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12話 婚約報告
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それから10日後。
俺は屋敷の使用人の皆の前で、オスカー様からキスと共に婚約指輪をもらった。
使用人たちは大興奮で、皆揃って祝福してくれた。
そして2人で馬車に乗り、王都へと向かう。
【王都ロスペラール】
何度目かの王都。でも今日用事があるのは王都ではない。
「オスカー様……俺、緊張してきました」
「ふっ、話すのは俺だぞ? なぜフィルが緊張しているのだ」
「だ、だって……」
「大丈夫だ。俺を信じろ」
「……はい!」
オスカー様はいつも“大丈夫だ”と言って励ましてくれる。オスカー様の“大丈夫だ”は魔法の言葉。
だって、本当に大丈夫なんだもん。
そして俺とオスカー様は、その大きな建物を見上げた。
【ロスペラリア城】
「ルース領主様とそのお連れ様、ようこそお待ちしておりました!」
お城に入るなりたくさんの使用人に出迎えられる。
オスカー様には悪いけど、ルース領主の屋敷と段違いだ……。
そう、俺とオスカー様は今日、国王陛下に婚約の報告をしに来たのだ。
この国の領主は国王陛下の御前で愛を誓い、将来の設計図を報告するらしい。
結婚しよう、はい終わり。じゃないのは、さすが領主様だと思った。
「オスカーよ。よくぞ参られた」
玉座の間で国王陛下と対面する。
王様なんて初めて会うよ……! なんかサンタさんみたいに優しそうなお人だ。
「お久しぶりです、国王陛下」
オスカー様がサッと片膝をついたため、俺も慌てて真似をする。
「うむ、久しぶりに顔を出したと思えば、今日は大切な報告があるとのことじゃが……」
「はっ、わたくしオスカー・ルースは、こちらのフィル・アーネットと婚約しましたので、その報告に参った次第であります」
「なんと、婚約とな! 次々と縁談の話を門前払いしていたと聞いたが、そういうことであったか」
その話国王陛下にもバレてるんだ……。
「その説は、たいへんご心配をおかけ致しました」
「良い良い。フィルよ、表を上げなさい」
「は、はい……!」
俺は緊張でちょっと涙目になりながら国王陛下を見上げる。
「うむ。なんと愛いおなごじゃ」
国王陛下はそう言って優しく微笑む。
それに対し、オスカー様が即座に反論した。
「失礼ながら国王陛下、フィルは、男です」
「えっ……?」
目を真ん丸にして固まる国王陛下。
あぁ、やっぱ受け入れられないか。俺はそう思ってシュンとうつむく。
「そ、そういうのありなの?」
驚きすぎてなのか、国王陛下のキャラの崩壊の兆しが見えてくる。
「だめ、とはどこにも書いてありませんが……」
オスカー様は顔を上げながら言う。どうやらオスカー様も国王陛下の表情が気になったようだ。
「あ、たしかに、だめって書いてないわ……」
国王陛下は自ら定めたお触れをペラペラ見ながらボソッと呟く。
「いや、だって、そうだよね。オスカーも養子だもんね。後継ぎは養子でいいよね」
国王陛下は狂ったように早口でブツブツ言っている。
その様子を俺とオスカー様は緊張した面持ちで見守る。
国王陛下はしばらくブツブツ言うと、やがて顔を上げてオスカー様へ問いかけてくる。
「オスカー。フィルくんのこと愛してるの?」
「はい、愛しております」
オスカー様は即答する。
「フィルくんは?」
「もちろんわたくしもオスカー様を愛しております!」
俺が一生懸命にそう叫ぶと、国王陛下の頬がポッと赤く染まった。
「な、なんか……良いかも……。よし、少々取り乱してしまったが、その報告しかと聞き入れよう。も、もう一度、愛の誓い、良い……?」
国王陛下は最後にモジモジした。
「はい、何度でも誓います」
と、オスカー様。
「じゃ、じゃぁ……オスカーよ、フィルを生涯愛すると誓うか」
「はい、誓います」
「うむ、フィルよ、オスカーを生涯愛すると誓うか」
「はい、誓います!」
「い、良いねっ!」
俺は、国王陛下の新たな扉を開いたような気がした。
俺は屋敷の使用人の皆の前で、オスカー様からキスと共に婚約指輪をもらった。
使用人たちは大興奮で、皆揃って祝福してくれた。
そして2人で馬車に乗り、王都へと向かう。
【王都ロスペラール】
何度目かの王都。でも今日用事があるのは王都ではない。
「オスカー様……俺、緊張してきました」
「ふっ、話すのは俺だぞ? なぜフィルが緊張しているのだ」
「だ、だって……」
「大丈夫だ。俺を信じろ」
「……はい!」
オスカー様はいつも“大丈夫だ”と言って励ましてくれる。オスカー様の“大丈夫だ”は魔法の言葉。
だって、本当に大丈夫なんだもん。
そして俺とオスカー様は、その大きな建物を見上げた。
【ロスペラリア城】
「ルース領主様とそのお連れ様、ようこそお待ちしておりました!」
お城に入るなりたくさんの使用人に出迎えられる。
オスカー様には悪いけど、ルース領主の屋敷と段違いだ……。
そう、俺とオスカー様は今日、国王陛下に婚約の報告をしに来たのだ。
この国の領主は国王陛下の御前で愛を誓い、将来の設計図を報告するらしい。
結婚しよう、はい終わり。じゃないのは、さすが領主様だと思った。
「オスカーよ。よくぞ参られた」
玉座の間で国王陛下と対面する。
王様なんて初めて会うよ……! なんかサンタさんみたいに優しそうなお人だ。
「お久しぶりです、国王陛下」
オスカー様がサッと片膝をついたため、俺も慌てて真似をする。
「うむ、久しぶりに顔を出したと思えば、今日は大切な報告があるとのことじゃが……」
「はっ、わたくしオスカー・ルースは、こちらのフィル・アーネットと婚約しましたので、その報告に参った次第であります」
「なんと、婚約とな! 次々と縁談の話を門前払いしていたと聞いたが、そういうことであったか」
その話国王陛下にもバレてるんだ……。
「その説は、たいへんご心配をおかけ致しました」
「良い良い。フィルよ、表を上げなさい」
「は、はい……!」
俺は緊張でちょっと涙目になりながら国王陛下を見上げる。
「うむ。なんと愛いおなごじゃ」
国王陛下はそう言って優しく微笑む。
それに対し、オスカー様が即座に反論した。
「失礼ながら国王陛下、フィルは、男です」
「えっ……?」
目を真ん丸にして固まる国王陛下。
あぁ、やっぱ受け入れられないか。俺はそう思ってシュンとうつむく。
「そ、そういうのありなの?」
驚きすぎてなのか、国王陛下のキャラの崩壊の兆しが見えてくる。
「だめ、とはどこにも書いてありませんが……」
オスカー様は顔を上げながら言う。どうやらオスカー様も国王陛下の表情が気になったようだ。
「あ、たしかに、だめって書いてないわ……」
国王陛下は自ら定めたお触れをペラペラ見ながらボソッと呟く。
「いや、だって、そうだよね。オスカーも養子だもんね。後継ぎは養子でいいよね」
国王陛下は狂ったように早口でブツブツ言っている。
その様子を俺とオスカー様は緊張した面持ちで見守る。
国王陛下はしばらくブツブツ言うと、やがて顔を上げてオスカー様へ問いかけてくる。
「オスカー。フィルくんのこと愛してるの?」
「はい、愛しております」
オスカー様は即答する。
「フィルくんは?」
「もちろんわたくしもオスカー様を愛しております!」
俺が一生懸命にそう叫ぶと、国王陛下の頬がポッと赤く染まった。
「な、なんか……良いかも……。よし、少々取り乱してしまったが、その報告しかと聞き入れよう。も、もう一度、愛の誓い、良い……?」
国王陛下は最後にモジモジした。
「はい、何度でも誓います」
と、オスカー様。
「じゃ、じゃぁ……オスカーよ、フィルを生涯愛すると誓うか」
「はい、誓います」
「うむ、フィルよ、オスカーを生涯愛すると誓うか」
「はい、誓います!」
「い、良いねっ!」
俺は、国王陛下の新たな扉を開いたような気がした。
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