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終話 とんでも法改正
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それから1ヶ月ほどが経ち、俺の教えていた孤児院の子どもたちは立派な魔道士に育ち、王都の新しい孤児院へと引っ越していった。事実上、俺とカミユの償いは完了したのである。
その後すぐに、俺の家へ王都の城への招待状が届いた。そこには母さんも一緒に来るよう書かれていて、同じく招待を受けていたアルシェ家と共にお城を訪ねた。
⸺⸺グランディア城、玉座の間⸺⸺
「皆良く来てくれた」
国王陛下のお言葉に、俺たちはみんな揃って頭を下げた。
「此度皆を招集したのは、議会である法改正が決まり、それをいち早く皆へ報告するためである」
「法改正……なぜわたくし共に……?」
と、アルシェ町長。
国王陛下は頷き、お言葉を続けた。
「うむ。まずは近年の我が国の経済状況について話さねばなるまい。我が国は、1年ほど前からジルドア領を中心に経済状況が格段に良くなった。それは、アリスがアルシェ家へ養子に入ってからである」
アリスは軽く会釈をした。
「一体何が起こっているのかと調査をさせたところ、アリスの執筆した小説が話題となり、アルシェの町は"聖地"という名目で観光地となっておった。余はアリスをアルシェ家へ送り出す事でここまで変わるとは正直思ってはいなかった。実に嬉しい誤算である」
嬉しそうに話す国王陛下を見て、俺とカミユもアリスと顔を見合わせて微笑んだ。俺だってそうだ。こうなるなんて思ってなかった。
「アリスの小説の内容は、カミユ殿とディオン殿の関係を題材にしたものであり、そのことも国中に広く知れ渡っておる。そこで、平民の意見を聞いた貴族議会にてある意見が提示された」
俺は"ある意見"と聞いてトクンと心臓が高鳴った。もしかして……。
「それは、同性のパートナーも法的に異性のパートナーと同等に扱う、つまり正式に夫婦の関係になれるようにしてほしい、というものだった」
「っ!」
思わず目を見開いた。俺たちが償いを終えたこのタイミング。期待しちゃいけないけど、俺の心臓はもうドキドキと煩くて仕方がなかった。
「近年の経済状況を鑑みて、議会でこの法改正が可決された。2ヶ月後に施行されることとなる。ぜひ、カミユ殿とディオン殿には、その記念すべき1組目となってほしいのだよ」
「えっ、俺と、カミユが……」
俺が驚いていると、カミユがすぐ隣で俺の方を向いて跪き出す。手には指輪の収まっている小箱が乗っていた。
「カ、カミユ……!? それ何!?」
「ディオン、驚かせて悪い。俺はもっと前からこの法改正の事を知らされていて、この日のために準備してきたんだ。ディオン、どうか俺と結婚してほしい」
そう言って差し出された綺麗な指輪と、カミユの真剣な眼差しが俺の視界を埋め尽くし、自然と涙がこぼれ落ちた。
「はい、よろしくお願いします……」
そう返事を返しお辞儀をすると、周りからはわっと歓声が上がり、俺の母さんとアリスはなぜか抱き合って喜んでいた。
「ありがとう、ディオン……」
カミユは指輪を取り出すと俺の左手を取り、チュッとキスを落として薬指へ指輪をはめた。
⸺⸺そして2か月後の法改正施行日。
俺とカミユの結婚式をひと目見ようと全国からアルシェの町に人が押し寄せ、見た事もない数の群衆前で、カミユは俺の唇に誓いのキスをした。
⸺⸺おしまい⸺⸺
その後すぐに、俺の家へ王都の城への招待状が届いた。そこには母さんも一緒に来るよう書かれていて、同じく招待を受けていたアルシェ家と共にお城を訪ねた。
⸺⸺グランディア城、玉座の間⸺⸺
「皆良く来てくれた」
国王陛下のお言葉に、俺たちはみんな揃って頭を下げた。
「此度皆を招集したのは、議会である法改正が決まり、それをいち早く皆へ報告するためである」
「法改正……なぜわたくし共に……?」
と、アルシェ町長。
国王陛下は頷き、お言葉を続けた。
「うむ。まずは近年の我が国の経済状況について話さねばなるまい。我が国は、1年ほど前からジルドア領を中心に経済状況が格段に良くなった。それは、アリスがアルシェ家へ養子に入ってからである」
アリスは軽く会釈をした。
「一体何が起こっているのかと調査をさせたところ、アリスの執筆した小説が話題となり、アルシェの町は"聖地"という名目で観光地となっておった。余はアリスをアルシェ家へ送り出す事でここまで変わるとは正直思ってはいなかった。実に嬉しい誤算である」
嬉しそうに話す国王陛下を見て、俺とカミユもアリスと顔を見合わせて微笑んだ。俺だってそうだ。こうなるなんて思ってなかった。
「アリスの小説の内容は、カミユ殿とディオン殿の関係を題材にしたものであり、そのことも国中に広く知れ渡っておる。そこで、平民の意見を聞いた貴族議会にてある意見が提示された」
俺は"ある意見"と聞いてトクンと心臓が高鳴った。もしかして……。
「それは、同性のパートナーも法的に異性のパートナーと同等に扱う、つまり正式に夫婦の関係になれるようにしてほしい、というものだった」
「っ!」
思わず目を見開いた。俺たちが償いを終えたこのタイミング。期待しちゃいけないけど、俺の心臓はもうドキドキと煩くて仕方がなかった。
「近年の経済状況を鑑みて、議会でこの法改正が可決された。2ヶ月後に施行されることとなる。ぜひ、カミユ殿とディオン殿には、その記念すべき1組目となってほしいのだよ」
「えっ、俺と、カミユが……」
俺が驚いていると、カミユがすぐ隣で俺の方を向いて跪き出す。手には指輪の収まっている小箱が乗っていた。
「カ、カミユ……!? それ何!?」
「ディオン、驚かせて悪い。俺はもっと前からこの法改正の事を知らされていて、この日のために準備してきたんだ。ディオン、どうか俺と結婚してほしい」
そう言って差し出された綺麗な指輪と、カミユの真剣な眼差しが俺の視界を埋め尽くし、自然と涙がこぼれ落ちた。
「はい、よろしくお願いします……」
そう返事を返しお辞儀をすると、周りからはわっと歓声が上がり、俺の母さんとアリスはなぜか抱き合って喜んでいた。
「ありがとう、ディオン……」
カミユは指輪を取り出すと俺の左手を取り、チュッとキスを落として薬指へ指輪をはめた。
⸺⸺そして2か月後の法改正施行日。
俺とカミユの結婚式をひと目見ようと全国からアルシェの町に人が押し寄せ、見た事もない数の群衆前で、カミユは俺の唇に誓いのキスをした。
⸺⸺おしまい⸺⸺
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