……」

 舌先で何度も小さな突起を転がされる。
 そんなところ、触っても何も感じないはずなのに……だんだん腰の辺りがむず痒く、痺れるようになっていく。もぞもぞと動かす僕の膝や腰に気づいたのか、アランはもう片方の突起も、指先で摘まんで弄り始めた。

 こんなこと。
 こんなこと……今まで誰にもされたことが無い。
 こんなふうに弄られて死ぬほどはずかしいのに、相手がアランだと思うと嬉しくて仕方がない。
 甘い声が抑えきれず、僕は顔を反らして手の甲で口元を抑える。

「あふっ……ん、ぅ……んんっ……」
「……気持ちいいんだろ?」
「ぁ、だっ……て……」
「乳首をこなんに硬くして、自分でもいじっていたのか?」

 甘く囁く声に、僕はふるふると首を横に振る。

「……しない、そんな……じぶん、で……なんて……ぁ」
「一度も?」
「ないよっ……ふぁあ、ぁ!」

 舌で胸先を刺激されたまま、片手が僕の腹から脇に、腰にと移動していく。その手のひらの温かさや指先の動きがたまらなく気持ちよくて、僕は背筋をのけぞらせた。

 アランが僕の体を撫でまわしている。
 ただそれだけなのに、気持ちいい。
 蕩けそうになるほど……気持ちがいい。

「ここも、いじったりしていなかったのか?」

 そう言って、寝間着の上から手のひらで包むように撫で上げたのは、僕の雄の部分だ。
 自分でも気づいていないうちに、そこは熱く硬く、下着の中で立ち上がっていた。

「ひやぁ、ぁ!」
「このままじゃ、ぐしょぐしょに濡れちまうな」

 言うと同時に、アランはするりと下着ごと、僕の寝間着のズボンを膝下まで滑り落とした。
 ふるりと、震えるようにして、アランの目の前にさらされる。
 初夏とはいっても涼しい夜の空気に触れて、立ち上がった僕はひくりとはねた。

「きれいで、かわいい色だ……」
「アラン……んんっ」
「……全然、触ってないみたいに」
「ないよ!」

 恥ずかしくて恥ずかしくて、でも見られているのも嫌じゃなくて、自分の気持ちが分からない。アランが「本当に?」笑ってい言う言葉にら、ぞくぞくしてしまう。

「自分でさわったりなんか……全然ン……」
「誰かと寝たことも?」
「無いよ! 一度でもそんなことしたら……」
「婚約者確定……だもんな」

 ふっ、と笑って大きな手のひらが、僕の雄を包み込んだ。
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