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10話 直談判
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今度はカミユが家から出てこなくなった。
俺は毎日屋敷へ通って使用人に様子を聞いたが、カミユに会わせる事は出来ないとのことだった。
それでも懲りずに毎日通っていると、カミユのお父上、つまり町長さんが顔を出した。
「ディオン君……」
町長さんの顔はやつれていた。
「あの、カミユは……」
「君ももう知っているとは思うが、カミユはアリス姫様との縁談が破談になってね、申し訳ないがしばらく君と会う事は出来ないんだ。うちの使用人も困っていてね、毎日来るのは控えてもらえるかね」
「あの……はい、すみませんでした……」
俺は一礼して、屋敷に背を向けて歩き出した。まさかこんなことになるなんて……。
家に帰ろうとも思ったのだが、ここまで来てしまった以上、自分にやれることはやろうと思い、俺は思い切って王都へと旅立った。
⸺⸺⸺
⸺⸺
⸺
⸺⸺王都グラニール⸺⸺
遂にここまで来てしまった。大きな王都。アルシェの町も大きくて賑やかな町だったけど、それとは比べ物にならないくらいの壮観な街並みだった。
貴族街へ入ろうとすると、門番に止められてしまう。
「こらこら、君。こっから先は紹介状でもない限り進めないよ」
「えっ、そ、そうなんですか? 困ったな……」
お屋敷の前までも行かせてもらえないなんて。ここまで来てUターンなのかな。
そう思っていると、ナイスタイミングと言わんばかりに貴族街の奥からアリス様が歩いてくる。
「ディオン様!? ディオン様ではありませんか!」
アリス様は俺に気付くと小走りで駆け寄ってきてくれた。婚約者を寝取った俺にも、嫌な顔一つせず挨拶してくれるなんて。
「アリス様! あの、俺、アリス様にお話があって……」
「私にですか? 分かりました。門番、この方は私の友人です。そこをお通しして下さい」
「はっ! アリス姫様のご友人とは知らず、先程は失礼致しました。どうぞ、お通り下さい」
「ありがとうございます……」
アリス様と一緒に貴族街を歩く。それにしてもあんなにあっさりとアリス様が俺を通してくれるとは思わなかった。
てっきり俺は『あんたなんか顔も見たくない!』とか言って追い返されるものだと思ってたから。門番がいた手前だろうか。
「ディオン様お一人で来られたのですか?」
それなのに気を使って声までかけてくれる。
「はい、突然すみません……」
「いえいえ、とんでもございません。何か急用、ということなのでしょうか?」
あれ、アリス様、俺らの浮気現場を目撃して婚約破棄したの、覚えてないのかな?
って言うくらいに、アリス様はいつも通りほんわかしていた。
「急用というか、謝罪、というか……」
「謝罪……?」
アリス様が首を傾げると、貴族街の中でもとびきり大きな大豪邸へと到着した。
俺は毎日屋敷へ通って使用人に様子を聞いたが、カミユに会わせる事は出来ないとのことだった。
それでも懲りずに毎日通っていると、カミユのお父上、つまり町長さんが顔を出した。
「ディオン君……」
町長さんの顔はやつれていた。
「あの、カミユは……」
「君ももう知っているとは思うが、カミユはアリス姫様との縁談が破談になってね、申し訳ないがしばらく君と会う事は出来ないんだ。うちの使用人も困っていてね、毎日来るのは控えてもらえるかね」
「あの……はい、すみませんでした……」
俺は一礼して、屋敷に背を向けて歩き出した。まさかこんなことになるなんて……。
家に帰ろうとも思ったのだが、ここまで来てしまった以上、自分にやれることはやろうと思い、俺は思い切って王都へと旅立った。
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⸺⸺王都グラニール⸺⸺
遂にここまで来てしまった。大きな王都。アルシェの町も大きくて賑やかな町だったけど、それとは比べ物にならないくらいの壮観な街並みだった。
貴族街へ入ろうとすると、門番に止められてしまう。
「こらこら、君。こっから先は紹介状でもない限り進めないよ」
「えっ、そ、そうなんですか? 困ったな……」
お屋敷の前までも行かせてもらえないなんて。ここまで来てUターンなのかな。
そう思っていると、ナイスタイミングと言わんばかりに貴族街の奥からアリス様が歩いてくる。
「ディオン様!? ディオン様ではありませんか!」
アリス様は俺に気付くと小走りで駆け寄ってきてくれた。婚約者を寝取った俺にも、嫌な顔一つせず挨拶してくれるなんて。
「アリス様! あの、俺、アリス様にお話があって……」
「私にですか? 分かりました。門番、この方は私の友人です。そこをお通しして下さい」
「はっ! アリス姫様のご友人とは知らず、先程は失礼致しました。どうぞ、お通り下さい」
「ありがとうございます……」
アリス様と一緒に貴族街を歩く。それにしてもあんなにあっさりとアリス様が俺を通してくれるとは思わなかった。
てっきり俺は『あんたなんか顔も見たくない!』とか言って追い返されるものだと思ってたから。門番がいた手前だろうか。
「ディオン様お一人で来られたのですか?」
それなのに気を使って声までかけてくれる。
「はい、突然すみません……」
「いえいえ、とんでもございません。何か急用、ということなのでしょうか?」
あれ、アリス様、俺らの浮気現場を目撃して婚約破棄したの、覚えてないのかな?
って言うくらいに、アリス様はいつも通りほんわかしていた。
「急用というか、謝罪、というか……」
「謝罪……?」
アリス様が首を傾げると、貴族街の中でもとびきり大きな大豪邸へと到着した。
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