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12話 アリス様のカミングアウト
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アリス様が泣き止むと、俺はアリス様のお部屋へと案内された。『こうなってしまった以上、私も自分の気持ちを正直にお話ししなくてはなりません。どうか引かれませんよう、覚悟してご覧下さい』だ、そうだ。
部屋に入り、机の上を見て驚愕した。
「なんっじゃこりゃぁぁぁぁ!?」
「うわーん、ディオン様、引かないで下さいと申したではありませんか~!」
俺とカミユの顔がドアップで写っている写真。俺たちの顔の間に大きなハートマークが描かれており、めちゃくちゃ高そうな綺麗な額縁に入れられていた。
その隣には『カミユ♡ディオン』と書かれた真っピンクのうちわ。うちわ!?
「す、すみません。まさか自分がいるとは思わなくて……というかこの写真って……確か真ん中にアリス様がいたはずじゃ……?」
カミユとアリス様のお見合いに遭遇した時に1枚だけ記念写真を撮ったのを思い出す。
「私なんて要りませんよ。でも、一応こちらに無加工の物を飾ってあります」
そう言われて机の隅っこを見ると、その写真が入れられた小さな額が飾ってあった。
「えっ、ちっさ!」
でも、大体察した。日本でもこういう文化はあったからね。
アリス様はソファにちょこんと腰掛けると、恥ずかしそうに口を開いた。
「私、昔から……殿方同士の恋愛に興味があるのです」
「……そのようですね」
俺はアリス様のお向かいに腰掛けながら相槌を打つ。本棚にはそれらしきタイトルの本がズラリと並んでいる。
「カミユ様との縁談を持ちかけたのは、確かに私の意思です。おじさま……国王陛下が私の結婚相手を探し始めて、私の好みではないお方のもとへ嫁がなくてはならなくなるくらいなら、一度お見かけしてお顔立ちが整っていらして誠実そうなカミユ様がいいと、そう国王陛下へ進言したのがきっかけです」
「そう、でしたか……確かにカミユ、イケメンですよね」
「はわわわ! ディオン様のカミユ様への愛のお言葉、尊い……!」
アリス様は一人で興奮し始める。
「アリス様、落ち着いて……!」
「はっ、すみません。私ったら、つい……。えっと、それで、アルシェの町でのお見合いの時、カミユ様はご友人のディオン様のお話をたくさんされていました」
「えぇ、そうなんですね……」
もう、カミユったら。
「その時は流石にご友人同士かなとは思ったのですが、私の脳内は既にカミディオで溢れ返っておりました」
「あはは……」
「それで、カミユ様と結婚すれば毎日生のカミディオが見られるかもしれないと考え、正式に婚約しようとしていたのです」
「なるほど……ギルド活動は続けるってカミユが言ってたから……」
「おっしゃる通りです。ですが、お二人がディオン様のお部屋で身体を重ねているのを見てしまい、ただのご友人ではなかったと言う事に気付きました。それでそんな尊い関係を私が引き裂いてしまうのは耐えられなく、婚約は出来ないと判断したのです」
「あの時涙を流されていたのは……」
「お二人のご関係が尊過ぎて、私はなんて酷い事をしようとしていたのだろうと、自分を責めた結果、涙が流れてしまいました……」
「俺たちの事にショックを受けたからじゃなかったんですね……。では、策を考えると言うのは……?」
「はい、策と言うのは、お二人のご関係を引き裂くことなく、私がアルシェ家との関係を続けていくためにはどうすれば良いのか、と言う事です。アルシェ家の方々が縁談の話を受けてくださったのは、王族との関わりが出来るからであると、自覚しています。ですので、おじさまに何か良い方法がないか助けを求めているところです。もう少し待っていただきたいのですが……先にアルシェ家の方々の誤解だけでも解かねばなりませんね」
「策って、そう言う事……。てっきり何か罰を受けるのかと……」
俺が脱力してソファにだらんと倒れ込むと、アリス様は「ディオン様!」と心配そうに覗き込んできた。
アリス様は……良い人どころか、俺たちにとって女神みたいな人だったらしい。
部屋に入り、机の上を見て驚愕した。
「なんっじゃこりゃぁぁぁぁ!?」
「うわーん、ディオン様、引かないで下さいと申したではありませんか~!」
俺とカミユの顔がドアップで写っている写真。俺たちの顔の間に大きなハートマークが描かれており、めちゃくちゃ高そうな綺麗な額縁に入れられていた。
その隣には『カミユ♡ディオン』と書かれた真っピンクのうちわ。うちわ!?
「す、すみません。まさか自分がいるとは思わなくて……というかこの写真って……確か真ん中にアリス様がいたはずじゃ……?」
カミユとアリス様のお見合いに遭遇した時に1枚だけ記念写真を撮ったのを思い出す。
「私なんて要りませんよ。でも、一応こちらに無加工の物を飾ってあります」
そう言われて机の隅っこを見ると、その写真が入れられた小さな額が飾ってあった。
「えっ、ちっさ!」
でも、大体察した。日本でもこういう文化はあったからね。
アリス様はソファにちょこんと腰掛けると、恥ずかしそうに口を開いた。
「私、昔から……殿方同士の恋愛に興味があるのです」
「……そのようですね」
俺はアリス様のお向かいに腰掛けながら相槌を打つ。本棚にはそれらしきタイトルの本がズラリと並んでいる。
「カミユ様との縁談を持ちかけたのは、確かに私の意思です。おじさま……国王陛下が私の結婚相手を探し始めて、私の好みではないお方のもとへ嫁がなくてはならなくなるくらいなら、一度お見かけしてお顔立ちが整っていらして誠実そうなカミユ様がいいと、そう国王陛下へ進言したのがきっかけです」
「そう、でしたか……確かにカミユ、イケメンですよね」
「はわわわ! ディオン様のカミユ様への愛のお言葉、尊い……!」
アリス様は一人で興奮し始める。
「アリス様、落ち着いて……!」
「はっ、すみません。私ったら、つい……。えっと、それで、アルシェの町でのお見合いの時、カミユ様はご友人のディオン様のお話をたくさんされていました」
「えぇ、そうなんですね……」
もう、カミユったら。
「その時は流石にご友人同士かなとは思ったのですが、私の脳内は既にカミディオで溢れ返っておりました」
「あはは……」
「それで、カミユ様と結婚すれば毎日生のカミディオが見られるかもしれないと考え、正式に婚約しようとしていたのです」
「なるほど……ギルド活動は続けるってカミユが言ってたから……」
「おっしゃる通りです。ですが、お二人がディオン様のお部屋で身体を重ねているのを見てしまい、ただのご友人ではなかったと言う事に気付きました。それでそんな尊い関係を私が引き裂いてしまうのは耐えられなく、婚約は出来ないと判断したのです」
「あの時涙を流されていたのは……」
「お二人のご関係が尊過ぎて、私はなんて酷い事をしようとしていたのだろうと、自分を責めた結果、涙が流れてしまいました……」
「俺たちの事にショックを受けたからじゃなかったんですね……。では、策を考えると言うのは……?」
「はい、策と言うのは、お二人のご関係を引き裂くことなく、私がアルシェ家との関係を続けていくためにはどうすれば良いのか、と言う事です。アルシェ家の方々が縁談の話を受けてくださったのは、王族との関わりが出来るからであると、自覚しています。ですので、おじさまに何か良い方法がないか助けを求めているところです。もう少し待っていただきたいのですが……先にアルシェ家の方々の誤解だけでも解かねばなりませんね」
「策って、そう言う事……。てっきり何か罰を受けるのかと……」
俺が脱力してソファにだらんと倒れ込むと、アリス様は「ディオン様!」と心配そうに覗き込んできた。
アリス様は……良い人どころか、俺たちにとって女神みたいな人だったらしい。
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