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11話 俺の心配返して
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オスカー様は語りだす。
「俺は、幼い頃に捨てられたらしく、王都の孤児院で育った。6歳の頃に父上に養子に迎えてもらい、領主としての勉強を積んできた」
「そうだったんですね。全然知らなかったです……」
「恐らくお前がギリギリ生まれる前なのではないか? 知らなくても無理はない」
オスカー様と俺の歳の差は7つ。
「あ、確かに俺生まれてない……」
というか、引きこもりでBL小説を読みあさる日々を送っていた頃だ。
「俺は俺が養子に迎えられたことに対しては、何も違和感はなかったし、この家に迎えられて幸せに感じていた。だが、父上が結婚をしないのはなぜなのだろう、と考えることはあった」
「お前は、結局今の今まで1度も聞いてこなかったね」
と、お父上。
「はい。聞くべきことではないかと思いまして……」
「すまないね、子供に気を使わせてしまって……」
「いえ、いいんです。俺も同じ立場になって、父上のお気持ちがよく分かりますから」
「そうか……」
お父上は優しく微笑み、オスカー様は再び話を戻す。
「そして俺はフィルと出会い、フィルを俺の付き人として雇います。そこで、すぐにフィルへ恋愛感情を寄せている自分に気付き、もしかして父上もそういうことなのか、と考え始めました。フィル、すまない。もし父上が違う考えだった場合、お前にいらない偏見を与えてしまうことになると思い、軽く口にはできなかった。許してほしい」
「いえ! お父上のことを気遣ってらしたのですよね。心優しいオスカー様らしいです」
「フィル……ありがとう。だから、俺も養子を迎えれば将来の心配はないと思っていたんだ。だが、ある噂を耳にしてな……」
「噂?」
俺は首をかしげる。
「俺とフィルがデキているという噂だ……」
オスカー様は少し顔を赤らめながらそう言う。
「え、噂になってたの!?」
「もうこの屋敷の者でこの噂を知らないものは誰もいないくらいだよ」
お父上はそう言ってふふっと笑った。
「ええええ!?」
「更に先日、実は公務に出かけるフリをして、お前に内緒でお前の実家に行ってきた」
オスカー様はサラリと言う。
「何ですと!? あ……母さん元気でしたか?」
「あぁ、とてもお元気で、お前はお母様似なのだな。よく似ていらして綺麗な方だった」
それって……俺が綺麗ってことですか?
もぅ、オスカー様ったら!
「あと、お前の仕送りのこともとても感謝していたぞ」
「あ、良かったです」
「それでその時に……お前と恋仲だと言うことを伝えたのだが……」
「ま、マジですか……」
さすがの俺も少し恥ずかしくなる。母さん、驚いただろうなぁ。
「お母様は、泣いて喜んでくれたぞ」
「えっ、本当に?」
「あぁ。息子をよろしくお願いしますって何度も頭を下げられて、なだめるのが少し大変なほどだった」
「あはは、母さんらしいです……」
オスカー様はふぅっと一息つくと、改めて俺の方へ向き直る。
「だから俺は、養子を迎える前に、思い切ってお前との婚約を発表し、結婚したい」
「あ、あの……男同士でも、できるんでしょうか……?」
「できないという決まりはない」
「え、そ、そうなんですね!」
俺の前世の固定観念が邪魔していたけど、そう言えばこの国に結婚は男女のペアでなければならないなんてルールはなかった気もしてくる。
「その上でもう一度言うぞ。フィル……俺と結婚してくれ」
「はい……喜んで!」
「おめでとう2人とも」
お父上はありったけの拍手を俺たちにくれた。
俺は幸せの余韻に浸っていたため忘れていたけど……。
「っていうか……」
俺は思い出し、わなわなと震える。
「む、フィル、どうした?」
「俺の心配返してくださいよーっ!」
「! フィルっ!」
俺はオスカー様の胸に飛び込みながら分厚い胸板をポカポカと叩いた。
「俺、すごく悩んだんですからねっ!? 噂になってもうバレちゃってたなら、そんな心配いらなかったじゃないですか!」
「む、そ、そうだな……。それは、本当にすまなかった……。これからは、何でも1番にお前に言うと誓おう」
「本当に?」
「あぁ、本当だ」
「なら、誓いのキスをして下さいっ」
「なっ、こ、ここで!? いや、分かった……目、閉じろ」
「はい」
ちゅっ。
「……良いっ!」
お父上にグッドサインを送られた。
「俺は、幼い頃に捨てられたらしく、王都の孤児院で育った。6歳の頃に父上に養子に迎えてもらい、領主としての勉強を積んできた」
「そうだったんですね。全然知らなかったです……」
「恐らくお前がギリギリ生まれる前なのではないか? 知らなくても無理はない」
オスカー様と俺の歳の差は7つ。
「あ、確かに俺生まれてない……」
というか、引きこもりでBL小説を読みあさる日々を送っていた頃だ。
「俺は俺が養子に迎えられたことに対しては、何も違和感はなかったし、この家に迎えられて幸せに感じていた。だが、父上が結婚をしないのはなぜなのだろう、と考えることはあった」
「お前は、結局今の今まで1度も聞いてこなかったね」
と、お父上。
「はい。聞くべきことではないかと思いまして……」
「すまないね、子供に気を使わせてしまって……」
「いえ、いいんです。俺も同じ立場になって、父上のお気持ちがよく分かりますから」
「そうか……」
お父上は優しく微笑み、オスカー様は再び話を戻す。
「そして俺はフィルと出会い、フィルを俺の付き人として雇います。そこで、すぐにフィルへ恋愛感情を寄せている自分に気付き、もしかして父上もそういうことなのか、と考え始めました。フィル、すまない。もし父上が違う考えだった場合、お前にいらない偏見を与えてしまうことになると思い、軽く口にはできなかった。許してほしい」
「いえ! お父上のことを気遣ってらしたのですよね。心優しいオスカー様らしいです」
「フィル……ありがとう。だから、俺も養子を迎えれば将来の心配はないと思っていたんだ。だが、ある噂を耳にしてな……」
「噂?」
俺は首をかしげる。
「俺とフィルがデキているという噂だ……」
オスカー様は少し顔を赤らめながらそう言う。
「え、噂になってたの!?」
「もうこの屋敷の者でこの噂を知らないものは誰もいないくらいだよ」
お父上はそう言ってふふっと笑った。
「ええええ!?」
「更に先日、実は公務に出かけるフリをして、お前に内緒でお前の実家に行ってきた」
オスカー様はサラリと言う。
「何ですと!? あ……母さん元気でしたか?」
「あぁ、とてもお元気で、お前はお母様似なのだな。よく似ていらして綺麗な方だった」
それって……俺が綺麗ってことですか?
もぅ、オスカー様ったら!
「あと、お前の仕送りのこともとても感謝していたぞ」
「あ、良かったです」
「それでその時に……お前と恋仲だと言うことを伝えたのだが……」
「ま、マジですか……」
さすがの俺も少し恥ずかしくなる。母さん、驚いただろうなぁ。
「お母様は、泣いて喜んでくれたぞ」
「えっ、本当に?」
「あぁ。息子をよろしくお願いしますって何度も頭を下げられて、なだめるのが少し大変なほどだった」
「あはは、母さんらしいです……」
オスカー様はふぅっと一息つくと、改めて俺の方へ向き直る。
「だから俺は、養子を迎える前に、思い切ってお前との婚約を発表し、結婚したい」
「あ、あの……男同士でも、できるんでしょうか……?」
「できないという決まりはない」
「え、そ、そうなんですね!」
俺の前世の固定観念が邪魔していたけど、そう言えばこの国に結婚は男女のペアでなければならないなんてルールはなかった気もしてくる。
「その上でもう一度言うぞ。フィル……俺と結婚してくれ」
「はい……喜んで!」
「おめでとう2人とも」
お父上はありったけの拍手を俺たちにくれた。
俺は幸せの余韻に浸っていたため忘れていたけど……。
「っていうか……」
俺は思い出し、わなわなと震える。
「む、フィル、どうした?」
「俺の心配返してくださいよーっ!」
「! フィルっ!」
俺はオスカー様の胸に飛び込みながら分厚い胸板をポカポカと叩いた。
「俺、すごく悩んだんですからねっ!? 噂になってもうバレちゃってたなら、そんな心配いらなかったじゃないですか!」
「む、そ、そうだな……。それは、本当にすまなかった……。これからは、何でも1番にお前に言うと誓おう」
「本当に?」
「あぁ、本当だ」
「なら、誓いのキスをして下さいっ」
「なっ、こ、ここで!? いや、分かった……目、閉じろ」
「はい」
ちゅっ。
「……良いっ!」
お父上にグッドサインを送られた。
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