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2話 今日からお世話になります
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俺は母さんへの報告も兼ねて、荷造りのため家に飛んで帰った。
領主様のお屋敷で住み込みで働くことになった、そう母さんに報告すると、母さんは泣いて喜んでくれた。
なんか、親孝行できた感じがしてよかったなぁ。
給料はオスカー様が母さんに仕送りする用もくれるとのことで、お金には一切困らなさそうだ。
そして荷造りを済ませると、迎えの馬車に乗って屋敷へと出発した。
【ルース領主の屋敷】
「た、只今戻りました。今日からお世話になります」
俺が屋敷に戻ると、屋敷の使用人らがずらりと並んで俺を出迎えてくれた。
「おかえりなさいませ。フィル様!」
「えっ、フィル……様!?」
何で? 俺も使用人なんじゃないの?
「はい、オスカー様と同様の対応をするよう、オスカー様から申しつかっております」
メイドさんはそう言って丁寧にお辞儀をした。
「わわわ……なんか悪いなぁ……。あの、この屋敷のこと分かんないことだらけなので、良かったら色々教えてください」
俺もそう言い頭を下げた。
すると使用人らは声を揃えて「もちろんです!」と答えた。
そして、この騒ぎを聞きつけてオスカー様が書斎から出てくる。
「フィル? 早かったな。お母様にはちゃんと報告できたのか?」
「はい、母さん、良かったね、と泣いて喜んでくれました!」
周りの使用人らが一斉に拍手をする。いや、大げさすぎてやり辛いわ。
「そうか、それは良かった。では、まずは自分の部屋で荷物を整えてきなさい」
「はい、分かりました!」
俺は使用人に俺の部屋へと案内される。そこは、オスカー様の寝室の隣の部屋だった。
すでに俺の荷物は馬車からこの部屋に移動されていて、高級ホテルのおもてなしかな? と思った。
俺は服をタンスやクローゼットにしまいながら考える。
母さんには悪いけど、こんな庶民の服じゃぁオスカー様と釣り合わないよな……。
オスカー様は今日もタキシードを着てピシッと決まってかっこよかった。
初給料をもらったらそれでちょっと綺麗めな服を買おう。うん。
そんなことを考えながら片付けを終えて窓から屋敷の外を眺める。
俺の部屋からの風景と違って、町の外の街道が見え、遠くの方にはぼんやり黒い影も見える。あれは王都だ。
あそこなら綺麗な服売ってるかな?
⸺⸺コンコン。
「はい」
「俺だ、オスカーだ。片付けは終わったか?」
俺は急いで部屋の戸を開けてオスカー様と対面する。
「はい、丁度今終わったところで……って、オスカー様!?」
俺は目の前のオスカー様を見てビックリする。
なんと、俺らが着るような普通の服を着て、整っていた髪もボサッとイイ感じに崩れていた。
「やっぱ、変、だろうか……?」
オスカー様はそう言ってほんのり頬を赤らめる。
ぎゃー! ヤバいギャップ萌え! このオスカー様もめちゃんこイケてる! 推せる!
「いえ! あの、タキシードのオスカー様もカッコイイですけど、今のオスカー様もめちゃくちゃカッコイイです!」
「そ、そうか……? 実は、普通の町民の用に町を歩いてみたくてな……。これなら俺だとバレないだろうか?」
いや、それは……バレるかも……。どんなに着崩してもオスカー様のオーラはビンビンだ。
「えっと……帽子なんか被ってみたらどうですか? それならバレないかもです」
「そうか、帽子か……。正装用のものしかないな……」
「あっ、それなら、俺の使いますか? これなんか似合いそう……って、スミマセン、俺の使ってた帽子なんかダメに決まってますよね」
あわわわわ何言ってんだ俺。なんて失礼なことを……。
俺がすぐに帽子を引っ込めようとすると、オスカー様の手が俺の手をパシっと掴んでそれを阻止した。
「あっ……」
そのあまりの逞しい手のひらに俺は思わず声が漏れる。
少し捲くられた袖から見える腕は適度に筋肉が盛り上がり、俺の鼓動も盛り上がる。
「あ、いや、すまん……。せっかくだから借りてみたくてな」
オスカー様は手を離すと俺の帽子をスッと取り上げ、なんのためらいもなくスポッと被る。
わ……俺が被ると可愛いのに、オスカー様が被るとカッコイイ……。
「む、なかなか被り心地はいいな。俺もこういう帽子を用意するとしよう。今日はこれを貸してくれるか?」
「は、はい! もちろんです! オスカー様、とってもお似合いです」
「それは良かった。では、フィル。早速一緒に町に行くとしよう」
「はい! 喜んで!」
この可愛い俺がオスカー様と一緒に町デート!?
俺のテンションは最高潮だった。
領主様のお屋敷で住み込みで働くことになった、そう母さんに報告すると、母さんは泣いて喜んでくれた。
なんか、親孝行できた感じがしてよかったなぁ。
給料はオスカー様が母さんに仕送りする用もくれるとのことで、お金には一切困らなさそうだ。
そして荷造りを済ませると、迎えの馬車に乗って屋敷へと出発した。
【ルース領主の屋敷】
「た、只今戻りました。今日からお世話になります」
俺が屋敷に戻ると、屋敷の使用人らがずらりと並んで俺を出迎えてくれた。
「おかえりなさいませ。フィル様!」
「えっ、フィル……様!?」
何で? 俺も使用人なんじゃないの?
「はい、オスカー様と同様の対応をするよう、オスカー様から申しつかっております」
メイドさんはそう言って丁寧にお辞儀をした。
「わわわ……なんか悪いなぁ……。あの、この屋敷のこと分かんないことだらけなので、良かったら色々教えてください」
俺もそう言い頭を下げた。
すると使用人らは声を揃えて「もちろんです!」と答えた。
そして、この騒ぎを聞きつけてオスカー様が書斎から出てくる。
「フィル? 早かったな。お母様にはちゃんと報告できたのか?」
「はい、母さん、良かったね、と泣いて喜んでくれました!」
周りの使用人らが一斉に拍手をする。いや、大げさすぎてやり辛いわ。
「そうか、それは良かった。では、まずは自分の部屋で荷物を整えてきなさい」
「はい、分かりました!」
俺は使用人に俺の部屋へと案内される。そこは、オスカー様の寝室の隣の部屋だった。
すでに俺の荷物は馬車からこの部屋に移動されていて、高級ホテルのおもてなしかな? と思った。
俺は服をタンスやクローゼットにしまいながら考える。
母さんには悪いけど、こんな庶民の服じゃぁオスカー様と釣り合わないよな……。
オスカー様は今日もタキシードを着てピシッと決まってかっこよかった。
初給料をもらったらそれでちょっと綺麗めな服を買おう。うん。
そんなことを考えながら片付けを終えて窓から屋敷の外を眺める。
俺の部屋からの風景と違って、町の外の街道が見え、遠くの方にはぼんやり黒い影も見える。あれは王都だ。
あそこなら綺麗な服売ってるかな?
⸺⸺コンコン。
「はい」
「俺だ、オスカーだ。片付けは終わったか?」
俺は急いで部屋の戸を開けてオスカー様と対面する。
「はい、丁度今終わったところで……って、オスカー様!?」
俺は目の前のオスカー様を見てビックリする。
なんと、俺らが着るような普通の服を着て、整っていた髪もボサッとイイ感じに崩れていた。
「やっぱ、変、だろうか……?」
オスカー様はそう言ってほんのり頬を赤らめる。
ぎゃー! ヤバいギャップ萌え! このオスカー様もめちゃんこイケてる! 推せる!
「いえ! あの、タキシードのオスカー様もカッコイイですけど、今のオスカー様もめちゃくちゃカッコイイです!」
「そ、そうか……? 実は、普通の町民の用に町を歩いてみたくてな……。これなら俺だとバレないだろうか?」
いや、それは……バレるかも……。どんなに着崩してもオスカー様のオーラはビンビンだ。
「えっと……帽子なんか被ってみたらどうですか? それならバレないかもです」
「そうか、帽子か……。正装用のものしかないな……」
「あっ、それなら、俺の使いますか? これなんか似合いそう……って、スミマセン、俺の使ってた帽子なんかダメに決まってますよね」
あわわわわ何言ってんだ俺。なんて失礼なことを……。
俺がすぐに帽子を引っ込めようとすると、オスカー様の手が俺の手をパシっと掴んでそれを阻止した。
「あっ……」
そのあまりの逞しい手のひらに俺は思わず声が漏れる。
少し捲くられた袖から見える腕は適度に筋肉が盛り上がり、俺の鼓動も盛り上がる。
「あ、いや、すまん……。せっかくだから借りてみたくてな」
オスカー様は手を離すと俺の帽子をスッと取り上げ、なんのためらいもなくスポッと被る。
わ……俺が被ると可愛いのに、オスカー様が被るとカッコイイ……。
「む、なかなか被り心地はいいな。俺もこういう帽子を用意するとしよう。今日はこれを貸してくれるか?」
「は、はい! もちろんです! オスカー様、とってもお似合いです」
「それは良かった。では、フィル。早速一緒に町に行くとしよう」
「はい! 喜んで!」
この可愛い俺がオスカー様と一緒に町デート!?
俺のテンションは最高潮だった。
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