92 / 202
第3章 成人の儀
89 顔が見たい ※
しおりを挟むぐぷっ、ぐぽっ、と卑猥な水音が部屋を満たしていく。
「ひぁあ……ぁ、うぅ、ぁ」
出し入れより、円を描くようにヴァンの腰が動く。
強い力で乱暴にやっているわけじゃない。乱暴じゃなくても俺の、気持ちいい場所ばかりを狙うヴァンの太い先端が、俺のイイ場所を押しつぶし、えぐり、掻きまわす。
「……ぁぁ、あぁぁああ!!」
「リク、今日は声……すごいね」
「あぁ、ぁぅぅ……んんっ!」
熱い。燃える。何度達しても、まだイってしまう。
火の魔法でこもった熱に油を注ぐように、念入り中をほぐされて、身悶えて、熱は治まるどころかどんどん激しくなっていって、どうしても声が抑えられない。
「もぅ……イかせ、て……」
「さっきから何度もイっているよ」
「あぁぁ!!」
「また締まった。ここも、きもちいいんだ……」
嬉しそうに、熱っぽい声が耳の中を満たして、俺はすすり泣く。
ヴァンに与えられる身体の奥で感じる快感は、達しても達しても終わりが無い。それどころか、どんどん強くなっていく。
「ぅう、いぃ……いぃぃい、ぁあ!」
「……リクのその声、好きだよ」
「いぃぃ……いぃ、あ、きもちいぃい……」
ぐんっ、と俺の中のヴァンが質量を増す。
「僕も、だ……」
ねっとりと掻きまわす動きがやや直線的になっていくのを感じて、俺は甘い声でねだる。
「……も、イって……きもち、いいって……」
「リク」
「おれで、きもちいい……って……ぁ」
俺がおかしくなるのと同じくらい、ヴァンも乱れて欲しい。
悦ばせいたい。
感じて、溺れて、幸せな気持ちになって欲しい。俺の中の、大好きな人を夢中にさせたい欲が、魅了の力を動かしていく。
抜き挿しの間隔が早まってきた。
もうすぐ――熱くて、濃いのが、来る……。
「……イっ……て、ヴァ……んんっ!」
「くっ……」
ヴァンが呻いた。
瞬間、ずるぅりと引き抜かれた。まだヴァンはイってない、のに!
「あぁぁっ……ヴァ……ン」
「だめだ」
「……え?」
何を? と聞き返す間もなく、うつ伏せで机にしがみ付いていた俺の身体が抱き起された。
そのままくるりと身体をひっくり返して、近くの壁に押し付ける。
向かい合うかたちで。
ヴァンは俺の左ひざの裏に腕を入れたかと思うと、高く抱えあげた。
ローションやらなにやらでべたべたになった太腿が上下に広げられる。もう一度、後ろのすぼまりが目の前にさらされ、広げられた。
「顔が見たい」
「……ヴァ、ン……」
「リクが気持ちよくなって、イキまくる顔を見たい。僕を見て、僕だけを見て、感じまくって、よがる姿が見たい……とろとろになっている顔が見たい。リクの……」
「んんっ」
唇を、深く唇で塞がれた。
舌が絡んでくる。上顎を撫で、吸われれ、歯茎の縁をなぞりまた舌を絡ませる。
「んんっ! ん、……んぅ」
同時に、ひくひくいっていた俺の孔にいきり立つヴァンの熱い楔が突き入れられた。
片足のつま先立ちでどうにか立っているような、不安定な姿勢のまま。
今までに無い角度で、腹の前をえぐる。ぐうぅぅ……と俺のいい場所をこすり上げながら、奥まで飲み込む。
「あぁぁぁあああああっ!!」
これ、すごい。深い。すごい深いところまで来る!
背中が壁にあたっていても、ヴァンの片腕で腰を支えられたほとんど中吊りの状態で、俺の気持ちいい場所が深く、抉られ、肉を巻き込んで奥まで押し込められる。
縋りつくように、ヴァンの首や肩に腕を回す。
「ひ、ぁぁあ……あ、ぃぃいい!」
「可愛い顔が見たい……リク……かわいい……かわいい」
熱に浮かされたようにヴァンは繰り返す。
「あぁ! あ!」
下から突き上げる。揺さぶられる。
身体の中の炎が、すべてを焼き尽くすかのように強く、大きく、なっていく。
繋がり合っている境目が泡立ち、つま先立ちの内股を流れ落ちていく。
ヴァンに魅了を使っている感覚はあった。
俺の快楽のために無理やり抱かせているような申し訳なさと、術中にはまってくれている嬉しさと、そんなの全部どうでもよくて……ただ、俺を貪ってくれている心地よさとでわけが分からなくなっていく。
どうしてこんなにヴァンが好きなのだろう。
ヴァンに触られるのが嬉しくて。
どんな恥ずかしいことも、平気になつていく……。
「ひぃぃ、ぁあ! ぁ! ぁぁ!」
強すぎる快感に、焦点が定まらないまま目の前のヴァンを見ると、欲望を剥き出しにした雄の視線があった。
獣の顔だ。
初めて繋がった夜にも見た。
ぞくぞくするような独占欲と支配欲で、俺の何もかもを喰らい尽くそうとする、緑の瞳。唇の端を上げた、猛獣を思わせる笑み。
舌を這わせ、そのまま喉に下りて、首筋を噛み、吸う。
痛みを伴うキスは今までヴァンが絶対にやらなかったこと、だ。
「あぁっ、ヴァンッッ! っぁあ!」
「僕のしるしを……つけたい」
熱い息を吐きながらヴァンが囁く。
「……僕のものだと……身体に、刻ん……で、リク……」
舌を這わせ、激しく突き上げる。
低く囁き続ける。
「孕む程、リクの中に……ぶちまけて。何度でも。何度でも……」
背中を支えていた手が、腰の方へ下りていく。
俺は首をのけぞらして声を上げ、脳までとろかす声が、囁き告げる。
「……この中をいっぱいに……してあげるよ」
「ヴァぁぁ、ぁン……んんんっ!」
二度、三度と突きあげた。ぐんっ、と質量を増し、動きを止めて呻く。
ごぷり、と。
身体の奥で熱く、濃い……ヴァンの精が、放たれた感覚に震える。それも、断続的に吐き出される熱。限界まで耐えていた熱が終わらない。
「ぁあ……あぁぁ……ぁ、ぁぁ……」
力が抜けていく。
身体の中で燃えていた熱が、ゆっくりと、柔らかく全身に広がっていく。俺の膝を抱えていた手が離れ、そのまずるり、と身体は床にずりおちた。
荒い息が耳に触れている。
全て出し尽くした。
俺の中から引き抜いたヴァンの後を追って、濃い白濁の精が、流れ落ちていく。
「はぁ……ぁ、リク……」
上気しながらも、正気に戻ったような瞳で横たわる俺に覆いかぶさり、ヴァンが俺の頬を優しく撫でた。
「すまない……噛んで、しまった」
首の根元がじんじんしている。
きっと、痕が残るんだろうな……なんて思いながら、俺は微笑み返した。
「……うれ、しい……」
「リク……」
「ヴァンの……しるし、嬉しい……」
重だるい腕を伸ばして、ヴァンの髪に指を差し入れた。
汗で額に張り付いている。
絶対に俺を傷つけようとしないヴァンが、欲望を剥き出しにした。それが嬉しくて、俺は囁く。
「うれし……い、ヴァ、ン……」
「……リク」
「キス、して……」
唇が落ちてくる。
下唇を優しく摘まむような、やわらかなキス。
俺は深く息を吸う。
「……嬉しい……」
俺のことを大切にしてくれるヴァンも、激しいヴァンも、向けてくれる全てが嬉しすぎて、幸せで……俺は、おかしくなってしまいそうだよ。
21
あなたにおすすめの小説
溺愛の加速が尋常じゃない!?~味方作りに全振りしたら執着兄上たちの愛が重すぎました~
液体猫(299)
BL
毎日AM2時10分投稿
【《血の繋がりは"絶対"ではない。》この言葉を胸に、末っ子クリスは過保護な兄たちに溺愛されながら、大好きな四男と幸せに暮らす】
アルバディア王国の第五皇子クリスが目を覚ましたとき、九年前へと戻っていた。
巻き戻す前の世界とは異なるけれど同じ場所で、クリスは生き残るために知恵を振り絞る。
かわいい末っ子が過剰なまでにかわいがられて溺愛されていく──
やり直しもほどほどに。罪を着せた者への復讐はついで。そんな軽い気持ちで始まった新たな人生はコミカル&シリアス。だけどほのぼのとしたハッピーエンド確定物語。
主人公は後に18歳へと成長します(*・ω・)*_ _)ペコリ
⚠️濡れ場のサブタイトルに*のマークがついてます。冒頭のみ重い展開あり。それ以降はコミカルでほのぼの✌
⚠️本格的な塗れ場シーンは三章(18歳になって)からとなります。
⚠️若干の謎解き要素を含んでいますが、オマケ程度です!
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
《本編 完結 続編 完結》29歳、異世界人になっていました。日本に帰りたいのに、年下の英雄公爵に溺愛されています。
かざみはら まなか
BL
24歳の英雄公爵✕29歳の日本に帰りたい異世界転移した青年
愛していた王に捨てられて愛人になった少年は騎士に娶られる
彩月野生
BL
湖に落ちた十六歳の少年文斗は異世界にやって来てしまった。
国王と愛し合うようになった筈なのに、王は突然妃を迎え、文斗は愛人として扱われるようになり、さらには騎士と結婚して子供を産めと強要されてしまう。
王を愛する気持ちを捨てられないまま、文斗は騎士との結婚生活を送るのだが、騎士への感情の変化に戸惑うようになる。
(誤字脱字報告は不要)
【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件
白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。
最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。
いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。
あなたの隣で初めての恋を知る
彩矢
BL
5歳のときバス事故で両親を失った四季。足に大怪我を負い車椅子での生活を余儀なくされる。しらさぎが丘養護施設で育ち、高校卒業後、施設を出て一人暮らしをはじめる。
その日暮らしの苦しい生活でも決して明るさを失わない四季。
そんなある日、突然の雷雨に身の危険を感じ、雨宿りするためにあるマンションの駐車場に避難する四季。そこで、運命の出会いをすることに。
一回りも年上の彼に一目惚れされ溺愛される四季。
初めての恋に戸惑いつつも四季は、やがて彼を愛するようになる。
表紙絵は絵師のkaworineさんに描いていただきました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる