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17話 妹君
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翌朝。目覚めた俺の視界には、カミユの分厚い胸板が広がった。そっか、俺……カミユとちゃんと恋人になったんだ。
こんな日が来るなんて思ってなかった。あぁ、幸せだなぁ。前世の俺にも教えてあげたい。女性にモテなかったなら、男性にアタックすれば良かったんだよって。
⸺⸺
それから7日後、アリス様が正式にアルシェ家の養子として迎え入れられる事となった。町の人々はなぜ『カミユの妻』ではなく『養子』なのか、と初めは色々と戸惑っていた。が、領主が王族との繋がりを持てたことで町の経済は驚くほど活発になり、より一層賑やかになったアルシェの街並みから、養子の件を悪く言う者は一人もおらず、いつしか誰も疑問に思わなくなった。
そして俺はカミユのパーティメンバーとして屋敷への出入りが自由に出来るようになってしまった。そのため最近では魔物討伐に出かける際は俺がカミユを迎えに行くようになった。
⸺⸺アルシェ町長の屋敷⸺⸺
「おはようございまーす」
「ディオン様、おはようございます!」
屋敷の扉を開けて中に入るなりアリス様が俺を出迎える。
「あはは、アリス様は今日も元気だなぁ……」
「あーっ、ディオン様、あれだけ"アリス"と呼ぶようにと申したではありませんか。今また"様"がついてましたよ」
「あぁ……ごめんごめん、アリス。なんだか馴れなくて。未だにアリスさ……アリスがカミユの妹になったなんて信じらんないんだよ」
アリスはアルシェ家の養子になったため、カミユを呼び捨てで呼ぶならと、自分を呼び捨てるよう催促をしてきた。俺は未だに"ディオン様"って呼ばれてるんだけど、もう面倒くさいからツッコまないことにした。
そして俺は、ある事に気付く。
「あれ? アリス……リュックなんか背負ってどこかに行くの?」
「はい!」
アリスが元気良く頷くと、カミユが屋敷の奥から顔を出した。
「ディオンおはよ」
「あ、カミユ、おはよう!」
「お前さ、気付いてた? ここ最近の俺らの魔物討伐、アリスが少し離れた木の影から見てたの」
「えっ!? 気付かなかった!」
驚いてアリスの方を見ると、彼女はなぜか「えへへ」と照れていた。そこまでして俺たちのやり取りを見ていたいのか……。
「アリスの潜伏技術には恐れ入るが、流石に戦えない妹を一人で平原に野放しにしておく訳にはいかなくてな。今日からアリスも同行させる事にした」
「あっ、そうなんだ! それでリュック背負ってたのか……」
「私は今まで通りお邪魔をしないよう陰から見守りますと言ったのですが……。屋敷で留守番と一緒に来るかの2択でないとダメだとお父様に言われてしまって……」
アリスはショボンとする。
「あはは、それで一緒に行く方を選んだんだ……」
「はい、なるべくお邪魔はしませんので、今まで通りラブラブイチャイチャして下さいませ!」
「うっ……」
苦い顔をするカミユ。俺も同様に顔を引きつらせた。
「俺たち、そんなラブラブイチャイチャしてたかなぁ……」
⸺⸺
それからアリスは魔物討伐に行く時は必ず付いてくるようになった。主に後衛の俺の隣にいたが、彼女は時折何かを必死にメモしていた。
「ねね、アリス。それ、何書いてるの?」
魔物討伐後に彼女に尋ねてみる。
「はい、お二人の仲睦まじい姿を文字に書き留めて、創作の参考にさせて頂こうと思っています!」
「そ、創作?」
「はい! 私、作家になります!」
「えっ!?」
彼女のこの一言が、国を動かすことになるなんて、この時の俺たちは全く考えもしなかった。
こんな日が来るなんて思ってなかった。あぁ、幸せだなぁ。前世の俺にも教えてあげたい。女性にモテなかったなら、男性にアタックすれば良かったんだよって。
⸺⸺
それから7日後、アリス様が正式にアルシェ家の養子として迎え入れられる事となった。町の人々はなぜ『カミユの妻』ではなく『養子』なのか、と初めは色々と戸惑っていた。が、領主が王族との繋がりを持てたことで町の経済は驚くほど活発になり、より一層賑やかになったアルシェの街並みから、養子の件を悪く言う者は一人もおらず、いつしか誰も疑問に思わなくなった。
そして俺はカミユのパーティメンバーとして屋敷への出入りが自由に出来るようになってしまった。そのため最近では魔物討伐に出かける際は俺がカミユを迎えに行くようになった。
⸺⸺アルシェ町長の屋敷⸺⸺
「おはようございまーす」
「ディオン様、おはようございます!」
屋敷の扉を開けて中に入るなりアリス様が俺を出迎える。
「あはは、アリス様は今日も元気だなぁ……」
「あーっ、ディオン様、あれだけ"アリス"と呼ぶようにと申したではありませんか。今また"様"がついてましたよ」
「あぁ……ごめんごめん、アリス。なんだか馴れなくて。未だにアリスさ……アリスがカミユの妹になったなんて信じらんないんだよ」
アリスはアルシェ家の養子になったため、カミユを呼び捨てで呼ぶならと、自分を呼び捨てるよう催促をしてきた。俺は未だに"ディオン様"って呼ばれてるんだけど、もう面倒くさいからツッコまないことにした。
そして俺は、ある事に気付く。
「あれ? アリス……リュックなんか背負ってどこかに行くの?」
「はい!」
アリスが元気良く頷くと、カミユが屋敷の奥から顔を出した。
「ディオンおはよ」
「あ、カミユ、おはよう!」
「お前さ、気付いてた? ここ最近の俺らの魔物討伐、アリスが少し離れた木の影から見てたの」
「えっ!? 気付かなかった!」
驚いてアリスの方を見ると、彼女はなぜか「えへへ」と照れていた。そこまでして俺たちのやり取りを見ていたいのか……。
「アリスの潜伏技術には恐れ入るが、流石に戦えない妹を一人で平原に野放しにしておく訳にはいかなくてな。今日からアリスも同行させる事にした」
「あっ、そうなんだ! それでリュック背負ってたのか……」
「私は今まで通りお邪魔をしないよう陰から見守りますと言ったのですが……。屋敷で留守番と一緒に来るかの2択でないとダメだとお父様に言われてしまって……」
アリスはショボンとする。
「あはは、それで一緒に行く方を選んだんだ……」
「はい、なるべくお邪魔はしませんので、今まで通りラブラブイチャイチャして下さいませ!」
「うっ……」
苦い顔をするカミユ。俺も同様に顔を引きつらせた。
「俺たち、そんなラブラブイチャイチャしてたかなぁ……」
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それからアリスは魔物討伐に行く時は必ず付いてくるようになった。主に後衛の俺の隣にいたが、彼女は時折何かを必死にメモしていた。
「ねね、アリス。それ、何書いてるの?」
魔物討伐後に彼女に尋ねてみる。
「はい、お二人の仲睦まじい姿を文字に書き留めて、創作の参考にさせて頂こうと思っています!」
「そ、創作?」
「はい! 私、作家になります!」
「えっ!?」
彼女のこの一言が、国を動かすことになるなんて、この時の俺たちは全く考えもしなかった。
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