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ちっちゃい隊長とでっかい軍曹
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突然だが諸君。貴様達は正義というものを信じているだろうか?
そう、正義。ジャスティスだ。なんと心に染みる良い響きだと貴様達も思わんか?ん?
私は、そこで言うところの正義の味方だ。いや、正義の代行者とでも言っておこうか。世間に蔓延る悪を討滅するべく、日々活動に勤しんでいるのである。おっと、口調はこんなだが、私はれっきとした男子だ。勘違いはよしてもらおうか。
だがしかし、思い通りにいかんことも多々ある。いや、私の身長の話ではなくてだな。その……よいではないか、母の遺伝なのだ。誰のせいでもないだろうが。
とにかく、そのような話ではなくてだな、現状は私のような若輩者の言葉に耳を傾ける者が少ないということだ。
いくら私が正義のために活動しようと、これではまったく意味が無い。せっかく結成した我がラヴ・ジャスティス隊も私一人の活動では―――いや、役に立たんのが一人だけ居たな。
「隊長~、遅くなってスンマセーン!」
「遅いぞ軍曹!いつも時間厳守だと言っておろうが!」
さんざん駅前の時計広場で待たされた私へと駆け寄ってくる、あの無駄にガタイの良い虎獣人こそ、我が隊唯一の隊員である。
ある日いきなり入団を申し込まれて以来、こうして街に繰り出しては正義のために活動を共にしている。気立ての良い男だが、この無頓着さだけは何とかならんものだろうか。
「はぁ、はぁ……うっかり目覚まし掛け忘れちゃって……本当にスンマセン」
「貴様のその言葉など、とっくに聞き飽きたわ!貴様が入団から時間通りに現れることが出来た回数を言ってみろ!」
「ま、まぁまぁ、そう怒らんで下さいよ。後で隊長の好きなイチゴパフェ奢っちゃいますから、ね?」
「む、むぅぅ……」
気立ては良い男なのだ。気立てだけはな。言っておくが、断じてほだされたわけではないぞ。戦士にも時には休息が必要だということだ。
「ま、まぁ説教はこのくらいにしておいてやる。それより、早く行くぞ。貴様が遅れたせいで、貴重な活動時間が減ってしまったのだからな」
「了解っス!じゃあ、今日もハリキって行きましょう!」
こうして、今日も我が隊の活動は開始された。しかし―――本当にパトロールで手を繋ぐ必要性があるのだろうか。
「軍曹……これは何か意味があるのか?」
「当たり前じゃないッスか!俺達の仲の良さをアピールすることで、それを見た人達を幸せな気分に出来るんスから!」
「ぬぅ……」
正義のためならば、仕方あるまい。恥は掻き捨てという言葉もあるからな。それに、軍曹の手の平の感触は嫌いではない。プニプニのモチモチとした大きな肉球の感触がなんとも言えぬ多幸感をーーーいやいや、今はそれどころではない。
さて、我々の活動についてだが、基本的には街の秩序のために働いている。例を挙げるのであれば、ゴミ拾いや迷子の救出といったところだな。
時には、コンビニにたむろする荒れた若者達を相手にすることもある。だが、軍曹が入隊して以来、少し違和感を感じるようになった。
おっと、早速証拠を見せることが出来そうだ。先に見えるコンビニの前で、数人の若者達が入口近くで座り込んでいる。あれでは他の利用客に迷惑ではないか。即刻退去させなければ。
「貴様達!入り口で座り込むのは止めないか!用のある他の者達の妨げになるだろうが!」
「ああ?なんだこのチビ―――って、うぉああッ!?」
こちらを見て立ち上がった狼獣人の表情が、不意に緊張一色に染まる。無論、他の者達も同様であった。
「す、スンマセンッした!俺らすぐに消えますんで!」
「待て!散らかしたゴミも片付けていかないか!」
「はいいぃぃぃッ!!」
注意から数秒と経たず、ゴミを両腕に抱えて若者達は走り去ってしまった。以前は決まって反抗してきたものだが、現在ではいつもあんな感じだ。軍曹の入隊以来、ずいぶんと従順になったものだ。
「さすが隊長!一喝であいつら逃げ散らかしていきましたよ!隊長の普段の努力の賜物ッスね!俺、スッゲェ尊敬してます!」
「…むぅ……」
やはり違和感を拭い去れないが、軍曹の言葉通りであれば喜ばしい限りである。ようやく、終わり無き正義の行動の成果が現れたのだからな。
「よし、では次の作戦区域へ行くぞ軍曹!まだまだ我らの活動は始まったばかりなのだからな!」
「あ、スンマセン隊長。ちょっとついでにトイレに行ってきますんで……」
「ぐぬぬ……っ、さっさと行ってこいッ!!」
まったく、相変わらず緊張感の無い奴だ。これは遅刻の罰であるイチゴパフェに加えて、ショコラケーキも追加してもらわなければ割に合わん。
コンビニ横のベンチに腰掛け、ただひたすらに軍曹を待つ。今日も使命に燃えてやってきたというのに、すっかり冷めてしまったではないか。
「……むっ!」
そんな私が見つけてしまったのは、近くの有料駐車場に座り込む別の獣人の集団であった。見るからに未成年のようだが、手には火のついた煙草が見える。この私を前にあのような傍若無人の振る舞い、許していいわけがない!
「そこのお前達!そこで何をやっている!未成年が煙草など言語道断だ!さっさとそれをこちらに寄越すがいい!」
「ん?オイ、あのチビが俺達に用があるみたいだぜ?」
「ああ?一体誰だよ、そのお節介バカはよ」
なにやら先ほどと様子がおかしい。まったく屈服した気配が感じられないではないか。たちまち立ち上がった連中に囲まれ、完全に逃げ場を失ってしまった。
「おい、チビ。バカ真面目なのは結構だけどよォ、あんまり調子に乗ってっと怪我するぜぇ?」
「だ、黙れ!貴様らのその身勝手極まりない行為が、この街の秩序を―――」
「おいおい……俺らに喧嘩売っちゃってる感じか?」
「カワイイねぇ……でもよ、怪我するって言ったよなぁ?」
「……っ」
いきなり胸倉を掴み上げられる。獣人という存在は総じて体格が良いから、既に足が浮いてしまっている。この程度で屈する私ではないが、かなり苦しい。
忘れかけていた、恐怖という感情が久々に蘇ってくる。正義というものは、やはり異色故に現在では淘汰される存在だというのか―――
「おーい、キミ達。そこで何をやってんのかな~?」
この危機的状況に聞こえてきたその声は、軍曹か。だが、あのような気の抜けたサイダーのように甘ったるい脳内お花畑が来たところで、事態は何も変わらな―――
「うぐっ!?」
何故か開放された。落ちた時に打った腰が凄い痛い。何かよくわからんが、とりあえず危機的状況は回避され―――
「ぐ、軍曹……?」
今までに見たことのないような笑みを浮かべて、軍曹が近付いてくる。威圧的というか何というか、そのへんの不良達よりもかなり凄みがあった。
気付いてみれば、取り囲む不良達も戸惑う私と同様に石のように固まっている。
「あ、アンタ、もしかして……」
「へぇ、俺のこと知ってんだ?じゃあ、テメェが手ェ出したのが誰のモンか……わかるよなァ?」
軍曹に詰め寄られた熊獣人が、可哀想なくらい冷や汗を流して震えている。いつの間にか仲間は逃げ去っているし、何がなんやらサッパリわからん。
「ほ、本当にスイマセンでした!もう二度とコイツに手出ししませんので、どうか……」
「ああ?それじゃ足りねぇなぁ。テメェ、この町内にある募金箱全部に五百円玉入れてこいよ」
「え、ええっ!?それじゃ小遣い無くなっちゃ―――」
「いいからよォ……」
軍曹は熊獣人と肩を組んで、
「行け」
「はいいぃぃぃッ!!」
ああ、熊獣人が泣きながら走り去っていく。明日からの彼の生活が心配されるところだが、今は気になることが一つある。
「隊長、大丈夫ですか?遅くなっちゃってスンマセン」
「…………」
私は軍曹に差し出された手を取り、立ち上がる。ちょっと腰が痛むが、それを気にしている場合ではない。
「…軍曹、いろいろと説明してもらわねばならんことがある」
「あはは……そうですよねぇ。じゃあ、近くの公園に行きましょう。そこで全部お話しますから」
どうやら、軍曹も観念したらしい。とりあえず、まずは提案された通り公園に向かうことにしよう。
家族連れが大勢訪れている公園のベンチに、私達は並んで腰掛けた。まどろっこしい事は嫌いだ。さっさと話をつけてしまおう。
「では軍曹、説明してもらおうか。あの者達が、貴様を恐れていた理由をな」
「あー……今更ですけど、やっぱ言わなきゃダメですか?」
「ダメだ。不穏分子を我が隊に残しておくわけにはいかんからな」
退団をチラツかせると、僅かに軍曹の顔が引き攣る。連中を追い払ったあの時の表情と比べると、ずいぶんと弱々しく感じてしまう。
「じゃあ……正直に言いますね。俺……実は、この辺一帯を縄張りにする暴走族の総長だったんですよ……」
「……ほぅ」
なるほど、そういう経歴持ちだったか。それならば、あの若者達が逃げ出したのも納得がいく。
だが、話はそれで終わらない。暴走族といえば、私にとって悪の集団。その総長ともなれば、その親玉ではないか。
過去に深夜の道路で対峙し、彼らの行動を諌めた事もあったが、その時もやはり正義の主張が聞き入れられる事はなかった。
「それで、その貴様が何故私と行動を共にする?もしや、この私の行動を監視しているつもりか?」
「違います違います!そんな滅相もない!俺はただ、その……」
何を言いにくそうにしているのやら。しかし、今となっては言おうが言うまいが同じことだが。
「貴様に言う気が無ければ、それで構わん。どちらにしろ、貴様はもう除隊だからな」
「じょ、除隊!?ま、待って下さいよ隊長!」
立ち上がった私の手を、慌てた軍曹の腕が掴む。よほど切迫しているのか、その握る力には加減が無い。
「離せ軍曹。もはや、私は貴様と言葉を交わすつもりは無い」
「イヤです!絶対に離しません!だって俺、俺……隊長が、好きなんです!」
「な……っ!?」
いきなり出会い頭にパンチを喰らった気分だ。何の前触れもなく、一体何を言い出すのだこの男は。おかげで周囲からの視線がかなり痛い事になってしまったではないか。
「な、何をバカなことを言い出すのだ!私を虚仮にするのもいいかげんに―――」
「虚仮になんてしてません!俺、本気で隊長の事が好きなんですよ!」
「い、いいから、まず黙らんかァッ!」
もはや、この視線の中には居られまい。軍曹の手を引き、あまり人気のない公衆トイレの物陰へと連れ込んだ。
「まったく……少しは周囲の目を考えろ。しばらくこの公園には入れんではないか……」
「でも俺……本気なんです。隊長に一目惚れして、入隊のために族も抜けてきたんですから!」
「ぬ、ぬぅ……」
何故この男はここまで食い下がってくるのだ。私への好意一つのために、総長を務めていた暴走族まで抜けてくるとは―――理解に苦しむ。
何やら私にただならぬ好意を寄せているようだが、私と軍曹が相容れぬ存在である以上は受け入れることなど出来ん。
再び一人の活動になるのは物寂しい気分になるが、その気持ちだけは、ありがたく受け取っておくとしよう。
「悪いが、軍曹。私は貴様の好意には応えられん。今後、言葉を交わす事も無いだろう。わかったら、いいかげんにその手を離せ」
「…わかりました。隊長がそこまで仰るのなら……」
やれやれ、やっとわかったか。軍曹にしては物分かりが良いのが気にかかるが、これでようやく開放される。
と、思ったのだが、何故か軍曹は手を離さない。しかも、訳も分からない内に手を引かれ、身体障害者用トイレの個室に連れ込まれていた。
「な、何のつもりだ軍曹!たとえ脅されようとも、私の意思は揺るがんぞ!」
「ええ、そうでしょうね。重々承知しておりますとも」
軍曹の手を振り払い、個室の隅へと逃げる私を徐々に軍曹は追い詰めてくる。何故か、先ほどとは違ったウキウキとした笑みを浮かべながら。
「あんまり、気は進まなかったんですけど……隊長がそこまで言うなら仕方ないですね。こうなったら、力付くで隊長をメロメロにさせちゃいます」
「な、何を……んんッ!?」
前屈みになって顔を寄せてきた軍曹と、不意打ち気味に唇が重なる。とっさに顔を背けようとしたが、決して離すまいと顔と腰をホールドされてしまう。
「ん……れる……」
「んぐ、ぅう……っ」
唇の上を、猫科特有のザラザラとした舌が撫でるように這い回る。ぐちゃぐちゃと艶っぽい水音が耳の奥にこびり付き、恥ずかしさと奇妙な感覚に身体を震わせてしまう。
「んぐ……ッ!?」
油断した。僅かに開いた唇の隙間から、ヌルリと軍曹の舌が侵入する。さらに抱きしめられたまま抱え上げられ、完全に足が浮いてしまった。
「やめ、ん、む…ふぁ……っ」
抵抗も虚しく、独立した生き物のように口内を熱くザラザラした舌が這い回る。さらに私の舌を器用に絡め取っては入念に唾液を絡ませ、吸い付いてきた。
そのたびに、身体から魂が抜けるような感覚にとらわれ、脳が痺れる。少しずつ屈服したように弛緩していく身体を、私は止めることが出来なかった。
一体、どれほど長くその行為を続けていたのだろう。私の四肢が完全に抵抗する力を失ったところで、軍曹はようやく口を離した。
「ふぅ……どうです隊長?俺、結構上手いモンでしょ」
「こ、この……痴れ者、め……っ」
やはり経歴が経歴だけに、こういった行為は軍曹が数段上手か。今まで女っ気の一つも無かった私にはあまりに強大な相手である。
軍曹は私を抱えたまま、鎮座する便器に腰掛ける。そして、その膝の上に私を乗せた。
「さぁ隊長、まずは服を脱いじゃいましょうか。俺も手伝ってあげますから」
「く、や、やめろ……っ」
背後から回された軍曹の腕に、上半身の服が取り去られてしまう。どんなに鍛えようとしても大きくなってくれない、私にとってはコンプレックスでしかない細い身体が軍曹の前に晒されてしまった。
「すげぇ……凄いですよ隊長。こんなに綺麗な身体、初めて見ましたよ……」
「ん、あぅ……や、やめ、ろぉ……!」
私の首筋に鼻を寄せて、スンスンと匂いを嗅いでくる軍曹。さらに両手は私の薄っぺらな胸板をサワサワと撫で回し、表皮を滑る体毛でくすぐったさと奇妙な感覚を断続的に与え続けていた。
「ひゃあぅ……っ!?」
その時、首筋にヌルリとした感触が走る。それが軍曹の舌であることを認識するのに、そう時間は掛からなかった。
「あー……やっぱり美味い。もう、たまらんッス」
「ん、あぅ……っ!そ、そんなところ、舐めるなぁ……!」
タップリの唾液を纏った軍曹のザラザラとした舌は、首筋からなぞるように脇へと移動。汗ばむその箇所を重点的に舐め回してきた。
ついでに乳首も摘まれて、どうしても声を抑えることが出来ない。いくら口を噤んでも、軍曹は全て見通しているかのように敏感な箇所を愛撫してくるのである。
「ふぁ、あああっ!」
「ん、れる……俺が、あの隊長を好きにしてるなんて……感無量です!」
猫科の癖に、なんという犬のような舐めっぷりか。脇の下だけに留まらず、そこから顔を出した軍曹は胸板から臍にかけて全体を入念に舐め回してくる。
ここまでされては、もはや抵抗することも馬鹿らしくなってしまう。少しでも早く軍曹の気が済んで終わってくれるのを待つばかりだ。
「んぅ……っ!?」
不意打ちのように再び口付けをして、舌を踊らせてくる軍曹。その時、私の尻の辺りに何やら熱く硬い感触が伝わってきた。
「あー……スイマセン。隊長、ちょっと待ってもらってもいいですか?」
「う、うむ……?」
私を器用に片腕で抱えたまま、立ち上がる軍曹。一体何をするかと思いきや、なんと何の躊躇いもなく、おもむろに自身のズボンを下ろしたではないか。
「……っ!?」
その瞬間、ブルンッと音がするんじゃないかという勢いで飛び出した赤黒い物体。言うまでもなく、これは軍曹のぺ……ぺニ……
「ちょっと隊長、もしかして見とれちゃってますぅ?隊長って見掛けに依らずエッチなーーーぐえっ」
「ば、馬鹿者!そんなわけあるか!早くしまえコノ大馬鹿者ッ!」
ニヤニヤと嫌な笑みを浮かべた軍曹の額に、私渾身の一撃を喰らわせる。軍曹が怯んだ隙に、ちょっとだけ奴のモノを観察してみた。
なんというか……これほどのモノが実在しようとは。
やたら長くて、私の両手でやっと握れるくらいの太さだろうか。オマケに猫科特有のトゲが全体に出っ張って、若者風に言うならば、エグいという言葉がしっくりくる。
「いたた……でも、立派なモンでしょ?仲間内でも結構評判良かったんですから。隊長もきっと気に入ると思いますよ?」
「し、知らん!私は貴様とそんなことをするつもりは―――のわぁっ!?」
再び抱えられた途端、今度は下を脱がされた。もはや手慣れているという次元ではなく、職人技の領域である。
「な、何をするか貴様ぁああ―――ッ!!」
「何をって……俺が見せたんだから、隊長も見せてくれなきゃ不公平じゃないですか―――って、おやぁ?」
肩越しに私のペニスを覗き込み、軍曹が憎らしい声を洩らす。私は、自身の顔に灼熱のような熱さを感じていた。
軍曹からの粘着質な愛撫を受けた私のペニスは、小さいながもしっかりと立ち上がって先走りを漏らしていたのである。これを軍曹に見られるなど、恥辱の極みだ。
「やっぱり隊長も気持ち良くなってたんじゃないですか~。嫌なんて言っちゃって、素直じゃないなぁ。そこが可愛いところでもあるんですけどね」
「ち、違う……私は、楽しんでなど―――ううっ!?」
弁解する暇もなく、軍曹が私のペニスを毛むくじゃらの大きな手で包むように握り込む。自慰の経験が無いわけではないが、他人から触れられるという初めての感覚に私は身体を震わせてしまう。
「遠慮しないで、気持ち良くなって下さいよ。まず、一回出させてあげますからね」
「や、やめろ、やめ……ん、あぅぅ……っ」
軍曹の手が、私のペニスを緩やかに扱き始めた。しかも、ただ上下運動をさせるのではなく、親指の腹で割れ目を擦り、敏感な先端を体毛で擦り上げながら握る力に強弱をつけてくるのである。
私とて、まったく自慰の経験が無いわけではない。だが、他人の手によって与えられる刺激が、これほど強いものだったとは。
下腹部の奥から徐々にせり上がってくる熱いたぎりを堪えるように、私はガクガクと身体を震わせてしまう。しかし、軍曹はその手を休ませることなく扱きたててきた。
「あっ、あ……くっ……き、貴様の、思惑通りには……っ!」
「あらら、まだそんなこと言っちゃって。仕方ないなぁ……」
どういうわけか、ピタリと軍曹の手が止まった。ともかく、これで一息つくことが出来そうだ。
大きく息を吐いて、強張っていた身体から力を抜く。その、直後であった。
「そらそらそら~♪」
「あっ!?ひぁあああ―――ッ!?」
完全に油断しきったところを見計らい、軍曹はこれまで以上に強く私のペニスを握りしめ、搾るかのように激しく扱いてきたのである。それは、まさに不意打ちと言うべき所業であった。
身体の奥から急激に出口へ向かって登り詰める熱いたぎりを、私はもはや止める術を持たなかった。
「ふぁ……ああ……っ」
私の性器から、トイレの床に勢い良く飛び散る白い飛沫。特有の倦怠感に私が身体を預けている間も、軍曹は最後の一滴まで搾り出すように手を動かし続けていた。
「はぁっ……はぁっ……」
「おおっ、結構出ましたねぇ。出した後の隊長の蕩けたような顔、メチャメチャ可愛いッスよ!」
「…………っ」
ペロリと頬を舐めてきた軍曹を、私は精一杯睨みつける。だが、やっぱり効き目は無いらしい。
「それじゃ、そろそろ俺の番ですよね。そろそろコッチも限界なもので……」
「ひっ……」
私の股下からそびえ立つ、おぞましい巨塔。これをやはり、私の中に収めるつもりなのだろうか。こればかりは、私も経験の無いことである。
「ぐ、軍曹。お前の好意はよくわかった。だが、その……私には、それを受け止める許容と自信がだな……」
「そんなに怖がらなくても大丈夫ですよ。ちゃんとほぐしてあげますから」
無意識の内に声を震わせてしまう私の頭を撫で、微笑む軍曹。いつもの怒る気を無くさせるその笑みに、私はただ静かに頷くことしか出来なかった。
「じゃあ、力抜いてください。指で慣らしてあげますから」
「う、うむ……」
ニチャニチャと、出したばかりの私の精液を絡ませた軍曹の指が、私の閉じきられた門をこじ開けんと近付いてくる。
「ん……っ」
つぷりと、大した抵抗もなく太い指の先端が侵入を果たした。とはいえ、初めての感覚に私は自然と身体を強張らせてしまい、軍曹の指をキツく締め付けてしまう。
「おお、この吸いつくような感触……たまんねぇや。隊長、今から指を動かしますから、ちょっと力抜いてくださいね」
「くぅ……そ、そんな簡単に……あ、あああっ!」
ぐにゅりと柔壁をほぐすように押されて、思わず声が洩れる。あられもない声を上げて身悶える私の身体を、軍曹は背後から優しく抱きしめてきた。
「あ、ここがいいんですか?早くも隊長の弱点、見つけちゃいましたよ~♪」
「ば、馬鹿者が!ヒトをまるで玩具のように……ふぁああっ!?」
軍曹の指が蛇のように蠢いたかと思えば、執拗に中のある一点を責め倒してくる。腹の奥底から押し上げるような感覚に堪えきれず、再び私のペニスからは噴水のように精液が噴き出した。
さすがに二回目の射精ともなれば、身体に掛かる脱力感が半端ではない。ぐったりと身を預ける私を余所に、軍曹はにゅるりと指を引き抜いた。
「初めてなのにコッチでイケるなんて……やっぱ隊長才能ありますよ!俺、一生ついて行きます!」
「はぁっ、はぁっ……き、貴様がそんな人間だったとは、私も見る目が……ひっ」
私の股下から、再び顔を出す軍曹の怒張したペニス。先端から壊れた蛇口のように溢れる先走りで全体がテカテカと光っており、軍曹が扱く度にグチャグチャと卑猥な音を立てている。
「隊長……俺、もう限界です。これだけ濡れてたら、いいですよね……?」
「ま、待て、落ち着け軍曹!そこから先は絶対に許さんぞ!そんなものが入るわけ―――」
「スミマセン。本当にスミマセン。後で何されてもいいので、今は俺に任せてください……」
軍曹の瞳に、野生の色が宿る。肉欲の虜となった軍曹に私の声が届くことはなく、遂に僅かに口を開けたままの私の穴に熱い塊があてがわれた。
「う……ん……っ」
「く、ぁあ……は、入る、軍曹が……かは……っ」
メリメリとこじ開けるように、私の内部へと侵入してくる軍曹のペニス。よく濡れているとはいえ、その大きさはあまりに規格外過ぎた。
鈍い痛みに身体を震わせる私だったが、肉棒の幹にビッシリと生えた突起物がトロトロにほぐされて敏感になった内壁を擦る度に甘い刺激が突き抜ける。
いよいよ、私の身体は軍曹のモノになるべく適応を始めたということか―――
抵抗も出来ないままに、みるみる内に私の体内に軍曹のペニスが収まっていき、気付けば驚くべきことにおよそ八割方を呑み込んでしまっていた。
「す、すげぇ……隊長の中、俺のに絡み付くような感じで……こんな具合が良いの初めてッス……」
「ぅ……キツ、い……ッ!」
その質量に押し上げられ、ポッコリと腹に軍曹のペニスの形が浮き出てしまっている。勝手に感動している軍曹の顔を一発張り倒してやりたい衝動に駆られたが、無理に動こうとすれば重力に引かれてさらに深くまでペニスが入り込もうと押し上げてきた。
「……っ、はぁ……隊長、全部入りましたよ……」
「う、くぁあ……っ」
遂に根元まで、ズッポリと中に肉杭を収められてしまった。とんでもない存在感だ。やはり、あれだけの質量を呑み込むには無理があったようで、下腹部にはハッキリとその形状が浮かび上がっている。
「じゃあ隊長、動きますね……」
「ま、待て、ぐんそ……うぁああっ!?」
一息も入れさせてはもらえず、ゆっくりと軍曹のペニスが引き抜かれていく。張り出した突起が容赦なく内部の壁を擦り上げ、私は一際大きな声を洩らしてしまう。
「あらら……隊長、また漏らしちゃってるじゃないですか」
「…ふぇ……?」
軍曹に言われて、気付いた。自身でも気付かぬ間に、先ほどの一擦りによって、問答無用で絶頂に登り詰めてしまっていたのだ。
こんな状態で、もし激しく動かれたら―――
嫌な視線を感じて、軍曹を見上げる。そこには凶悪な悪の組織の親玉のように悪そうな笑みを浮かべた彼の表情があった。
「じゃあ……隊長、そろそろ本気で動いちゃいますよ?」
「ま、待っ―――ふぁああんッ!?」
強靭な足腰による下からの突き上げに、私の身体は激しく上下する。強烈な快楽が接合部から全身へと駆け巡り、僅かに残されていた私の理性も頭の片隅へと追いやられていく。
ゴリゴリと、まさに剛直と言っても過言ではない巨塔が、ピンポイントで私の弱点を擦り上げてくるのである。次第に、私の思考にうっすらと霞が掛かってきた。
「ひゃっ、ぁ、ふぁああっ!む、ムリ、もうムリだ軍曹ッ!こんなの、壊れるぅ……っ!」
「ほらほらぁ、我慢しないで気持ち良くなって下さいよ。隊長の好きなところ、いっぱい突いてあげますから」
「ひゃあああっ!」
常に限界との境界線とを往復する私に対し、軍曹はまだまだ余裕があるらしい。私の身体中を撫で回しながら、より一層硬度を増したペニスで脳天に突き抜けるような快楽を与え続けてくる。
「はっ、はぁっ……!隊長は、俺のモンだ。絶対、絶対に他の誰にもやらねぇからなぁ……!」
「ふあっ、ああっ!?ま、たぁ……!?」
まるで肉食獣の食事のように、ガツガツと容赦なく腰を叩き付ける軍曹。内側から快楽神経を直接刺激されているかのような感覚に、私の身体は何度目かもわからない絶頂に達した。
しかし、精巣が空っぽになったペニスから精液が出ることはない。ただ大きく跳ねて空撃ちをしているだけであった。
「くっ……隊長の締め付けヤバい……俺も、そろそろ……っ!」
「ひぁっ、ぁっ……んん……っ!?」
切羽詰まった声を洩らしたかと思えば、大きくグラインドさせて突き込むような軍曹の腰遣いが変化する。深くペニスを埋め込んだまま一番奥をノックするように小刻みに突き、私の口周りをベロベロと舐め回す荒々しい口付けを交わす。
そして、その瞬間は訪れた。
「で、出ます!出ますからね隊長!俺のモノに、なって……!ぐる、ゥゥ……ッ!!」
「んむ…ぅ……っ」
最奥まで突き刺された肉棒の棘が目一杯開かれた瞬間、熱い奔流がドクドクと脈打ちながら音を立てて流れ込んできた。
その量と勢いは凄まじく、圧倒的な存在感を絶えず私に与え、腹を水風船のように膨らませる。タップリと注ぎ込まれた濃厚な獣の精液が、じんわりと身体の奥で溶けるかのような感覚に呑まれ、私の意識は軍曹の荒い息遣いと温かさに抱かれたまま、真っ暗な闇へと落ちていった―――
そして、
「ホンッッッットに、スイマセンでしたァッ!!」
公共のトイレ内での情事から約十数分後、私達は行き着けの喫茶店を訪れていた。
頬杖をついた私の目の前には頭の天辺を見せるように腰を折る軍曹と、大好物のイチゴパフェ。しかも二つ。
私はテーブルで額を削る軍曹を横目に、ちょこちょことスプーンでパフェを口に運んでいるところであった。
「…ほぅ、自分が何をしたか理解しているようだな。私の身体をさんざん好きにして蹂躙した気分はどうだ?」
「そりゃもう最高で―――イダァッ!?」
どうやら反省が足りないらしい。おもいっきり軍曹の爪先を踏みつけて、私は黙々とパフェを食べ進めていく。
あれから一度で終わるかと思いきや、二ラウンド、三ラウンドと続け様の性交渉の果てに、もはや私の身体で軍曹が味わっていない箇所は無いのではなかろうかと思うほどに容赦なく頂かれた。何とも言えぬ屈辱感に、私の感情回路は極限の苛立ちを感じていた。
「は、反省してます。だからどうか、その……機嫌の方を……」
「…ふん」
スプーンを動かす手を止めて、軍曹を見る。虎と言うより子猫のように小さく身体を丸める軍曹の姿を見ていると、少しだけ私の気分も晴れた気がする。
しかし、いつまでもこうして遊んでいるわけにもいかない。真剣に想いを打ち明けた軍曹に、まずは返事を返さねば。
「…顔を上げろ、軍曹」
「は、はい……」
普段の威勢もどこへやら、今となっては見る影もなく小さくなった軍曹が顔を上げる。
そのあまりに不安そうな表情に思わず笑ってしまいそうになるが、私はかろうじて堪えて言葉を続ける。
「軍曹、経緯はともかく……私もお前の事は嫌いではない。その好意も非常に嬉しく思う。しかし……些か、順序が逆だとは思わんか?」
「は、はい、仰る通りです。でも俺、どうしても、その……隊長を自分だけのモノにしたくて……」
「…やれやれ」
意志は変わらずか。しかし、今はそれも良いだろう。
バニラアイスの溶けかけたパフェを一口、私はずっと考えていた言葉を口にする。
「軍曹、お前の想い……受け止めてやろう」
「……へ?」
豆鉄砲を受けた鳩のような顔をして、間の抜けた声を洩らす軍曹。まぁ、それも当然の反応だろう。
「わからんか?お前と恋仲になると言っているのだ。このような浮ついた関係となるのは初めてだが、お前とならば構わん」
「おお……おおお……っ!!」
感激しているのか、ブルブルと身体を震わせながら感涙を滝のように流す軍曹。そして、いきなりスプーンを握る私の手を両手で包み込んできた。
「た、隊長!俺、俺……今まで生きてて良かったッス!やっぱ俺のチンポでメロメロになってくれたンスね!?」
「ば、馬鹿者、声が大きいぞ……!」
一発頭を張り飛ばすが、今の状態の軍曹にはまったく効果が無いらしい。しかし、これならば私の頼みを聞かない事も無いだろう。
「さて、交際を始めるに当たって……軍曹、お前に一つ頼みがある。いや、条件と言うべきか」
「はいはいはいっ!もう何でもやりますよ!隊長のためなら、たとえ火の中水の中ですから!」
「そうか……それは良かった」
スルリと軍曹の手の中から抜け出した私の両手はテーブルの下へ。そして、常に常備している二つの物を軍曹の前に置いた。
一つはゴミ袋。もう一つもゴミ袋。わざわざ分ける理由は、片方は燃えるゴミ用で、もう一方はビンや空き缶を入れるためのものだ。ちなみに業務用の特大サイズである。
「あ……え?た、隊長、それは……?」
「ああ、お前との付き合いも大切だが、本来の役目を蔑ろにするわけにもいかんからな。そこで、だ」
私はそれら二種類のゴミ袋を、呆けた表情を浮かべる軍曹の前に突き出した。
「お前に、私の日課の一つであるゴミの収拾を任せよう。一日五袋を目安に頑張って欲しい」
「ご、五袋……っ!?」
目に見えて、軍曹の顔が引きつる。これぐらい、街中を隅々まで歩き回ればすぐだろうに。
「そうか、嫌か……ならば仕方無い。先程の事は無かったことに―――」
「わ、わかりました!やります!精一杯やらせて頂きますから!ですから反故にするなんて言わないで下さいよ!」
返事は良いのに、顔が絶望一色というのは如何なものか。私の視線を受けながら、軍曹は渋々とゴミ袋を受け取った。
「よし、では早速だが今日の分を頼むぞ。私はここで待機している。終わったら報告してくれ」
「えっ……?た、隊長も一緒にやってくれるんじゃ……?」
「そうしたいところだが、暴走した誰かのせいで腰が立たん。それとも、やはり関係は今日までと……」
「や、やりますよ!誠心誠意やらせて頂きますから、そんな事言わないでっ!ただし、隊長……」
急に静かになったかと思えば、神妙な表情を浮かべた顔を寄せてくる軍曹。何がしたいのか定かではないが、その何か言いたげな口元に耳を寄せてやった。
「何だ?言いたい事があるならハッキリと―――」
「ゴミ集めが終わったら、また俺の相手をしてもらいますからね」
「な……っ!」
「では、そういうことで!」
思わぬ不意打ちに一瞬私の思考は白紙化する。すぐさま叱責のために息を吸い込んだ瞬間、素早く立ち上がった軍曹はゴミ袋を手にして一目散に喫茶店を飛び出していった。
断る間もなく、一方的に約束をこぎつけられてしまったような気がする。あの調子なら、数時間としない内に戻ってくるだろう。
「…まったく、馬鹿者め……」
頭の中で軍曹の言葉を反芻すると、何故か腹の奥が疼くような感覚がする。私は気を紛らわせるように、再びスプーンを手に双子のパフェに挑むのであった。
そう、正義。ジャスティスだ。なんと心に染みる良い響きだと貴様達も思わんか?ん?
私は、そこで言うところの正義の味方だ。いや、正義の代行者とでも言っておこうか。世間に蔓延る悪を討滅するべく、日々活動に勤しんでいるのである。おっと、口調はこんなだが、私はれっきとした男子だ。勘違いはよしてもらおうか。
だがしかし、思い通りにいかんことも多々ある。いや、私の身長の話ではなくてだな。その……よいではないか、母の遺伝なのだ。誰のせいでもないだろうが。
とにかく、そのような話ではなくてだな、現状は私のような若輩者の言葉に耳を傾ける者が少ないということだ。
いくら私が正義のために活動しようと、これではまったく意味が無い。せっかく結成した我がラヴ・ジャスティス隊も私一人の活動では―――いや、役に立たんのが一人だけ居たな。
「隊長~、遅くなってスンマセーン!」
「遅いぞ軍曹!いつも時間厳守だと言っておろうが!」
さんざん駅前の時計広場で待たされた私へと駆け寄ってくる、あの無駄にガタイの良い虎獣人こそ、我が隊唯一の隊員である。
ある日いきなり入団を申し込まれて以来、こうして街に繰り出しては正義のために活動を共にしている。気立ての良い男だが、この無頓着さだけは何とかならんものだろうか。
「はぁ、はぁ……うっかり目覚まし掛け忘れちゃって……本当にスンマセン」
「貴様のその言葉など、とっくに聞き飽きたわ!貴様が入団から時間通りに現れることが出来た回数を言ってみろ!」
「ま、まぁまぁ、そう怒らんで下さいよ。後で隊長の好きなイチゴパフェ奢っちゃいますから、ね?」
「む、むぅぅ……」
気立ては良い男なのだ。気立てだけはな。言っておくが、断じてほだされたわけではないぞ。戦士にも時には休息が必要だということだ。
「ま、まぁ説教はこのくらいにしておいてやる。それより、早く行くぞ。貴様が遅れたせいで、貴重な活動時間が減ってしまったのだからな」
「了解っス!じゃあ、今日もハリキって行きましょう!」
こうして、今日も我が隊の活動は開始された。しかし―――本当にパトロールで手を繋ぐ必要性があるのだろうか。
「軍曹……これは何か意味があるのか?」
「当たり前じゃないッスか!俺達の仲の良さをアピールすることで、それを見た人達を幸せな気分に出来るんスから!」
「ぬぅ……」
正義のためならば、仕方あるまい。恥は掻き捨てという言葉もあるからな。それに、軍曹の手の平の感触は嫌いではない。プニプニのモチモチとした大きな肉球の感触がなんとも言えぬ多幸感をーーーいやいや、今はそれどころではない。
さて、我々の活動についてだが、基本的には街の秩序のために働いている。例を挙げるのであれば、ゴミ拾いや迷子の救出といったところだな。
時には、コンビニにたむろする荒れた若者達を相手にすることもある。だが、軍曹が入隊して以来、少し違和感を感じるようになった。
おっと、早速証拠を見せることが出来そうだ。先に見えるコンビニの前で、数人の若者達が入口近くで座り込んでいる。あれでは他の利用客に迷惑ではないか。即刻退去させなければ。
「貴様達!入り口で座り込むのは止めないか!用のある他の者達の妨げになるだろうが!」
「ああ?なんだこのチビ―――って、うぉああッ!?」
こちらを見て立ち上がった狼獣人の表情が、不意に緊張一色に染まる。無論、他の者達も同様であった。
「す、スンマセンッした!俺らすぐに消えますんで!」
「待て!散らかしたゴミも片付けていかないか!」
「はいいぃぃぃッ!!」
注意から数秒と経たず、ゴミを両腕に抱えて若者達は走り去ってしまった。以前は決まって反抗してきたものだが、現在ではいつもあんな感じだ。軍曹の入隊以来、ずいぶんと従順になったものだ。
「さすが隊長!一喝であいつら逃げ散らかしていきましたよ!隊長の普段の努力の賜物ッスね!俺、スッゲェ尊敬してます!」
「…むぅ……」
やはり違和感を拭い去れないが、軍曹の言葉通りであれば喜ばしい限りである。ようやく、終わり無き正義の行動の成果が現れたのだからな。
「よし、では次の作戦区域へ行くぞ軍曹!まだまだ我らの活動は始まったばかりなのだからな!」
「あ、スンマセン隊長。ちょっとついでにトイレに行ってきますんで……」
「ぐぬぬ……っ、さっさと行ってこいッ!!」
まったく、相変わらず緊張感の無い奴だ。これは遅刻の罰であるイチゴパフェに加えて、ショコラケーキも追加してもらわなければ割に合わん。
コンビニ横のベンチに腰掛け、ただひたすらに軍曹を待つ。今日も使命に燃えてやってきたというのに、すっかり冷めてしまったではないか。
「……むっ!」
そんな私が見つけてしまったのは、近くの有料駐車場に座り込む別の獣人の集団であった。見るからに未成年のようだが、手には火のついた煙草が見える。この私を前にあのような傍若無人の振る舞い、許していいわけがない!
「そこのお前達!そこで何をやっている!未成年が煙草など言語道断だ!さっさとそれをこちらに寄越すがいい!」
「ん?オイ、あのチビが俺達に用があるみたいだぜ?」
「ああ?一体誰だよ、そのお節介バカはよ」
なにやら先ほどと様子がおかしい。まったく屈服した気配が感じられないではないか。たちまち立ち上がった連中に囲まれ、完全に逃げ場を失ってしまった。
「おい、チビ。バカ真面目なのは結構だけどよォ、あんまり調子に乗ってっと怪我するぜぇ?」
「だ、黙れ!貴様らのその身勝手極まりない行為が、この街の秩序を―――」
「おいおい……俺らに喧嘩売っちゃってる感じか?」
「カワイイねぇ……でもよ、怪我するって言ったよなぁ?」
「……っ」
いきなり胸倉を掴み上げられる。獣人という存在は総じて体格が良いから、既に足が浮いてしまっている。この程度で屈する私ではないが、かなり苦しい。
忘れかけていた、恐怖という感情が久々に蘇ってくる。正義というものは、やはり異色故に現在では淘汰される存在だというのか―――
「おーい、キミ達。そこで何をやってんのかな~?」
この危機的状況に聞こえてきたその声は、軍曹か。だが、あのような気の抜けたサイダーのように甘ったるい脳内お花畑が来たところで、事態は何も変わらな―――
「うぐっ!?」
何故か開放された。落ちた時に打った腰が凄い痛い。何かよくわからんが、とりあえず危機的状況は回避され―――
「ぐ、軍曹……?」
今までに見たことのないような笑みを浮かべて、軍曹が近付いてくる。威圧的というか何というか、そのへんの不良達よりもかなり凄みがあった。
気付いてみれば、取り囲む不良達も戸惑う私と同様に石のように固まっている。
「あ、アンタ、もしかして……」
「へぇ、俺のこと知ってんだ?じゃあ、テメェが手ェ出したのが誰のモンか……わかるよなァ?」
軍曹に詰め寄られた熊獣人が、可哀想なくらい冷や汗を流して震えている。いつの間にか仲間は逃げ去っているし、何がなんやらサッパリわからん。
「ほ、本当にスイマセンでした!もう二度とコイツに手出ししませんので、どうか……」
「ああ?それじゃ足りねぇなぁ。テメェ、この町内にある募金箱全部に五百円玉入れてこいよ」
「え、ええっ!?それじゃ小遣い無くなっちゃ―――」
「いいからよォ……」
軍曹は熊獣人と肩を組んで、
「行け」
「はいいぃぃぃッ!!」
ああ、熊獣人が泣きながら走り去っていく。明日からの彼の生活が心配されるところだが、今は気になることが一つある。
「隊長、大丈夫ですか?遅くなっちゃってスンマセン」
「…………」
私は軍曹に差し出された手を取り、立ち上がる。ちょっと腰が痛むが、それを気にしている場合ではない。
「…軍曹、いろいろと説明してもらわねばならんことがある」
「あはは……そうですよねぇ。じゃあ、近くの公園に行きましょう。そこで全部お話しますから」
どうやら、軍曹も観念したらしい。とりあえず、まずは提案された通り公園に向かうことにしよう。
家族連れが大勢訪れている公園のベンチに、私達は並んで腰掛けた。まどろっこしい事は嫌いだ。さっさと話をつけてしまおう。
「では軍曹、説明してもらおうか。あの者達が、貴様を恐れていた理由をな」
「あー……今更ですけど、やっぱ言わなきゃダメですか?」
「ダメだ。不穏分子を我が隊に残しておくわけにはいかんからな」
退団をチラツかせると、僅かに軍曹の顔が引き攣る。連中を追い払ったあの時の表情と比べると、ずいぶんと弱々しく感じてしまう。
「じゃあ……正直に言いますね。俺……実は、この辺一帯を縄張りにする暴走族の総長だったんですよ……」
「……ほぅ」
なるほど、そういう経歴持ちだったか。それならば、あの若者達が逃げ出したのも納得がいく。
だが、話はそれで終わらない。暴走族といえば、私にとって悪の集団。その総長ともなれば、その親玉ではないか。
過去に深夜の道路で対峙し、彼らの行動を諌めた事もあったが、その時もやはり正義の主張が聞き入れられる事はなかった。
「それで、その貴様が何故私と行動を共にする?もしや、この私の行動を監視しているつもりか?」
「違います違います!そんな滅相もない!俺はただ、その……」
何を言いにくそうにしているのやら。しかし、今となっては言おうが言うまいが同じことだが。
「貴様に言う気が無ければ、それで構わん。どちらにしろ、貴様はもう除隊だからな」
「じょ、除隊!?ま、待って下さいよ隊長!」
立ち上がった私の手を、慌てた軍曹の腕が掴む。よほど切迫しているのか、その握る力には加減が無い。
「離せ軍曹。もはや、私は貴様と言葉を交わすつもりは無い」
「イヤです!絶対に離しません!だって俺、俺……隊長が、好きなんです!」
「な……っ!?」
いきなり出会い頭にパンチを喰らった気分だ。何の前触れもなく、一体何を言い出すのだこの男は。おかげで周囲からの視線がかなり痛い事になってしまったではないか。
「な、何をバカなことを言い出すのだ!私を虚仮にするのもいいかげんに―――」
「虚仮になんてしてません!俺、本気で隊長の事が好きなんですよ!」
「い、いいから、まず黙らんかァッ!」
もはや、この視線の中には居られまい。軍曹の手を引き、あまり人気のない公衆トイレの物陰へと連れ込んだ。
「まったく……少しは周囲の目を考えろ。しばらくこの公園には入れんではないか……」
「でも俺……本気なんです。隊長に一目惚れして、入隊のために族も抜けてきたんですから!」
「ぬ、ぬぅ……」
何故この男はここまで食い下がってくるのだ。私への好意一つのために、総長を務めていた暴走族まで抜けてくるとは―――理解に苦しむ。
何やら私にただならぬ好意を寄せているようだが、私と軍曹が相容れぬ存在である以上は受け入れることなど出来ん。
再び一人の活動になるのは物寂しい気分になるが、その気持ちだけは、ありがたく受け取っておくとしよう。
「悪いが、軍曹。私は貴様の好意には応えられん。今後、言葉を交わす事も無いだろう。わかったら、いいかげんにその手を離せ」
「…わかりました。隊長がそこまで仰るのなら……」
やれやれ、やっとわかったか。軍曹にしては物分かりが良いのが気にかかるが、これでようやく開放される。
と、思ったのだが、何故か軍曹は手を離さない。しかも、訳も分からない内に手を引かれ、身体障害者用トイレの個室に連れ込まれていた。
「な、何のつもりだ軍曹!たとえ脅されようとも、私の意思は揺るがんぞ!」
「ええ、そうでしょうね。重々承知しておりますとも」
軍曹の手を振り払い、個室の隅へと逃げる私を徐々に軍曹は追い詰めてくる。何故か、先ほどとは違ったウキウキとした笑みを浮かべながら。
「あんまり、気は進まなかったんですけど……隊長がそこまで言うなら仕方ないですね。こうなったら、力付くで隊長をメロメロにさせちゃいます」
「な、何を……んんッ!?」
前屈みになって顔を寄せてきた軍曹と、不意打ち気味に唇が重なる。とっさに顔を背けようとしたが、決して離すまいと顔と腰をホールドされてしまう。
「ん……れる……」
「んぐ、ぅう……っ」
唇の上を、猫科特有のザラザラとした舌が撫でるように這い回る。ぐちゃぐちゃと艶っぽい水音が耳の奥にこびり付き、恥ずかしさと奇妙な感覚に身体を震わせてしまう。
「んぐ……ッ!?」
油断した。僅かに開いた唇の隙間から、ヌルリと軍曹の舌が侵入する。さらに抱きしめられたまま抱え上げられ、完全に足が浮いてしまった。
「やめ、ん、む…ふぁ……っ」
抵抗も虚しく、独立した生き物のように口内を熱くザラザラした舌が這い回る。さらに私の舌を器用に絡め取っては入念に唾液を絡ませ、吸い付いてきた。
そのたびに、身体から魂が抜けるような感覚にとらわれ、脳が痺れる。少しずつ屈服したように弛緩していく身体を、私は止めることが出来なかった。
一体、どれほど長くその行為を続けていたのだろう。私の四肢が完全に抵抗する力を失ったところで、軍曹はようやく口を離した。
「ふぅ……どうです隊長?俺、結構上手いモンでしょ」
「こ、この……痴れ者、め……っ」
やはり経歴が経歴だけに、こういった行為は軍曹が数段上手か。今まで女っ気の一つも無かった私にはあまりに強大な相手である。
軍曹は私を抱えたまま、鎮座する便器に腰掛ける。そして、その膝の上に私を乗せた。
「さぁ隊長、まずは服を脱いじゃいましょうか。俺も手伝ってあげますから」
「く、や、やめろ……っ」
背後から回された軍曹の腕に、上半身の服が取り去られてしまう。どんなに鍛えようとしても大きくなってくれない、私にとってはコンプレックスでしかない細い身体が軍曹の前に晒されてしまった。
「すげぇ……凄いですよ隊長。こんなに綺麗な身体、初めて見ましたよ……」
「ん、あぅ……や、やめ、ろぉ……!」
私の首筋に鼻を寄せて、スンスンと匂いを嗅いでくる軍曹。さらに両手は私の薄っぺらな胸板をサワサワと撫で回し、表皮を滑る体毛でくすぐったさと奇妙な感覚を断続的に与え続けていた。
「ひゃあぅ……っ!?」
その時、首筋にヌルリとした感触が走る。それが軍曹の舌であることを認識するのに、そう時間は掛からなかった。
「あー……やっぱり美味い。もう、たまらんッス」
「ん、あぅ……っ!そ、そんなところ、舐めるなぁ……!」
タップリの唾液を纏った軍曹のザラザラとした舌は、首筋からなぞるように脇へと移動。汗ばむその箇所を重点的に舐め回してきた。
ついでに乳首も摘まれて、どうしても声を抑えることが出来ない。いくら口を噤んでも、軍曹は全て見通しているかのように敏感な箇所を愛撫してくるのである。
「ふぁ、あああっ!」
「ん、れる……俺が、あの隊長を好きにしてるなんて……感無量です!」
猫科の癖に、なんという犬のような舐めっぷりか。脇の下だけに留まらず、そこから顔を出した軍曹は胸板から臍にかけて全体を入念に舐め回してくる。
ここまでされては、もはや抵抗することも馬鹿らしくなってしまう。少しでも早く軍曹の気が済んで終わってくれるのを待つばかりだ。
「んぅ……っ!?」
不意打ちのように再び口付けをして、舌を踊らせてくる軍曹。その時、私の尻の辺りに何やら熱く硬い感触が伝わってきた。
「あー……スイマセン。隊長、ちょっと待ってもらってもいいですか?」
「う、うむ……?」
私を器用に片腕で抱えたまま、立ち上がる軍曹。一体何をするかと思いきや、なんと何の躊躇いもなく、おもむろに自身のズボンを下ろしたではないか。
「……っ!?」
その瞬間、ブルンッと音がするんじゃないかという勢いで飛び出した赤黒い物体。言うまでもなく、これは軍曹のぺ……ぺニ……
「ちょっと隊長、もしかして見とれちゃってますぅ?隊長って見掛けに依らずエッチなーーーぐえっ」
「ば、馬鹿者!そんなわけあるか!早くしまえコノ大馬鹿者ッ!」
ニヤニヤと嫌な笑みを浮かべた軍曹の額に、私渾身の一撃を喰らわせる。軍曹が怯んだ隙に、ちょっとだけ奴のモノを観察してみた。
なんというか……これほどのモノが実在しようとは。
やたら長くて、私の両手でやっと握れるくらいの太さだろうか。オマケに猫科特有のトゲが全体に出っ張って、若者風に言うならば、エグいという言葉がしっくりくる。
「いたた……でも、立派なモンでしょ?仲間内でも結構評判良かったんですから。隊長もきっと気に入ると思いますよ?」
「し、知らん!私は貴様とそんなことをするつもりは―――のわぁっ!?」
再び抱えられた途端、今度は下を脱がされた。もはや手慣れているという次元ではなく、職人技の領域である。
「な、何をするか貴様ぁああ―――ッ!!」
「何をって……俺が見せたんだから、隊長も見せてくれなきゃ不公平じゃないですか―――って、おやぁ?」
肩越しに私のペニスを覗き込み、軍曹が憎らしい声を洩らす。私は、自身の顔に灼熱のような熱さを感じていた。
軍曹からの粘着質な愛撫を受けた私のペニスは、小さいながもしっかりと立ち上がって先走りを漏らしていたのである。これを軍曹に見られるなど、恥辱の極みだ。
「やっぱり隊長も気持ち良くなってたんじゃないですか~。嫌なんて言っちゃって、素直じゃないなぁ。そこが可愛いところでもあるんですけどね」
「ち、違う……私は、楽しんでなど―――ううっ!?」
弁解する暇もなく、軍曹が私のペニスを毛むくじゃらの大きな手で包むように握り込む。自慰の経験が無いわけではないが、他人から触れられるという初めての感覚に私は身体を震わせてしまう。
「遠慮しないで、気持ち良くなって下さいよ。まず、一回出させてあげますからね」
「や、やめろ、やめ……ん、あぅぅ……っ」
軍曹の手が、私のペニスを緩やかに扱き始めた。しかも、ただ上下運動をさせるのではなく、親指の腹で割れ目を擦り、敏感な先端を体毛で擦り上げながら握る力に強弱をつけてくるのである。
私とて、まったく自慰の経験が無いわけではない。だが、他人の手によって与えられる刺激が、これほど強いものだったとは。
下腹部の奥から徐々にせり上がってくる熱いたぎりを堪えるように、私はガクガクと身体を震わせてしまう。しかし、軍曹はその手を休ませることなく扱きたててきた。
「あっ、あ……くっ……き、貴様の、思惑通りには……っ!」
「あらら、まだそんなこと言っちゃって。仕方ないなぁ……」
どういうわけか、ピタリと軍曹の手が止まった。ともかく、これで一息つくことが出来そうだ。
大きく息を吐いて、強張っていた身体から力を抜く。その、直後であった。
「そらそらそら~♪」
「あっ!?ひぁあああ―――ッ!?」
完全に油断しきったところを見計らい、軍曹はこれまで以上に強く私のペニスを握りしめ、搾るかのように激しく扱いてきたのである。それは、まさに不意打ちと言うべき所業であった。
身体の奥から急激に出口へ向かって登り詰める熱いたぎりを、私はもはや止める術を持たなかった。
「ふぁ……ああ……っ」
私の性器から、トイレの床に勢い良く飛び散る白い飛沫。特有の倦怠感に私が身体を預けている間も、軍曹は最後の一滴まで搾り出すように手を動かし続けていた。
「はぁっ……はぁっ……」
「おおっ、結構出ましたねぇ。出した後の隊長の蕩けたような顔、メチャメチャ可愛いッスよ!」
「…………っ」
ペロリと頬を舐めてきた軍曹を、私は精一杯睨みつける。だが、やっぱり効き目は無いらしい。
「それじゃ、そろそろ俺の番ですよね。そろそろコッチも限界なもので……」
「ひっ……」
私の股下からそびえ立つ、おぞましい巨塔。これをやはり、私の中に収めるつもりなのだろうか。こればかりは、私も経験の無いことである。
「ぐ、軍曹。お前の好意はよくわかった。だが、その……私には、それを受け止める許容と自信がだな……」
「そんなに怖がらなくても大丈夫ですよ。ちゃんとほぐしてあげますから」
無意識の内に声を震わせてしまう私の頭を撫で、微笑む軍曹。いつもの怒る気を無くさせるその笑みに、私はただ静かに頷くことしか出来なかった。
「じゃあ、力抜いてください。指で慣らしてあげますから」
「う、うむ……」
ニチャニチャと、出したばかりの私の精液を絡ませた軍曹の指が、私の閉じきられた門をこじ開けんと近付いてくる。
「ん……っ」
つぷりと、大した抵抗もなく太い指の先端が侵入を果たした。とはいえ、初めての感覚に私は自然と身体を強張らせてしまい、軍曹の指をキツく締め付けてしまう。
「おお、この吸いつくような感触……たまんねぇや。隊長、今から指を動かしますから、ちょっと力抜いてくださいね」
「くぅ……そ、そんな簡単に……あ、あああっ!」
ぐにゅりと柔壁をほぐすように押されて、思わず声が洩れる。あられもない声を上げて身悶える私の身体を、軍曹は背後から優しく抱きしめてきた。
「あ、ここがいいんですか?早くも隊長の弱点、見つけちゃいましたよ~♪」
「ば、馬鹿者が!ヒトをまるで玩具のように……ふぁああっ!?」
軍曹の指が蛇のように蠢いたかと思えば、執拗に中のある一点を責め倒してくる。腹の奥底から押し上げるような感覚に堪えきれず、再び私のペニスからは噴水のように精液が噴き出した。
さすがに二回目の射精ともなれば、身体に掛かる脱力感が半端ではない。ぐったりと身を預ける私を余所に、軍曹はにゅるりと指を引き抜いた。
「初めてなのにコッチでイケるなんて……やっぱ隊長才能ありますよ!俺、一生ついて行きます!」
「はぁっ、はぁっ……き、貴様がそんな人間だったとは、私も見る目が……ひっ」
私の股下から、再び顔を出す軍曹の怒張したペニス。先端から壊れた蛇口のように溢れる先走りで全体がテカテカと光っており、軍曹が扱く度にグチャグチャと卑猥な音を立てている。
「隊長……俺、もう限界です。これだけ濡れてたら、いいですよね……?」
「ま、待て、落ち着け軍曹!そこから先は絶対に許さんぞ!そんなものが入るわけ―――」
「スミマセン。本当にスミマセン。後で何されてもいいので、今は俺に任せてください……」
軍曹の瞳に、野生の色が宿る。肉欲の虜となった軍曹に私の声が届くことはなく、遂に僅かに口を開けたままの私の穴に熱い塊があてがわれた。
「う……ん……っ」
「く、ぁあ……は、入る、軍曹が……かは……っ」
メリメリとこじ開けるように、私の内部へと侵入してくる軍曹のペニス。よく濡れているとはいえ、その大きさはあまりに規格外過ぎた。
鈍い痛みに身体を震わせる私だったが、肉棒の幹にビッシリと生えた突起物がトロトロにほぐされて敏感になった内壁を擦る度に甘い刺激が突き抜ける。
いよいよ、私の身体は軍曹のモノになるべく適応を始めたということか―――
抵抗も出来ないままに、みるみる内に私の体内に軍曹のペニスが収まっていき、気付けば驚くべきことにおよそ八割方を呑み込んでしまっていた。
「す、すげぇ……隊長の中、俺のに絡み付くような感じで……こんな具合が良いの初めてッス……」
「ぅ……キツ、い……ッ!」
その質量に押し上げられ、ポッコリと腹に軍曹のペニスの形が浮き出てしまっている。勝手に感動している軍曹の顔を一発張り倒してやりたい衝動に駆られたが、無理に動こうとすれば重力に引かれてさらに深くまでペニスが入り込もうと押し上げてきた。
「……っ、はぁ……隊長、全部入りましたよ……」
「う、くぁあ……っ」
遂に根元まで、ズッポリと中に肉杭を収められてしまった。とんでもない存在感だ。やはり、あれだけの質量を呑み込むには無理があったようで、下腹部にはハッキリとその形状が浮かび上がっている。
「じゃあ隊長、動きますね……」
「ま、待て、ぐんそ……うぁああっ!?」
一息も入れさせてはもらえず、ゆっくりと軍曹のペニスが引き抜かれていく。張り出した突起が容赦なく内部の壁を擦り上げ、私は一際大きな声を洩らしてしまう。
「あらら……隊長、また漏らしちゃってるじゃないですか」
「…ふぇ……?」
軍曹に言われて、気付いた。自身でも気付かぬ間に、先ほどの一擦りによって、問答無用で絶頂に登り詰めてしまっていたのだ。
こんな状態で、もし激しく動かれたら―――
嫌な視線を感じて、軍曹を見上げる。そこには凶悪な悪の組織の親玉のように悪そうな笑みを浮かべた彼の表情があった。
「じゃあ……隊長、そろそろ本気で動いちゃいますよ?」
「ま、待っ―――ふぁああんッ!?」
強靭な足腰による下からの突き上げに、私の身体は激しく上下する。強烈な快楽が接合部から全身へと駆け巡り、僅かに残されていた私の理性も頭の片隅へと追いやられていく。
ゴリゴリと、まさに剛直と言っても過言ではない巨塔が、ピンポイントで私の弱点を擦り上げてくるのである。次第に、私の思考にうっすらと霞が掛かってきた。
「ひゃっ、ぁ、ふぁああっ!む、ムリ、もうムリだ軍曹ッ!こんなの、壊れるぅ……っ!」
「ほらほらぁ、我慢しないで気持ち良くなって下さいよ。隊長の好きなところ、いっぱい突いてあげますから」
「ひゃあああっ!」
常に限界との境界線とを往復する私に対し、軍曹はまだまだ余裕があるらしい。私の身体中を撫で回しながら、より一層硬度を増したペニスで脳天に突き抜けるような快楽を与え続けてくる。
「はっ、はぁっ……!隊長は、俺のモンだ。絶対、絶対に他の誰にもやらねぇからなぁ……!」
「ふあっ、ああっ!?ま、たぁ……!?」
まるで肉食獣の食事のように、ガツガツと容赦なく腰を叩き付ける軍曹。内側から快楽神経を直接刺激されているかのような感覚に、私の身体は何度目かもわからない絶頂に達した。
しかし、精巣が空っぽになったペニスから精液が出ることはない。ただ大きく跳ねて空撃ちをしているだけであった。
「くっ……隊長の締め付けヤバい……俺も、そろそろ……っ!」
「ひぁっ、ぁっ……んん……っ!?」
切羽詰まった声を洩らしたかと思えば、大きくグラインドさせて突き込むような軍曹の腰遣いが変化する。深くペニスを埋め込んだまま一番奥をノックするように小刻みに突き、私の口周りをベロベロと舐め回す荒々しい口付けを交わす。
そして、その瞬間は訪れた。
「で、出ます!出ますからね隊長!俺のモノに、なって……!ぐる、ゥゥ……ッ!!」
「んむ…ぅ……っ」
最奥まで突き刺された肉棒の棘が目一杯開かれた瞬間、熱い奔流がドクドクと脈打ちながら音を立てて流れ込んできた。
その量と勢いは凄まじく、圧倒的な存在感を絶えず私に与え、腹を水風船のように膨らませる。タップリと注ぎ込まれた濃厚な獣の精液が、じんわりと身体の奥で溶けるかのような感覚に呑まれ、私の意識は軍曹の荒い息遣いと温かさに抱かれたまま、真っ暗な闇へと落ちていった―――
そして、
「ホンッッッットに、スイマセンでしたァッ!!」
公共のトイレ内での情事から約十数分後、私達は行き着けの喫茶店を訪れていた。
頬杖をついた私の目の前には頭の天辺を見せるように腰を折る軍曹と、大好物のイチゴパフェ。しかも二つ。
私はテーブルで額を削る軍曹を横目に、ちょこちょことスプーンでパフェを口に運んでいるところであった。
「…ほぅ、自分が何をしたか理解しているようだな。私の身体をさんざん好きにして蹂躙した気分はどうだ?」
「そりゃもう最高で―――イダァッ!?」
どうやら反省が足りないらしい。おもいっきり軍曹の爪先を踏みつけて、私は黙々とパフェを食べ進めていく。
あれから一度で終わるかと思いきや、二ラウンド、三ラウンドと続け様の性交渉の果てに、もはや私の身体で軍曹が味わっていない箇所は無いのではなかろうかと思うほどに容赦なく頂かれた。何とも言えぬ屈辱感に、私の感情回路は極限の苛立ちを感じていた。
「は、反省してます。だからどうか、その……機嫌の方を……」
「…ふん」
スプーンを動かす手を止めて、軍曹を見る。虎と言うより子猫のように小さく身体を丸める軍曹の姿を見ていると、少しだけ私の気分も晴れた気がする。
しかし、いつまでもこうして遊んでいるわけにもいかない。真剣に想いを打ち明けた軍曹に、まずは返事を返さねば。
「…顔を上げろ、軍曹」
「は、はい……」
普段の威勢もどこへやら、今となっては見る影もなく小さくなった軍曹が顔を上げる。
そのあまりに不安そうな表情に思わず笑ってしまいそうになるが、私はかろうじて堪えて言葉を続ける。
「軍曹、経緯はともかく……私もお前の事は嫌いではない。その好意も非常に嬉しく思う。しかし……些か、順序が逆だとは思わんか?」
「は、はい、仰る通りです。でも俺、どうしても、その……隊長を自分だけのモノにしたくて……」
「…やれやれ」
意志は変わらずか。しかし、今はそれも良いだろう。
バニラアイスの溶けかけたパフェを一口、私はずっと考えていた言葉を口にする。
「軍曹、お前の想い……受け止めてやろう」
「……へ?」
豆鉄砲を受けた鳩のような顔をして、間の抜けた声を洩らす軍曹。まぁ、それも当然の反応だろう。
「わからんか?お前と恋仲になると言っているのだ。このような浮ついた関係となるのは初めてだが、お前とならば構わん」
「おお……おおお……っ!!」
感激しているのか、ブルブルと身体を震わせながら感涙を滝のように流す軍曹。そして、いきなりスプーンを握る私の手を両手で包み込んできた。
「た、隊長!俺、俺……今まで生きてて良かったッス!やっぱ俺のチンポでメロメロになってくれたンスね!?」
「ば、馬鹿者、声が大きいぞ……!」
一発頭を張り飛ばすが、今の状態の軍曹にはまったく効果が無いらしい。しかし、これならば私の頼みを聞かない事も無いだろう。
「さて、交際を始めるに当たって……軍曹、お前に一つ頼みがある。いや、条件と言うべきか」
「はいはいはいっ!もう何でもやりますよ!隊長のためなら、たとえ火の中水の中ですから!」
「そうか……それは良かった」
スルリと軍曹の手の中から抜け出した私の両手はテーブルの下へ。そして、常に常備している二つの物を軍曹の前に置いた。
一つはゴミ袋。もう一つもゴミ袋。わざわざ分ける理由は、片方は燃えるゴミ用で、もう一方はビンや空き缶を入れるためのものだ。ちなみに業務用の特大サイズである。
「あ……え?た、隊長、それは……?」
「ああ、お前との付き合いも大切だが、本来の役目を蔑ろにするわけにもいかんからな。そこで、だ」
私はそれら二種類のゴミ袋を、呆けた表情を浮かべる軍曹の前に突き出した。
「お前に、私の日課の一つであるゴミの収拾を任せよう。一日五袋を目安に頑張って欲しい」
「ご、五袋……っ!?」
目に見えて、軍曹の顔が引きつる。これぐらい、街中を隅々まで歩き回ればすぐだろうに。
「そうか、嫌か……ならば仕方無い。先程の事は無かったことに―――」
「わ、わかりました!やります!精一杯やらせて頂きますから!ですから反故にするなんて言わないで下さいよ!」
返事は良いのに、顔が絶望一色というのは如何なものか。私の視線を受けながら、軍曹は渋々とゴミ袋を受け取った。
「よし、では早速だが今日の分を頼むぞ。私はここで待機している。終わったら報告してくれ」
「えっ……?た、隊長も一緒にやってくれるんじゃ……?」
「そうしたいところだが、暴走した誰かのせいで腰が立たん。それとも、やはり関係は今日までと……」
「や、やりますよ!誠心誠意やらせて頂きますから、そんな事言わないでっ!ただし、隊長……」
急に静かになったかと思えば、神妙な表情を浮かべた顔を寄せてくる軍曹。何がしたいのか定かではないが、その何か言いたげな口元に耳を寄せてやった。
「何だ?言いたい事があるならハッキリと―――」
「ゴミ集めが終わったら、また俺の相手をしてもらいますからね」
「な……っ!」
「では、そういうことで!」
思わぬ不意打ちに一瞬私の思考は白紙化する。すぐさま叱責のために息を吸い込んだ瞬間、素早く立ち上がった軍曹はゴミ袋を手にして一目散に喫茶店を飛び出していった。
断る間もなく、一方的に約束をこぎつけられてしまったような気がする。あの調子なら、数時間としない内に戻ってくるだろう。
「…まったく、馬鹿者め……」
頭の中で軍曹の言葉を反芻すると、何故か腹の奥が疼くような感覚がする。私は気を紛らわせるように、再びスプーンを手に双子のパフェに挑むのであった。
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