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6話 引きこもり
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カミユのお見合いから10日ほどが経った。
⸺⸺俺は、引きこもりになっていた。
1階の玄関から、カミユと母さんの話し声が聞こえてくる。俺は、ベッドに突っ伏してその微かに聞こえてくるやり取りに耳を傾けた。
「おはようございます。ディオンの身体の具合はどうですか?」
「カミユちゃん。毎日毎日来てもらっちゃって悪いねぇ。それがまだ風邪が治らないからって、部屋から出たがらなくてねぇ」
「そう、ですか……。俺、やっぱディオンの顔だけでも見たいのですが……」
「うーん……領主様のご子息に風邪を移す訳にもいかないしねぇ……」
本当は風邪なんて引いてない。失恋のショックでカミユと会いたくない、なんて言えるはずがないから、嘘を吐いてしまっている。
親友にも親にも心配かけて、全く何をしているんだろう、俺は。
今までは目を閉じれば俺の脳内ではカミユに押し倒されている俺がいた。でも、今は……目を閉じると俺の脳内に出てくるカミユは、アリス様とイチャついている。優しくキスをして、ゆっくりドレスを脱がせて、それから……。
「うわぁぁぁぁっ……!」
必死に頭を振って、脳内の映像をかき消す。
妄想ですらカミユとイチャイチャ出来なくなってしまった。現実逃避すら出来ない。大粒の涙がポタポタと枕に染み込んでいく。
それほどまでに、アリス様は全く欠点の見当たらない完璧なご令嬢だったのだ。
「ディオン、大丈夫か!? 開けるぞ!?」
「えっ!? ちょ、ま……!」
迂闊だった。俺が妄想と格闘しているうちにカミユが母さんを説得して俺の部屋の前まで押し入ってきていた。
勢い良く部屋の戸が開くと、そこには心配そうな顔のカミユが立っていた。彼の表情はすぐに驚きの表情へと変わる。
「ディオン、お前、泣いて……」
「えっと、違う、これは……」
慌てて涙を拭っていると、俺の身体はカミユにキツく抱き締められていた。
「カミユ!? ちょ、何して……!?」
「だって、こうでもしないとお前、消えちまいそうで……」
カミユはそう言って更に腕の力を強めた。
「うぅ……カミユ、ごめん、俺嘘吐いてた……本当は風邪、引いてない」
「……みたいだな。何で部屋に閉じこもってずっと泣いてたのか、教えてほしい……」
「うん……」
「でもまずは、俺から言わせて」
カミユはそう言って俺の身体を少しだけ離した。
「うん?」
見上げるとカミユは真剣な眼差しで俺を見つめていた。
ドキドキと高鳴る心臓。
彼はゆっくりと口を開いた。
「俺、ガキの頃からずっと、ディオンのことが好きだ。嫌だったら突き飛ばせよ」
「えっ、あっ……」
何か言う間もなく、俺の唇はカミユのそれで塞がれた。
⸺⸺俺は、引きこもりになっていた。
1階の玄関から、カミユと母さんの話し声が聞こえてくる。俺は、ベッドに突っ伏してその微かに聞こえてくるやり取りに耳を傾けた。
「おはようございます。ディオンの身体の具合はどうですか?」
「カミユちゃん。毎日毎日来てもらっちゃって悪いねぇ。それがまだ風邪が治らないからって、部屋から出たがらなくてねぇ」
「そう、ですか……。俺、やっぱディオンの顔だけでも見たいのですが……」
「うーん……領主様のご子息に風邪を移す訳にもいかないしねぇ……」
本当は風邪なんて引いてない。失恋のショックでカミユと会いたくない、なんて言えるはずがないから、嘘を吐いてしまっている。
親友にも親にも心配かけて、全く何をしているんだろう、俺は。
今までは目を閉じれば俺の脳内ではカミユに押し倒されている俺がいた。でも、今は……目を閉じると俺の脳内に出てくるカミユは、アリス様とイチャついている。優しくキスをして、ゆっくりドレスを脱がせて、それから……。
「うわぁぁぁぁっ……!」
必死に頭を振って、脳内の映像をかき消す。
妄想ですらカミユとイチャイチャ出来なくなってしまった。現実逃避すら出来ない。大粒の涙がポタポタと枕に染み込んでいく。
それほどまでに、アリス様は全く欠点の見当たらない完璧なご令嬢だったのだ。
「ディオン、大丈夫か!? 開けるぞ!?」
「えっ!? ちょ、ま……!」
迂闊だった。俺が妄想と格闘しているうちにカミユが母さんを説得して俺の部屋の前まで押し入ってきていた。
勢い良く部屋の戸が開くと、そこには心配そうな顔のカミユが立っていた。彼の表情はすぐに驚きの表情へと変わる。
「ディオン、お前、泣いて……」
「えっと、違う、これは……」
慌てて涙を拭っていると、俺の身体はカミユにキツく抱き締められていた。
「カミユ!? ちょ、何して……!?」
「だって、こうでもしないとお前、消えちまいそうで……」
カミユはそう言って更に腕の力を強めた。
「うぅ……カミユ、ごめん、俺嘘吐いてた……本当は風邪、引いてない」
「……みたいだな。何で部屋に閉じこもってずっと泣いてたのか、教えてほしい……」
「うん……」
「でもまずは、俺から言わせて」
カミユはそう言って俺の身体を少しだけ離した。
「うん?」
見上げるとカミユは真剣な眼差しで俺を見つめていた。
ドキドキと高鳴る心臓。
彼はゆっくりと口を開いた。
「俺、ガキの頃からずっと、ディオンのことが好きだ。嫌だったら突き飛ばせよ」
「えっ、あっ……」
何か言う間もなく、俺の唇はカミユのそれで塞がれた。
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