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5話 完璧な令嬢
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「カミユ助かったよ、ありがとう……。でも、なんでこんなところに? 王都にいるんじゃ……?」
俺はまだ少し驚いていて、目をぱちくりとさせてしまっていた。しかし、カミユも同様に目をぱちくりとさせていた。
「王都? いやいや、今日のお見合いの場所はアルシェ町長の屋敷なんだよ。今はアルシェの町を案内してたところだ」
「えっ、そうだったんだ。ってことは……ご令嬢は……」
「そこで待ってもらってる」
カミユの視線の先には、ふわふわな金髪の可愛らしい少女がちょこんと立っていた。うわ……すごい可愛くて綺麗な人だ……。彼女は俺の視線に気付くと、ペコッと直角にお辞儀をした。王都の貴族様のご令嬢が俺みたいな庶民にそんな深くお辞儀をしてくれるのか……。
俺も慌てて直角にお辞儀を返すと、彼女はちょこちょことこちらへと歩み寄ってきた。
「ディオン様、大丈夫でしたか?」
「えっ、あっ、はい……! ご心配おかけしました」
なんで俺の名前知ってるんだ。俺は彼女の名前どころか、どこのお家のお嬢様かも知らないのに。
「ディオン、彼女はルーティア家のご令嬢、アリス様だ」
カミユがそう紹介をすると、彼女はそれに合わせてニッコリと微笑んだ。
「ルーティア家って……えっ、あの王族のルーティア家の!?」
「ディオン様、すみません、今はお忍びですのであまり大きな声でその名をおっしゃらないでいただけると……」
「あっ、ご、ごめんなさい……!」
周りの人がざわつき始めて、俺は慌てて謝った。
人が集まってしまっても困るとのことで、近くのカフェに逃げ込み、カフェの店長のご厚意で2階の個室へと案内してもらった。
「アリス様、先程はすみませんでした……」
俺はもう一度深く頭を下げて謝った。
「いえいえ、こちらこそ驚かせてしまったようですみません」
アリス様は「どうか頭を上げてください」と優しくなだめてくれる。なんて出来たお人なのだろう。
「ディオン、悪かったな。お名前だけでも伝えておくべきだったか」
と、カミユ。俺はぷくーっと頬を膨らませる。
「もう、本当だよ! こうなったのはカミユのせいなんだからね!?」
確かに俺も詳しく聞こうとしなかったけどさ、親友なんだからそれくらい教えておいてくれても良かったよね。
「ははは、悪かったって。ここのモンブラン奢るから機嫌直せって」
「うっ……いただきます」
「まぁ、うふふ。ディオン様はモンブランがお好きなのですね」
カミユはずるい。俺がここのモンブラン大好物なの知っててそう言うんだもん。アリス様にも温かい目で見守られてちょっと恥ずかしい。
⸺⸺
それから俺らはモンブランを食べながら他愛もない会話をした。
アリス様のお父上は国王陛下の弟君。つまり、アリス様は国王陛下の姪っ子と言う事になる。そんな位の高いお方がこのアルシェの町に嫁いでくる事になったなんて、驚きだ。
どうやらアリス様は以前ご公務の時にカミユを見かけて一目惚れをされたらしい。それで、今回の縁談の話になったとのこと。
今回の縁談が上手くまとまればこのアルシェの町だけではない、ジルドア領も末永く安泰だ。
更にアリス様は天真爛漫なお方で、お高く止まっている感じでもない。無礼な言い方すると、可愛くてめちゃんこ良い子だ。
しかもカミユとも良い雰囲気。
⸺⸺俺には、全く勝ち目がない。
今日はそれを目の当たりにしてしまい、解散して家に帰るや否やショックを吐き出すように自分の部屋のベッドに突っ伏して泣き崩れた。
俺はまだ少し驚いていて、目をぱちくりとさせてしまっていた。しかし、カミユも同様に目をぱちくりとさせていた。
「王都? いやいや、今日のお見合いの場所はアルシェ町長の屋敷なんだよ。今はアルシェの町を案内してたところだ」
「えっ、そうだったんだ。ってことは……ご令嬢は……」
「そこで待ってもらってる」
カミユの視線の先には、ふわふわな金髪の可愛らしい少女がちょこんと立っていた。うわ……すごい可愛くて綺麗な人だ……。彼女は俺の視線に気付くと、ペコッと直角にお辞儀をした。王都の貴族様のご令嬢が俺みたいな庶民にそんな深くお辞儀をしてくれるのか……。
俺も慌てて直角にお辞儀を返すと、彼女はちょこちょことこちらへと歩み寄ってきた。
「ディオン様、大丈夫でしたか?」
「えっ、あっ、はい……! ご心配おかけしました」
なんで俺の名前知ってるんだ。俺は彼女の名前どころか、どこのお家のお嬢様かも知らないのに。
「ディオン、彼女はルーティア家のご令嬢、アリス様だ」
カミユがそう紹介をすると、彼女はそれに合わせてニッコリと微笑んだ。
「ルーティア家って……えっ、あの王族のルーティア家の!?」
「ディオン様、すみません、今はお忍びですのであまり大きな声でその名をおっしゃらないでいただけると……」
「あっ、ご、ごめんなさい……!」
周りの人がざわつき始めて、俺は慌てて謝った。
人が集まってしまっても困るとのことで、近くのカフェに逃げ込み、カフェの店長のご厚意で2階の個室へと案内してもらった。
「アリス様、先程はすみませんでした……」
俺はもう一度深く頭を下げて謝った。
「いえいえ、こちらこそ驚かせてしまったようですみません」
アリス様は「どうか頭を上げてください」と優しくなだめてくれる。なんて出来たお人なのだろう。
「ディオン、悪かったな。お名前だけでも伝えておくべきだったか」
と、カミユ。俺はぷくーっと頬を膨らませる。
「もう、本当だよ! こうなったのはカミユのせいなんだからね!?」
確かに俺も詳しく聞こうとしなかったけどさ、親友なんだからそれくらい教えておいてくれても良かったよね。
「ははは、悪かったって。ここのモンブラン奢るから機嫌直せって」
「うっ……いただきます」
「まぁ、うふふ。ディオン様はモンブランがお好きなのですね」
カミユはずるい。俺がここのモンブラン大好物なの知っててそう言うんだもん。アリス様にも温かい目で見守られてちょっと恥ずかしい。
⸺⸺
それから俺らはモンブランを食べながら他愛もない会話をした。
アリス様のお父上は国王陛下の弟君。つまり、アリス様は国王陛下の姪っ子と言う事になる。そんな位の高いお方がこのアルシェの町に嫁いでくる事になったなんて、驚きだ。
どうやらアリス様は以前ご公務の時にカミユを見かけて一目惚れをされたらしい。それで、今回の縁談の話になったとのこと。
今回の縁談が上手くまとまればこのアルシェの町だけではない、ジルドア領も末永く安泰だ。
更にアリス様は天真爛漫なお方で、お高く止まっている感じでもない。無礼な言い方すると、可愛くてめちゃんこ良い子だ。
しかもカミユとも良い雰囲気。
⸺⸺俺には、全く勝ち目がない。
今日はそれを目の当たりにしてしまい、解散して家に帰るや否やショックを吐き出すように自分の部屋のベッドに突っ伏して泣き崩れた。
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