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9話 どうしよう
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⸺⸺アルシェ町長の屋敷⸺⸺
「ここ来るの久々かも」
俺はその大きな屋敷を見上げてしみじみと呟く。
「だな。小さい頃は良く屋敷で遊んだけどな」
「ね、そうそう」
門から屋敷の敷地へと入り、大きな扉を開けようとカミユが手を伸ばすと、それより先に扉がゆっくりと開いた。
そこから出てきたのは、アリス様だった。
「あれ、アリス様……?」
俺は、アリス様が泣いている事に気が付いた。
「アリス様、どうし……」
そう口を開くと、彼女の少し強めの言葉でその続きを遮られた。
「ごめんなさい、私……!」
彼女は急にペコッと頭を下げる。
「なっ、アリス様、急にどうされたのです?」
慌てるカミユ。そりゃそうだ。俺だって何がなんやら。
頭を上げたアリス様の口から飛び出したのは、とんでもない言葉だった。
「お二人のお気持ちも知らずに、私、ディオン様からカミユ様を取ろうとしてしまいました」
屋敷の人たちに聞かれないようにか、アリス様は声のトーンを抑えていた。
「「えっ!?」」
まさかの言葉に唖然とする俺たち。アリス様は再び小声で更に追い打ちをかけてくる。
「その、覗き見るつもりはなかったのですが、ディオン様が心配で、バルコニーからディオン様のお家を眺めていました。その、お二人が身体を重ねているのが窓越しに少しだけ見えてしまって……」
アリス様はそう言って頬を赤らめる。
「なっ……!」
「や、やば……」
とんでもないところを見られてしまっていた。確かにカーテンは閉めていなかったから、この屋敷の高いバルコニーからなら、注意してみれば見えたかもしれない……。
「もう少しで私は、とんでもない罪を犯してしまうところでした。今ならまだ間に合います。婚約のお話、白紙に戻しましょう……!」
アリス様は涙を流しながらそう言った。これはヤバい! 俺の浅はかな行動のせいで、カミユの将来がお先真っ暗になってしまいそうだ。
「ち、違うんです、アリス様、これは……!」
俺は必死に弁明しようとするが、アリス様は静かに首を横に振った。
「大丈夫です。少し策を考えなくてはなりません。私は一旦王都へ帰らせていただきますね」
アリス様はそう言い残すと、急ぎ足で屋敷の中へと戻っていった。
カミユが慌てて屋敷の中へと彼女を追いかけていき、俺も心配で屋敷の前で待たせてもらった。でも、しばらく待って出てきたのは、荷物をまとめて護衛と共に出てきたアリス様だった。
「アリス様、待って下さい!」
俺が呼び止めると、彼女は驚いたようにこちらを振り返る。
「ディオン様!? 待ってて下さったのですね。すみませんが急いでおりますので、これで失礼致します」
彼女は丁寧に一礼をして、馬車に乗り込み走り去ってしまった。
「あぁ……」
ガクンと膝を突く。もうおしまいだ。策を考えるって言ってたけど、きっと俺たちに対しての罰の事だと思う。俺たち個人が受けるのならまだ分かる。でも、カミユとアリス様は立場が普通とは違う。この町に迷惑がかかったら……領主様の領主権が剥奪されてしまったら……。
しばらくしてカミユが出てきて「今日はごめんけど帰ってくれ」と言われ、素直に帰ることにした。何も聞けなかった。どうしよう。このままじゃ、カミユの幸せが。この町の幸せが……。
後悔、してもしきれなかった。
「ここ来るの久々かも」
俺はその大きな屋敷を見上げてしみじみと呟く。
「だな。小さい頃は良く屋敷で遊んだけどな」
「ね、そうそう」
門から屋敷の敷地へと入り、大きな扉を開けようとカミユが手を伸ばすと、それより先に扉がゆっくりと開いた。
そこから出てきたのは、アリス様だった。
「あれ、アリス様……?」
俺は、アリス様が泣いている事に気が付いた。
「アリス様、どうし……」
そう口を開くと、彼女の少し強めの言葉でその続きを遮られた。
「ごめんなさい、私……!」
彼女は急にペコッと頭を下げる。
「なっ、アリス様、急にどうされたのです?」
慌てるカミユ。そりゃそうだ。俺だって何がなんやら。
頭を上げたアリス様の口から飛び出したのは、とんでもない言葉だった。
「お二人のお気持ちも知らずに、私、ディオン様からカミユ様を取ろうとしてしまいました」
屋敷の人たちに聞かれないようにか、アリス様は声のトーンを抑えていた。
「「えっ!?」」
まさかの言葉に唖然とする俺たち。アリス様は再び小声で更に追い打ちをかけてくる。
「その、覗き見るつもりはなかったのですが、ディオン様が心配で、バルコニーからディオン様のお家を眺めていました。その、お二人が身体を重ねているのが窓越しに少しだけ見えてしまって……」
アリス様はそう言って頬を赤らめる。
「なっ……!」
「や、やば……」
とんでもないところを見られてしまっていた。確かにカーテンは閉めていなかったから、この屋敷の高いバルコニーからなら、注意してみれば見えたかもしれない……。
「もう少しで私は、とんでもない罪を犯してしまうところでした。今ならまだ間に合います。婚約のお話、白紙に戻しましょう……!」
アリス様は涙を流しながらそう言った。これはヤバい! 俺の浅はかな行動のせいで、カミユの将来がお先真っ暗になってしまいそうだ。
「ち、違うんです、アリス様、これは……!」
俺は必死に弁明しようとするが、アリス様は静かに首を横に振った。
「大丈夫です。少し策を考えなくてはなりません。私は一旦王都へ帰らせていただきますね」
アリス様はそう言い残すと、急ぎ足で屋敷の中へと戻っていった。
カミユが慌てて屋敷の中へと彼女を追いかけていき、俺も心配で屋敷の前で待たせてもらった。でも、しばらく待って出てきたのは、荷物をまとめて護衛と共に出てきたアリス様だった。
「アリス様、待って下さい!」
俺が呼び止めると、彼女は驚いたようにこちらを振り返る。
「ディオン様!? 待ってて下さったのですね。すみませんが急いでおりますので、これで失礼致します」
彼女は丁寧に一礼をして、馬車に乗り込み走り去ってしまった。
「あぁ……」
ガクンと膝を突く。もうおしまいだ。策を考えるって言ってたけど、きっと俺たちに対しての罰の事だと思う。俺たち個人が受けるのならまだ分かる。でも、カミユとアリス様は立場が普通とは違う。この町に迷惑がかかったら……領主様の領主権が剥奪されてしまったら……。
しばらくしてカミユが出てきて「今日はごめんけど帰ってくれ」と言われ、素直に帰ることにした。何も聞けなかった。どうしよう。このままじゃ、カミユの幸せが。この町の幸せが……。
後悔、してもしきれなかった。
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