【本編完結】異世界の結界術師はたいせつな人を守りたい

鳴海カイリ

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第3章 成人の儀

110 脱がさない ※

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 広げた首の根元から胸に、ヴァンの唇や舌が……ゆっくりと下りていく。
 思わず俺は肩を掴んで離そうとして、腕が、動かないことに気が付いた。
 袖に縫い付けられた魔法石が重くクッションに沈み込む。まるでそれぞれの手首を両耳のそばで拘束されたみたいだ。

「ヴァン!」
「うん……兄上ばかりじゃない、他にも肩や髪を触らせた人たちがいたね。ギネス卿とハンソン卿。サムウェル卿はリクの頬にまで触っていた」
「……あっ……ぁあ」

 乳首に舌を這わせ、軽く噛む。
 えっ、誰? って言うぐらい、言われた名前の人は、思い出せない。
 きっと何人も挨拶した人たちの中の人たちだ。けど……この世界の人たちってスキンシップが親密というか、それぐらい……普通の挨拶だと。

「魔法院のストルアンからは、何か貰っていたね。危ないな……」
「それは! っあ……」
「リクにはもっと、警戒心を学んでほしい」

 ねっとりと……舐め回すように見つめる瞳が、乱れた前髪の隙間から覗く。
 その欲情した視線だけで軽く達してしまいそうになる。下肢に、づくん、と熱が集まって俺は身悶えた。

「ま……って……」
「待てないよ」
「……ぁあ、は!」

 片手で右の乳首をいじり、舌で左の乳首をなぶる。もう片方の手は俺の衣装の前を広く開けながら、指の腹でへその辺りを撫でまわし、スラックスの留め金を外して前を開こうとしている。

「リクは……ここ、こんなふうに触られたら、すぐに気持ちよくなっちゃうでしょう?」
「まっ、て……ヴァン、だめだっ、って……っあ!」
「何がダメ、なのかな?」

 熱い舌で胸の突起を尖らせながら、軽くコリコリと歯を立てる。その動きや快感が、俺の下半身へと急激に熱を集めていた。
 こんな調子で責められ続けたら、あっという間に達してしまいそうだ。

「やめて……ヴァン!」
「僕の舌や指では、は気持ちよくない?」
「ちがっ!」
「なら……もっと、違うところを責めて欲しいのかな?」

 スラックスの前を広げ、下着ごしに芯を持ち始めた俺のものを指先でなぞる。
 ぞぞぞ……と、腰に甘い痺れがにじんで、達してしまいそうになる快感を必死に堪えた。

「ちがうっ! ヴァン、やめて……ぇっ!」
「今夜は、やけに嫌がるね? どうしたの?」

 涙目になりながら俺はヴァンを見上げた。

「ふ……服、脱がし、て……」
「そんなに……裸に、なりたい?」
「ちが、汚したく……な、い」

 今着ているのはお披露目で来た礼服だ。最高の生地と魔法石とで仕立てた、俺にとって宝物みたいな衣装だ。
 たくさんの人たちが俺の為にと作って、用意してくれた。
 ヴァンからプレゼントされた大切なもの。それを――。

「俺の……せ、せぇーえき、で……汚すの、や……だ」

 痛いぐらいに硬くなって、もう、いつ達してしまうか分からない。
 初めてヴァンと繋がった夜も、火の魔法石の練習をした時も、こらえ性の無い俺はいつもあっけなく吐精してしまった。
 どろどろのぐちゃぐちゃにして……。
 意識を飛ばした俺に代わって、服やシーツは、いつもヴァンが片づけてくれていた……と思うのだけれど。

「早くっ、もう……気持ちよくて、イっちゃいそ……脱がさせ、て」
「リク」
「脱ぎたい。はや……く」

 大切な衣装を汚してしまう前に。
 もう、どのぐらい我慢できるか……わからない。

 見つめるヴァンは舌での責めは止まっているけれど、さわさわと撫でる、身体を愛撫する指先の動きは止まっていない。
 感じやすい身体を、じっと観察するみたいに。
 むしろ半泣きの俺を見て唇の端を上げている。

「ヴァ、ン……んんっ」
「脱がさない」
「……え?」
「脱がさない、って言ったんだよ」

 下着をずらすと、勢いよく俺のものが飛び出した。
 もう先っぽは、感じ始めている証しをにじませている。頭を位置をずらしたヴァンは、はくはく言い始めている俺の先端に舌を伸ばした。

「あぁっ!」
「ん……」

 くっ、と片手の指で根元を絞める。
 あっけなく吐精しそうになった瞬間を押し止められて、俺は快感を逃がせずに肩をよじった。そのまま……厚い舌が、ゆっくりと俺の先端や傘を、ねっとりと舐め回していく。

「ひっ……あっ、あ、だ、だめぇぇ……ぇっ!」

 信じられないほど、煽情せんじょう的な動きと視線……で。

「リクは、本当に……感じやすい、よね?」
「やめ、やめて、ヴァン、イっちゃう、ほんとにイっちゃうからっ!」
「ここを押さえていたら、イけないよ」

 ふふふ、と意地悪く笑う。
 ヴァンの言う通り、もうガチガチでいつ吐き出してもおかしくないのにイけないでいる。その分、こもる熱が苦しいぐらいに、腰や下腹に溜まっていく。

「……ひぃ、あ……ぁあ」
「ね、こんなに感じやす身体なのに、他の人に触らせて、もし淫らな気分になったらどうするの?」

 無い。そんなことない。
 触られて、こんなにおかしくなるのはヴァン以外にいない。なのに……。

「あっ、ぁあ、あっ……ぅ」
「若いから堪えられないっていうのは、分かっているよ」

 裏筋を、根元から舐め上げる。
 舐め上げヴァンの形のいい綺麗な唇が、俺のを、そのまま咥えこんだ。

「ひっ……」

 舌が、歯が、頬の内側が俺のを包み込んで撫で、擦る。
 生き物みたいに、ねっとりと、熱い粘膜がまとわりつく。
 ヴァンの口を穢してしまうという背徳感と、雄としての快感がせめぎあう。

「くっ……あ、ぁあ」

 イく。イきそう。でもイけない。
 腰を浮かせて喉をのけぞらせる。頭の芯が焼ける。心臓が、心臓がバクバクいって呼吸が続かない。気持ちいい。おかしくなる。
 根元を絞めつづける指が……辛い。

「あぁっ! あ、や、やぁ……ぁあ!」
「んっ……」
「……やめ、て、ヴぁ……ぁあ」

 会場から戻ってそのまま、水浴びも何もしていないのに。汚いのに。
 ぬるんっ、と口から取り出した俺の陰茎はヴァンの唾液でぬらぬらと輝いて、なんかもぅ、とんでもない物を見たような気持ちで眩暈めまいがしてくる。

「リク……あまり大きな声を出すと、隣の部屋で控えている人たちに届いてしまうかも知れないよ」

 ハッとした。そうだここはいつもの俺たちの家じゃない。
 ヴァンの実家で……隣の部屋には、ザックたちが控えているはずだ。





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