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奪われたかもしれない【エヴァン】
しおりを挟む シェリーが謎の生命体と呼んでいる者に初めて接触されたのは、15年前の3歳の誕生日のことだった。まだその頃は身の回りの世話をしてくれるばあやがおり、それほど不自由ではない生活をしていた。
夢の中でシェリーは歩いていた。黒い髪を一つにまとめ、黒のパンツスーツに黒いパンプス。高くそびえ立つコンクリートの建物、その横を走る鉄の馬車。空は狭くその隙間に空を飛ぶ鉄の塊が見え、橋の下の川にはゴミが浮いている。すれ違う人々は時間に追われる様に黙々と歩いている。
ふと、橋の上で立ち止まりいったい私は何に向かって歩いているのだろうと疑問に思った。
「やあ。こんにちは」
突然声をかけられた。振り向くと、この情景には不釣り合いな白い人物が立っていた。
はっきり言って気味が悪いぐらい白いしか印象に残らない風貌だ。
「僕は君をなんて呼べばいいかな?」
いきなり何なんだと思いつつも答える。
「シェリー。」
「そうだね。今はそうかもしれないけどこの情景に合う名前があるんじゃないかな?」
「佐々木です。」
「ササーキね。うーん?他に名前はない?」
この時点でこの夢はおかしいことに気づいた。よくある小説の中で真名を知られてはいけないという話があったことを思い出した。
「ササキです。」
「おや、警戒されてしまったかな?まあ、これでも十分だからいいよ。今まで失敗したけど今回は行けるはず。君には良いツガイをつけてあげたからね。詳しいことはまた今度にするね。誕生日おめでとう」
「なにそれ!」
自分の声で目覚めてしまった。
次に会ったのは6歳のとき、その頃にはばあやは息子夫婦のところへ行ってしまったので、1歳のルークの世話と研究三昧の同居人の世話でくたくたになって休んでいるシェリーの夢に侵入してきた。
シェリーは海辺の砂浜で一心不乱になって砂城をつくっている。そこに足が降ってきて、城は無惨にも破壊されてしまった。
「さっきから声をかけているのに気づいてよ。」
不貞腐れたいつかの白い人がいた。
「勝手に侵入してきて、完成寸前の私の城を壊して、そのいいぐさなに?」
「今日は君にやってもらいたい事を言いに来たんだ。」
白い人はにこやかに言う。
「謝ってよ。」
「この世界には人々が吐き出した、悪意・憎悪・嫉妬などの悪い心が溜まり続けているんだ。それが凝縮し、意思を持って動いて破壊行動を繰り返すモノを魔王と呼ばれる存在になるんだけど、それは君の両親が倒したから問題ないよ。でも、それ以外にも各地では溜まり続けているんだ。」
白い人は自分の言いたいことを話続ける。
「人の話を聞け。」
「それを聖女の君が浄化して欲しいんだよ。」
「嫌だけど。」
シェリーはすぐさま拒否をする。
「それを放置すると魔物も増えて、魔王が発現しちゃうからさ。」
「私は子供だし、今はかわいい弟を育てるのに忙しい。」
シェリーは拒否し続ける。しかし、白い人は変わらず話続ける。
「それを補助させるために番を5人用意したよ。各種族の強者ばかりだ。もう、これで完璧だね。」
「3歳の時に確認しました。ツガイが5人ってどこのビッチ属性のヒロインだ。嫌がらせじゃないか。」
「いやー。今までも聖女にいろんな番を宛がったんだけどね。番が弱ちいと聖女の力に目の眩んだヤツに殺されたし、強いと監禁してしまったし、教会の教皇でも同じ、王族でも同じ。もう、人の悪の心が溜まりに溜まっちゃって魔王が出来てしまったじゃん。それで、人族の強いヤツを三人、番につけてみたんだよ。そしたらさ、共通の敵の魔王を倒したら、番を巡って殺しあい。いや、参ったね。だから、今回は異種族で5人にしたよ。」
失敗し続けた実験の愚痴を言っているかのような言い分だ。
「悪化している。ツガイが一人という常識を覆した上に別種族なんて、怪獣大戦並。」
「少し前に勇者が大暴れをしたおかげで、人々の心の闇が一気に増えてしまってね。魔王を倒して100年ぐらいかけて浄化してもらえればよかったんだけど、このままだと20年しない内に魔王が復活しそうなんだよね。大変。大変。」
白い人は明日の天気を言うが如く、しれっと魔王復活を予言してきた。
「あのバカ勇者。今はルーちゃん育てるので忙しいし、まだ子供だから遠くとかは無理。力も体力もないので無理だから15年程は準備期間が欲しい。あと、思い通りの能力が欲しいから自由に創れる魔法かスキルが欲しい。」
シェリーはこの話を聞いて益々、ツガイというものに会ってしまうことに危機感を抱いた。すべて自分自身で成し遂げるなら、何者にも負けない力が必要だと考えた。
「最初はシーラン王国がいいと思うよ。多種族がたくさんいるから、番の特性を知るには適しているよ。子育てするにも、体を鍛えるのも、スキルの構築をするのにもいいところだよ。」
そう言って白い人は消えていった。
夢の砂浜に残されたシェリーはスキルの創造の権利を得ることができたことがわかり、これからの事を計画立てるのであった。
夢の中でシェリーは歩いていた。黒い髪を一つにまとめ、黒のパンツスーツに黒いパンプス。高くそびえ立つコンクリートの建物、その横を走る鉄の馬車。空は狭くその隙間に空を飛ぶ鉄の塊が見え、橋の下の川にはゴミが浮いている。すれ違う人々は時間に追われる様に黙々と歩いている。
ふと、橋の上で立ち止まりいったい私は何に向かって歩いているのだろうと疑問に思った。
「やあ。こんにちは」
突然声をかけられた。振り向くと、この情景には不釣り合いな白い人物が立っていた。
はっきり言って気味が悪いぐらい白いしか印象に残らない風貌だ。
「僕は君をなんて呼べばいいかな?」
いきなり何なんだと思いつつも答える。
「シェリー。」
「そうだね。今はそうかもしれないけどこの情景に合う名前があるんじゃないかな?」
「佐々木です。」
「ササーキね。うーん?他に名前はない?」
この時点でこの夢はおかしいことに気づいた。よくある小説の中で真名を知られてはいけないという話があったことを思い出した。
「ササキです。」
「おや、警戒されてしまったかな?まあ、これでも十分だからいいよ。今まで失敗したけど今回は行けるはず。君には良いツガイをつけてあげたからね。詳しいことはまた今度にするね。誕生日おめでとう」
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自分の声で目覚めてしまった。
次に会ったのは6歳のとき、その頃にはばあやは息子夫婦のところへ行ってしまったので、1歳のルークの世話と研究三昧の同居人の世話でくたくたになって休んでいるシェリーの夢に侵入してきた。
シェリーは海辺の砂浜で一心不乱になって砂城をつくっている。そこに足が降ってきて、城は無惨にも破壊されてしまった。
「さっきから声をかけているのに気づいてよ。」
不貞腐れたいつかの白い人がいた。
「勝手に侵入してきて、完成寸前の私の城を壊して、そのいいぐさなに?」
「今日は君にやってもらいたい事を言いに来たんだ。」
白い人はにこやかに言う。
「謝ってよ。」
「この世界には人々が吐き出した、悪意・憎悪・嫉妬などの悪い心が溜まり続けているんだ。それが凝縮し、意思を持って動いて破壊行動を繰り返すモノを魔王と呼ばれる存在になるんだけど、それは君の両親が倒したから問題ないよ。でも、それ以外にも各地では溜まり続けているんだ。」
白い人は自分の言いたいことを話続ける。
「人の話を聞け。」
「それを聖女の君が浄化して欲しいんだよ。」
「嫌だけど。」
シェリーはすぐさま拒否をする。
「それを放置すると魔物も増えて、魔王が発現しちゃうからさ。」
「私は子供だし、今はかわいい弟を育てるのに忙しい。」
シェリーは拒否し続ける。しかし、白い人は変わらず話続ける。
「それを補助させるために番を5人用意したよ。各種族の強者ばかりだ。もう、これで完璧だね。」
「3歳の時に確認しました。ツガイが5人ってどこのビッチ属性のヒロインだ。嫌がらせじゃないか。」
「いやー。今までも聖女にいろんな番を宛がったんだけどね。番が弱ちいと聖女の力に目の眩んだヤツに殺されたし、強いと監禁してしまったし、教会の教皇でも同じ、王族でも同じ。もう、人の悪の心が溜まりに溜まっちゃって魔王が出来てしまったじゃん。それで、人族の強いヤツを三人、番につけてみたんだよ。そしたらさ、共通の敵の魔王を倒したら、番を巡って殺しあい。いや、参ったね。だから、今回は異種族で5人にしたよ。」
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「悪化している。ツガイが一人という常識を覆した上に別種族なんて、怪獣大戦並。」
「少し前に勇者が大暴れをしたおかげで、人々の心の闇が一気に増えてしまってね。魔王を倒して100年ぐらいかけて浄化してもらえればよかったんだけど、このままだと20年しない内に魔王が復活しそうなんだよね。大変。大変。」
白い人は明日の天気を言うが如く、しれっと魔王復活を予言してきた。
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シェリーはこの話を聞いて益々、ツガイというものに会ってしまうことに危機感を抱いた。すべて自分自身で成し遂げるなら、何者にも負けない力が必要だと考えた。
「最初はシーラン王国がいいと思うよ。多種族がたくさんいるから、番の特性を知るには適しているよ。子育てするにも、体を鍛えるのも、スキルの構築をするのにもいいところだよ。」
そう言って白い人は消えていった。
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