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15話 もうないと思っていた*
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「カミユ」
「ディオン……良い匂いするな」
バルコニーの手すりに手を掛けているカミユの隣に並ぶ。
「お高いシャンプー使わせてもらったからね。っていうか、カミユもおんなじ匂いだからね?」
カミユは「そうか」と力なく笑った。
「ディオン……まずはお礼を言わせてくれ。ありがとな」
カミユは真剣な眼差しでそう言った。
「何のこと?」
「お前がわざわざ王都まで来たの、俺のためなんだろ」
「だって、俺のせいでカミユが……」
「違う、お前は抵抗しなかっただけで、手を出したのは俺の方だ。お前の辛そうな顔見てたら、気持ち、抑えらんなくなった……もう10年以上、ずっと堪えてたのにな」
カミユはまた力なく笑い、満点の星空を見上げた。
「10年以上……か。お互いに同じ気持ちだったのに、ずっと友だちのフリしてたんだよね。なんか笑える」
思わずクスッと吹き出した。
「アリス様の縁談の話がなかったら、アリス様があの時覗き見てくれてなかったら、きっとこんな日は来なかっただろうな」
「うん、俺ももうないと思ってた」
「救世主だな」
「うん、俺は女神様だと思ってる」
⸺⸺その瞬間、隣の部屋のバルコニーからガタンと大きな音が聞こえてきた。
「な、なに?」
「誰だ!?」
俺たちが音の方へ視線を送ると、隣のバルコニーで尻餅をついて座り込んでいるアリス様の姿があった。
「す、すすすすすみません。先程ここへ出てきたのですが、お邪魔してはいけないと思い、声をかけられずにいました……」
アリス様は座り込んだまま早口でそう言った。
「アリス様? アリス様も城に泊まってらしたのですね」
家、目の前なのに。
「はい……もしかしたらお二人の尊いお姿を拝見出来るかと思い、隣の部屋を貸して頂きました……」
「ははは、アリス様、本当にそういうのがお好きなのですね」
と、カミユ。
「はい、すみません……」
「ところで、なぜ座り込んで……?」
俺は気になった疑問をアリス様へぶつけた。
「はい、あの……救世主だとか女神だとか、まさか推しのお二人からそんなお言葉が頂けると思っておらず、嬉しさのあまり腰が抜けてしまいました……」
「マジか……」
驚き目をパチクリとさせるカミユ。
そんなカミユと目を合わせると、お互いに堪えきれなくなり思いっきり吹き出して大笑いをしてしまった。
思いっ切り笑ってスッキリした俺は、恩返しのつもりで彼女へ思い切った発言をする。
「アリス様、あなたのおかげで今の俺たちがあります。お礼に、何か見たいシーンはありますか?」
「はわわわっ……!」
アリス様はなぜかズリズリと後退る。
「み、見たいシーンってなんだ?」
と、カミユ。きっとカミユはこういう文化を知らないんだ。
「すぐ、分かるよ」
俺はふふっと意地悪く微笑んでみせて、アリス様へと視線を戻す。
すると彼女は、顔を真っ赤にしながら遠慮がちにこう言った。
「……キスシーンがみたいです……深く、長いのをお願いします……」
「なっ……!?」
カミユもまた顔を真っ赤にさせた。
「カミユ。女神様は長いディープキスを御所望ですよ?」
「ディオン、お前……本気か?」
「うん。言っとくけど、もうセックス見られてるからね?」
あの時、アリス様は俺たちの行為を見て『はわわわ』と興奮していたのだろうか。そう思うと、見られることにちょっと快感を覚えてしまいそうな自分がいた。
「ぐっ……そうだった……。ったく、しょうがないな……」
カミユは観念したようにそう言うと、俺の肩をグッと引き寄せ腰に腕を回し、かみつくようにキスをしてきた。
「んっ、ふぅっ……ふふっ、ためらってた割には激しいね」
「……女神様が御所望なんだろ?」
カミユは額をコツンと当てて意地悪な笑みを浮かべる。やばい、めちゃくちゃカッコいい……。
「うん……もっと、長くだよ?」
「ん……なら、しゃべんな」
「ん、ごめ……んっ、はぁ……んっ……」
「はわわわわっ……! と、尊い……や、やらしい……! ありがとうございます、ありがとうございます!」
⸺⸺
10分くらい、カミユは俺の唇に噛み付いていた。そして彼は唇を離すと俺をお姫様抱っこして、沸騰中のアリス様へこう告げた。
「そちらとの壁際で本番してきますので、壁に耳、くっつけても良いですよ?」
カミユはニヤッと笑うと、俺を抱えたまま室内へと戻っていった。
「ディオン……良い匂いするな」
バルコニーの手すりに手を掛けているカミユの隣に並ぶ。
「お高いシャンプー使わせてもらったからね。っていうか、カミユもおんなじ匂いだからね?」
カミユは「そうか」と力なく笑った。
「ディオン……まずはお礼を言わせてくれ。ありがとな」
カミユは真剣な眼差しでそう言った。
「何のこと?」
「お前がわざわざ王都まで来たの、俺のためなんだろ」
「だって、俺のせいでカミユが……」
「違う、お前は抵抗しなかっただけで、手を出したのは俺の方だ。お前の辛そうな顔見てたら、気持ち、抑えらんなくなった……もう10年以上、ずっと堪えてたのにな」
カミユはまた力なく笑い、満点の星空を見上げた。
「10年以上……か。お互いに同じ気持ちだったのに、ずっと友だちのフリしてたんだよね。なんか笑える」
思わずクスッと吹き出した。
「アリス様の縁談の話がなかったら、アリス様があの時覗き見てくれてなかったら、きっとこんな日は来なかっただろうな」
「うん、俺ももうないと思ってた」
「救世主だな」
「うん、俺は女神様だと思ってる」
⸺⸺その瞬間、隣の部屋のバルコニーからガタンと大きな音が聞こえてきた。
「な、なに?」
「誰だ!?」
俺たちが音の方へ視線を送ると、隣のバルコニーで尻餅をついて座り込んでいるアリス様の姿があった。
「す、すすすすすみません。先程ここへ出てきたのですが、お邪魔してはいけないと思い、声をかけられずにいました……」
アリス様は座り込んだまま早口でそう言った。
「アリス様? アリス様も城に泊まってらしたのですね」
家、目の前なのに。
「はい……もしかしたらお二人の尊いお姿を拝見出来るかと思い、隣の部屋を貸して頂きました……」
「ははは、アリス様、本当にそういうのがお好きなのですね」
と、カミユ。
「はい、すみません……」
「ところで、なぜ座り込んで……?」
俺は気になった疑問をアリス様へぶつけた。
「はい、あの……救世主だとか女神だとか、まさか推しのお二人からそんなお言葉が頂けると思っておらず、嬉しさのあまり腰が抜けてしまいました……」
「マジか……」
驚き目をパチクリとさせるカミユ。
そんなカミユと目を合わせると、お互いに堪えきれなくなり思いっきり吹き出して大笑いをしてしまった。
思いっ切り笑ってスッキリした俺は、恩返しのつもりで彼女へ思い切った発言をする。
「アリス様、あなたのおかげで今の俺たちがあります。お礼に、何か見たいシーンはありますか?」
「はわわわっ……!」
アリス様はなぜかズリズリと後退る。
「み、見たいシーンってなんだ?」
と、カミユ。きっとカミユはこういう文化を知らないんだ。
「すぐ、分かるよ」
俺はふふっと意地悪く微笑んでみせて、アリス様へと視線を戻す。
すると彼女は、顔を真っ赤にしながら遠慮がちにこう言った。
「……キスシーンがみたいです……深く、長いのをお願いします……」
「なっ……!?」
カミユもまた顔を真っ赤にさせた。
「カミユ。女神様は長いディープキスを御所望ですよ?」
「ディオン、お前……本気か?」
「うん。言っとくけど、もうセックス見られてるからね?」
あの時、アリス様は俺たちの行為を見て『はわわわ』と興奮していたのだろうか。そう思うと、見られることにちょっと快感を覚えてしまいそうな自分がいた。
「ぐっ……そうだった……。ったく、しょうがないな……」
カミユは観念したようにそう言うと、俺の肩をグッと引き寄せ腰に腕を回し、かみつくようにキスをしてきた。
「んっ、ふぅっ……ふふっ、ためらってた割には激しいね」
「……女神様が御所望なんだろ?」
カミユは額をコツンと当てて意地悪な笑みを浮かべる。やばい、めちゃくちゃカッコいい……。
「うん……もっと、長くだよ?」
「ん……なら、しゃべんな」
「ん、ごめ……んっ、はぁ……んっ……」
「はわわわわっ……! と、尊い……や、やらしい……! ありがとうございます、ありがとうございます!」
⸺⸺
10分くらい、カミユは俺の唇に噛み付いていた。そして彼は唇を離すと俺をお姫様抱っこして、沸騰中のアリス様へこう告げた。
「そちらとの壁際で本番してきますので、壁に耳、くっつけても良いですよ?」
カミユはニヤッと笑うと、俺を抱えたまま室内へと戻っていった。
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