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3話 初仕事はクレープ屋さんで
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【ルースの町】
使用人らに見送られ、正面門ではなく裏の門から町へと出る。
なんか芸能人のお忍びデートみたいだ。
「何だろうな。格好がこうも違うだけでいつも見ている町の風景とはどこか違うような気がしてくる」
帽子の陰から見えるオスカー様の表情はとても穏やかだった。
「そうなんですね。俺は、この町、すごく好きです。もし今同じ目線で見えているのなら、オスカー様にももっともっとこの町の良さを知ってもらいたいです」
「フィルありがとう。しかし、そのオスカー様というのは控えた方が良さそうだ。あと、敬語もだな……」
オスカー様が声のトーンを抑えて言う。
あ、そっか。これじゃぁ全然お忍びになっていない。誰かが近くにいる状態で大きな声で言っちゃわないで良かった。
「そうですよね……いや、そうだよね。えっとじゃぁ……どうしよう……」
「フィルが好きに決めてくれ」
「そ、そうだな……オ……オスくん……いや、響きがまんまだな……オーくん……なんて、どう?」
「あぁ、それで構わない」
オスカー様は、優しく微笑んだ。
あれ、これ夢じゃないよね……?
あのオスカー様とこんなお忍びデートして、普通に話してオーくんって呼ぶなんて……。
俺の中でオスカー様とカップルのようにイチャイチャする妄想が広がっていく。
だ、だめだだめだ。彼はあくまでもノンケの男性だ。
良いお友達でいなきゃ……。
俺はもんもんとしながらオスカー様に一般の人が利用する色んな店を紹介していく。
オスカー様は入ったことがないようなところばかりだったらしく、色んなものを珍しそうに見ていた。
「あれは、何の店だろうか……?」
オスカー様がある店を指差して俺に問う。
「クレープ屋さんだよ。クレープ食べてみる? 美味しいよ」
「そうか、フィルがそう言うなら……食べてみよう」
俺はオスカー様からお金をもらうと、チョコのクレープを2つ買って、1つをベンチで休憩している彼へと手渡した。
「不思議な形の食べ物だ……一体どこから……」
わわわ、クレープ見て困ってるオスカー様……尊い……。
「こうやって少しだけ引き出して、ガブッて食べるんだよ。んーやっぱここのクレープ美味い」
俺がそう言って目の前でクレープを食べると、オスカー様も真似してかぶりついた。
「ん……。ケーキの様な風味だが、このモチモチしている生地がそれとはまた違ってこれはこれで美味いな」
オスカー様の食レポ……素敵。
「でしょ? 俺ここのクレープめちゃくちゃ好きなんだ」
俺は夢中で食っていると、ふと、オスカー様の視線を感じた。
「ん?」
俺はもぐもぐしながら反応する。すると、オスカー様はハッと我に返ったような反応を見せた。
「あぁ、いや、すまん……。お前があまりにも美味そうに食べているから……。お前のその食べている表情は何だか癒やされるな」
オスカー様はそう言って頬を赤らめながらクレープにかぶりついた。
え……!?
今の何……!?
まさかオスカー様、この俺の可愛い顔に見惚れていた?
いやいやいや、まさかそんな……。
そんな訳……。
でも、俺可愛いしな……。
いやいやいや。
俺の脳内はプチパニックである。
その後も色んなお店を回って飲んだり食べたりして、屋敷へと帰還した。
【ルース領主の屋敷】
使用人らに盛大に出迎えられて2階の部屋へと向かう。
そして俺らの部屋の前でオスカー様は帽子を俺に返しながらこう言った。
「今日はありがとう。俺は、あのクレープもそうだが、あんな美味いものを知らずにこれからも堅苦しく生きていくところだった。フィルが来てくれて本当に良かった。明日からもよろしく頼む。では、夜の食事までゆっくりしていてくれ」
「わわわ……。俺もオスカー様にお仕えできて良かったです。こちらこそ、ありがとうございました。また公務の息抜きにいつでも行きましょう!」
「あぁ、ありがとう」
俺らはそれぞれの部屋へと入った。
俺は部屋に入って1人になった瞬間ベッドにダイブする。
そしてふかふかの枕に顔を埋めてこう叫んだ。
「オスカー様! 推せるっ! 最推し確定!」
使用人らに見送られ、正面門ではなく裏の門から町へと出る。
なんか芸能人のお忍びデートみたいだ。
「何だろうな。格好がこうも違うだけでいつも見ている町の風景とはどこか違うような気がしてくる」
帽子の陰から見えるオスカー様の表情はとても穏やかだった。
「そうなんですね。俺は、この町、すごく好きです。もし今同じ目線で見えているのなら、オスカー様にももっともっとこの町の良さを知ってもらいたいです」
「フィルありがとう。しかし、そのオスカー様というのは控えた方が良さそうだ。あと、敬語もだな……」
オスカー様が声のトーンを抑えて言う。
あ、そっか。これじゃぁ全然お忍びになっていない。誰かが近くにいる状態で大きな声で言っちゃわないで良かった。
「そうですよね……いや、そうだよね。えっとじゃぁ……どうしよう……」
「フィルが好きに決めてくれ」
「そ、そうだな……オ……オスくん……いや、響きがまんまだな……オーくん……なんて、どう?」
「あぁ、それで構わない」
オスカー様は、優しく微笑んだ。
あれ、これ夢じゃないよね……?
あのオスカー様とこんなお忍びデートして、普通に話してオーくんって呼ぶなんて……。
俺の中でオスカー様とカップルのようにイチャイチャする妄想が広がっていく。
だ、だめだだめだ。彼はあくまでもノンケの男性だ。
良いお友達でいなきゃ……。
俺はもんもんとしながらオスカー様に一般の人が利用する色んな店を紹介していく。
オスカー様は入ったことがないようなところばかりだったらしく、色んなものを珍しそうに見ていた。
「あれは、何の店だろうか……?」
オスカー様がある店を指差して俺に問う。
「クレープ屋さんだよ。クレープ食べてみる? 美味しいよ」
「そうか、フィルがそう言うなら……食べてみよう」
俺はオスカー様からお金をもらうと、チョコのクレープを2つ買って、1つをベンチで休憩している彼へと手渡した。
「不思議な形の食べ物だ……一体どこから……」
わわわ、クレープ見て困ってるオスカー様……尊い……。
「こうやって少しだけ引き出して、ガブッて食べるんだよ。んーやっぱここのクレープ美味い」
俺がそう言って目の前でクレープを食べると、オスカー様も真似してかぶりついた。
「ん……。ケーキの様な風味だが、このモチモチしている生地がそれとはまた違ってこれはこれで美味いな」
オスカー様の食レポ……素敵。
「でしょ? 俺ここのクレープめちゃくちゃ好きなんだ」
俺は夢中で食っていると、ふと、オスカー様の視線を感じた。
「ん?」
俺はもぐもぐしながら反応する。すると、オスカー様はハッと我に返ったような反応を見せた。
「あぁ、いや、すまん……。お前があまりにも美味そうに食べているから……。お前のその食べている表情は何だか癒やされるな」
オスカー様はそう言って頬を赤らめながらクレープにかぶりついた。
え……!?
今の何……!?
まさかオスカー様、この俺の可愛い顔に見惚れていた?
いやいやいや、まさかそんな……。
そんな訳……。
でも、俺可愛いしな……。
いやいやいや。
俺の脳内はプチパニックである。
その後も色んなお店を回って飲んだり食べたりして、屋敷へと帰還した。
【ルース領主の屋敷】
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そして俺らの部屋の前でオスカー様は帽子を俺に返しながらこう言った。
「今日はありがとう。俺は、あのクレープもそうだが、あんな美味いものを知らずにこれからも堅苦しく生きていくところだった。フィルが来てくれて本当に良かった。明日からもよろしく頼む。では、夜の食事までゆっくりしていてくれ」
「わわわ……。俺もオスカー様にお仕えできて良かったです。こちらこそ、ありがとうございました。また公務の息抜きにいつでも行きましょう!」
「あぁ、ありがとう」
俺らはそれぞれの部屋へと入った。
俺は部屋に入って1人になった瞬間ベッドにダイブする。
そしてふかふかの枕に顔を埋めてこう叫んだ。
「オスカー様! 推せるっ! 最推し確定!」
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