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プロローグ
日常という名の悪夢
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「はぁ~……」
足が重い、身体が怠い。ストレスたっぷりの溜め息を吐き出し、少年、神無月薫は自身の所有する漫画やゲームで散らかる自室に鎮座するベッドへと倒れ込んだ。
今日も退屈な授業後に残された僅かな体力を、道場で限界まで搾られた。ぐしゃぐしゃの毛布をミノムシのように体に巻き付け、薫はぼんやりと薄暗い天井を見上げた。
女の子にも見える中性的な顔立ちに見合う大きな瞳はやさぐれた輝きを湛え、艶のある黒髪は今の彼の心境を表すかのようにくしゃくしゃに乱れてしまっている。
良くて中学生、悪くて小学生と見間違えられるほど小柄な体格、そして筋肉の付きにくい体質を改善するべく祖父の経営する道場に数年前から通っているのだが、努力によって上達していく腕前に反し、体格等については全く改善が見られなかった。
そんなこともあって、今の彼はすっかり自信やら何やらを喪失していた。いっそのこと開き直って本物の女の子のように振る舞ってやろうか。一瞬そんな考えが脳裏を過るも、薫は自分を鼻で笑って毛布に顔を埋めた。
「…疲れた」
体力的に、ではない。精神的なものだ。将来役に立つかもわからない勉強に鎬を削り、やりたいことも見当たらないまま無為に人生を浪費している。
自分の人生が、こんなつまらないものでいいのか。小さい頃に憧れていたヒーローに、自分は近付けているのだろうか。答えは両方とも、否だ。
しかし、きっかけが見付からない。人生のターニングポイントとなるべき分岐点、その兆しが。それを見付けられない限り、今の生活はきっと変わらないだろう。
変わらないことの恐怖。薫は思わず身震いした。
「…もう寝ちゃおう。疲れすぎて食べる気も起きないし」
これ以上悪い考えを産み出さないよう、薫は心を無に瞳を閉じた。
明日はせめて、今日よりも刺激のある一日になりますように。
そう願ってーーー
足が重い、身体が怠い。ストレスたっぷりの溜め息を吐き出し、少年、神無月薫は自身の所有する漫画やゲームで散らかる自室に鎮座するベッドへと倒れ込んだ。
今日も退屈な授業後に残された僅かな体力を、道場で限界まで搾られた。ぐしゃぐしゃの毛布をミノムシのように体に巻き付け、薫はぼんやりと薄暗い天井を見上げた。
女の子にも見える中性的な顔立ちに見合う大きな瞳はやさぐれた輝きを湛え、艶のある黒髪は今の彼の心境を表すかのようにくしゃくしゃに乱れてしまっている。
良くて中学生、悪くて小学生と見間違えられるほど小柄な体格、そして筋肉の付きにくい体質を改善するべく祖父の経営する道場に数年前から通っているのだが、努力によって上達していく腕前に反し、体格等については全く改善が見られなかった。
そんなこともあって、今の彼はすっかり自信やら何やらを喪失していた。いっそのこと開き直って本物の女の子のように振る舞ってやろうか。一瞬そんな考えが脳裏を過るも、薫は自分を鼻で笑って毛布に顔を埋めた。
「…疲れた」
体力的に、ではない。精神的なものだ。将来役に立つかもわからない勉強に鎬を削り、やりたいことも見当たらないまま無為に人生を浪費している。
自分の人生が、こんなつまらないものでいいのか。小さい頃に憧れていたヒーローに、自分は近付けているのだろうか。答えは両方とも、否だ。
しかし、きっかけが見付からない。人生のターニングポイントとなるべき分岐点、その兆しが。それを見付けられない限り、今の生活はきっと変わらないだろう。
変わらないことの恐怖。薫は思わず身震いした。
「…もう寝ちゃおう。疲れすぎて食べる気も起きないし」
これ以上悪い考えを産み出さないよう、薫は心を無に瞳を閉じた。
明日はせめて、今日よりも刺激のある一日になりますように。
そう願ってーーー
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