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第4章 たいせつな人を守りたい
144 ヴァンを楽にしたいのに ※
しおりを挟むゆっくりと、腰を動かし始める。
入り口から遠い……半分くらいの場所まで浅く抜いて深くまで、引いて、深くまで。自分から動くって、こんなに難しいものだと思わなかった。
いつもヴァンに気持ちよくされたら、自然に腰が動いていたはずなのに、どんな動きだったのか思い出せない。
「ふぁ……ぁ、ぅ……」
あまり抜き過ぎると、そのまま抜け落ちるんじゃないかと怖くなる。
けれど入り口のすこし上あたりに一番気持ちのいい場所があって、自然とそこにこすりつけたくなる。今は……今日は……ヴァンを気持ちよくさせるのが優先なのに。自分が、気持ちよくなるためじゃないのに。
「リク……」
「……まって、もぅ、すこし……」
ぎこちない動きで身体を揺らして、ヴァンの快感を探る。
口じゃ全部咥えきれないならこちらで包むしかない。ヴァンだって俺の中でイキたいって言ってくれたんだ。願いに応えたい。
そう思うのに、なんだか上手くできない。
「……リク……」
ヴァンの熱い手のひらが俺の頬を撫でる。
俺は抜き差しの間隔を速め、それでも抜け落ちないように気を使いながら揺らしていく。呼吸が徐々に小刻みになっていて、繋がった場所から押し出された潤滑液が卑猥な水音になって響く。
ぞく……と、甘い痺れが背筋を伝った。
「……ぅあ、ぁ……」
「リク」
「う、ごめ……ん、ヴァ、ン……」
気持ちよくさせたい。
なのに、自分の方が気持ちよくなり始めている。
ヴァンと繋がっていられる。それだけで嬉しくて、自分の気持ちいい場所にこすりつけようと身体が泳ぐ。
また瞼の奥が、じんと熱くなった。
ヴァンが俺の名を呼ぶ。
「リク……リクの気持ちいいを、さがし……て」
思いもしない言葉に顔を上げた。
ヴァンが切ない顔で俺に頬を撫でている。その顔が歪んで見えるのに気がついて、はじめて俺ば自分が泣いていたのだと気づいた。
「……僕は、嬉しいから……リク、こんな姿」
「ヴァン……」
「僕のために……」
俺の頭を抱きよせる。
その力に抵抗せず、俺はそのままヴァンと唇を合わせた。舌を絡め合って、互いの咥内を味わっていく。
「……ん、んぅ……はぁ……ぁ」
「たまらない……」
唇を離して、ヴァンが囁く。
「リクのこんな姿……たまらなく、可愛くて……」
「……ヴァ、ン……んっ……」
「だから……」
俺の背筋に熱い手のひらを這わせた。
「――っあ!」
きゅ、と後孔を締める。
一番感じる。気持ちいい背骨を撫でる指先に、俺は声を上げてのけ反った。ヴァンが熱い息を漏らす。
「だから……リクが気持ちよく、なるように……」
「……だって……っあ」
「リクが気持ちよくなるのが、嬉しい……から……」
快楽を誘う動きより、俺の気持ちいいを探してと、荒い息の切れ切れの声で言う。
どこまでも俺のことを一番に思うヴァンに、胸がズキズキと痛む。
「だって……ヴァンを、楽に……したいのに……」
ヴァンを楽にしたい。
悦ばせたい。
ジャスパーのように癒すことなんかできないから、だから、俺に出来ることでヴァンの苦しみを取り除きたい。
「楽に……した、い……」
抜き差しするように腰を揺らしながら、呟き返す。
熱にうかされるヴァンを見るのが辛い。ガチガチになりながら吐き出せないで喘いでいる、そんな姿を見るのが辛い。
俺が気持ちよくなるためにやっているんじゃない……のに……。
「……リクは、優しい、ね」
こんな状態なのに労わりの言葉をかけられて、ぱたり、とまた涙が落ちた。
ヴァンが俺にしてくれたことを思えば、こんなの何十分の一……いや、何百分の一にもならない。だから……。
「僕は……リクの、気持ちいい姿や、嬉しい顔が、好きだから……」
「ヴァン」
「僕ので、気持ちよく……なってくれないか?」
それがヴァンの願いだからと繰り返し口にする。
「……無理に深く、じゃなくて……気持ちよく、なって……」
「ん……」
こくり、と頷いて、俺は軽く身体を浮かせる。
ゆったりと腰を揺らしながら、俺は喉を反らした。
……前立腺とか聞いた、すごく気持ちいい場所にヴァンの一番太い部分をこすりつけていく。声が抑えられないほどの快感に、呼吸が乱れていく。
「……はぁあ、ぁ、あっ……ぁ……」
いい。
ここ……ここが、すごく、気持ちいい。
ヴァンのものを使って自慰をしているような背徳感を覚えながらも、それが見たい、嬉しいと言われたらもう、止められない。
きもちいい……。
「ひぁ……ぁ、ヴァン……ん、ここ……」
「うん、ここが気持ちいい……ね」
「……ぁ、きもちいい、い、いい……い……」
かくかくと腰を上下左右に揺らし、痴態を見せつける。
恥ずかしさと快楽に飲み込まれて……頭が、おかしくなりそうだ。俺の先端からも、滴が溢れてヴァンの下腹を汚していく。
「ふぁ……ぁ、きもちいい……ぃ……よぉ」
「かわいい……」
たまらないという顔で、ヴァンが囁いた。
「……かわいい、リク……僕の……可愛い、子……」
「ヴァン……んっ……ぁ、ふぁ、あ!」
両腕で上半身を支えるのが精一杯のまま、ヴァンの胸の上でよがり狂う。
声をあげる。
頭が真っ白になって星が飛ぶ。
心も身体も満たされて、何度も軽くイっているのが分かる。その度にヴァンを絞めつけて、その締め付けのまま擦って、俺はまたイく。
気持ちよくて壊れそうだ。
ヴァンが俺の上半身を支えるように手を添える。
「……リク」
「ひぃん……ぃ、ぁぁ……い、なに、こ……れ……」
身体の中で何かが動き始めている。
快感を伴うこれは……魔力、だろうか……。全身が痺れる。
「っあ! ぁぁ、ぁ」
魔力が快感を伴ってまざり合う。微笑みながらヴァンが答える。
「……すごい、ね。僕とリクとで……めぐり、始め……た」
ヴァンの表情が明るくなってきた。
滞っていた魔力が、ちゃんと巡り始めたのか、荒い息でも、苦しそう……という感じが無い。全身に光る汗を滲ませながらも、俺の顔を見つめ、微笑む。
「このまま……イかせて、リク」
そう言うと、しっかりと俺の腰を掴んだ。
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