206 / 281
第六章 死を許さない呪い
206 恥ずかしい※
しおりを挟む「アラ、ん――」
言葉を返す間もなく、アランの唇が深く重なって来た。
そのまま驚いて半開きになった僕の口を割って、熱い舌が割り込んでくる。そのまま歯列をなぞり、僕の舌を絡めかき回していく。
「んぅ……ん、んっ……う……」
思わず身体に力が入った。
僕の体がベンチから滑り落ちないよう片腕で支えるアランは、もう片方の手で僕の手と手のひらを合わせ、指を互い違いにしてギュッとにぎる。その力強さに安心して、僕も強く握り返した。
上顎を撫でるよう動き回るアランの舌が、また僕の舌にからまっていく。
ドキドキして、息もできない。
アランの熱い息や舌。力強い腕。
徐々に汗ばんでいく肌の感覚。
持ち上がっていく僕の膝を支えるように、アランの膝が入り込んで、胸の胸の距離が近くなっていく。重なっていく。
僕の……押し殺したような甘い声だけが、他に誰もいない夜の庭園に漏れていく。
「んんっ……ん、ふ……んっ……」
「サシャ……」
低く甘い声が吐息と共に漏れた。
その声だけで、僕の全身に、ぞくりと甘い痺れが走る。
「……かわいい、サシャ……」
「あ……んぅ……」
唇を離して鼓膜に触れるほど近くでアランが囁く。
「……もっと、お前のきもちいいって声を、ききたい……」
「アラン……んっ!」
唇を押し付けられ、熱い舌が首筋を這う感覚に思わず甘い声が出た。
「……は、アラン……んんっ……ぁ」
僕の手のひらを離して、片手で器用に寝間着の前ボタンを外していく。
胸からお腹の下まで。アランの少しざらついた指先が、直接僕の肌に触れる。それだけで、また僕の全身はぞくりと震えた。
「……はぁ……ぁ……あふ……」
胸元で、チャリ、と首飾りにした金色の魔石が滑った。
首筋から顔を起こしたアランが、「こいつは?」と低い声で囁いた。一瞬、ずっと身に着けていた魔石の事かと思ったけれど違う。親指でそっとなぞった場所は、あの夜、アーシュにつけられたキスの痕だ。
もう消えかけていたけれど、アランは見逃したりしない。
「それは……」
「あの、ザハリアーシュとかいう騎士がつけたのか?」
違う、とは言えずに、僕は息を切らしたままアランを見上げる。
アランは瞳を細め不快という表情のままじっと見下ろしていたが、不意に猛獣が笑うように唇の端を上げた。
「上書きしてやる」
「――っあ!」
そう言って、アーシュがつけたキスの上にアランの唇が深く重なる。そのまま、ちくりと軽い痛みを感じるほど深く吸われ僕の全身が震えた。
アランが顔を離す。
瞳を細めた表情は、満足げな笑いだ。
僕は……こんなアランの、笑い顔も好きなのだと……目にするだけでドキドキしてしまう。
「……かわいいな」
「アラン……」
「それに、すごく……きれいになった」
再びアランの唇が降って来る。
僕の口に重なり、そして首をなぞり胸に下りて行く。ちろり、と僕の胸の突起を舐めて、そのまま軽く唇で摘まむようにしてから、舌先でいじめていく。僕はたまらず首をのけぞらせた。
「……っあ、ぁ、アラン、そこ……」
「きもちいい、のか?」
「……はずか、しい……」
舌先で何度も小さな突起を転がされる。
そんなところ、触っても何も感じないはずなのに……だんだん腰の辺りがむず痒く、痺れるようになっていく。もぞもぞと動かす僕の膝や腰に気づいたのか、アランはもう片方の突起も、指先で摘まんで弄り始めた。
こんなこと。
こんなこと……今まで誰にもされたことが無い。
こんなふうに弄られて死ぬほどはずかしいのに、相手がアランだと思うと嬉しくて仕方がない。
甘い声が抑えきれず、僕は顔を反らして手の甲で口元を抑える。
「あふっ……ん、ぅ……んんっ……」
「……気持ちいいんだろ?」
「ぁ、だっ……て……」
「乳首をこなんに硬くして、自分でもいじっていたのか?」
甘く囁く声に、僕はふるふると首を横に振る。
「……しない、そんな……じぶん、で……なんて……ぁ」
「一度も?」
「ないよっ……ふぁあ、ぁ!」
舌で胸先を刺激されたまま、片手が僕の腹から脇に、腰にと移動していく。その手のひらの温かさや指先の動きがたまらなく気持ちよくて、僕は背筋をのけぞらせた。
アランが僕の体を撫でまわしている。
ただそれだけなのに、気持ちいい。
蕩けそうになるほど……気持ちがいい。
「ここも、いじったりしていなかったのか?」
そう言って、寝間着の上から手のひらで包むように撫で上げたのは、僕の雄の部分だ。
自分でも気づいていないうちに、そこは熱く硬く、下着の中で立ち上がっていた。
「ひやぁ、ぁ!」
「このままじゃ、ぐしょぐしょに濡れちまうな」
言うと同時に、アランはするりと下着ごと、僕の寝間着のズボンを膝下まで滑り落とした。
ふるりと、震えるようにして、アランの目の前にさらされる。
初夏とはいっても涼しい夜の空気に触れて、立ち上がった僕はひくりとはねた。
「きれいで、かわいい色だ……」
「アラン……んんっ」
「……全然、触ってないみたいに」
「ないよ!」
恥ずかしくて恥ずかしくて、でも見られているのも嫌じゃなくて、自分の気持ちが分からない。アランが「本当に?」笑ってい言う言葉にら、ぞくぞくしてしまう。
「自分でさわったりなんか……全然ン……」
「誰かと寝たことも?」
「無いよ! 一度でもそんなことしたら……」
「婚約者確定……だもんな」
ふっ、と笑って大きな手のひらが、僕の雄を包み込んだ。
3
お気に入りに追加
361
あなたにおすすめの小説


番から逃げる事にしました
みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。
前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。
彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。
❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。
❋独自設定有りです。
❋他視点の話もあります。
❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。
急に運命の番と言われても。夜会で永遠の愛を誓われ駆け落ちし、数年後ぽい捨てされた母を持つ平民娘は、氷の騎士の甘い求婚を冷たく拒む。
石河 翠
恋愛
ルビーの花屋に、隣国の氷の騎士ディランが現れた。
雪豹の獣人である彼は番の匂いを追いかけていたらしい。ところが花屋に着いたとたんに、手がかりを失ってしまったというのだ。
一時的に鼻が詰まった人間並みの嗅覚になったディランだが、番が見つかるまでは帰らないと言い張る始末。ルビーは彼の世話をする羽目に。
ルビーと喧嘩をしつつ、人間についての理解を深めていくディラン。
その後嗅覚を取り戻したディランは番の正体に歓喜し、公衆の面前で結婚を申し込むが冷たく拒まれる。ルビーが求婚を断ったのには理由があって……。
愛されることが怖い臆病なヒロインと、彼女のためならすべてを捨てる一途でだだ甘なヒーローの恋物語。
この作品は、他サイトにも投稿しております。
扉絵は写真ACより、チョコラテさまの作品(ID25481643)をお借りしています。

僕だけの番
五珠 izumi
BL
人族、魔人族、獣人族が住む世界。
その中の獣人族にだけ存在する番。
でも、番には滅多に出会うことはないと言われていた。
僕は鳥の獣人で、いつの日か番に出会うことを夢見ていた。だから、これまで誰も好きにならず恋もしてこなかった。
それほどまでに求めていた番に、バイト中めぐり逢えたんだけれど。
出会った番は同性で『番』を認知できない人族だった。
そのうえ、彼には恋人もいて……。
後半、少し百合要素も含みます。苦手な方はお気をつけ下さい。

成長率マシマシスキルを選んだら無職判定されて追放されました。~スキルマニアに助けられましたが染まらないようにしたいと思います~
m-kawa
ファンタジー
第5回集英社Web小説大賞、奨励賞受賞。書籍化します。
書籍化に伴い、この作品はアルファポリスから削除予定となりますので、あしからずご承知おきください。
【第七部開始】
召喚魔法陣から逃げようとした主人公は、逃げ遅れたせいで召喚に遅刻してしまう。だが他のクラスメイトと違って任意のスキルを選べるようになっていた。しかし選んだ成長率マシマシスキルは自分の得意なものが現れないスキルだったのか、召喚先の国で無職判定をされて追い出されてしまう。
一方で微妙な職業が出てしまい、肩身の狭い思いをしていたヒロインも追い出される主人公の後を追って飛び出してしまった。
だがしかし、追い出された先は平民が住まう街などではなく、危険な魔物が住まう森の中だった!
突如始まったサバイバルに、成長率マシマシスキルは果たして役に立つのか!
魔物に襲われた主人公の運命やいかに!
※小説家になろう様とカクヨム様にも投稿しています。
※カクヨムにて先行公開中
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる